運命の英雄   作:DestinyImpulse

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七話・黄金の剣

 

 “ヘブンズベース”での戦闘は同盟軍の勝利で終わり、誰もが戦争は終わったと思っていたのだが…

 

「ジブリールがいない!?」

 

 レクルームに居たシン達はレイの言葉に驚愕した。

 

「いないって…そんな…」

「基地が降伏する前に1人だけこっそりと逃げたらしい、他のロゴスのメンバーは全て見捨てて…」

「何処まで卑劣なのよ…」

「やはりそう簡単には終わらないな…」

 

 レイの言葉に空気は重くなる中…シンは語る

 

「そんな事はない…!終わらせてみせる…俺達の手で、必ず…!」

「……そうだな…世界は変わる…俺達が変える」

 

 

 

 

 

 

 “ヘブンズベース”戦の処理が落ち着いた頃、シン達に勲章の授与式があった。

 

「“ヘブンズベース”戦での功績を称え、シン・アスカにネビュラ勲章を授与するものとする。おめでとう。2つめだな。いや全く素晴らしい」

「ありがとうございます」

 

 微笑む司令官の手を握る。レイも今回の活躍から“フェイス”に任命された。

 

 

 

「お先に失礼します」

 

 一足先に司令室を出て行こうとするシン達をタリアは呼び止め祝の言葉をかけた。

 

「おめでとう、シン」

「ありがとうございます」

 

 その時、司令室にやって来た将校が議長に慌ただしく報告する。

 

「議長!」

「何だ?」

「ロード・ジブリールの所在が分かりました」

「何…?」

 

 シン達は議長達の会話に聞き耳を立てた。

 

「カーペンタリア情報部からの報告です」

「カーペンタリアから?で、彼はどこに……?」

「…オーブです」

 

「なん…だと…!」

 

 ジブリールの所在…それはシンのかつての故郷…【オーブ】……その事実はシンを驚愕させるには十分過ぎるものだった。

 

 

 

 

 

 

 数日後、既にオーブ近海をザフト艦隊が包囲。回答次第では一気に戦闘に突入するこの状況で、オーブが出す回答とは果たして…

 

『貴艦らが引渡しを求めるロード・ジブリールなる人物は、我が国には存在しない。またこのような武力を持っての恫喝は、一主権国家としての我が国の尊厳を著しく侵害する行為として大変遺憾に思う』

「…まさか…!」

 

 オーブ政府の回答……シンは自分の予想とは違ってほしいと祈るが……

 

『よって直ちに軍を引かれることを要求する』

 

「馬鹿な…何故あんな馬鹿げた回答を…!あれじゃあオーブを攻撃してくれと言っているようなものだぞ…!!」

 

 オーブ政府の回答はレイですら目を見開く程だった。ルナマリアも複雑そうに顔を歪める。

 

「オーブと戦うことになるわね…」

「ふざけるな!!昔も今も…奴らにとって国民なんてどうでもいいってのか!」

 

 怒りを露にするシン。そんなシンにレイが問う。

 

「いいのか?オーブはお前の…」

「……………認めたくはないが、俺はまだオーブが好きなんだ…他の誰かに討たれたらその人物を恨むかもしれない……なら自分が討った方がマシだ」

「そうか……」

 

 例え自分の生まれ故郷と戦う事になろうとシンの覚悟は硬い。なら、自分が言う事はないとレイとルナマリアは悟りシン達はそれぞれの機体に乗り込んだ。既にオーブ攻略作戦…“オペレーション・フューリー”は開始されMS部隊が次々とオーブ本島に進行する。

 

「艦長、発進許可を!」

『……覚悟はあるのね』

「はい、オーブは…俺が討ちます」

『…分かったわ』

『ええ、艦長!?』

 

 タリアの言葉にアーサーが声をあげる。

 

『FAITH権限を使ってでも行くんでしょう?』

「はい」

『なら、私に止める権限は無いわね』

「ありがとうございます」

 

 “デスティニー”はカタパルトに向け移動が開始され通信コンソールに映るアビーが発進シークエンスを開始する。

 

『シン・アスカ、“デスティニー”発進スタンバイ。全システムの起動を確認しました。発進シークエンスを開始します。ハッチ開放。射出システムのエンゲージを確認しました。カタパルトオンライン。射出推力正常。針路クリアー。“デスティニー”、発進どうぞ……気をつけてね、シン』

「ありがとう…………シン・アスカ、“デスティニー”…行きます!!」

 

 “ミネルバ”から“デスティニー”が飛び立ち光の翼を広げてオーブに向う。後には“レジェンド”と“インパルス”も続き…オーブ軍の“ムラサメ”や“M1アストレイ”を次々と撃墜する。あくまで防衛目的で編成されたオーブ軍では、常に最前線で生き抜いてきたシンと最強のMS“デスティニー”を止める事などできる筈もない。

 

 その時、ルナマリアがある事に気づく。

 

『嘘でしょ!民間人が避難されてない!!』

 

 ルナマリアの声を聞き市街地を見れば……其処には政府から何も聞かされず混乱し逃げ惑う民間人の姿があった。

 

『ここまで酷いとはな……』

 

 レイはもはや怒りを通り越して呆れるが……シンはその光景を過去と重ねていた。

 

