運命の英雄   作:DestinyImpulse

25 / 27
セリフの設定

・「」……機体に乗って居ない人物

・『』…機体に乗って居る、通信をしている人物


二話・英雄と救世主

 

 ドラゴン達を一掃したシンはアマリの案内の元、ワタルと共にモンジャ村に来ていた。

 

「それじゃあシンさんはあのロボット……fateと一緒にこのアル・ワースに飛ばされたんだ」

 

「ああ、また戦闘になってもコイツで呼べばすぐに来てくれるから安心しろ」

 

 ワタルの質問に答えながらシンは左腕の【fateブレス】に手を添える。ブレスとfateは繋がっており。ブレスを操作すれば離れていようとfateが自動操縦で駆けつけてくれる。

 

「それでアマリ、ここがモンジャ村って所なのか?」

 

「はい、此処が目的地のモンジャ村です。私はこの村の人からワタル君を保護して此処に送り届けるように頼まれたんですよ」

 

「アマリさんって困ってる人を助ける正義の魔法使いなんだね!」

 

「そんな立派なものじゃありませんよ」

 

 

 ワタルの言葉を否定しつつも頬を赤らめておりまんざらでもなさそうだ。

 

「それにしても……此処、田舎の村って感じだね」

 

「確かに……」

 

 鮮やかな森やブリキントンの様なロボット、先程のドラゴンと比較すると普通の田舎村だ。

 

「この辺りはあまり機械に頼らない文明なんです。のどかな雰囲気なのはそのためだと思います」

 

「アル・ワースにも色々な所があるという事か……他の所は違うのか?」

 

「アル・ワースは各地で文明や文化が大きく異なるんですよ」

 

 ホープスの言葉に成る程と、シンは先程の魔神とアマリのゼルガードを思い浮かべる。アレ等は根本的に違う機体だ。あの様な違いがあるのだろう。

 

「どうでもいいけど、僕…お腹がすいちゃったよ」

 

「子供ですね………未知の環境よりも欲求の方が勝るとは…」

 

「当たり前じゃん!お腹が減ったら、何もできないもの!」

 

 ホープスのイヤミっぽい言葉もワタルの純粋な心には届かないようだ。

 

「そうだな……空腹は子供にとって死活問題だ。ちょっと待ってろ………確か、この辺に……あった!」

 

 その様子を笑いながらシンが取り出したのは…クッキーの入った袋だった。

 

「ほらよ、ワタル」

 

「わー!クッキーだ!シンさんが作ったの!?」

 

「まぁな、元の世界じゃ旅をしててな。旅先で、よく子供達に料理を作ってたんだ」

 

 そう言ってクッキーをワタルとアマリに配る。ワタルは美味しそうに食べているがアマリは何処が複雑そうだ。

 

「…………………もしかして、シンさん……私より女子力高い?」

 

 

 形も綺麗だし、美味しいし………そうしてクッキーを食べながら進む。

 

「そういえば!あっちの木になってる果物って食べられるの?」

 

「駄目だワタル。訳のわからない物を食べるな、毒があるかもしれないんだ」

 

「そうですよ。毒はないと思いますがほとんど味がしないですから」

 

「そうなんだ。さっきの森にも、沢山なっていたけど、それじゃ意味ないね………それにしてもアマリさんとホープスは物知りだね。やっぱり、魔法使いだから?」

 

「は、はい…それなりに色々な事を学びましたから」

 

 

 話しているとモンジャ村の広場に着き、龍の顔がついた杖をついた老婆が此方に近付いてくる。

 

「流石は魔従教団の術士サマじゃな。見事、依頼を果たすとは」

 

「あの、失礼ですが貴方は?」

 

「ワシはオババ…こっちの爺さんはオジジじゃ」

 

「よろしくのう」

 

「これはご丁寧に……自分達はーー」

 

 旅では老人と接する事も多かったので、オババとオジジが挨拶に対し自然にシン達も自己紹介をした。

 

「しかし言い伝えでは、このモンジャ村の龍神池に救世主は降りてくるはずじゃったが、少しズレとったようじゃの」

 

「私が"異界の門"が開いた事を感知できたのは幸運でしたね」

 

("異界の門"?……ドラゴンが現れた裂け目の事か?)

