始まったメサイア攻防戦……数では圧倒的に有利だが、“ストライクフリーダム”と“インフィニットジャスティス”によって防衛隊は既に大きな被害を被っていた。
そのニ機をシンとレイは追っていた。そして、“デスティニー”に“レジェンド”から通信が入る。だがシンは、その用件が何なのか察していた。
『シン、頼みがある。俺に“フリーダム”をやらせてくれないか』
『やっぱそのことか…条件がある』
『……聞こうか』
『絶対に死ぬなよ…』
シンにはレイに対して恩がある。ステラの事や“フリーダム”を倒す手助けをしてくれた…そのおかげで“エンジェルダウン”作戦で、“フリーダム”を倒す事はできたが肝心の中身、キラ・ヤマトを倒すことは出来なかったのである。
レイにもキラ・ヤマトに因縁がある事をしるシンは、今までの借りを返すときが来たのだと、思っていた。
『フッ、当然だ』
一言だけ答えて“レジェンド”は“ストライクフリーダム”の方へと向かって行った。シンは、それを見送って、自分も“インフィニットジャスティス”が向かった方向へと“デスティニー”を向かわせた。
“ミーティア”を装着した“インフィニットジャスティス”でメサイア防衛部隊と交戦していたアスランは、“デスティニー”が接近している事を確認していた。
(…来たか!)
“インフィニットジャスティス”は“アークエンジェル”の付近で“ミーティア”を切り離すと、接近してくる“デスティニー”へと向かっていった。
アスランには、デュランダルに騙されていると同時に、シンがただ憎しみにその身を駆り立てられているのだと思っていた。彼にしてみれば、キラがシンの家族を殺したなということは何かの間違いかもしれないと思えてならないし、仮にキラに何らかの原因があったとしても、それはわざとやったわけではなく、それもまた「仕方ない」のだと考えていたのである。
“インフィニットジャスティス”は自分に向けて発射されたビームをシールドで受け止めると、アスランは、その方向から迫ってくる“デスティニー”を見定めていた。
『アスラン、あんたよくも終わった戦争を起こしやがったな!』
『シン!もうやめろ!議長はやがて世界を滅ぼす!お前は議長やレイに騙されてるんだ!』
『俺の言葉は無視か!それにあんたがレイの何を知ってるんだ、この裏切り者がぁ!』
“デスティニー”は「アロンダイト」を構える。背部の翼から輝く光が発せられ、そのまま“インフィニットジャスティス“に向けて振り下ろす。
しかし、“インフィニットジャスティス”は連結サーベルを構えて真っ向から向かっていき、「アロンダイト」を、上半身を反らすことで回避し、サーベルで斬りつけ斬り返した「アロンダイト」と鍔迫り合いになる。そこを“デスティニー”は力任せに「アロンダイト」を振り切り、“インフィニットジャスティス”を吹き飛ばす。
そして、ライフルを放つ。“インフィニットジャスティス”もライフルを取り、交差しながらライフルを放つが両者ともに命中はしない。
『くそ!やっぱり強い!」
『もうやめろ、過去に囚われたまま戦うなんてもうやめるんだ!』
アスランには、シンが憎しみと過去に囚われているのだと見えている。だが、その憎しみの原因が何なのかを考えてはいない。知らないわけではないのだが、意識の全く外にあるのである。そうでなければ、シンの過去と憎しみのほとんどの原因がキラ・ヤマトである以上、このような言葉を発することはできなかったであろう。
『そんなことをしても何も戻りはしない!なのに未来まで殺す気かお前は!お前が欲しかったのは本当にそんな力か!』
シンの中に最愛の妹マユと守ると約束した相手であるステラの姿が浮かんでくると同時に、彼女らをシンから永久に奪い去ったフリーダムの姿も浮かんできた。
『……………………ふざけるなよ…!俺が戻りたいと思った場所や一緒にいたかった人を奪ったのが誰だと思ってやがる!未来だと?俺が作っていきたいって思った未来を殺したのが一体誰だと思っている!?』
シンが戻るものなら取り戻したいものは、家族、家族と暮らしていた平和な時、そしてステラであり、欲しかった未来は彼女らと築いていくはずであったもので、彼女らを殺したのは紛れもない、キラ・ヤマトだ。
そしてシンは、自由の名の下にその強大な力を振りかざして好き勝手に暴れ回り、罪のない人達をも傷付けていくキラ・ヤマトこそが、人々の未来を殺すものだと思っている。
