映画 空母いぶき ~空母いぶき建造までの記録~   作:秩父快急

3 / 4
波間群島 初島沖 衝突事件

 ここは 沖縄県宮古島南東170㎞にある波間群島の中心 初島 。周辺では過去に船舶の遭難事故があった影響で国際法に基づき船舶の緊急避難施設と緊急ヘリポート。灯台が設置されている。

 [海上保安庁 初島灯台]

 と、掲げられた建物には常時8名の海上保安庁の隊員達が1週間ごとに交代で勤務している。事件は秋津達が米海軍での演習に参加していた頃に遡る。

 

 7月13日 0630 天候 晴 西風

 

 この日も海保隊員達は初島周辺での海上交通の安全確保や領海侵犯する不審な船舶がないか監視していた。

 ビー!ビー!ビー!

 東の空が明るくなり日の出を迎え、食堂からお米の炊ける香りが管制室にも漂うなかで。衛星回線の電話が鳴った。

 「ーこちら那覇第十一。初島北西90㎞に不審船発見との民間船舶より報告あり。船種は中型船舶。確認を求めます。」

 と、那覇の第十一管区本部から連絡が入った。そして、那覇港から 巡視艇りゅうきゅう と 巡視艇 くだか が現場海域へ急行した。また、近くで警戒任務に当たっていた海上自衛隊の護衛艦 あきづき と 護衛艦あしたか も現場に進路を向けた。

 

 0945 初島 北西 80㎞

 

 先行して向かっていた海上保安庁の巡視艇 りゅうきゅう と巡視艇 くだか は不審船を発見。追跡に入った。けたたましいサイレンと共に日本語 英語 韓国語 中国語 で停船命令を出しながら追跡する。後ろからは海上自衛隊の護衛艦あしたか と 護衛艦あきづき が距離を保ちつつ追跡する。

 

 1030 護衛艦あしたか 艦橋

 

 「艦長、目標は一隻ですが…。中国か東亜の船舶と見て間違いないでしょうか?」

 と、副長が艦長に声をかける。

 「まだ、どこの船か分からんから。様子見だろうけど…。この辺りで海賊行為をしてる東亜の連中かも知れんなぁ…。」

 と、艦長席に座っている男。彼は護衛艦 あしたか 艦長 涌井継治一等海佐だ。護衛艦あしたかは米国の技術に日本での運用力を備えた第二世代のイージス護衛艦だ。対地攻撃能力を持った護衛艦はこの あしたか が初めてである。

 

 1105 遂に海上保安庁の巡視艇 二隻が不審船の強制停船を試み、不審船を左右から挟もうとした。その時であった。

 

 「いかん!不審船から離れろ!!!」

 

 巡視艇くだか の艦長が叫んだ。不審船から火炎瓶が投げられたのだ。 数本の火炎瓶が投げられそのうちの2本が前甲板に当たり黒煙を上げる。その上、不審船が体当たりしてきたのだ。

「ん?…艦長!海保の巡視艇から煙が!!!」

 と、あしたか の見張員が叫んだ。涌井は慌てて双眼鏡で見ると、確かに海保巡視艇一隻から黒煙が上がっているのが見えた。そして、巡視艇りゅうきゅう から不審船の前方へ向けて警告射撃が行われ水柱が上がっていた。

 (これは、我々の出番があるかもしれない…。)

 と、考えた時。事態は更に悪化の一歩を進めた。不審船が向かっている方向。150㎞先に東亜連邦の空母が居ることが、パトロール中の航空自衛隊の哨戒機の連絡により判明したのだ。

 「これは…。良くない状況だな。東亜の空母が近くに来てるとは。海保の巡視艇に無線を繋いでくれ。」

 涌井は指揮を執っている海保の巡視艇 りゅうきゅう に連絡を入れた。

 「あと10分…。」

 東亜連邦の空母が居るということは…。不審船を捕まえれば必ず戦闘機を上げるはず。ここでの戦闘は何としても避けねば。涌井はこう思った。東亜連邦の軍が出て来た場合。我々だけで判断できなくなると。

 海保巡視艇 りゅうきゅうは不審船の左前方へ回り込み不審船の進路を変えるコースに出た。その時だった。

 

 ガァァアアアンンンンン!!!!!