 

「その通り!これも魔法オウム殿のおかげじゃ!」

 

「お褒めをいただき、光栄ですが、私にはホープスという名前がございます」

 

「あの~」

 

 

「「「オオオオオーー!!?」」」

 

 ワタルが声を発すると村の住人達が一斉に騒ぎだす。突然の事にシン達は呆気にとられる。

 

「いきなり何だ……」

 

「そんなに驚かなくても…」

 

 呆れるシンとワタル。そしてオババがワタルに問いかける。

 

「お前の名は?」

 

「戦部ワタル……」

 

「龍を見たか?」

 

「う、うん………龍神池で龍を見て、それで僕…このアル・ワースって所に来たみたいなんだ」

 

「おおおおっ!」

 

 再び声を上げるオババにビックリしているワタル。一方で、いちいち声を上げるなと内心呆れるシンと苦笑いを浮かべるアマリは様子を伺っていた。

 

「オババ。やはり、その子が伝説に予言されたワタルじゃというのかの?」

 

(伝説に予言された?ワタルが?)

 

「いかにも!言い伝えには創界山が危機に陥った時、これを救う者が降りてくる………その名をワタルと言い、龍の神と共に悪を倒す!その救世主が、今此処に現れたのじゃ!」

 

 オババの言葉に大盛り上がりの住人達……完全に置いてきぼりワタルが質問する。

 

 

「……所で救世主って、よくわからないんだけど…」

 

「この世を救う人間の事です」

 

「この世って………このアル・ワースって世界の事だよね」

 

「そうですね……アル・ワースを救う者。"英雄"……もしくは"ヒーロー"と言った方がいいですかね」

 

「……………」

 

 ワタルに説明するホープス………その様子をシンは複雑そうに見ていた。その後、ワタルがモンジャ村に代々伝わる戦士の装束を身に纏うと、オババに言われるままにシン達は後ろを振り返ると山が見える。

 

 しかし、タダの山ではない。何かに切り裂かれた様に横に分断され、七つに分かれており宙に浮いている。更に灰色の気味の悪い虹が架かっている。

 

「あの山を見ろって事?」

 

「そうじゃ。あの山こそが、創界山じゃ」

 

「創界山……」

 

「創界山にかかる虹が灰色になった事こそ、この世界の乱れの証………虹の色を取り戻さない限り、アル・ワースに待つのは破滅じゃ!誰も、その正体を見た事のないドアクダーなる悪の帝王が平和そのものだった創界山を支配し、七色の虹を灰色に変えてしまったのじゃ!!」

 

「ドアクダー……ドラゴンに続いて今度は魔王か」

 

 話を聞くにつれシンの苛立ちは強くなる。つまり、全く関係ない、まだ小学生のワタルに魔王退治をして助けて貰おうと言う事だ。

 

「創界山は、このアル・ワースのヘソ……その虹が灰色になった事で世界はバランスを失っていくじゃろう」

 

「で、僕が創界山に登ってドアクダーと戦うって事?」

 

「そうじゃ」

 

「ふざけるな…!こんな子供に世界を背負わせるのか…!アンタ達は!」

 

 その真紅の眼に怒りを宿してシンはオババを睨み付ける。老人にしていい行為ではないが知った事ではない。

 

 

 

 

「夢みたいな話だな……でも、いい!僕やるよ!」

 

 

 

 

「は………?」

 

 しかし、ワタルの言葉に呆気にとられるシン。中立を貫いていたアマリも目を見開く。

 

「ちょっと待ってください、ワタル君!そんなに簡単に決めていいんですか⁉︎」

 

「そうだワタル!これは現実なんだ、ゲームなんかじゃないんだぞ!!」

 

 

「困っている人がいるなら助けなくっちゃ!」

 

 そう言ってアマリとシンに宣言するワタルは笑っていた。その笑顔に二人は言葉を失う。

 

(……ワタル…お前…!)

 

 助けを求める人に手を差しのべられる人間などそう居ない。人を救う"英雄の道"を歩んだシンだからこそ理解できた……ワタルには素質がある……救世主になれる素質が……

 

 

 

「ぬははははは!子供にしては肝が据わっておる!」

 

 

 その時、笑い声をあげながら赤い着物に二刀の刀を携えた男性が話しかけて来た。

 

「あの、貴方「うわあああ!カバだ!」…いきなり失礼ですよワタル君!?」

 

「こらぁ!拙者のどこがカバだ!」

 

「顔!」

 

 シリアスが一気に吹き飛ぶ中、今度は緑色の髪をした少女が現れる。

 

「なんと!」

 

「きゃはは!オッサン、ガックシ!」

 

 ショックを受ける男性と笑う少女………何とも言えない空気の中シンが問いかける。

 

「……………君は?」

 

「あちし、ヒミコ。忍部一族十三代目の頭領だよ!」

 

「…………この世界は子供に大役を押し付ける決まりでもあるのか」

 

 ワタルの事といい……ファンタジーの世界にしても限度があるだろうとシンは頭を抱える。

 

「人は見かけによらんのぉ……」

 

「あの、貴方は?」

 

