〈コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機していてください〉
既にパイロットスーツに着替え、コクピットに座していたシンは静かに目を開けた。
遂に“エンジェルダウン”作戦が決行された。既にウィラード隊が“アークエンジェル”と戦闘を開始しており、あの“フリーダム”も現れた。
「シン」
ヘルメットを片手に立ち上がったシンに、レイが声をかける。レイは滅多に見せない笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。お前と“デスティニー・インパルス”ならきっと討てる」
「……サンキュー」
シンは力強く笑みを返し決意をこめて歩み出す。シンが“コアスプレンダー”発進デッキへのエレベーターに乗り込もうとした時、険しい顔つきのアスランが入ってきて、シンに気づく。
「ーーシン!」
駆け寄るアスランにレイが立ち塞がる。
「アスラン…いい加減にしてください!また、敵ではないとおっしゃるつもりですか…!」
「どけ!レイ!!」
言い合う二人にルナマリアが駆け寄る。
「ちょっと二人共」
そんな時、シンが背を向けながら口を開いた。
「…思い出した事がある……俺は二年前、地球軍のオーブ侵攻の時、家族と逃げていた 。…開戦まで民間人の避難を完了させておかなかったオーブ政府を……アスハをぶん殴りたいと何度思った事か……そんな時、あるオーブのMSが地球軍のMSに向かって攻撃を仕掛けた……俺達だけじゃない……多くの一般市民が居たのにもかかわらず……オノゴロ島を焼き払った」
「シン…?一体なにを…「撃ったMSは青い翼でビームをバカスカ撃ってた」……まさか…!」
レイ達はそのMSに心当たりがあり過ぎた。
「オノゴロ島を皆を殺したのは……俺の家族を殺したのは……“フリーダム”だ」
シンの言葉にルナマリアは驚愕し……アスランは唖然とする。キラが民間人を殺した事に……レイですら目を見開いていた。
「復讐心がないと言えば嘘になるが……俺はこれ以上、奴の行為を許す事はできない」
そう言ってシンはエレベーターに乗り込み移動…“コアスプレンダー”に乗り込む。
「……ステラ……行ってくるよ」
首にかけたペンダントを握る。今ではこれが当たり前になりこれがシンの【SEED】発動のトリガーだ。光を無くした目で戦場を睨みながら叫ぶ。
「シン・アスカ、“コアスプレンダー”…行きます!!」
激しい吹雪の中、白い戦闘機が中央カタパルトから射出された。続いて“チェストフライヤー”、“レッグフライヤー”が飛び出し合体、MSとなる。更に青い翼の“デスティニーシルエット”が背部に合体“デスティニー・インパルス”が現れた。
持続戦闘力が圧倒的に不足している“デスティニー・インパルス”の弱点を無理矢理克服する為に“レッグフライヤー”にエネルギーカートリッジが搭載されている。これにより最大稼動で30分間、戦闘ができる。
光の翼を広げながら“インパルス”は“フリーダム”にライフルを連射する。“インパルス”に気づいた“フリーダム”は華麗な動きで回避する。
そして“ミネルバ”と“アークエンジェル”の戦闘が開始される。援護に向おうとする“フリーダム”だが、“デスティニー・インパルス”の高い、機動力とスピードからは逃げられない。
『クソ!』
“デスティニー・インパルス”とパイロットの力に舌を巻くキラ、“アークエンジェル”の援護に行きたいが…叶わない。
キラは既に【SEED】を発動しており、正確な射撃でライフルを放ち“インパルス”の頭部と武装を破壊しようとするが…
『いっつもそうやってーー』
“インパルス”のツインアイが輝く。
『ーーやれると思うなぁぁぁっ!!』
レイとの会話が蘇る。
《“フリーダム”は確かに動きが早い。射撃も正確だ……だが、あの機体は絶対にコクピットを狙わない。撃ってくるのは決まって武装がメインカメラだ》
ビームの雨を回避し“インパルス”が舞う。掲げた銃口からビームが放たれ、敵のビームと空中で交錯した。
