ビアンカと通路の奥へと進んでいくと両開きの扉がそこにはあった。
取っ手を掴みガチャリと扉を開けると、そこは屋上だった。
屋上の中央には墓石が2つ並んであり、それを挟むような形でブロック石で造られた大きな長方形の溜池が2つ存在していた。
「わ!おっきなお墓ね、…て何か書いてある」
「どれどれ…ハハ、これ『ビアンカの墓』って書いてるぞ」
「何ですって!?誰がこんなものを」
キーッ!とビアンカは地団駄を踏み激怒している。
まあ気分のいいもんではないよな。
すると突然、その隣の墓石からかすかではあるが何か物音が聞こえた。
「な、なに!?」
「やっぱりここか。ビアンカ、手伝ってくれ」
俺は「アベルがいるかも」という旨を伝え、ビアンカと一緒に『アベルの墓』と刻まれた墓石を力いっぱい押した。
「フンッ!……重!」
「こん……のッ!!」
ズズズとゆっくり墓石が動く。
墓石の下には空間があるようで覗いてみると――。
「アベル!」
仰向けに寝ているのだろう。アベルの足が見えた。
「ッ!レオン兄ちゃん!!」
「今出してやるからな!もう少し我慢してくれ!」
再度墓石を押し、何とかどかすことに成功した。
いや、これゲームだったらアベル1人で墓石からビアンカ救い出してたけど実際重すぎ!絶対無理だろ!
「レオン兄ちゃん!怖かったよ~!」
アベルは半べそをかきながら俺に抱き着いてきた。
うん。人が1人入れるスペースとはいえこんな光も差さない閉所に閉じ込められるのは俺でも怖い。
「よく頑張ったな。……いってて」
「あれ!?怪我したの?」
「ちょっとドジ踏んでな」
「はぁ…そんなんじゃないでしょ。……あ、そうよ!」
ビアンカが何かを思い出した様子。
「ねえアベル。あなたまだホイミ使える?」
「使えるけど?」
「レオンが怪我したところに使って欲しいんだけど」
すぐさまアベルは俺の脇腹、それに続き左上腕へとホイミを唱える。
ビアンカいわく、回復呪文には表面の傷だけでなく骨や筋繊維など内部をも修復することが出来るそうだ。加えて疲労回復といった副産物もある。
ただし、それを実現するにはホイミ程度では無理とのこと。
ホイミのような初級呪文では精々表面の傷を治す程度だそうだ。
それでも薬草を使うよりかは呪文をかけるほうが断然治りが早い、というのがこの世界の認識らしい。
「どう?」
「うん、さっきよか全然楽だ。サンキュな、アベル」
ステータスを確認する。
――――――――――――――――――――
名前:レオン 性別:男 レベル:13
職業:村人
HP:50/50
MP:80/118
攻撃力:33
守備力:21
呪文:なし
スキル:カウンター
――――――――――――――――――――
(あ、レベル上がってる。うごくせきぞうとの戦闘で上がったのか)
薬草を使用していたことから1回のホイミでHPが最大まで戻った。効果自体もゲームの時と相応のようだ。
それでも数値上では全回復しているのに、実際は骨折しているというのが不思議である。
もしかしたらこの世界でいうHPも認識のズレがあるのかもしれない。
「よし、じゃあ先に進むか」
俺たちは墓を横切り、もう一つの屋内へと通じる扉へと向かった。
*****
扉を抜けると通路のようなところに出た。
そこにはテーブルや椅子、本棚などがあるのだが少し乱雑に散らかっている。
もう少し奥の方を見ると薄っすらと明るく開けた場所があった。
どうやら窓があり、そこから差し込む月明かりが部屋を照らしているようだ。
「……あれ?」
アベルが俺の裾を引っ張る。
「どうした?」
「誰か居るよ」
アベルが窓の方を指差す。よく見ると人影のようなものが見える。
あぁ、王妃様か。
「……もしかして、幽霊とか?」
ビアンカも気づいたようだ。
部屋はいくつか本棚があるのだが、その中央には二つの本棚が隙間もなく並べられていた。俺たち三人はその本棚の陰から王妃様の様子を伺っていたが、少しするとアベルがトテトテと王妃様の方へと歩いて行った。
そのアベルの行動にビアンカは「ちょっと!」と焦っている。
「何してるの?」
アベルが王妃様に問いかける。
すると王妃様はアベルを優しく見つめ、その優しい目を俺とビアンカにも向けた。そしてこちらを見ながら手招きをし始めた。
あれ……こんなシーンあったっけ?
何となく俺とビアンカは王妃様の方へと向かった。
が、王妃様の元にたどり着く前に、王妃様はそっと目を閉じ姿を消した。
その瞬間、先ほどまで俺とビアンカの居た本棚がズズズと音を立て移動し、本棚で隠れていた階段が姿を現した。
もしかして、俺たちが居たから危なくないように誘導してくれたの?
王妃様の優しさパネェ。マジ女神。
「ビックリした~。もしかして、ついて来てって事かしら?」
「きっとそうだよ!行こっ」
アベルが颯爽と駆けだし階段を降りていく。
「ちょっと、アベル!」
ビアンカがアベルの後を追う。
やれやれ、わんぱくなお子様なこった。
もう少し怪我人を労った行動をして欲しいもんだと心の中で呟きながら、俺は歩いて二人の後を追った。
階段を降り通路へ抜けると、左手に大きな扉が見えた。
片方の扉が開きっぱなしな事からアベル達はこの中、つまり王妃様の所へと無事たどり着いたことがわかった。
開いている扉から中を覗くと、丁度目の前にアベルとビアンカがいた。
どうやら部屋を出るところだったらしい。
「さっきの幽霊は?」
「いたよ!でね、お話聞いてきた。なんかね、魔物がここに来てジャアク?な手の者がハライセで……」
「あーいいわよアベル。ソフィア王妃からお願いされたのよ。この城に住み着いている魔物を追い出してほしいってね」
たどたどしいアベルの説明をビアンカが要約してくれた。
そういえば王妃様の名前ってソフィアだったな。
「あーね、了解。んじゃ、いっちょ館内全モンスターの殲滅行ったりますか~」
「何物騒なこと言ってんのよ。多分、親玉みたいなのがいるんじゃない?」
俺の発言に対してビアンカはジト目で的確な反論をする。ありがとうございます。
まあ親分ゴーストがいることは当然のごとく承知している。
「早くやっつけないとね!」
アベルが意気揚々と言う。
「じゃあ行きましょ」
俺たちは王妃様の居る部屋を後にした。
城の中を進む道中、幾度かモンスターの群れに遭遇した。
だがパーティメンバーが3人というのは心強く、難なく倒すことが出来ている。
「ん?」
進行方向の先に扉があるのだが、誰かが居たような気がした。
「ねえ、今の」
「誰かいたね」
二人も気づいたようだ。
少し駆け足で気配のある方へと向かう。
暫く進んでいると城外へと出た。
最初に通った螺旋階段へと繋がる通路が通っており、その通路を見ると――
「おお!私の元までたどり着いた勇気ある者はそなた達が初めてじゃ」
王様のご登場である。