 先程はワタルのせいで聞けなかったので改めてアマリが問いかける。

 

「うむ…拙者、ミヤモト村の剣豪、剣部シバラクという者!創界山の危機をこの目で確認するためモンジャ村へと参った!!」

 

「大丈夫だよ、おじさん!この救世主ワタルが、創界山の虹を元に戻してみせるから!」

 

 しかし、シバラクはワタルの宣言を笑い飛ばす。

 

「子供が笑わせてくれる!其方の赤目の御仁の言葉を理解していないと見える!」

 

「うっ…そ、それは」

 

「本物か愚者か、救世主を名乗るのならば、お主の力……拙者が試してやる!」

 

 

 その時、巨大な爆発音が聞こえ、辺りが大きく揺れる。突然の事にモンジャ村はパニックになる

 

「うわっ!」

 

「きゃはは!オッサン、馬鹿力だね!」

 

「あ、あの爆発…!拙者ではござらんぞ!」

 

「だろうな……これは砲撃だ!!」

 

「ホープス!」

 

「はい。連中がやってきたようです」

 

 

 パニックになるモンジャ村を走り村の外に出ると九体の人面戦車の魔神がモンジャ村に狙いをつけていた。

 

「きゃはは!花火、花火!」

 

「何言ってんだよ!これは彼奴等の攻撃だよ!」

 

 

 そうこう言ってる内にも砲撃は続き、中央のリーダー機と思われし機体から声が聞こえた。

 

『ヌハハハ!すごい奴がやってきた!モンジャ村の者共よ!俺様は創界山の支配者ドアクダー様の7人衆が1人、第一界層の大ボス、クルージング・トム様の右腕、シュワルビネガーだ!…は〜長い自己紹介だったぜ…』

 

「第一界層…あの、分かれた山の事か」

 

「そうじゃ、創界山は7つの界層に分かれており、ドアクダーは界層それぞれにボスを置いているんじゃ」

 

『創界山を手に入れた以上、世界の隅々までぜーんぶ支配しろというドアクダー様のご命令だ!大人しく従えば、手荒な真似はしないでやる!』

 

「何だよ、あいつ!偉そうに!」

 

「侵略行為か………どの世界にも外道は居るもんだな!」

 

 

「ワタル!彼奴に言いたい事があるなら、手伝ってやるのだ!ヒミコミコミコヒミコミコ!」

 

 そう言うとヒミコが両手を合わせて呪文の様なモノを唱え始める。

 

 

「忍法・スピーカーの術!わわわわわああああああああっ!!!!

 

 

 次の瞬間、ヒミコの声が何倍にも高まる。当然近くに居たシン達を耳を抑える。

 

 

「みんな、声が大きくなってるから彼奴に声が届くのだ!」

 

「ど、何処が忍法だ…!」

 

「うー……ドグマと言われた方がまだ、納得できますよ」

 

「スピーカーのドグマなんて有りませんけどね」

 

 

 耳を抑えるシン達など露知らずシュワルビネガーは降伏を呼び掛ける。

 

『さあ、モンジャ村の者共よ!さっさと服従を誓え!』

 

「やだね!」

 

 しかし、堂々とワタルが否定する。

 

『何だと!?生意気な小僧だな!名を名乗れ!』

 

 

「待てワタル下手に刺激す…「救急車ワタルだ!」おい!?」

 

 下手に刺激しては何をするか……止めようとしたシンだがワタル言葉に反射的にツッコミを入れてしまう。

 

『救急車!?』

 

「あ、間違えた!救世主ワタルだ!」

 

 

 シュワルビネガーも困惑するがすぐに調子を取り戻しワタルを笑い飛ばす。

 

『ヌハハハ!救世主とはチャンチャラおかしい!このスペシャルなゲッペルタンクのキツイ一発で全員を吹き飛ばしてやる!』

 

 その掛け声と共に戦車の魔神…ゲッペルタンク達が砲身を合わせる。

 

「クソ!アマリとシバラクさんはワタルとヒミコを頼む!」

 

 シンはブレスでfateを呼び出そうと準備する。

 

 

「待って!僕も戦うよ!だって僕は救世主なん…「何度も言わせるな!これはゲームじゃないだ!!」…うっ!」

 

 

 救世主……いい言葉だ。誰かを救い感謝され称えられる。そう言う存在に成れるチャンスが有るのなら子供であるワタルが手を伸ばすのは当然なのかもしれない。

 

 だけど、それは決して光に溢れた道ではない。

 

 

 救世主や英雄………正義の味方は全てを救える万能なんかじゃない。

 

 

 家族を失ったあの頃から六年、"喜劇と悲劇に溢れた英雄譚"を歩んだシンはその事を誰よりも理解している。

 

