運命の英雄   作:DestinyImpulse

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 文字数が多いので分けてみました。

 こちらの方が良ければ一話、二話も分けます。


三話・魔装機神飛翔!!謎の少女を守り抜け!!・前編

 

 ドアクダー打倒の旅に出て、はや数日……時刻は午前六時、モンジャ村から貰った旅用のテントが二つ、一つはアマリ用、もう一つはシン達男用……その二つから離れた所でシンは朝食の準備をしていた。 

 

 元の世界で旅をしていたので、旅に必要な物は保管してある。勿論、調理器具や食料等も例外ではない。

 

 今回の食料はアル・ワースで釣った魚、アマリやシバラクから食べられる種類を聞いてあるので問題はない。

 

(まずは味付け前に両面に塩を少々振って、五から十分放置)

 

 その後、切り身から水分が出てきたらキッチンペーパーでよく拭き取る。

 

(続いて玉ねぎと人参を薄めにスライスして、モンジャ村の人達から貰ったキノコをほぐしておき、魚に塩コショウで味付けをする)

 

 そして、アルミホイルを敷き、スライスした玉ねぎと人参、細かく砕いたコンソメを振りかけ、魚とキノコを乗せたら最後にバターを乗せる。

 

 アルミホイルの両端を包んで、キャンプ用品として使われる焚き火台の上に設置してあるフライパンの中に置き、蓋をして弱火で15分から20分蒸す。

 

 

 その間に副菜と汁物を作って……充分に蒸したらアルミホイルを開いてワタルの物を除いた物にパセリを加えたら……

 

「……完成だ」

 

 

 

 

 鮭のホイル焼きの容量でやってみたが……充分なデキだ。そして、折り畳み式テーブルを敷き…"五人分"の食事を置く。

 

 

 時刻は7時を過ぎだ。日差しと料理の匂いに誘われてかテントからモゾモゾとワタル達が出てきた。

 

「おはよう……師匠」

 

「おう、おはよう……朝食できたぞ」

 

「おお!今日は魚でござるか!」

 

「ええ、改めて確認だけどこの魚は大丈夫だよなアマリ?」

 

「はい!問題ありません…………」

 

 美味しそうな匂いからか、目を輝かせるアマリだが、何処か珍しいそうに見ていた。

 

「?………ああ!これはホイル焼きって言うんだ。簡単にできるし旨い」

 

 

 

 魔術師のアマリがわからないのは当然だろう。

 

 旅の間に聞いた話によれば、この世界アル・ワースを創造した"智の神エンデ"を崇める、法と秩序の番人たる魔従教団。

 

 魔従教団の術士達は日々、自分達の魔力を磨いており、魔法とも呼ぶべきドグマを扱うにはアル・ワースそのものを構成する元素のような物である"オド"を自分の中の魔力を一体化し制御する事で初めて仕様できる。

 

 

 ドグマを扱う才能は生まれつきの物であり素質のある人間は、幼い頃から直感的にオドを感じ……ドグマの体系を簡単に説明されただけで、その真理が理解できる。故にこの話を聞いて何も感じなかったシンとワタルにはドグマを扱うのは無理のようだ。

 

 そして、誰かに教えられたわけでもなく5歳の頃にはドグマを使えたアマリは、噂を聞きつけた魔従教団にスカウトされてからは、ずっと教団の元に暮らして居た。

 

 

 

 それ以来、父と母に会ってはいない。

 

 

 

 

 

 

 

(多分寂しかったか……か)

 

 

 

 

 へぇ~!こんな料理もあるんですね……と言いながら目を輝かせるアマリを見つめながらシンは思い出す。あの後アマリは言った……

 

『子供の頃は多分、寂しかったと思います。でも、もう昔の事なので忘れちゃいました』

 

 正直、違和感を覚えたが……今はよそう。

 

 そう考えている内にテントから"最期の一人"が出てきた。

 

 

「もう起きて大丈夫なのか?"マサキ"」

 

 

 緑色の髪をして、薄い紫のジャケットを羽織った男性……マサキ・アンドー。

 

