堕ちた先は人形道   作:杭打折

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これからゴジラ見てきます(唐突な自語り


2話.だーかーざんぶらっく

 唐突だが、ブラック企業というものを諸君らはご存知だろうか。

 21世紀頃に広く極東で広まったというこの単語。要するに労働者を食い物にする闇の深い企業を指す言葉なのである。

 そんな悪徳な企業は是正されて然るべきなのだが、悲しいことに、第三次大戦を経たこの世界においても、数多くのブラック企業はしぶとく生き残っている。

 生前に関わりを持った知人の中にも、そこに勤めている人間がいたが、

 曰く、新人研修でいきなり業務をやらされる

 曰く、業務内容に対して薄給である

 曰く、先輩が居ない

 曰く、休みが取れない

 曰く、人員は常に足りてない

 曰く、入社してすぐよくわからない部署の役職を与えられ、辞められない

 などの特徴があるのだとか。特徴を挙げればキリがないのでこれくらいにしておこう。

 

 因みに当時の"俺"は無職である。知人の怨嗟のこもった視線と言葉を肴にアルコールを流し込んで笑っていた。

 

 さて、なぜこんな話をいきなりしたのかだが、その理由を語るための前置きとして、少し前の様子をご覧いただきたい。

 

 私が起動した直後、すぐ様検査がおこなわれた。慌ただしく動く技術者達の手により隅から隅までチェックを行われた。結果は全て基準値をクリア(実戦投入可能)というものだった。

 

「今後、私は何をすれば良いのでありましょうか?」

 

 完全、完璧であると豪語し息巻く主任研究員の姿に一抹の不安を覚える。私は、その不安や疑念を悟らせぬよう努めながら聞いた。

 主任は上機嫌に答えてくれた。

 

「まずはおめでとう、AK-15。私が担当した以上当然ではあるのだが、君は極めて良好な数値を示す優良個体であることが判明した。よって、これより性能評価の為、実地試験を行ってもらう」

 

 上機嫌な主任殿の朗々とした声音をうんざりとした気分で右から左へ流していたが、ある単語が引っ掛かった。

 なんとこの男、実地試験を執り行うのだという。随分と性急な話ではないだろうか。

 試験場などでの試験を行いある程度データが出揃ったところて、さあ実地試験だというのが普通だと思うのだが。

 色々と文句のつけたい試験工程ではあるのだが、人形である私に拒否権はなく、拒否できない以上、ある程度の結果を示さなければならない。

 ならばと覚悟を決め、ならば開始の日取りも知っておかなければならない。

 

 実地試験はいつから行われるのでしょうか?

 

 私が問うと、主任殿は何を言っているのかとでも言いたげな、意表をつかれたような表情を浮かべていた。

 はて。そんな変な質問だったとは思わないのだが。何かまずいことだったか?

 

「AK-15、私は先程なんと言ったかね?」

 

 問いかけてくる主任殿。まるで出来の悪い生徒に対して、これから懇切丁寧に教えてやるのだと言わんばかりの態度だ。

 癪だが、我慢する。いつ自滅スイッチを押されるのか、誰がそのスイッチを握っているかわからないのだ。

 私が死ぬのは御免だ。しかし、私が殺すのは大歓迎である。

 

「実地試験を行うと、仰られました」

「その通り。では、その際の私の発言、一言一句、違わずに、復唱してみたまえ」

 

 なんて面倒なことを要求してくるのか。

 ログを参照し、該当箇所を抽出。出力方法を音声出力に設定して……

 

――まずはおめでとう、AK-15。私が担当した以上当然ではあるのだが、君は極めて良好な数値を示す優良個体であることが判明した。よって、これより性能評価の為―――これより?

 

「その通り!喜びたまえAK-15。君は製造段階から既に軍の備品ではあったが、配備先は未定であった。しかし、たった今、君の配備先は決定された。新設される第31独立遊撃機械化実験小隊、その栄光の初代隊長として、任命されたのである。さあ出撃準備をしたまえ、戦場と変異生命体達が君を待っている!」

 

 さて、最初の話に戻るとしよう。

 我が尊敬すべし先達の語ったブラック企業の特徴達。

 

 曰く、新人研修でいきなり業務をやらされる

――私の調整であれば君は自分以上に身体を動かせる筈だ

 

 曰く、業務内容に対して薄給である

――君は自分の車に給金を払うのかね?

 

 曰く、先輩がいない

――君が第一号である。後輩は君の成果次第だが、間違いなく予算は降りると確信している。

 

 曰く、休みが取れない

――その為の自己修復機能である。補給の合間に調整も終わる筈だ。

 

 曰く、人員は常に足りてない

――新設部隊だ。補充人員はいずれ、送られる筈だ。

 

 曰く、入社してすぐよくわからない部署の役職を与えられ、辞められない

――何かな?不満だとでも言うのかね?

 

 いえいえ、とんでもない。

 

 ただ、偶然かと思うのですが、実に不思議なことに、私の職場環境がある特徴と完全に一致するのです。それは世の中ではブラック企業と呼ばれるものでして、この点、いかがお考えでしょうか?

 え? 私は好きな時に好きなだけ研究開発を行える現在の環境にはある程度満足をしている?

 そうですか。そうでしょうよ。主任殿は好きなことと職務内容が合致してるんだろうさ。

 しかし、我が麗しの主任殿は知らぬこと故、仕方ないと思うのだが、このAK-15の中身は、生前において自由気ままな風来坊(住所不定無職の男)のメンタルである。

 あなた方のように、理性と良心を職務に捧げた生涯とは縁遠いのです。その点をご配慮頂ければと思うのですが。

 

「さあ準備をしたまえAK-15。ヘリの用意は済ませてある、出発は五分後だ」

「了解しました、では五分後に」

 

 駄目みたいですね。

 五分後、一機のヘリが施設から飛び立った。




君らに朗報だ。
いい事を教えてやる。
一ヶ月かけて貯めたストックはこれで尽きた。
なので次回はもう一つのHK417のあとになる。

あとら前回までのは自己紹介とかみたいなものだから、今回から実質本編です。

感想とか高評価は私の大好物です(露骨な催促
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