 

 故にワタルを止める………"其所から先は地獄だぞ"と……………救世主の裏に隠れた茨の道をあの小さな足で歩む度にその無垢な心は欠けてしまうだろう。

 

 

「その道は生半可な覚悟で歩める道じゃない!!」

 

 

 

 シンの言葉が重く響く………出会って半日だが優しい好青年の印象を持っていたアマリは驚きを隠せず、逆にホープスはシンを興味深く見つめ、シバラクは理解した。

 

(溢れ出るこの気迫……一体どれ程の苦難を乗り越えたと言うのだシン殿は……)

 

 一方で、ワタルは下を俯かせたまま何も喋らない。例え嫌われようが構わない。シンはシュワルビネガーを倒す為にfateを呼び出そうとする。

 

 

「………………僕の世界には"正義の味方"が居るんだ。悪い奴等から皆を守る……格好いいヒーローが」

 

「………それにお前は憧れた」

 

「うん。そしてアマリさんを助けるシンさんの姿もヒーローに見えたんだ」

 

「ワタル君………」

 

 アマリは心配そうに二人を見つめる……シンは振り向きワタルを見つめる。ワタルもシンを見上げる。

 

「シンさんの言ってる意味……理解できてないかもしれないけど………シンさんは意地悪で僕に救世主なるなって言ってるじゃない………そうだよね」

 

「……」

 

「モンジャ村の人達がどうして僕が来た時に興奮していたのかわかった。――僕を信じてくれてたんだ」

 

「――!!」

 

 

「僕を信じて、待ってくれた人達を見捨てたくない!!」

 

 

 ワタルの言葉にシンは目を見開き、脳裏に過るはfateの前の姿であるデスティニーを受け取り、初戦闘を終えた後の事……ギルバート・デュランダル議長と二人きりで話した事があった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

『やぁ、シン。ヘブンズベース攻略……見事だった』

 

『議長!?ありがとうございます!!』

 

 あの時の議長の顔は今でも忘れない……申し訳なさそうに苦難する顔を……

 

 

『………すまない、私は君に決して失敗は許されぬ重過ぎる役を押し付ける』

 

『………議長』

 

『シン……最後によく考えた方がいい。次にデスティニーに乗れば最後……君は"英雄"で在らなければいけなくなる、人々の希望を背負う者として』

 

 

 デスティニーは議長が目指す戦争の無い平和な世界の象徴………故にパイロットは背負わなければならない人々の希望を……英雄として。世界が平和になるその時まで……

 

 今ならまだ、引き返せるかもしれない……プラント最高評議会議長としては言うべきではないが……ギルバート・デュランダルと言う一人の大人としてまだ、16才のシンが進む道先を案じていた。

 

 

 

 

      "其所から先は地獄だぞ"

 

 

 

『……いいえ、多くの人が笑っていました』

 

 それでもシンは大丈夫だと笑う。ヘブンズベース攻略に勝利した時、多くの人が笑っていた………これで戦争は終わるのだと……誰もが未来に希望を見ていた。

 

『それはきっと…間違いでは無い筈です』

 

 例えこの先が地獄でも、意味が有るのなら間違いでは無い筈だ。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「世界を救うなんて最初は無理かもしれないけど……まずは目の前の人達を助けたい!!」

 

 

「………駄目だ」

 

「シンさん!!」

 

 

 叫ぶワタルは気づく、シンは何時もの優しい眼差しをワタルに向けていた。

 

 

「いいかワタル……皆を助けたい…その願いは間違っていない。だけど、自分を犠牲にしては駄目だ。救世主以前にお前は子供なんだ……だから、皆を助けるお前を俺が守ってやる」

 

「え?」

 

 ワタルが進もうとする道は間違いではない………ただ、辛く苦しいモノだ。

 

 だからこそ一人で進んではいけない。

 

「俺も一緒に行ってやるよ。ドアクダーを倒しに……救世主のお供になって世界を救うのも悪くない」

 

 ならば、共に行こう。ワタルが自分と同じ後悔をしないように……

 

「シンさん…………ありがとう!」

 

「…………………シンさんだけではありません」

 

 シンの言葉に笑顔を見せるワタル。その時、先程から何かを考えていたアマリが決心した表情をする。

 

「私も………私も共に行きます!」

 

「でも、お前……」

 

「確かに私は……シンさんやワタル君の様な正義の味方ではありません。だけど……私は、自分が出来ることをやります!!」

 

「……アマリさんも……ありがとう!よーし、シンさんとアマリさんが居れば百人力だ!」

 

 

(彼等だけではないぞワタルよ…!)