 彼と出会ったのは昨日の夜だった。

 

 ホープスが察知した"門の印*1"……その場所に行ってみた所にマサキは居た。マサキはシンやワタルとは違う世界の住人で、帰る方法を探す為にワタルのドアクダー打倒の旅に協力してくれている。

 

 昨晩マサキは謎の集団と戦闘しており疲れはある筈だが……それよりも食の誘惑が勝ったようだ。

 

「いや~スゲー旨そうな匂いで目が覚めちまった!」

 

「おはよう、マサキさん」

 

「おう!おはようさん……お!ホイル焼きか!」

 

「まぁな……それじゃあ冷めない内に食べようか」

 

 

 いただきます……お決まりの一言と共に手を合わせて一礼。そして並べられた箸を使って、魚とご飯を合わせて一口。

 

 

「いや、こりゃウメェな!?」

 

「うん!美味しいや!!」

 

 

 ご飯の甘味に、魚の塩味のベストマッチの味わいが更なる食欲を与えてくれる。

 

「美味しい…!」

 

 笑みを浮かべる皆にシンも笑みを浮かべる。脳裏に過るは自分の料理で笑顔を見せる被災地の子供達。

 

 

 

 

「なにこれ!すっごく美味しいよお兄ちゃん!」

 

「うん!とっても美味しい!シンさんありがとう!!」

 

 

 

 

「やっぱり……皆で食べる食事はいいな。……お前らも、それで大丈夫か?」

 

 テーブルの下に視線を向ける。そこには白と黒い猫が料理を食べていた。

 

「大丈夫にゃ!シンの料理は最高にゃ!」

 

「ほんと、いい腕してるにゃ!」

 

 白い猫が"シロ"、黒い猫が"クロ"……この喋る猫達はファミリアと言う、早い話がファンタジーによくある使い魔だ。

 

「お粗末さま……さて、食べ終わったら今後について話し合うか」

 

 

 

◆◆◆

 

 

「……………」

 

 

 

 シン達が朝食を食べている一方、そう遠くない所で何者かが、連絡をとっていた。

 

 その男は普通ではなかった。人間の服を着てはいるがその姿は鳥……正しく鳥人間だった。

 

 この鳥人間こそ先のモンジャ村での戦闘を監視していた人物、"渡部クラマ"だ。

 

 そしてモニターに映る男こそ、ドアクダー四天王の一人で、魔界ザン三兄弟の長男、ザン・コックである。

 

『渡部クラマ。ドアクダー様からのご命令を伝える。ワタルの仲間に加わり、スパイとして各階層のボスに情報を伝えるべし。さらには奴等の手によりドアクダー軍団がピンチに陥った時にはこれを助けよ』

 

 

 ザン・コックの指令にクラマは苦い表情を浮かべる。

 

「……とは言いますけど、向こうには魔従教団の術士に加えて、四枚羽の化け物まで居るんですぜ」

 

 四枚羽の化け物は言わずもがな"fate"である。遠く離れた自分に気づいたのだ、化け物と言わず何と呼ぶ。

 

『そのための魔神……空神丸をお前に与える』

 

「空神丸……!」

 

 しかし、ザン・コックの言葉に表情が変わる。

 

『ただし、ワタル達にお前が空神丸に乗っている事を知られてはならん。見事、その役目を果たした暁には約束通り、"お前の願い"を叶えてやろう』

 

「!、へへぇ…何とぞ、よろしくお願いします!」

 

 ザン・コックの言葉に頭を下げると同時にクラマは笑みを浮かべる。

 

 

(そういう事だ……悪く思うな、救世主さんよ…)

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 朝食を食べ終えたシン達は今後について話し合っていた。

 

「……それで、そのドッコイ山って所に行くのはわかったけど、どうして歩きなんだよ?」

 

「ごめんなさい、マサキさん。ゼルガードの巡航モードに合わせてもらって……魔力を使わない巡航モードだと、人間が歩くのと大して変わらないスピードなんです」

 

