シンを乗せたシャトルが出発したその頃、レイはジブラルタルの巨大な格納庫に来ていた。
「“ミネルバ”所属、レイ・ザ・バレル、出頭いたしました」
「レイ、元気だったかね?」
「はい」
レイはデュランダルの顔を見たとたん、笑みを浮かべて近づく。
「シンは先程?」
「あぁ…“運命の聖剣”を取りに行ったよ……そしてこれがーー」
デュランダルがそう言うと、一斉にライトが点灯し、レイの目の前にMSが姿をした。円盤の様なものを背面に負い、その円周からは砲塔らしきものが八基突き出している。火力はかなりのものだろう。
「ZGMFーX666S“レジェンド”……君の新しい力だ」
「“レジェンド”……」
“レジェンド”見上げるレイ…
「レジェンドは量子インターフェイスの改良により、誰でも操作出来るようになった新世代のドラグーンシステムを搭載する実に野心的な機体でね……どうかな?」
“レジェンド”を見上げていたレイはデュランダルに訪ねる。
「ギル…この機体の元になったのはもしや…」
「…ああ、レジェンドの元となったのはZGMF-X13A“ プロヴィデンス”……ラウが乗っていた機体だよ」
ラウ……ラウ・ル・クルーゼ……前大戦で多大なる戦果をあげたが……実は地球軍に【ニュートロン・ジャマー・キャンセラー】のデータを渡した事が発覚しザフトでは名を口にすることはタブーとなっている。
そんなラウ・ル・クルーゼは…デュランダルの親友であり。レイの…兄だ。
「ラウの…」
「“運命の聖剣”を握るシンの隣に立つには“レジェンド”が必要だ……そして、“レジェンド”を使いこなせるのはラウの弟である君だけだ…」
「ギル…分かりました。レイ・ザ・バレル、“レジェンド”を受領します」
そんなレイに微笑んだその時…ジブラルタル全体に放送が流れる。
《緊急事態!先ほどアスラン・ザラがMSを奪い脱走した!至急、MSパイロットは脱走兵を撃破せよ!》
デュランダルは深刻そうに顔を歪め、レイは目を見開いた。
「もしやと思っていたが……本当に裏切るとは」
「やっぱり裏切るのか、みんなの信頼を……ギル!」
激しく怒るレイはデュランダルに問う。デュランダルが近くの端末を操作すると格納庫の天井が開いた。
「わかっているとも、“レジェンド”は出撃可能だ。行けるか?」
「勿論です!」
そう答えるとレイは“レジェンド”のコクピットに乗り込む。そして、“レジェンド”のツインアイが輝く。
「レイ・ザ・バレルーー“レジェンド”、発進する!」
平和と言う夢の為…伝説の力が目を覚ます。
嵐の海ヘ飛び立った“レジェンド”はすぐに奪取された“グフ”をとらえていた。
『アスラン・ザラに告ぐ。貴官には脱走とMS強奪の嫌疑がかかっている。速やかに武装を解除し投降せよ』
『レイか…!それにアレは…“プロヴィデンス”!?』
『やっぱり逃げるんですか、また?ーー俺は絶対に許しませんよ。ギルやシンを裏切るなんて事!!』
“レジェンド”がライフルを連射するが…“グフ”は滑るような低空飛行でかわしていく。
『俺はこのまま…戦う人形になるつもりはない!』
“グフ”は手首のビームガンを放つが“レジェンド”の左腕からビームシールド「ソリドゥス・フルゴールビームシールド」が展開され防ぐ。
『シンを人形にしているお前達を信じきれるか!!』
『……なんだと…?』
アスランは今…なんと言ったのだ?人形?シンを人形と言ったのか?
『過去に囚われたアイツを惑わし戦わせる!お前が求めるのは言われた通りに敵を殺す最強の戦士…シン・アスカだろ!!』
動きの止まった“レジェンド”に“グフ”はビームソードを抜き放って振り下ろす。
だが……
『ふざけるな!!』
レイの怒号と共に“グフ”の右腕はビームソードごと切り裂かれた。両脚の側面に収納されている「デファイアント改ビームジャベリン 」を抜き放った“レジェンド”が切り裂いたのだ。
『なっ!?』
『俺がシンを騙していると…皆との友情は偽りだと…妄想で人を裏切る貴様が…俺達の日々を侮辱するな!!』
確かに最初は【SEED】を持つ者として…その力を知る為にシンと行動を共にしていた。競い合う事もあった、殴り合う事もあった……しかし、同じ時を過ごしてレイにとってシン・アスカは唯一無二の親友となっていたのだ。
シンだけではない…“ミネルバ”の仲間達と過ごした日々は……“もう、長くは生きられない自分”にはかけがえの無い宝物なのだ。
それを土足で踏み躙られたレイの怒りが爆発する。それに答えるかの様に“レジェンド”がビームジャベリンを振るう。紙一重でかわした“グフ”は「スレイヤーウィップ」を繰り出すが、容易にビームジャベリンに切り裂かれる。
『クソ!』
『貴方はシンは過去に囚われていると言ったが…アイツは囚われていない…背負っているんだ!!自分の様な人間を出さない為に過去を背負って戦っているんだ!!』
“レジェンド”は背部プラットフォーム側面及び腰部に合計8基装備される小型ドラグーン「GDU-X5 突撃ビーム機動砲 」を稼動させる。
大気圏内では展開できないドラグーンもプラットフォームとの連結時は可動式砲台として使用出来る。
『貴様の正義を押し付けるな!!』
一斉に放たれたビームは次々と“グフ”を撃ち抜き、海に落ち爆発がおこる。
『シンは……最後まで貴方を信じていましたよ…!』
そう呟きながら“レジェンド”は基地へと戻っていった。
『……アスランは……』
「あぁ…裏切った…」
あれから一夜明けた…既にアスランが脱走した事は公式発表され…レイはプラントに居るシンに連絡をとっていた。
アスランが裏切った事はシンにとってもショックだった。最近ではすれ違ってばかりだけど……シンにとっては重要な存在だった。
『皆の様子は?』
「皆も…動揺している…最近の行動から疑問も抱く者を多くいたが…突然過ぎたからな……特にメイリンが一番ショックを受けている」
『確かに……メイリンはアスランに憧れていたもんな』
暫く沈黙が流れるがレイがシンの様子を訪ねる。
「そっちはどうだ?」
『着いて早々に特殊な機能を持った機体での戦闘シュミレーションばかりだよ……ミラージュコロイドを使った、【ゲシュマイディッヒ・パンツァー】・【スクリーミングニンバス】だったり、【ヴォワチュール・リュミエール】・【マルチロックオンシステム】……頭がパンクしそうだ…』
ため息をつくシンにレイは真剣に語る。
「シン……いよいよ、“ヘブンズベース”攻略…コードネーム、“ラグナロク”の決行日が決まった」
“ロゴス”との決戦が間近に迫っている。それはシンを奮いたたせるには十分だ。
『…………何時だ?』
「明日だ…待っているぞ」
『あぁ…戦争を無くす。ーー今度こそ…本当に』
通話が終わって暫くしてレイは少し寂しそうな顔をして呟いた。
「ギルと新しい世界…俺と“レジェンド”の代わりに…お前が守るんだ。“デスティニー”と共に…」
END
次回予告
始まったオペレーション“ラグナロク”…世界が求めるのは戦争の無い未来か?欲望に塗れた未来か?平和への夢を破壊者が薙ぎ払おうしたその時、紅き翼が空を駆ける。
次回・機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【運命の聖剣】
希望となってーー飛び立て、デスティニー!!