 

 

 共に戦ってくれる二人に喜ぶワタルだが、不意に頭の中に不思議な声が響く。それはシンとアマリも同じだった。

 

「な、なんだこの声…頭に直接響いてくる」

 

「これは…!?」

 

 困惑する二人だが、ワタルは心当たりが有るようだ。

 

「もしかして…龍神丸か!」

 

(そうだ!)

 

「ワタル……龍神丸って何だ?」

 

「龍神丸……図工の授業で作った粘土人形なんだけど、僕と一緒にこっちの世界に来てたのか……」

 

(良き仲間と出会えた様だなワタルよ。彼等と共に戦う力が欲しいのなら勇者の剣をかざし、私の名前を呼べ!)

 

「龍神丸…。龍神丸が僕に話しかけている」

 

 

『えーい、貴様等!何時まで俺様を無視する気だ!?』

 

 

 自分達を放ったらかしにして話しているワタル達にシュワルビネガーがキレる………が、ワタルは気にも止めずに勇者の剣を天に掲げる。

 

 

「よぉし!シンさん!アマリさん!」

 

「ああ!行くぞ!」

 

「これ以上、ドアクダー軍団の思い通りにはさせません!!」

 

 

 

 彼等は叫ぶ、守るべき者を守る為に、戦う力を呼ぶ為に……

 

 

 

 

 

「来い!ガンダァァァァム!!」

 

 

 

「来て!ゼルガードォォ!!」

 

 

 

龍神丸(りゅうぅぅじんまるぅぅう)!!」

 

 

 

 

 シンとアマリの叫びに反応してfateとゼルガードが空から舞い降りる。そしてワタルの掲げた勇者の剣が光輝き、ワタルを包み込む………

 

 

        そして!!

 

 

 

 

「オオオオオオッッ!!」

 

 

 

 光を吹き飛ばし、白いボディに龍を印象付ける魔神が龍のごとき雄叫びを上げて現れる。

 

 

「おおおおっ!あれこそまさしく伝説の龍の神じゃ!」

 

「それにアッチは魔従教団のオート・ウォーロック*1じゃ!初めて見るのう」

 

「しかし、シン殿の方は初めて見る」

 

 

 シンとアマリが機体に乗り込む一方で、ワタルは不思議な空間に居た。其所には黄金の龍がおり、ワタルはその頭に居た。

 

 

『うわあああ!龍だ!また変な世界に来ちゃった!』

 

 不思議な空間に驚愕するワタルだが……再び龍神丸の声が聞こえてくる。

 

『安心しろ、ワタル。今、お前がいるのは龍神丸…すなわち私の中だ……さあ!龍の角を掴め!』 

 

『うん!』

 

『ワタル、これから私はお前と共に戦う。お前の思った通りに動き、戦う事が出来るのだ』 

 

『わかった!よし…行こう、龍神丸!』

 

 

 

『ぬうう!何者かは知らんが、この俺様の邪魔をするのなら、只ではおかんぞ!』

 

 

 

『そっちこそ!これ以上、好き勝手はさせないぞ!』

 

『その声!さっきの救急車の小僧か!』

 

『違う!僕はワタル!!皆と共に世界を救う救世主だ!!やるぞ、龍神丸、シンさん、アマリさん!あいつを倒して、モンジャ村を守るんだ!!』

 

「おう!」

 

 力強い叫ぶワタルにシンとアマリは笑みを浮かべて答える。

 

『頼もしいな……ああ、行くぞ!』

 

『そうですね、私も負けていられません!』

 

 

『ヌハハハ!たった三人で何ができる!!』

 

 

 龍神丸達が出てきた事には焦ったが、シュワルビネガーは数の有利で余裕を取り戻す。

 

「否!三人ではござらん!!爺さん!この辺に電話はないか⁉︎」

 

「公衆電話なら、そこにあるぞ」

 

「よし!」

 

 

 オジジが指差した公衆電話に駆け出すシバラク。

 

 

「1000・10・0………と」

 

「オッサン、誰に掛ける気だ?」

 

「まぁ、見ておれ……あ、センちゃん?こちら、シバちゃんだけど……今、モンジャ村だけど、来てくれるかな?そう!大至急で!」

 

 

 シバラクが随分フレンドリーな電話した後、赤色で武者を思わせる魔神が来て、シバラクはそれに乗り込んだ。

 

『これが拙者の魔神、戦神丸だ!』

 

『シバラクさん……手を貸してくれるのか?』

 

『うむ!お主達の心意気に胸を討たれた!此所で行かねば武士の恥、助太刀いたす!!』

 

 

 両手に二刀の刀を持って戦神丸も並び立つ。

 

 

