「アベル、レオン 起きて……。二人とも……」
…んーん、誰だよ眠いなぁ。
少し目を開くとまだ外は真っ暗だった。
んじゃ2度寝といきますか、おやすみ~。
「て、レオンッ!なんでまた寝るのよ」
今度はしっかり目を開く。
そこには腕を組んで仁王立ちしているビアンカの姿が見えた。
「アベルは起きたっていうのにアンタは…」
やれやれと呆れ顔のビアンカ。
あーそうだった、レヌール城へお化け退治しに行くんだったね。
意外とベッドがふかふかで気持ち良かったもんでつい。
ちなみにレヌール城へ行くにはアルカパに滞在する必要があるのだが「もう少しこの町を見てみたい」という旨をパパスに伝えると1晩だけ泊まることになった。
「ごめんごめん。じゃあ行こうか」
俺はベッドの下からまとめた荷物を引っ張り出し背負った。
「準備できたわね。じゃあ行くわよ」
こっそりと部屋を抜け出しそのまま1階へ。
そして正面玄関を開き外へ出た。
「へへ、なんかワクワクするね!」
「そうね!わたしもなんだか楽しい気分だわ!」
「やっぱいけないことする時ってのはスリルがあって良いもんだな」
「レオン、なんか悪人みたいな顔してるわよ」
ゲヘゲヘと笑っているとビアンカから指摘を受けた。
笑ってただけなのに悪人ってひどくない。べ、別に普段から悪さなんてしてないよ。…ホントだよ?
「レオン兄ちゃん、あそこお店かなぁ?」
アベルは灯りのある方へと指をさして聞いてきた。
あーあれはBARだな。
今は深夜前だから丁度盛り上がる時間帯なんだろう。店の方から大きな笑い声が聞こえる。
「あそこはお酒を飲むところらしいわよ。お父さんも偶に行ってるわ」
「ま、俺たちにはまだ早いってことだ」
へぇ~とアベルは納得したようだ。
「お酒のどこがいいんだかわたしにはさっぱりだわ」
「大人には大人の楽しさってのがあるんだろうよ」
「そういうものかしら。…でも、そんなに楽しいのなら大きくなったら行ってみたいわ。そうだ!アベルにレオン、大人になったら3人でここに来ようよ!」
「ぼく行きたーい!」
「そうだな、いつか3人で行こうぜ」
「エヘッ、約束だからね!」
*****
「にしてもホントにザル警備だな」
「言ったでしょ?いっつもあのおじさん夜になると寝てるのよ」
「ビアンカ~、あのおじさんが町を守ってるの?」
「そうよ…まあちょっと不安にはなるよね」
現在俺たちはアルカパを出てレヌール城へ向かい始めたところだ。
無事外に出れたのはいいがビアンカは警備兵に対して少し呆れた様子だ。
万が一にもモンスターが町に入り込んだら大変なのだからしっかり仕事して欲しいもんだ。幸いにも町周辺にはモンスターはいないようなので安心だ。
「町にモンスターが来たことはあるのか?」
「あるわよ。でも最近はそんな報告は聞かないわね」
「ぼくたちの村にも来るよねー!」
3人で雑談しながら歩いていく。
しばらく進んでいると森が見えてきそのまま中へと入っていく。
「うへ~こりゃ不気味だな」
「なんか出そうだねー」
「うっ…正直私もちょっと苦手」
風が吹いてるようには感じないがザワザワと木々が揺れている。
月明かりのおかげで辛うじて4,5メートル先は見えてるが森の奥を見ると驚くほど真っ暗で文字通り闇に飲み込まれてしまいそうだ。
気づけば俺の左脇腹にアベルが、右脇腹にビアンカがくっついていた。
「…おい、お前たち何してる」
「だって怖いもん!」
「わ、わたしはべ、別に!でもちょっとだけ、ちょーっとだけ怖いからわたしの盾になってちょうだいッ!」
お、お前らな…俺だって怖ぇーんだぞ!
アベルは正直で良いとして、ビアンカさん?あなたまさか俺が防具にでも見えてるの?肉壁なんて絶対にお断りですわよ。
ガサッ…。
「わっ!」
「ひゃうっ!?」
!?
茂みだろうか。進行方向から草木が揺れる音がした。
そして姿を現したのは――。
(……おおねずみ?)
しかも3体。どうやらこちらの様子に気づいていたみたいだ。
やばいッ、こっちに飛びつく勢いだ。
「お前たち!戦闘態勢をとれ!」
2人とも状況を理解しキッと表情が変わる。
まったく…さっきまでの様子はどこへやら。勇ましいったらありゃしない。
「おおねずみ3体だ!各自1匹ずつ相手しろ!」
「うん!」
「了解!」
俺は剣を抜きそのまま中央のおおねずみへと斬りかかる。
しかし剣は空を切り、そのまま地面へと振り下ろされる。
「どこいった!?」
左右見たが姿を確認できない。が、次の瞬間――。
ドゴッ!!
俺の身体は横に吹っ飛び背中から木にぶつかる。
(グッ……背中痛ッ!それより…)
頭にズキッと痛みが走る。
どうやらおおねずみはジャンプし剣をかわした後、俺の側頭部へと蹴りを一発ぶち込んだようだ。
倒れた俺の側におおねずみは近寄り、まるで嘲笑うかのように俺を見下ろしている。
「クソッ!!」
剣を横に一振りするがおおねずみは後ろ飛びでかわす。
俺は剣を支えに立ち上がる。
スピードは相手の方が上…。どうすれば剣が当たる。
(じゃあこれならどうだ)
俺はおおねずみへと間合いを詰め何度か斬りつける。
だが相手はピョンピョンと横へ後ろへと逃げる。
合間に数発蹴りを受ける。
クソッ、もう一度来い!
そして次の一振りでおおねずみが上へとジャンプし剣を交わした。
(ここだッ!)
おおねずみの蹴りが入る、かと思いきや――。
ブシュッ!!
おおねずみの横腹にはナイフが突き刺さる。
「誰が武器は1本だって言ったよ!!」
そう、実は武器屋でくだものナイフを1本購入していた。
ゲームでは1つしか装備できないがここは現実。別に両手に剣を持つことだって可能であることは実家にある武器で把握済みだ。
だから予備の武器として腰にくだものナイフを下げていたのだ。
おおねずみが上へと飛んだ瞬間、俺は剣を持っていない片腕でナイフを取り宙にいるおおねずみへと突き刺した。
いくらスピードに自信があるといっても空中では逃げようがないからな。
ナイフを突き刺されたおおねずみはパニックし、地面でのたうち回る。
その隙に剣を握り直し振り上げ、そのままおおねずみを真っ二つにした。
くだものナイフを残し、おおねずみは消滅した。
「はぁ…はぁ…」
上手くいって良かった…。それより、2人は――。
「よっ!」
「こんなもんね」
既に戦闘は終わっていた。
どうやらアベルはひのきのぼうで敵をいなし、ビアンカはくだものナイフで数回斬りつけた後メラで倒したようだ。
ハ、ハハハ……。2人とも、流石というか何というか…。
「俺いらなくね?」
うん。知ってた。