“オペレーション・フューリー”から数日…“ミネルバ”はモルゲンレーテから改修を受けていたが、それは“ミネルバ”だけではなかった。
『はぁぁぁ!!』
シュミレーターからルナマリアの叫びが響く。シュミレーションに映る“インパルス”は従来と違うものだった。それは“デスティニーインパルス
シンが使っていた「デスティニーシルエット」にモルゲンレーテが改良を加えたのだ。独自のコンセプトを盛り込んでシルエットフライヤーの自律飛行機能を統合した「デスティニーRシルエット」として再設計され様々な変更が加えられている。
まず、高すぎる機動力の為、使いこなせる者がザフトではシンしかいない「ヴォワチュール・リュミエール」…そして、合体構造で「デスティニーシルエット」を使用すれば大きな負担をもたらすと“フリーダム”との戦闘で判明した。その為、インパルス本体はほぼノーマルのままだが、コアスプレンダーを初めとした分離・合体機構が省略された他シルエットからも「ヴォワチュール・リュミエール」が取り外された。
シュミレーションが終わりルナマリアが出てくる。
「ふぅ…」
「Rの調子はどうだ?」
そんなルナマリアにレイが声をかける。機嫌良くルナマリアは答える。
「最高よ!正直、合体や「ヴォワチュール・リュミエール」なんてシン以外使いこなせないわよ……“レジェンド”の方はどう?」
「良好だ。改良された「ドラグーン」にもなれた…やはりオーブの技術は一つ上をいっている」
「そうね、これなら…」
「あぁ、再び奴等が来ても遅れは取るまい」
ザフトは出ていったオーブ軍が“アークエンジェル”と共に攻めに来ると予測している。既に民間人の避難は完了しており残っているのはモルゲンレーテの者達だけだ。
その時、“ミネルバ”全体に放送が入る。
《コンディションイエロー発令、コンディションイエロー発令!“ミネルバ”全クルーはMSデッキに集合してください》
その放送後、慌ただしく全クルーがMSデッキに集合した。集合した全クルーの前には艦長タリアと副長のアーサーが立っている。深刻そうにタリアは口を開いた。
「貴方達の活躍によりジブリールは無事に捕獲できたわ……しかし、地球軍、月面ダイダロス基地に居る義勇軍のスパイから報告があったの…」
「月面ダイダロス基地には巨大ビーム砲あり…月の周辺に配置された複数の廃棄コロニーに超大型の「ゲシュマイディッヒパンツァー」を搭載してビームを数回に屈曲させる事ができる…これにより何処のプラントにも地球圏の何処でも焼き払う事ができる軌道間全方位戦略砲“レクイエム”が存在しており…その威力はあの“ジェネシス”にも匹敵するそうよ…」
その言葉にクルーに動揺が走る。レイですら厳しい表情で質問する。
「しかし、それは簡単に使用できる物ではない筈です」
「レイの言う通り、発射トリガーを使用できるのは超重要人物のみよ…ロゴスメンバーやジブリールを捕えた今、地球軍に使用する事はできないわ……今はね」
「と、言うと?」
「地球軍はそのシステムを解除をしようとしているわ…そして、プラントを討つ積りよ……発射までの予測時間は36時間後…」
36時間…一日半にはプラントが討たれる…誰もが絶望の表情をする。地球に居る“ミネルバ”ではどんなに急いでも月の裏側のダイダロス基地に着くには3日かかる。ザフト月艦隊ですら一日半かかる。そんな中で地球軍の護衛を突破して破壊なんて不可能。
廃棄コロニーの破壊を目的にしてもできて一つ二つ、無事な物を使われて…間にあわない…そんな中、タリアが語った。
「ですが、方法があります……モルゲンレーテの改修により“ミネルバ”には「ヴォワチュール・リュミエール」が搭載されています。これにより、自力での大気圏突破も可能であり一日でダイダロス基地に向かう事ができます」
「ヴォワチュール・リュミエール」…“デスティニー”にも搭載されているそれは本来、惑星間航行用の推進器なのだ。これなら間に合う事ができるが…
「しかし、それは……我々だけでダイダロス基地を攻略すると言う事よ…」
たったの一艦で月基地を攻略……普通に考えて不可能だろう……普通なら。
「行きましょう、艦長…月基地に…」
シンが前に出る。皆がシンに注目する。
「シン…」
「プラントが討たれる…そんな運命を止められるのが俺達だけなら……抗いましょう。“インパルス”、“レジェンド”…そして“デスティニー”…俺達にはそれができる力がある」
“デスティニー”を見上げシンは笑って答える。
「それに、俺達…普通なら沈むのが当たり前の戦いしかしてないでしょ」
クルー全体が一瞬、呆気に取られたが次第に笑い出す。
「ふっ、そうだな…寧ろ楽な戦いがあった記憶がない」
「“フリーダム”が乱入してきた時なんて死ぬかと思ったし…」
パイロットのレイとルナマリアが笑いながら答え…次々と声が上がる。
「やってやりましょうよ!艦長!!」
「俺達は“ミネルバ”隊ですよ!!」
やがてタリアは少し笑うと……艦長として決断する。
「そうね……“ミネルバ”艦長、タリア・グラディスのフェイス権限を持って、月面ダイダロス基地にある“レクイエム”の破壊を最優先と判断し、本艦はこれより宇宙に上がります…この“ミネルバ”クルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する!」