『黙れ、黙れ!田舎侍増えた程度で何が出来る!?この俺様のパワーの前にひれ伏すがいい!!』

 

 

 シュワルビネガーの叫びと共にゲッペルタンク達がキャタピラ音を響かせながら進軍する。

 

 

『そうはいくか、シュワルビネガー!』

 

『非道な行いも、此処までだ!』

 

『私達が貴方を討ちます!』

 

『そう言う訳だ!答えは聞いてない!!』

 

 

 しかし、その程度でワタル達は臆しない。覚悟を決めて敵へと向かって行く。ゲッペルタンク達はfate等を蜂の巣にしようと砲撃を始める。

 

『シバラクさん、ワタルとアマリは戦いに慣れていない!!』

 

『承知!拙者達が戦陣をきる!!』

 

 fateと戦神丸が前に飛び出し、fateはビームサーベルを、戦神丸は両手の二刀で………

 

『そんなモノが!!』

 

『拙者達に通用するか!!』

 

 

 地面を一閃!切り裂かれ巻き上げられた土砂が壁となり銃弾を遮断する。

 

『な、なにぃぃいー!?』

 

 想像の斜め上を行く方法で防がれシュワルビネガーは目を丸くする。

 

 驚きを隠せないのはアマリも同じだった。

 

 

『凄い………私も負けていられない!』

 

『……………見直しましたよマスター。私の進言なしで戦う決意をするとは』

 

 そんなアマリにホープスが語りかける。臆病だった彼女の変わり様に少なからず驚いていた。

 

『……ワタル君やシンさんを見ていたら自分が恥ずかしくななりました…………縮こまっていては旅に出た意味がありません!』

 

『……あの二人がマスターを変えてくれるかも知れませんね』

 

『……そうかも知れませんね…………さあ、行きますよホープス!!』

 

『かしこまりました、参りましょう!』

 

 

 銃弾を防いだ土砂の壁をゼルガードが飛び越え、空高く舞い上がる。

 

 

『オドをその身に感じ……自らの魔力と一つにする!』

 

 

 ゼルガードの両手が紫色に輝き…両手を合わせると、魔法陣が現れる。 

 

 

『いって!TEMPESTA(テンペスタ)!!』

 

 

 魔方陣から雷を纏った黒い風が中央に展開していたゲッペルタンク数機を凪ぎ払う。

 

『今です!』

 

『行けワタル!!』

 

『露払いは拙者達が引き受けた!』

 

『うん、任せて!!』

 

 

 その空いた穴を龍神丸が突っ込む。狙うは大将首のシュワルビネガー。

 

 その時、龍神丸がワタルに語りかける。

 

(ワタルよ………怖いか?)

 

(龍神丸…うん、此所に来た時に大きなドラゴンに襲われて……シンさんが居なかったらどうなっていたか…………だから、怖くないって言えば嘘になる)

 

(そうか……(でも!)…ん?)

 

 

(僕は一人じゃない!シンさんやアマリさん!オジサンに………龍神丸が居るんだ!だから、どんなに怖くても頑張れる!!)

 

(………本当に良き仲間と出会えたのだな。ワタルよ、お前の胸に燃えるモノ……それを勇気と呼ぶ)

 

(勇気?)

 

(そうだ、恐怖を感じ臆してもいい。それでも諦めずに立ち向かう。無謀を超えた先にあるモノだ。忘れるなワタルよ、戦いを決めるのは力ではない…!戦う心だ!)

 

(心………わかった!!)

 

 

『救急車の小僧!このシュワルビネガー様のパワーに勝てると思っとるか!』

 

 シュワルビネガーのゲッペルタンクが龍神丸を蜂の巣にしようと銃撃する。

 

(ワタル!)

 

(うん、わかる。戦い方がわかる!)

 

 

 初めてなのに戦い方がワタルには分かっていた。龍神丸の胸元に灼熱の光弾が形成される。

 

 

『食らえ!炎龍けぇぇぇん!!』

 

 それを掴み投げつける。灼熱の光弾は銃弾を焼きつくすだけでなくゲッペルタンクの右腕を吹き飛ばした。

 

『ば、バカなぁぁ!?』

 

 

(今だ、ワタル!!)