「fateを使ってもいいが、ドアクダー軍団にケンカ売っている状況で目立つ行為はまだするべきじゃないだろ」

 

「旅の基本は自らの足だ。歩いて行けば修行にもなるしな」

 

「先生もそう言ってるし、僕……アル・ワースに来たばかりだから、なるべく自分の目で色んな物を見たいんだ」

 

「へえ……よく考えてんだな、ワタル」

 

「へへ……アマリさんや師匠を見習って、勉強しようと思ったんだ」

 

「へぇー師匠ねぇ~」

 

「……なんだその笑みは」

 

 シンを師匠と慕うワタル……そんな二人に笑みを浮かべるマサキ。

 

「べっつに~……そう言えば、アマリは魔従教団という所の指示で旅をしているんだよな……お前、俺やワタル達みたいに他の世界から来た人間と会った事があるんじゃねえのか?」

 

 しかし、おふざけから一転、マサキの言葉に空気が変わる。

 

「マサキさんって意外に鋭いんですね…」

 

 否定せずに中々に酷い事を言うアマリに視線が集まる。

 

「なるほど、俺達と会った時すんなりと状況を受け入れたのは経験済みだったってわけか」

 

「本当なのアマリさん?」

 

「すみません……隠しているわけじゃなかったんですけど……私は旅の途中で別の世界から来た人…異界人(いかいびと)に何度か会った事があります。でも、その人達はまるで抜け殻みたいな状態でした」

 

「脱け殻……記憶喪失、もしくは何も喋らない、反応しないって事か?」

 

「はい。何とかわかったのはアル・ワースとは別の世界から来たらしい…って事ぐらいでした」

 

「転移のショックが原因か?」

 

「かもしれないな。時空を超えて別世界なんて普通じゃない」

 

 

「わかりません。でも、教団の資料でも見ましたが、この数年…歴史の中でもかつて見ないほど異界人が現れているらしいんです」

 

 

 

「それはびっくりなのだ」

 

 

 その時、この場の誰とも違う声が響く。それはモンジャ村にいた女忍者の少女、ヒミコだった。

 

 

「きゃあっ!」

 

「ひ、ヒミコ!?」

 

「モンジャ村にいた女忍者か!」

 

「ワタルもオッサンもシン兄ちゃんも久しぶりなのだ!」

 

 まさかの登場に驚きを隠せない。アマリ達は勿論の事、シンとマサキも目を見開く。

 

「どうしてヒミコがここに?」

 

「決まっているのだ!ワタル達を追いかけて来たのだ!」

 

「………つまりモンジャ村から此処まで1人で来たってのか」

 

「そうなのだ!それにしても、アマリ姉ちゃんびっくりしすぎなのだ」

 

「ふっ、そうだな。きゃあっ……って、可愛い声で言ってたもんな」

 

「だ、だって……いきなり音も立てずに現れましたから……シンさんもからかわないでください!」

 

 思わず顔を赤くするアマリに笑みを浮かべるシン、そんな二人にヒミコを知らないマサキが声をかける。

 

「で、どうするんだみんな?この子も連れて行くのかよ?」

 

「本人が行きたいと言うのならば良いんじゃないかな?」

 

「ああ、それなりの覚悟を決めてモンジャ村を旅立ったのだろうからな」

 

「そうですね。本人の意思を尊重するべきだと思います」

 

「みんながそう言うんなら構わねえ。俺も同意見だったからな。シンはどうだ?」

 

「俺も構わない」

 

 ワタル達の言葉に賛同するシン。不思議な術を使うヒミコなら大丈夫だろう

 

 

「きゃははは!みんな、気が合うのだ!……ん!誰か来るのだ」

 

 すると、ヒミコが指差した茂みから茶色の髪に小さなエプロンを着た少女と青い毛並みの……猫?が現れた。突然の事に警戒するシンだが……

 

 

「お願い助けて!」

 

 切羽詰まるその表情と言葉は嘘偽りのないモノだった。

 

「女の子と……ネコ?」

 

「キングは猫じゃないよ!ライオンだよ!」

 