 

 大きな音が東シナ海に響き渡った。直進しようとした不審船が回り込んできた巡視艇りゅうきゅう の右艦首付近に激突したのだ。不審船より大きい巡視艇りゅうきゅう だが艦首先端付近が折れ曲がった。一方の不審船は艦首の一部が吹き飛び、エンジンにダメージを受けたのか速力が下がった。

 「さすが海保だ。ダメージを受けつつも不審船を沈めずに向きを変えた!」

 巡視艇りゅうきゅう の体当たりにより、不審船は進路を南西へ向けた。しかし。

 「艦長! 東亜の空母から何か出ました!!!」

 「なんだと!?」

 護衛艦あしたか に緊張が走る!東亜連邦の空母から何かしらの飛行物体が出たのだ。

 「通信員!巡視艇に連絡を!」

 「ハッ!」

 涌井は海保巡視艇に緊急連絡を入れた。そして、航空自衛隊の哨戒機により接近しているのは東亜連邦の戦闘機だと判明した。

1120 護衛艦あしたか 艦橋

 「CIC艦橋!目標、東亜連邦の戦闘機は当海域到達まであと10分!」

 と、CICから情報が入る。

 「艦長。迎撃準備を!」

 と、副長が話す。だが、涌井は…。

 「副長。そのような事をすれば、直ちに戦争状態になる。それに向かってきてるのは1機のみだ。」

 空自哨戒機及び護衛艦あしたか のレーダーには1つの機影しか映っていなかった。そして、目の前では甲板での消火活動を終えた海保巡視艇 くだか と巡視艇りゅうきゅう がもう一度挟み込みを行おうとしていた。だが。

 ダダダダダダダダ

 不審船からサブマシンガンのものと見られる発砲が確認され完全に検挙しなくてはならない状況になっていた。

 「艦長! まもなく敵機。視認距離に入ります。」

 

 キィイイイイインンンンン

 

 甲高い音を上げ東亜連邦の戦闘機 MG-35が接近してきた。涌井は直ちに海保巡視艇に対し、不審船から離れるように指示した。

 キィイイイイインンンンン

 護衛艦あきづきのすぐ真横を低空で通過した東亜連邦のMG-35。海保巡視艇の上空を、まるで巡視艇を追い払うかのように旋回する。海保の巡視艇二隻は最大出力で不審船から離れた。そして…。

 「艦長!敵機がこっちに向かってきます!!!!!」

 MG-35は 護衛艦あしたか に向けて飛んできた。ここで撃ったら戦争になる。誰も撃つはずは無いだろう。涌井をはじめとする 護衛艦あしたか の乗組員はそう思っていた。だが、現実は違った。

「敵機ミサイル発射!本艦到達まで15秒!!!!!」

 

 (撃ちやがった!!!!!)

 

 「レーダー照射は!?」

 「ありません!!!」

 

 「こいつは当たらん!!!威嚇だ!!!!!」

 涌井が叫んだ直後。護衛艦あしたか の前方にミサイルは着弾。爆発した。大量の水しぶきを浴びる護衛艦あしたか。

 艦内は一瞬死を覚悟したかのように静寂に包まれた。

 

 「…次はないぞ。か…。」

 

 東亜連邦のMG-35は海保巡視艇二隻に対しては前方に機関砲による警告射撃を実施。

「くそっ!ここはお前らの海じゃねぇ!!!日本の海だ!」

 巡視艇りゅうきゅう の艦長は叫んだ!!!!!

 

 1145 内閣府危機管理センター 官邸連絡室

「護衛艦と海保の巡視艇が威嚇射撃を受けた!?」

「総理!ここは出るべきです!自衛隊の出動を!…総理!」

 「いや、海保と海自には撤退を指示します。」

 危機管理センターの一回り大きな椅子に座る男性が声を出した。内閣総理大臣 長峰 行夫 だ。

「しかし総理!それでは我々が威嚇だけで引いたと世界の恥さらしに!」

 内閣の国会議員が声を荒あげる。

「今このタイミングで戦争になったら…。日本は取り返しの付かない被害を受けるだろう。」

「…!!!」

 

 1230 日本政府は海自と海保に対して撤退を指示。巡視艇りゅうきゅう は救命イカダに緊急用の食料と水を搭載して投下。海上自衛隊の保護の下で当海域を離脱した。

 その日の夕方。日本政府は緊急の記者会見を実施。国籍不明の不審船追跡事案及び東亜連邦航空機からの威嚇射撃に対して発表。その日の夜の東京は普段通りの輝きを見せながらも…。スーパーやコンビニからは備蓄食品が無くなるという。異例の事態が発生した。まるで何かに怯えるかのように…。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。