 

『よぉし!覚悟しろ!!』

 

 

 大きく体制を崩すゲッペルタンク。この時を逃すまいと龍神丸の中に居るワタルが剣を掲げる。

 

 

 

 

    『ひっさぁぁつ!』

 

 

 

 ワタルの動きに合わせるように龍神丸も剣を掲げる。剣から光が放たれ、増幅されたエネルギーは刀身から溢れでる。

 

 

『アレは……』

 

『圧倒的な力を感じます!』

 

 

 辺りを照す目映い光に誰もが見惚れる。それは他全てのゲッペルタンクを撃破したシンも例外ではなかった。

 

『行け、ワタル!!』

 

 

 

 その輝きは正しく救世主が放つに相応しいモノ。あらゆる悪を退ける黄金の刃。

 

 

 

 未熟な救世主はーー

 

 

  上段にその聖剣を構えーー

 

 

 

 

 

  登龍(とうりゅう)けぇぇぇん!!』

 

 

 

 

 

 龍のごとき咆哮と共に剣を振り下ろす。

 

 

 その太刀筋はドラゴンを切り裂いたfateとワタルが憧れた"勇者の縦一文字"の一刀に何処か似ていた。

 

 

『ば、馬鹿なぁぁぁっ!?』

 

 

 

 当然に耐えられる筈もなく、シュワルビネガーのゲッペルタンクは真っ二つになり爆発した。

 

 

『よし!やったぜ!』

 

『あの人は脱出したみたいですね』

 

『魔神の脱出装置は、高い性能を持ってますからね』

 

『……………………』

 

 勝利の余韻に浸るワタル達、一方でシンは対照的に目を細め何処かを睨んでいた。

 

『如何されたシン殿?』

 

『………いや、何でもないです。ワタル達の所に行きましょう』

 

 シバラクにそう言ってfateを動かす。だが、シンが睨んでいた場所には人影があった。

 

 

(あ、あぶねぇ!あの四枚羽の奴、俺に気づいてやがった!?話半分で見物にきたが、こいつはドアクダー様に報告の必要があるな…!)

 

 

 

 

◆◆◆

 

 救世主達の勝利にモンジャ村の住人は歓喜の叫びを上げる。

 

「やった、やった!ワタル、ニイちゃん達、強い!みんなもよくやった!」

 

『すごいです、ワタル君!』

 

『龍神丸や皆のおかげだよ」

 

『でも、その龍神丸とワタル君、シンさん姿を見て、私も覚悟を決める事ができました。ありがとうございました』

 

『アマリさんも僕を助けてくれたから、これでおあいこだね!』

 

『……やっぱり君は凄いですね』

 

 

 其所に戦神丸とfateも集まる。

 

 

『拙者しかと感服したぞ、ワタル!試すなどと言って悪かった!お主は立派な救世主だ!』

 

『へへ、そんな風に言われると照れちゃうな……』

 

『だが、戦いの方は、まだまだだな』

 

 

『だったら、僕を鍛えてよ!ドアクダーを倒して、創界山の虹を元に戻すためにも!』

 

『よし!そういう事なら、拙者の剣技をお主に伝授しよう!』

 

『よろしくね、先生!そして………師匠!!』

 

 

 ワタルはfate……シンに向かってそう言った。予想だにしない言葉にシンは目を丸くする。

 

『し、師匠?俺が…!?』

 

『うん!僕はまだ、未熟な救世主だから!シンさんの弟子になって立派な救世主になって世界を救ってみせる!!』

 

 

 目を輝かせるワタル……それに根負けしたのかシンは苦笑いを浮かべて了承した。

 

『シバラクさんが居るのに……欲張りな救世主様だ。わかったよ……なってやるよ救世主の師匠に』

 

『やった!よーし、この調子でドアクダーを倒して、必ず創界山の虹を元に戻してやる!』

 

 

 

 

 

 

 

 その後、シン達はそれぞれ機体から降りると村人やヒミコ達が走ってきた。

 

 

「よくやったぞ、ワタル!」

 

 

「師匠にシバラク先生とアマリさん……何より龍神丸がいれば、あれくらいの敵、朝飯前さ!ね、龍神丸!」

 

「油断をするな、ワタル。ドアクダー軍団の力は、あんなものではない」

 

「や、やっぱり…」

 

 

 あの巨大なドラゴンが居るんだ、もっとヤバいのが居ても不思議ではない。

 

「心配するな、お前には共に戦う仲間が居る。私も何時でも見守っている……私の助けが必要な時は、お前の持つ勇者の剣を抜いて、私を呼ぶがよい……では、しばしの別れだ」

 

 そう言うと龍神丸は光となって消えていった。それを見届けた後にオババが口を開く。

 

「ワタルよ、創界山の虹の色を元にもどすためにお前は旅に出なければならん……言い伝えでは、ドッコイ山の龍岩に救世主の旅の道標があると聞く。まずは、そこを目指すのじゃ」

 

「そのドッコイ山ってのは、どこにあるの?」

 

「此処から南に行ったところじゃ」

 

 此所から南、創界山とは別の方角だ。

 

「え!創界山にあるんじゃないの⁉︎」

 