 ワタルの言葉に反論する少女、キングと言うライオンもそうだそうだと言わんばかりに首を振る。

 

 

「この人達の……使い魔なのかな?」

 

「普通の動物のようですけど」

 

「お嬢ちゃん、誰かに追われているのかな?」

 

「あたしじゃなくて、"ナディア"と"ジャン"がピンチなの!だからあたし、助けを呼びに来たの!!」

 

「ナディア?ジャン?」

 

 突然の事に話が噛み合わない。そんな中、シンが腰を下ろして少女の視線に合わせて肩に手を置いた。

 

「落ち着いて……君の名前は?」

 

「ま、マリー」

 

「そうか……君が来た方向に行けばいいんだな」

 

「そ、そうなの!お願い!ナディアとジャンを助けて!!」

 

「ああ、任せろ!……先に行く、後から来てくれ!」

 

「し、師匠!?」

 

 ワタル達に一言そう言うとシンはマリーが出てきた茂みに飛び込み、常人離れのスピードで駆け出す。

 

 耳をすませば、誰かの声が聞こえる……声を頼りに走ると……仮面を着けた怪しげな集団に襲われている一団が居た。

 

 褐色の肌の少女と眼鏡をかけた少年……その二人に付き添う赤髪の女性……その三人を守る様に仮面の集団を蹴散らす二人の男性。

 

 シンは迷わず、集団の一人を蹴り飛ばした‼️

 

「な、なんだ新手か!?」

 

 突然の登場に長身の男が身構えるが……

 

「マリーって、女の子に頼まれた。ナディアとジャンを助けてほしいって」

 

「マリーに会ったんですか!?」

 

 シンがマリーの名を出すと、眼鏡をかけた少年が食い付く……ビンゴだ。

 

「ああ、君が…?」

 

「はい、僕がジャンでこの娘がナディアです」

 

 

 褐色の肌の少女と眼鏡をかけた少年がナディアとジャンで間違いない様だ。それを確認したシンは仮面の一人を殴り飛ばす。

 

「そうか、なら話はコイツらを片付けた後だ!」

 

 そんなシンを味方と判断したのだろう。赤髪の女性が声を上げる。

 

「どうやら敵じゃあ無いみたいだね。ハンソン!サンソン!その色男と一緒に"ネオ・アトランティス"の奴等を片付けちまえな!!」

 

「ガッテン!」

 

「承知!!」

 

 

 こうしてシンと長身のサンソン、ふくよかなハンソンに次々となぎ倒される"ネオ・アトランティス"。決着はすぐに着いた。

 

 

「おーい!師匠ー!」

 

 それからすぐにワタル達がやって来た。それを見た赤髪の女性…グランディスがシンに問いかける。

 

「アンタの仲間かい?色男」

 

「ええ……あの鳥人間は知りませんけど」

 

 そう言うシンの紅い瞳は、ワタルの後ろにいるクラマを捉えていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 合流したシン達は互いの事を知るために情報交換をしていた。聞けばあの鳥人間のクラマは道に迷っていたワタル達を案内してくれた……らいし。

 

 

「……で、そのノーチラス号*2がネオ・アトランティス*3って連中の攻撃を受けて沈没したってわけか」

 

「僕とナディアとマリーとキングは脱出したんですけど、気がついたら、この森の近くの海岸に流れ着いていたんです」

 

「お嬢ちゃんがそのネオ・アトランティスって連中に狙われているのか…」

 

「ジャン…」

 

「どうかした、ナディア?」

 

 すると、先程まで黙っていたナディアがクラマを見て声を出す。

 

「私、やっぱり動物の言葉がわかるのよ!だって、この鳥の喋っている事が分かるもの!」

 

「お、落ち着いて、ナディア!」

 

「私もわかるよ」

 

「僕も……」

 

「あちしも!」

 

「ナディア…。あの人は鳥みたいな姿をしているけど、人間の言葉を話すんだよ」

 

「そんなのおかしいわよ!」

 