タリアのザフトの敬礼に答えてシン達も敬礼する。彼等の目には既に覚悟があった。
それから二時間後、“ミネルバ”の「ヴォワチュール・リュミエール」の調整が終わり…クルーの準備も完了している。ブリッジでタリアはモニターに映るエリカと連絡をとっていた。
『この「ヴォワチュール・リュミエール」を搭載した“ミネルバ”ならば自力で大気圏突破も可能ですし、機動力も“エターナル”を超えています』
「ご協力…ありがとうございます。シモンズ主任。既にザフトの迎えの船が準備されています主任達も避難を」
『えぇ、貴方達にハウメアの守りがあらん事を』
エリカとの通信がきれた時、メイリンが声をあげた。
「艦長、オノゴロ島に接近する機影あり!“フリーダム”と“ムラサメ”数機です!!」
「!、やはり来たか…アビー、シンとレイに連絡を!」
「はい!シン、聞こえる?」
既にシン達はMSに待機していた。
『あぁ、俺達が時間を稼ぐ…レイ!』
『Rはまだ、調整が終わっていない…ルナマリアは待機していてくれ』
『わかったわ………』
“デスティニー”と“レジェンド”が出撃する。確かにオノゴロ島に向かってくる“ストライクフリーダム”と数機の“ムラサメ”がいた。
『くるぞ!』
『発進を急いでくれ!!』
「“ミネルバ”、発進!!」
タリアの言葉と共に“ミネルバ”が起動し羽ばたいた。それを確認したシンはこちらに向かってくる“ムラサメ”に意識を向ける。
『“デスティニー”!カガリ様を殺した堕天使が!!』
『裁きを受けろ!!』
カガリを殺したシンはアスハ信者にとっては罪人扱いの様だ……“レジェンド”を無視して“デスティニー”に一斉攻撃する。
『様呼びか……じゃあ何か?アスハは神で国民はアイツの供物だと言うのか!!』
“デスティニー”は「ロンゴミニアド」で無力化し“ムラサメ”部隊に突っ込み次々と落としていく。そして、“ミネルバ”を準備を始める。
「【ヴォワチュール・リュミエール】起動!これより大気圏を突破する!」
ブリッジにタリアの指示が響く。そのシークエンスに、ブリッジクルー一同は身体を強張らせながら準備する。
“ミネルバ”の大型ウイング部分から“デスティニー”と同じ真紅の光の翼が現れる。
『アレは「ヴォワチュール・リュミエール」?どうしてそんなに力を求めるんだ!!』
それに気づいたキラが“ミネルバ”のブースターを狙おうとするが…
『やらせるか!』
それをレイが防ぐ。シンとレイにアビーから通信が入る。
「シン、レイ!間もなく最大加速に入るわ!急いで掴まって!!」
『わかった!レイ!』
『あぁ!!』
“デスティニー”と“レジェンド”はライフルで牽制しながら“ミネルバ”に向かう。“ストライクフリーダム”も“ムラサメ”も撃ち落とそうとビームを放つ。やがて“デスティニー”と“レジェンド”は背を向け最大加速で“ミネルバ”に向かう。
『『くうううっ!!』』
ニ機はなんとか“ミネルバ”をとらえた。先を飛んでいた“デスティニー”が“ミネルバ”の後方部にあるMSカタパルトに掴まる。そして“レジェンド”に手を伸ばす。
『落ちろぉぉおっ!!』
MA形態になった“ムラサメ”が次々とビームを放つ、“デスティニー”と“レジェンド”の伸ばした手はどんどん近づく。ビームが“レジェンド”に掠り。シンとレイの顔にも焦りが出てくる。
『『あああああっ!!』』
そして遂に“デスティニー”の手が“レジェンド”を手を掴み“ミネルバ”に引き寄せた。まるで前大戦の“フリーダム”と“ジャスティス”の様に。
“ミネルバ”を落とそうと後を追う“ストライクフリーダム”と“ムラサメ”部隊、シンとレイはお互いに合図を送ると…“デスティニー”は大型ビームランチャーを構え、“レジェンド”は「突撃ビーム機動砲 」を向ける。
『!?』
それを見たキラは顔を強張らせ“ストライクフリーダム”は回避行動をとる。一斉に放たれた光が“ムラサメ”部隊を撃ち抜いた。“ストライクフリーダム”はその爆発で吹き飛ばされた……“ミネルバ”はどんどん高度を上げていく。それをザフトの脱出艇で見ていたエリカは満足そうに笑った。
「アスカさん、シン君はあんなに立派になりましたよ。彼等ならきっと全てを救ってくれる筈です。どうか、見守ってあげてください」
そしてシンは、“デスティニー”のカメラを動かしある場所を見ていた。それは……かつての自分達の家があった場所、思い出が蘇る……妹と二人で遊んだ花畑、家族で釣りにも行ったしキャンプにも行った。
『父さん、母さん、マユ……“僕”は行くよ。これ以上、“僕”の様な人をださない為に……だから、行ってきます…!』
運命の英雄を乗せた戦女神は光の翼を広げ星の海へと羽ばたいた。
END
次回予告
多くの命に迫る終わりの一撃……彼等の命が終わるのは必然か運命が……断じて否!
命の花を守る為、運命の英雄が不滅の剣を握る。
次回・機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【真紅の奇跡】
終わりの運命などーー吹き飛ばせ、デスティニー!!