「創界山は、このアルワースのヘソじゃ。言い換えれば、この世界の全てが創界山に通じておるのじゃ……創界山を救う為にもお前は、この世界の全てを救わねばならん」

 

「わかったよ、じゃあ、そのドッコイ山に行ってみる」

 

「しかし、こまったのう…。諸国を漫遊してきた拙者でも、ドッコイ山には行った事がないぞ」

 

 困った表情を浮かべるシバラクだが、ソコにアマリが助け船を出す。

 

「大丈夫ですよ、私が案内します」

 

「アマリ殿が!」

 

「旅の仲間になるんですから、普通にアマリと呼んでください。問題ないですよね、ホープス?」

 

「無論です。私達の旅の行き先を決めるのはいつでもマスターですから……この世界を救うための旅ならば、私達にとっても利があるでしょう。ですが、これだけは……常に注意は怠らないよう願いします」

 

 そう言うとホープスは何処かへと飛んでいった。

 

 

「わかっています……」

 

 それを聞いて固まった表情をするアマリにシンは安心させるように笑みを浮かべて語りかける。

 

「ホープスの言った事も大事だけど、ずっと硬い顔してちゃ疲れるだけだ」

 

「そうだよ!これからは僕達は旅の仲間なんだから、楽しく行こうよ!」

 

「シンさん、ワタル君……そうですね、その通りです!」

 

 

 

「よーし!みんなで力を合わせて、ドアクダーを倒そう!まずはドッコイ山に向けて出発だ!」

 

 

 

 救世主の誕生……これにより運命は本格的に動き出した。

 

 

 

END

 

 

*1
異世界アル・ワースの法と秩序の番人である魔従教団が開発した人形兵器




【クロスオーバー放送!!】


オウムさん《アマリ》「さ、3、2、1…!ど、どっか~ん!!」

ワタル「わ~~い!!」

シン「なぜなにクロス~!!」

オウムさん《アマリ》「おーいみんな、集まれー!秘密の時間だよー!!」

ワタル「集まれー!!」

シン「このコーナーでは、本編に登場する機体について解説するぞ!」

ワタル「それじゃあ師匠。今回紹介する機体を僕とオウムのお姉さんに教えてよ!!」

オウムさん《アマリ》(何でオウムの着ぐるみ着なくちゃいけないんですか~!!)


シン「今回紹介する機体は………【龍神丸】だ!
ワタルが作った粘土の龍神丸に、創界山の守り神【神部七龍神】のひとつ、金龍の魂が宿った魔神で、他の魔神と違って操縦するのではなく、額にある龍導口からワタルが乗りこみ、ふたりの心を通じ合わせて戦うぜ!」

ワタル「僕が剣を空に翳し名前を呼ぶ事で龍神丸が現れて一緒に戦ってくれるんだ!」

シン「必殺技は【登龍剣】。黄金に輝く剣で敵を縦一文字に切り裂くぞ!」

ワタル「僕の世界の"勇者"を真似てみたんだ!」

オウムさん《アマリ》「ワタル君の世界の勇者ですか。いつかお会いしてみたいですね」

シン「そうだな。それじゃあ今回はこの辺りで……」



「「「まったね~~~~!!」」」





オウムさん《アマリ》「……………私はこれからはずっとこの格好ですか?」

ワタル「とっても似合ってるよ!」

シン「気にするな、俺は気にしない」

オウムさん《アマリ》「そんな~~!!」



 


  次回予告!!

 ドアクダー打倒の旅に出たシン達。道中でシン達と同じく異界人のマサキと出会う。それに続くかの様に異世界の組織【ネオ・アトランティス】とそれに追われる謎の少女に遭遇する。果たしてこのアル・ワースに何が起こっているのか!?

次回!【魔装機神飛翔!!謎の少女を守り抜け!!】


 その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!サイバスター!!



本編未登場ネタ。

オババ「ワタルよ!我がモンジャ村に代々伝わる戦士の装束じゃ!身にまとうがいい!」

ワタル「格好いい!じゃ、遠慮なく!」

 オババに渡された戦士の装束をワタルが受け取った瞬間だった。


EXマン達「「「エクスキューズ・ミー!」」」

ワタル「着替え完了!ハッキシ言って、決まったぜ!」

 謎の小人が現れたと思ったら何時の間にかワタルの服装が変わっていた。

シン「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『ワタルが装束を受け取ったと思ったら、ワタルがいつの間にか装束を着ていた!』
な…なにを言っているのかわからねーと思うが、俺も何がおきているのかわからなかった…!
頭がどうにかなりそうだった…!
催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ…もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…!」



 気づけば前回よりも長くなっていた…!?
 お気に入り登録や感想・評価などありましたらよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。