「いっててて…」
「大丈夫?」
怪我をした俺にアベルが心配そうに寄り添ってくる。
「ホントに大丈夫?結構ボロボロよ。…てかアンタ意外と弱いのね」
落胆した表情でビアンカが言う。
「べ、別にこんなのどうって事ないし!ちょっと油断してただけだし!暗かったから剣が空振ってただけだし!!」
何となくわかってたけどやっぱコイツ等強いわ。流石ゲームの主人公&ヒロインだけはある。でもこんな小さい子どもにはっきり「弱い」と言われるのは正直恥ずかしい。やめろよ、俺の繊細な心が傷ついちゃうだろ。
「ごめんて、ムキにならないでよ。まあこのお姉さんがアベルとレオンを守ってあげるわよ!」
エッヘンと胸を張るビアンカ。
ワー、タノモシイナー。
胸はまだまだ頼もしくないけど。
「何よその目」
「イエ、ナニモ」
その後も何度か戦闘があったが最初のような深手を負うことはなく、かすり傷程度で済ませられた。
ちなみに怪我はアベルがホイミをかけてくれたので大丈夫だ。いいな回復呪文。一家に一台アベルを置きたい。
しばらく歩くと森から抜け出し開けた場所へと出てきた。
そして月夜に照らされ一層と不気味さを醸し出す大きな建物が見えてきた。
「わー!おっきー!」
「ここが噂の…」
レヌール城へ辿り着いた。
「実物はかなり不気味だな」
「そうね……あれ?」
ビアンカは何かに気が付いた。
視線の先には大きな池があったのだが、近くに焚き木が組まれておりゆらゆらと炎が灯っている。
「あれー?なんで火がついてるの?」
アベルが不思議そうに首をかしげている。
あー、あそこって確か爺さんがいるんだっけ。
チラッとビアンカの方に目をやると青ざめた様子で焚き木を眺めていた。しょうがない、少しだけからかってやるか。
「ビアンカさんや、あれはもしや幽れ…」
「ひゃッ!!」
ビアンカは涙目で肩を震わせている。
「へ、へぇ~。ユーレイも寒くて焚き火でもするのかしらね。それか誰かが焚き火をしていったのね!」
「実はここには子どもを食べる悪霊が住んでおり、俺たちを丸焼きにするため準備を…」
「そ、そそ、そんなわけないでしょ!ほら、2人とも早くい、行くわよ!」
ビアンカさんや、動揺しすぎて手と足が同時に出てるぞ。
「アハハ!ビアンカおもしろーい!」
*****
「レオン兄ちゃん、全然開かないよ」
「うーん、困ったわね。どこか他のところから中に入れないかしら……」
俺たちは正面玄関から城内へ入ろうとしている。しかし扉が錆びているせいかビクともしない。城の裏にある階段から上がれる事は知っているが最初から向かうような野暮はしない。2人になぜ知っているのかと問い詰められるの面倒だし。
「裏口とかあるんじゃない?」
「それもそうね。確認しに行きましょう」
城の裏へと進んでいく。
そこには城壁が崩れむき出しになった螺旋階段が上へ上へと続いていた。
「ここから登れそうだな」
「じゃあ行きましょう」
ひたすら階段を上り続けると城内へと通じる入口がそこにはあった。
「扉がないだなんて不自然ね…」
「もしかして俺たちこの城の幽霊に歓迎されてたりして――」
ゴスッ!
ビアンカの拳が俺の脇腹へと突き刺さる。
「いてっ!冗談だって」
「冗談にしてもアンタのにやけ面にムカついた」
え、酷くない?
「2人とも早く行こうよー」
アベルが俺たちを急かす……て、お前もう入口通過して中に入ってんじゃん!!
「ほら、行くわよ」
ビアンカに続き俺も入口をくぐる。
そして3人の体が完全に城内に入った瞬間――。
ガラガラガラガラ…ドンッ!!!!
「「!!?」」
「うおっ、閉まった」
突然鉄格子の門が降りてき、入口を完全に塞いだ。
事前に知っている俺は門の降りる音にびっくりしただけだが、2人はかなり驚いている様子だ。
「ちょっと何よこれ!?わたしたち閉じ込められたの?」
「レオン兄ちゃん、どうしよう!」
「でもこれ開きそうにないしなぁ。とりあえず進んでみるしかないんじゃないか?」
「…それもそうね。とにかく、進んでみましょう」
初めは取り乱していた2人だったが俺が落ち着いた様子で状況を説明しているうちに落ち着きを取り戻したようだ。
薄暗い部屋の中に3人の足音が響き渡る。
よく見ると通路の左右には棺桶が並んでいるのがわかる。
「なんか嫌な感じね」
ビアンカがぼそっと呟く。
通路の奥に階段が見えてきた。
階段を降りようとすると棺桶からガイコツの幽霊が出てくることを知っているので「2人とも気をつけろよ」とだけ忠告しておく。
といってもこれはアベルに向けての言葉だ。
ガイコツはビアンカを連れていくと知っているのでコイツを守ってやれば済むことだ。
なのでビアンカの側へと近寄る。
「…何よレオン。もしかして怖いの?」
「あぁ、怖ぇ怖ぇ超コエ―」
「クスッ、何よそれ。こんな時でもふざけちゃって。いいわ、お姉さんが守ってあげる」
何だかんだ姉御肌見せてくれるとこ、嫌いじゃないぜ。
そして階段を降りようとしたその時――。
ガタガタガタ!!!
「「!!」」
複数ある棺桶が一斉に開き、中からガイコツが出てくる。
そしてこちらへと素早いスピードで近寄ってくると同時に突風が押し寄せる。
俺はビアンカの腕を引っ張りそのまま胸に抱き寄せガイコツに背を向ける。
しばらくすると風は収まり辺りを見渡すと既にガイコツは消えていた。
「ビアンカ!大丈夫か?」
「え……えぇ。大丈夫よ」
良かった~!やっぱイベント回避って出来るもんなんだな!
生死が問われるイベントでは無いにしろ、こうして回避できるという事実確認が出来た事は大きい。
「よし、なら行くか」
「そうね……て、ちょっと待って!」
ビアンカが声を荒げる。
「アベルはどこに行ったの?」
………………あれ?