~ミラーワールド~
「畜生……まさか俺が響を守っていることがばれるだけじゃなくアナザーリュウガになる羽目になるなんてな…」
『グルルルル…』
「キシャアアア…』
龍牙はあの三人の前でアナザーリュウガに変身してしまったことに悪態をついた後、どこからか黒い龍と紫色のコブラが現れた。
「ドラグブラッカー、べノスネーカーか。そう言えば、ドラグレッダーは見つかったのか?」
『グルルルル…』
『キシャアアア…』
「そうか…まだ見つかってないか。他の奴らにも探してもらおう。今日はもう休んでいいぞ」
だがドラグブラッカーはそのまま動かなかった。
「どうした?ドラグブラッカー?」
『グルルルル……』
「え、なんであいつらと協力しないのかって?」
『グルルルル』
「……簡単だ。俺が響を守っていると知られたら、政府の奴らは俺を捕まえようと響を餌にするだろう。響にはそんなことにはなって欲しくないからな。それに、俺はどこにも属さない。俺が命令できるのは響だけだ」
そうして龍牙はドラグブラッカーとの話を終えた後、ホテルのある一室のベットに横になる。
「さてと……あれの続きw!?」
そして龍牙はあの本を落していたことに気が付いた
「ない!!?あの本がない!………まさか、あのとき落としたのか!?クソォ、あれにはあの時の写真が…!!」
龍牙の落としたあの写真と本のこと……それは数時間前にさかのぼる…
~数時間前~
龍牙は現実の世界に行き、本を読んでいた。
それが【アドベントカード集】だった
「まさか…こんな本があったなんてな…」
この本はミラーワールドだけにある本の中の一つである。
そこにはどんなことも調べられる図書館と言ってもいいほどのところにあったのだ。
簡単に言えば【地球の本棚】である。
「こんな本があったのなら、わざわざ調べる必要なんてなかったな…」
実は龍牙はアドベントのカード一枚一枚すべて使ってどんなものなのかを調べていたのだ。
この本を見つけたとき龍牙は『俺の時間が無駄に…』と言っていた。
「本か……響に読ませてやったっきり全く見てなかったな」
その時龍牙は自らの思い出に浸る
『お兄さん!!なんか本読んで!!』
「急にどうした!?」
『実はね、今夏休みでしょ?それで読書感想文がまだ終わってないんだよぉ~!』
「それくらい自分でやれよ…」
『私、本読むの苦手なので!!』
「ドヤ顔すんな…まぁいいか」
『っ!!ありがとうお兄さん!!』
「いやぁ~こんなこともあったな…」
そうして龍牙は懐から一枚の写真を取り出した。
それは自分が後ろ姿で、響が写っている写真だった。
「あのころが…懐かしい。コンファインベントで消したあいつの記憶……『リターンベント』なら復活させられるが…やめた方がいいだろう。復活させても混乱させるだけだ。」
「さて……そろそろブー!!ブー!!!?ノイズが現れたか!?」
「チィ…行くか」
そうして龍牙は写真を本に挟み、その本を懐にしまい、ノイズが現れた場所に向かって行った。
~回想終了~
「まさかあのとき落としていたとはな……仕方ない。『ゼール』!!」
するとたくさんのゼール系モンスターたちが現れた。
「悪いが、『アドベントカード集』を持ってきてくれ。後、一緒に挟まっている写真も頼む」
そうしてゼール系モンスターはバラバラになった。
「さて…俺は…寝る…」
そうして龍牙は眠りに落ちた。
~二課~
あの後響はそのまま二課で待機していた。
そして二課の一室には二人の少女がいた。
【立花響】と【天羽奏】である。
「翼さん……大丈夫かな?」
「翼は大丈夫だよ、きっと……とにかく今は、おっさんが出した答えについてだ」
「【黒龍の騎士】……リュウガさんが私を守っているということですね?」
「ああ、そのリュウガってのはあいつ自身が名乗っていたんだろ?だったらもうリュウガでいいとして、何か心あたりはないのか?」
奏は響に問うが、響は黙ったままだった。そして口を開く。
「分かりません…」
「?どういうことだ?」
「分からないんです。私がリュウガさんと面と向かって会ったのは今年が初めてだし……私自身、どうして私のことを守ってくれているのかがわからないんです」
「おいおい、それはないだろ。リュウガがお前を守っているとしたらそれはお前とリュウガが面識があるってことじゃないのか?」
「……それも……分かりません」
「ッ~~~!!!はぁ……手詰まりだな…」
二人の話が止まると、部屋に弦十朗が入ってきた。
「二人とも、ここにいたか」
「弦十朗さん!!」
「おっさん!!翼の容態は!?」
「安心しろ。跳ね返ってきた攻撃をモロに受けただけだから、一か月もあれば完治するだろう」
「それって結局大けがしているじゃねぇか!!」
「まぁ…それはともかく響くん。君に話がある」
「…なんですか?」
弦十朗は目を鋭くする。
それを見て響と奏はあの話だと理解する。
「【黒龍の騎士】……いや、リュウガが君を守っているという俺の予想…どうやら当たっていたようだ」
「「っ!?」」
「どういうことですか…!?」
「やっぱりあいつはこいつを守っているのか!?」
「ああ、その証拠に、これを見てくれ」
そうして弦十朗は二人に例の写真を見せた。
そう、『幼いころの響と、後ろ向きの男が写っている』写真だ。
それを見て二人は驚愕する。
「おいおいこれって…!!」
「幼いころの…私!?」