「さっきも話しましたけど、此処はアル・ワース……あなた達のいた世界とは違う世界なんです」

 

「此処は、そういう所だって納得した方が良いぜ」

 

「でも…!」

 

(信じられないか。まぁ、当然だな)

 

 

 いきなり、見知らぬところへ居て異世界だのなんだの言われても普通こうなる……

 

「落ち着こうよ、ナディア。まずは今、僕達がいる場所の情報を集めなきゃ」

 

 

「こっちからも質問させてもらう。アンタ等を襲ったあの仮面の集団が、そのネオ・アトランティスの人間なのか?」

 

「それは間違いありません。ネオ・アトランティスの人間は全員、仮面をかぶっていますから」

 

「マリーがあんた達に助けを求めている間に同じくここに流れ着いたあたし達が合流して、連中を追っ払ったのさ」

 

「あいつ等も僕達と同じ様にここに飛ばされて来たんだろうね」

 

「それで俺達にぶっ飛ばされてあたふたと逃げ出すとは、とことんついてない連中だぜ」

 

 そう笑いながらグランディスはシンの肩に手を置く。

 

「しかし、マリーもこんな色男に助けを求めるなんてね。お陰で助かったよ!」

 

「……そろそろ色男は止めてください。柄じゃない」

 

 

「う~む!あなたのような美しい方が居ると知ればこのシバラク、風の如く馳せ参じお守りしたと言うのに無念ですぞ!」

 

 シバラクの口から出る着飾ったセリフ、心なしか顔つきも何時もより渋い。

 

「なん………だと…!」

 

「し、シバラク先生……」

 

「あの目…完全にのぼせあがっちまってるな」

 

 まさかのセリフにシン達も目を丸くする。苦笑いしながらもジャンが話を進める。

 

「あはは……僕はジャン・ロック・ラルティーグ。よろしくお願いします」

 

「あたしはグランディス・グランバァ。こっちのデカイのがサンソン、丸いのがハンソンだよ」

 

「助けてくれたシンの仲間だから信用するけど……」

 

「姐さんにちょっかい出した時には覚悟してもらうぜ」

 

 ハンソンとサンソンはシバラクを睨み付けるがシバラクは動じず笑い飛ばす。

 

「なんの……!障害が多いほど拙者の恋心も燃え上がるものよ!」

 

「こりゃ、痛い目を見なきゃわからんようだな」

 

「ダメよ、サンソン!シバラク先生は、良い人なんだから!」

 

「シバラクさん、冷静になれ」

 

 マリーとシンが間に入るが……

 

「マリーの頼みでも聞けねえ事ってのがあるな」

 

「シン殿、お主もわかるだろう!男には退けぬ時がある!」

 

「少なくともそれは今じゃない!」

 

 無理そうだ。

 

「ちょ、ちょっと、サンソン!ほら!ナディアも見てないで止めてよ!」

 

「……」

 

 そう言ってジャンはナディアに視線を向けるが……ナディアは俯いたままだった。

 

「元気ないね……」

 

「トリさんが喋れる事がショックだったのか?」

 

「そうじゃない……もう…色んな事にウンザリなのよ」

 

 そんなナディアの表情にシン達も視線を向ける。

 

「………」

 

「ナディア……」

 

「パリであなたと出会ってから、グランディスさんに追われて、海に逃げたら漂流する事になって……そこでノーチラス号に拾われて、パリに帰ろうとしたら、ネオ・アトランティスに捕まって……私達を助けてくれたノーチラス号はネオ・アトランティスの攻撃で沈んで、みんな、死んでしまって……」

 

「そんな事はない!ネモ船長やエレクトラさん達はきっと生きている!」

 

 ジャンの言葉も届かずナディアは首にかけた青いクリスタルを睨み付ける。

 

「もう…嫌…。全部…ブルーウォーターのせいよ…!」

 

 

「ブルーウォーター…?その宝石の事ですか?」

 

「そうさ、あの子が親と生き別れた時から身につけていたものだとさ…理由はわからないけど、ネオ・アトランティスがナディアを狙うのは、そのブルーウォーターのせいらしいんだよ」