何時しかニ機の距離は縮まり“インパルス”は「エクスカリバー」を抜き放つ。“フリーダム”もサーベルを手に取り。“インパルス”の腕を破壊しようと振るわれた光刃を紙一重で避け「エクスカリバー」を叩き込む。咄嗟にシールドでガードするが、対艦刀の威力は凄まじく吹き飛ばされる。
その隙を逃さず「テレスコピックバレル展伸式ビーム砲塔」を放つ。これもシールドで受け止めるが…“フリーダム”は更に吹き飛ばされる。斜面に叩きつけれる寸前で何とか体勢を立てなおし、白い雪煙を立てながら滑降していく。そこへ、“インパルス”が「エクスカリバー」を振り下ろす。
ギリギリ回避した“フリーダム”は両サイドスカートに設置されたレールガン…「クスィフィアス・レール砲」を放つ。放たれたプラズマ弾は“インパルス”の右足に直撃。装甲が吹き飛ばされフレームが露出する。
『ナメるな!!』
『くっ!』
それでも怯まず“インパルス”は「テレスコピックバレル展伸式ビーム砲塔」を放ち、“フリーダム”も背部ウイング内に計二門装備された「バラエーナ・プラズマ収束ビーム砲」を放つ。ぶつかり合う二つの光はやがて激しく弾ける。その衝撃で周りの雪が吹き飛ばされ、両機も後退る。ーー正に死闘だった。
「凄い……」
その戦闘は“ミネルバ”も捉えおりモニターに映されていた。ルナマリアは唖然とする。“フリーダム”と“インパルス”の動きはエース級を遥かに超えたものだった。
「シン、よせ!!キラは!!」
敵ではないと叫ぶアスランを冷たい目で見ながらレイはシンの……友の勝利を祈る。
『こんな……!これは!?』
キラは焦りを感じながら“フリーダム”を動かす。“フリーダム”は懐に飛び込み横一文字に切り裂こうとするが…虚しく空を切る。
“インパルス”が上半身を分離させ、かわしたのだ。明らかにコクピットを狙った攻撃にシンは苛立つ。
『結局…アンタのその【不殺】は…薄っぺらい信念なんだよ!』
コクピットを狙わなければ死なないと思っているのか…戦いたくないなら銃を握るな!!ーーそんな、シンの怒りは強くなる。
“インパルス”の「エクスカリバー」が“フリーダム”の片翼を吹き飛ばす。バランスを崩しながらも“フリーダム”再び「クスィフィアス・レール砲」を放つ。一つは「エクスカリバー」で切り払うが、もう1つが頭部右側に直撃…実弾等の物理的衝撃を無効化する【
この隙に、海上に出た“アークエンジェル”に合流しようと海に出たが…何かに気づきシールドを向ける。“インパルス”が投げつけた「フラッシュエッジ」だ。辛うじて受け止めたが、機体は大きくバランスを崩す。
『これでーー!!』
その隙を逃さず光の翼を強く光らせながら“インパルス”が「エクスカリバー」を構え突っ込む。
『ーー終わりだぁぁあっ!!』
シンの叫びと共に
ーー“デスティニー・インパルス”だ。頭部は右側が損傷…右足もフレームが露出し「エクスカリバー」もボロボロだ。
ーーそれでも勝ったのはシンだ。
(そんな……馬鹿な……)
アスランは唖然と立ちつくした。海上に残ったのは“デスティニー・インパルス”だけ。“フリーダム”、“アークエンジェル”の姿はない。
「…こんな筈は…!」
シンが勝ち、キラが負けるとは…アスランは予想していなかったのだ……
「ーーキラァァァァッ!!」
シンはコクピットを出て、手を差し出した“インパルス”の腕を渡り手のひらで立ち止まる。海面を見れば“フリーダム”や“アークエンジェル”の破片がうかんで見える。
討ったのだ……家族の仇をステラの仇を……喜びが溢れるが…同時に一つの真実を感じていた。
「………討っても…皆は帰って来ないんだな」
温かい家族…頼もしい先輩のハイネ……守りたかったステラ…それぞれの思い出が蘇る。
「………………」
シンは空に向かって顔を上げる……涙を流しながら。そんなシンを“デスティニー・インパルス”は静かに見つめていた。
END
次回予告
“フリーダム”を討ち称賛されるシン……そんなシンに宇宙に上がれと命令が下される。しかし、宇宙に上がったシンに謎の部隊が襲いかかる。“インパルス”は此処にはなく焦るシン……しかし、大地の名を持つガンダムが其処にはあった。
次回・機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【星を駆ける】
星を大地をーー駆けろ、ガイア!!