勝利の喜びに満ち溢れる中、バルコニーの方から優しい光が玉座へと差し込む。
バルコニーに向かうと王様と王妃様がいた。
すると急に体がふわふわと宙に浮き、屋上の墓石前までと連れていかれた。
おっふ。浮遊したせいでお股がヒュンヒュンする。
「おお、良くぞやってくれた!心から礼を言うぞ」
「本当にありがとう。あなたたちのおかげで、これからはゆっくり眠れそうです」
こう正面からまじまじとお礼を言われるのは何だか小恥ずかしい。
でも、こういうのも悪くないな。
アベルとビアンカの顔を見ると二人とも満足気だ。
「では行くとしよう」
「はい、あなた……」
王妃様が目の前にしゃがみ込み俺たち人の顔をじっくりと見つめる。
「さようなら。あなたたちのことは忘れません……」
王妃様はそう言って立ち上がると王様と手を繋ぎ、二人は墓石へと歩き出した。
そしてスッと二人の姿は消えていった。
「良かったわね。これからは二人でゆっくりと眠りにつけるはずよ」
「うん!王様たち喜んでたね」
「一仕事終わった、て感じだな」
俺はグーっと背伸びする。
「あれ?何かしら?」
ビアンカが王様たちの墓石の前でしゃがむ。
そして何かを拾い上げた。
おお、それが例のゴールドオーブってやつですか。
月夜に照らされるとまるで発光してるかのような神秘的な輝きを感じる。
「わー!」
「綺麗な宝石ね。きっと王様たちのお礼よ。持って行きましょ!」
ビアンカはゴールドオーブをアベルに渡した。
「んじゃ帰るか」
俺たちはレヌール城を後にした。
*****
――次の日。
「さあ約束よ!その子猫、貰って行ってもいいわよね?」
「おい、どうする?」
「仕方ないか……」
俺たちはベビーパンサーを引取る件で男の子たちの元へとやってきた。
強気なビアンカの態度に対し、男の子たちはしぶしぶといった態度である。
はぁ、動物いじめならぬ魔物いじめも大概にしとけよー。
今はまだ子猫に見えてもいずれ凶暴な魔物へと成長する。
そうなればお前らは真っ先にコイツの餌食になるだろう。
それを引取ろうて言ってるんだ。むしろ俺たちはお前らの命の恩人と言っても過言ではない。
ハハハ、感謝するんだな。
「アンタ、何気持ち悪い顔してんのよ」
勝手な脳内妄想に浸ってるとビアンカから悪口とも取れる指摘が入る。
あれ、顔に出てた?俺そんなにキモかった?ちょっとショック。
てかいつもストレートに俺が傷付く言葉投げるのやめてもらえません?
「ま、約束だしな。お前らも頑張ったからこの猫はあげるよ」
そう男の子は言い、ベビーパンサーを引き渡した。
「エヘヘ!よろしくね」
「これでもういじめられないわね」
ベビーパンサーを助けたことにアベルもビアンカも嬉しそうだ。
「じゃあ行きましょう」
宿に戻りながら、3人でベビーパンサーの名前について話し合った。
「だーかーらー!ゲレゲレ一択に決まってんだろう!」
「チロルの方が可愛いわよ!アンタの壊滅的なネーミングセンスに比べたら断然こっちだわ!」
「アハハ……」
絶賛白熱中。何で!?ゲレゲレってなんかこう惹かれない?ピンと来ない?
異質なものを見つけたら遂飛び込んじゃう感じ分かんないかなー。
ビアンカも強情で一方に引かないし、アベルは俺たちの戦いを若干引き気味に傍観してるし。
「あーもういいわ、埒が明かない。アベル、あなたが決めなさい!」
「え、ボク!?」
ビアンカは一向に進まない名付け討論に痺れを切らし、アベルに命名を任せた。
俺らで争うよりかはいいか。
アベルは「う~ん」と何度も唸りながら悩んでいたが、絞り出すように名前を告げた。
「……ボロンゴ、ていうのはどう?」
「普通だな」
「普通ね」
案外無難なところをついてきたアベルに対し、俺とビアンカはつまらなさそうに口にした。
アベルは「えっ!?ダメ!?」とオロオロとしている。
まあ将来の魔物使いが命名したんだ。文句は言うまい。
ベビーパンサーことボロンゴがパーティへと加わり、俺たちは宿へと戻った。
「それでは世話になった」
「いえいえ、こちらこそパパスさんに面倒をお掛けしました。またいつでもいらしてください」
パパスとダンカンが別れの挨拶を交わす。
そう言えばパパスは風邪を引かなかったみたいだ。そもそもパパスの風邪なんて主人公が町の宿で夜を明かしたときの救済措置みたいなもんだからな。
風邪をひく可能性もあったのかもしれないが、結果的に罹らなかったのだから良かった。パパスが元気なおかげで腕を治してもらえたのだから。
やっぱりパパスのホイミはこの世界でもおかしい程の回復量を持っていた。
あれだ、主人公がダメージを受けるとホイミで完全回復させるやつ。
恐らくパパスのホイミはベホマ相当の効果を持っていると言える。
そのおかげで俺の折れた腕も骨からきっちり修復することが出来、今では腕を振っても全然痛みがない。
パパスがいなかったら骨折患者として暫く生活するところだった。
それだけはマジ勘弁。
「ではアベル、レオン。行くとしよう」
俺たちは町の入り口へと向かいだす。
「アベル!レオン!」
後ろの方からビアンカの声が聞こえ、俺たちの元へと向かってきた。
「暫く会えないかも知れないから、これをあげる」
ビアンカはそう言うと、アベルにリボンを差し出した。
「これ、貰っていいの?」
「ええ!……でも、男の子にリボンはちょっとおかしいか。そうだわ!」
ビアンカはボロンゴの元に行き、首元へとリボンを付けた。
「これで良し!……あ、それと」
俺の目の前にビアンカが来て手を差し出した。
「え、何?」
「ヘアバンド。忘れたとは言わせないわよ」
「げー、マジなの?新しいのにした方がいいんじゃ……」
「いいから、ホラ!」
俺はしぶしぶカバンの中から汚れたヘアバンドをビアンカに渡す。
受け取ったビアンカは満足気にニッコリと笑う。
そしてビアンカは一歩後ろへと下がる。
「アベル!レオン!またいつか一緒に冒険しましょうね!」
「うん!絶対行こう!」
「おう!今度はボロンゴも加えて冒険しようぜ」
俺たち3人はお互いの顔を見合わせ、笑いながら約束した。
昨日は恐いことや、痛いこともあった。
でもワクワクしたり、お互い助け合ったり、人の為になることもした。
そんな楽しい冒険をしたんだ。
(だから、またいつか)
またいつか来るであろう、楽しい冒険を夢見て――。
次章「幼年期・妖精の村編」