 

「家族がくれた物をそう簡単に渡せる筈もないな……ッ!誰だ!?」

 

 

 思考を巡らせるが……シンが何かに気づく。足音が聞こえ、見慣れた顔の男が来た。

 

 

 

「ほう……そんな値打ち物を持っているのか」

 

「お前は……!」

 

「すごい奴がやって来た!そう!シュワルビネガー様だ!救世主ワタル!……と、その仲間達!此処で一気に片付けてくれる!」

 

 モンジャ村を襲ったシュワルビネガーと共に数体のブリキントンも現れる。

 

「ブ、ブリキントンもいます!」

 

「ちょこざいな!迎え撃つぞ、ワタル!」

 

「はい、先生!」

 

「ヌハハハ!女子供を抱えて戦えるも…ヌオォア!?」

 

「ちぃ、避けたか」

 

 アマリ達を人質に取ろうとでも考えていたのであろうシュワルビネガーだがセリフの途中に拳を振るうシンに慌てて距離を取る。

 

「この筋肉野郎は任せろ。ブリキントンは任せた」

 

「了解なのだ!ヒミコミコミコヒミコミコ!忍法、火炎の術!」

 

「私だって!ヒミコちゃん忍法に私のドグマを組み合わせます!熱と光……手を取り合って…!FLAMMA!」

 

  

 ヒミコとアマリが放った赤紫の炎がブリキントン達を焼き払う。………少し…いや、かなり禍々しい炎なのは気のせいだろう。

 

「やるなあの子!それに魔法もすごいもんだ!」

 

「ああ、俺達も負けてられないぜ!」

 

 ハンソンとサンソンもブリキントンに攻撃を仕掛ける。特にサンソンの拳がブリキントンの装甲を容易く貫く。

 

「ブ、ブリキントンを素手で…!」

 

「へぇ…大した怪力だ」

 

 その光景にシュワルビネガーは目を見開き、シンも感心の声を出す。

 

「出た、サンソンの馬鹿力!」

 

「馬鹿は余計だ、ハンソン!」

 

「いいよ、サンソン!ガンガンやんな!」

 

「ジャン!ナディアとマリーはお前に任せるぜ!」

 

「う、うん!」

 

 一方でワタルはシバラクと共にブリキントン達に剣を振るう。

 

「お前達の相手は僕だぁぁぁっ!」

 

 気合いを込めて振るう一刀はブリキントンを真っ二つに切り裂いた。

 

「凄いのだ、ワタル!」

 

「流石は救世主!良い太刀筋だぜ!」

 

「へへへ!先生と師匠との修行の成果見たか!」

 

 

「ふっ、ワタルの奴…」

 

「ええぃ!よそ見をするなぁぁー!」

 

 そんなワタルにシンは笑みを浮かべる。それが癪に触ったのだろうシュワルビネガーが拳を振るう……

 

「グフゥ!?」

 

「……………ウスノロ」

 

 

 ……が、シンには掠りもせず逆にシンのカウンターがシュワルビネガーの腹に突き刺さる。腹を抱えて後退り苦痛の表情を浮かべる。

 

「くそう、想定外の事態だ!こうなったら!」

 

 そう言い残し、シュワルビネガーは走り去った。

 

「顔の大きいオッサンが逃げてくのだ!」

 

「ワタル君、シンさん!」

 

「うん……敵が魔神を出してくるなら、こっちも龍神丸を呼ぼう!」

 

 

「ああ、いくぞ!!」

 

 

 それに対抗する為にシンたちも機体を呼び出す。……そんなシン達を見てクラマが怪しく笑っているのに誰も気づいてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 後編に続く!!

 

 

*1
アル・ワースと何処か別の世界が繋がり、異界の門が開く兆候

*2
ジャン達が乗っていた潜水艇。ネオ・アトランティスの空中戦艦に搭載された原子振動砲及び超音波砲と殲滅爆弾により大破

*3
アトランティス人の遺産である超科学をもって世界征服を目指す秘密組織

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