「ああ、そしておそらく、この後ろ向きで写っている男がリュウガで間違いないだろう。それで、響くん。君なら知っているんじゃないか?」
「……奏さんとその話をしていましたけど…私、憶えていないんです」
「………そんな回答をすると思っていたよ」
「え?」
そうして弦十朗は一冊の本、【アドベントカード集】を取り出した。
「なんですか…これ?」
「これはリュウガの落し物らしく、これにリュウガの使っているカードがすべて乗っていた。さすがに、天ノ羽斬とガングニールの完全聖遺物を呼び出すカードのことは乗っていなかったがな…」
「まじかよ!!それじゃあリュウガとの戦いに備えられるな!!」
「ああ…だが、俺が今言っているのはそんなことじゃない」
「「??」」
そうして弦十朗はあるページを開いて、それを二人に見せた
「このページを見てくれ」
「何々…『コンファインベント』?」
「これって、翼さんの天ノ逆鱗を消したカードですよね?それがどうしたんですか?」
「この説明を見てくれ。このカードの説明には、『相手が発動したカードの能力を無効化する。』と書いてあるだろ?」
「それがどうしたんだ?」
「だが、翼はカードなんて使っていない。リュウガはこのカードで、翼の攻撃を無効化したと見ていいだろう」
「だから、それがどうしたんだよ?」
「つまり、本来このカードは相手が発動したカードの能力を無効化するものだが、他のものも消せると俺は考えた。それで俺が導き出した答えは……」
「「(ゴクリ…)」」
「…リュウガはこのカードで、響くんの『記憶』を消したんじゃないかと俺は考えている」
「「!!?」」
弦十朗の出した答えに、響と奏は驚愕する。
実際それは当たっているのでリュウガもなにも言えないだろう。
「それってどういうことですか!?」
「それは俺にも分からない。だが、もしかしたらと思ってな。それに響くんが彼のことをまったく覚えていないとしたら、辻褄が合うだろう?」
「「………」」
しばらくの沈黙が流れ、奏が口を開く。
「それじゃあ、こいつを守っているのなら、なんで私達に協力してくれないんだよ!」
「それはおそらく、リュウガが言っていた通りで『自分が人間ではないから』だろう」
「それとこれとなんの関係があるんだよ!!」
「わからないか?人間というものは自分とは違う異物を排除しようとする傾向がある。おそらく彼はそれを理解しているのだろう。それに…いやなんでもない(おそらく彼は自分が響くんを守っていることが知られたら響くんが狙われることを分かっているのだろう)」
「?」
「それじゃあ…どうしたら消えた記憶が戻りますかね?」
「お前…消えた記憶が戻る訳「戻るぞ」え!?」
「この本に、こんなカードが乗っていた」
そうして弦十朗はまた違うページを開いた。
「何々…『リターンベント』?」
「リターンって戻るって意味ですよね…?それがどうしたんですか?」
「この説明を見てくれ」
「どれどれ…『コンファインベントで無効化されたカードを復活させる。』……まじかよ!!」
「つまり、これがあれば響くんの記憶が元に戻るということだ」
「でも……これはリュウガさんが持っているんじゃないですか?」
そう、問題はそこである。響の記憶を戻す手段が見つかっても、それを戻すためのものがリュウガの手にあるのだ。
「確かに、それはすべてリュウガが持っているためそれは不可能。だから、そこらへんは本人次第だな…」
ある程度話が進む中で、音が聞こえた。
―――キイィィィィン キイィィィィン キイィィィィン―――
「「「!!?」」」
「なんなんだ…この音は!?」
「この音って…もしかして!?」
「リュウガか!?」
そしてその部屋のある場所から(姿が映るところ)からギガゼールとゼール系のモンスターたちが所々に現れた。
「な、なんだこいつら!?」
「まさか、例のミラーモンスターか!?」
三人が混乱する中、ゼール系モンスターたちが拡散し、三人をさらに混乱させる。
そして一匹のゼールが弦十朗から本と写真を奪った
「しまった!!」
弦十朗は本と写真を取られたことに焦るがもう遅かった。
ゼール系モンスターたちはもうその場に居なかった。
「司令!!どうしたんですか!?」
そこの慎次がやってきた。
「緒方君か……やられたよ。まさか本と写真を取り返しに来るとはな…」
「まさか、取られたんですか!?」
「ああ…くやしいが、取られちまったよ…。でも、その分あいつにとって大事なものだったってことだよな…」
「リュウガさん……」
二課のものたち四人は、固まったままだった。
「フフフ……まさかこんなことになるなんてね…」
ここはある場所、ここには長い金髪の女性がいた。
「クリスにはあの二人を捕まえるように言ったけど…まさか精神異常者のせいで逃げることになんてね…」
「でも、問題はリュウガ……リュウガは立花響を守っている…だったら立花響を狙えば必ずリュウガは現れる…」
「でも、リュウガとあの精神異常者の使っていたあれ…あれは厄介ね。特にリュウガ、攻撃の反射…厄介すぎるったらありゃしないわね。それにあいつが持っている完全聖遺物…あれも厄介ね。なんとか奪えないかしら?」
「立花響はクリスに任せるとして、リュウガと精神異常者は私の方でなんとかしてみましょうかね…」
そうして金髪の女性は笑っていた。
でもこの女性は気づいていなかった。
自分を見ていた禍々しい亡霊の姿に…
《ゴォォスゥトォォ!!》
『フフフ…必ず、必ず俺のハーレムを作りあげて見せる…!!』