黄昏の列車   作:トワイライト・ウルティマ

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夕陽の差し込む車窓より

 高圧送電線用の鉄塔が、その影だけを残して夕暮れに沈む。反対側は夜なのに、反対側は黄昏時。その中心をただひたすらに進む電車から。

 

 一番星を探して、空を仰いでいたことを。楽しい時間はこれで終わり、友達と別れて帰路へつく。そんな刹那の時を覚えているだろうか。夕陽は、人のセンチメンタリズムを、ある種の哀愁と懐かしさを感じる光景であり、時間帯なのであろう。

 

 本来、私はこのような時間に帰るなど、到底不可能な身の上だったのだが。日が延び始めたここ最近は、電車に乗ると胸がすくような夕陽に出会えるのだ。そして、不思議な事にこの時間は手前の建物はより暗く。遠くの建物ははっきりと輪郭を捉える事が出来る。

 

 夕陽が沈み行く地平線や水平線が見えるわけではない。しかし、赤く、しかし黒く照らされた鉄塔には何処か夕陽の様な。あるいは、夏の入道雲に対する感情を覚える。人の情感や涙腺を刺激するのは、何時だって太陽だ。

 

 太陽を求める者があれば、雨を求める者がある。太陽を崇める者がいれば、月を崇める者もいる。没する太陽に感動を覚える者があれば、昇り来る太陽に感動を覚える者がある。

 

 しかしながら、周りの人は携帯を弄るだけだ。電子の海へとその身を浮かべて、溺死か浮上か潜航かを知らずの内に選ばされている。大抵の者は潜航と浮上を繰り返す。しかし、一握りの者はそのまま溺れて全てを犠牲にする。

 

 助かる道は多かれど、それを本人が選択することも、周りの人が気付いて示すのも、全ては手遅れになるのが多い。電子の海などはその場所に立ってみればどこまでも広大で水平線すら見えないが、俯瞰してみれば足元以外の場所は無いのだから。

 

 この感動を、哀愁を、懐かしさを。分かち合える人は無く。またこの光景に気づく者も少ない。電子の海は沼でもあり、マリアナ海溝よりも深いのだ。しかし、その海に対して、一度でも虚実を疑ってしまえば恐怖の大海原である。手掛かりも、道標も何もない場所にただ一人、突き落とされているのだから。

 

 夕陽はそんな電子の海から救ってくれる、一種の特効薬の役割を果たせるかもしれない。この海と現実の世界で、我々はどちらを選ぶかで全てが変わる。私が選んだのは夕陽だったが。

 

 一番星を探した頃より、随分と遠くまで来たものだ。少し時間があるのなら、過去を振り替えるのもまた一興。黄昏時の記憶や懐かしき友の顔が浮かぶやもしれない。だからこそ、少しだけ空を見てほしい。

 

 黄昏の列車から、あなたへ。

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