『それに!失った過去を護るのは間違いで、今ある現実だけを守るのが正義なのか!!それを決めていいのはアンタじゃない!俺自身だ!!』
“デスティニー”は「アロンダイト」をしまい肩にある「フラッシュエッジ2ビームブーメラン」を取り出しサーベルモードに切り替える。“インフィニットジャスティス”と戦うなら大振りな対艦刀よりサーベルの方が効果的だ。
『結局アンタ等は自分の正義を押し付けているだけだ!俺が欲しかった力はアンタやキラ・ヤマト…ロゴス、ラクス・クラインみたいに自分の都合を押し付ける奴等から、守られるべき人達を守る力、この“デスティニー”だ!!』
シンが力を欲した理由、それは家族を奪ったフリーダムのパイロット、キラ・ヤマトへの復讐だけではない。キラ・ヤマトやオーブのように、自分のやり方・力・都合を、それとは関係のない自分の家族のように、罪のない、本来であれば守られるべきである人達に押し付ける奴等から守りたかった、守れなかったことを後悔したくなかったからだ。
『だから俺は戦う!キラ・ヤマトやあんた達からみんなの未来を守るために!』
シンの思いに答える様に“デスティニー”のツインアイが輝き“インフィニットジャスティス”に斬り掛かる。
『シン、お前!』
アスランはきっと自分の言葉でシンが動揺し、考え直すはずだと思っていたのである。だが、彼の言葉は完全に逆効果になっていた。
“デスティニー”が振り下ろすサーベルを慌てて受け止める、純粋な出力やパワーは“デスティニー”が上だ、このまま押し切ろうとしたが……
『この馬鹿野郎!!』
アスランもシン同様、【SEED】の力を発動させた。自分の言葉を全く聞き入れず、カガリを殺し、さらに自分にとっての親友キラ・ヤマトを罵ったシンをこのままにしておけないのだと思ったからである。
“インフィニットジャスティス”はファトゥムのビーム砲を放つ。慌てて後退する“デスティニー”…ギリキリ避ける事ができたがビームブーメランが破壊され隙が生じてしまった。
それを逃すアスランではない。“インフィニットジャスティス”は両足に備わっているビームブレードで切り裂こうと右足を振るう。
このままでは殺られる!…そう感じたシンは背部左ウエポンラックを展開し盾にする。“インフィニットジャスティス”の右足はウエポンラックに装備された大型ビームランチャーを切り裂きそれによって起こった爆発に両機吹き飛ばさた。
『シン!!』
“インフィニットジャスティス”は背部に接続した「ファトゥム01」を射出する。「ファトゥム01」は機首の対装甲ナイフやビーム刃を展開して“デスティニー”に突撃する。
『アスラン!!』
“デスティニー”も「ロンゴミニアド」を起動し真紅の光を纏い「ファトゥム01」とぶつかり合う。そして、「ファトゥム01」を打ち破った。
『馬鹿野郎は……アンタだろうがぁぁあっ!!』
「ロンゴミニアド」を発動したまま、“デスティニー”は“インフィニットジャスティス”に迫り右拳を振るう。“インフィニットジャスティス”もサーベルを振るうが“デスティニー”の拳はサーベルを討ち破り、コクピットに迫る。
『カ、ガリ…』
“デスティニー”の拳はアスランを焼き尽くしコクピットを貫いた。
近くで“アークエンジェル”と戦闘している“ミネルバ”からメイリンはその事を確認した。初恋の相手が死んだ事に胸が少し痛くなり涙が溢れる。
「さようなら……アスランさん」
貫かれた“インフィニットジャスティス”が爆発する。“デスティニー”を安全な位置に移動させそれを見ていたシンはザフトの敬礼をする。
『あばよ…アスラン“隊長”。あの世でハイネに殴られていてください……』
シンの頬を熱い何が流ていた。
END
次回予告
キラ・ヤマトと激戦を繰り広げるレイだがキラ・ヤマトには及ばず敗北してしまう。そこにアスランを倒したシンが現れる。レイのバトンを受け取ったシンにキラ・ヤマトは言う。【いくら吹き飛ばされても僕等はまた、花を植えるよ】と……それが運命の逆鱗に触れるとも知らずに……
次回・機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【運命の逆鱗】
怒りを糧にーー燃え上がれ、デスティニー!!