 あの時だって……オーブ政府は他国の侵略を許さないと言う理念に拘り……開戦まで民間人の避難を完了させておかなかった。

 

『何処まで……何処まで犠牲にすれば気が済むんだ……あんた達は!!』

 

 “デスティニー”のツインアイが輝き“ロンゴミニアド”を起動する。真紅の槍となった“デスティニー”は立ちふさがるオーブ軍を殲滅しながら国防本部を目指す。少しでも早くこの戦闘を終わらせる為に……

 

 しかし、“デスティニー”に向けて通常より高いビームが放たれる。勿論、“ロンゴミニアド”を貫けはしないが…明らかに他とは違う敵を確認する為に“デスティニー”は止まった。

 

『黄金のMS?』

 

 “デスティニー”にビームを放ったのは、黄金の装甲を持つMS…“アカツキ”である。

 

『全身黄金って……品がないのよ!!』

 

 追いついた“インパルス”がビームを放つが…

 

『嘘!ビームを跳ね返した!?』

 

 なんと“アカツキ”の当たったビームが弾かれ“インパルス”に跳ね返ったのだ。慌てて“インパルス”はよける。

 

『ならたたっ斬るだけだ!!』

 

 「アロンダイト」を構え突撃しようとするが、“アカツキ”のパイロットから…

 

『待て、ザフト軍!!私はウズミ・ナラ・アスハの子、カガリ・ユラ・アスハ!』

『アスハ!?』

 

 アカツキのパイロットがカガリであることにシンは目を見開いた。

 

『その声は……シン!…私は戦闘を止めるために此処に来た、ここは退いてくれ!』

『何だと…?』

 

 初めて戦闘に介入してきた時と全く変わらない身勝手な言葉にルナマリアは怒鳴る。

 

『戦闘を止める…?今更あなたが出て来て何になるって言うの!今まで散々戦場を混乱させておいて!!』

『それは…私はオーブを守るために…』

『ならば何故、貴方は国民を見捨て“アークエンジェル”に行ったのですか?あなたが不在でなければ、ジブリールはオーブには来なかった。貴方が身勝手な正義を振りかざさずにオーブに戻っていればこのようなことにならなかったのでは…?』

『そ、それ『もういい…!』…シン?』

 

 レイに反論しようとしたがシンの声が遮った。

 

『もう…あんた等の理想論は聞き飽きた!』

 

 “デスティニー”が「アロンダイト」を“アカツキ”に向ける。

 

『レイ…ルナマリアを連れて国防本部に行け……コイツは俺がケリをつける』

『わかった…』

 

 “レジェンド”と“インパルス”は国防本部へと向かう。それを“アカツキ”が止めようとしたが“デスティニー”が斬りかかる。

 

 慌ててシールドで受け止めるがシールドは真っ二つに切り裂かれた。

 

『シン!お前…オーブは自分の故郷だぞ!!』

『それを戦場に変えたのは…お前等政府だろ!!国民の命と、オーブの理念。アンタはどちらが大切だというんだ!オーブという器だけを守りたいのか。その器に住む国民を守ろうとは思わないのか!』

『オーブの理念!それは必ずや全てを守る事になる!』

『その為なら全てを犠牲にすると!国を焼こうが構わないと!!』

 

 “デスティニー”が“アカツキ”を蹴り飛ばす。

 

『くっ…そ、それは!』

『そのMSはアンタにお似合いだよ…外側ばかり着飾った金メッキは!!』

 

 “アカツキ”に斬りかかろうとした“デスティニー”に数条のビームが襲いかかる。“ムラサメ”の部隊が“アカツキ”を守る様に突撃する。

 

『そんなもので!!』

 

 だが、“デスティニー”には通じない…ビームは避けられ…すれ違いざまにビームウイングで切り裂かれて全滅する。

 

『止めろー!!』

 

 “アカツキ”がライフルを放つが“デスティニー”には掠りもせず、シンは出撃する前に【SEED】を発動しており正確な射撃で逆にライフルを撃ち抜く。

 

『クソ!』

 

 “アカツキ”がビームサーベルを抜き放ち“デスティニー”に斬りかかるが…その前にサーベルを持った左腕を掴まれ止められる。

 

 次の瞬間…掴まれた左腕が爆発した。

 

『なっ!?』

 

 カガリが目を見開く……“デスティニー”の左右の掌底部には小型ビーム砲。「パルマフィオキーナ」が内蔵されている…零距離から放たれた光は、いとも容易く“アカツキ”の左腕を破壊した。

 

 悪あがきと言わんばかりに背部ストライカーパック「オオワシ」に装備されている2基の高エネルギービーム砲を放つが…それは“デスティニー”の残像を撃ち抜くだけで既に背後にまわっていた“デスティニー”は「パルマフィオキーナ」で「オオワシ」を破壊する。

 

『うぁぁぁあっ!!』

 

 「オオワシ」を破壊され“アカツキ”は市街地に墜落する。さっきはまだ、民間人が居たが…どうやら何処かに避難したようだ。

 

『う…うっ!』

 

 なんとか“アカツキ”が立ち上がるが……既に“デスティニー”は目の前に立っていた。

 

『周りを見てみろよ……二年前と何も変わらない』

 

 国は焼かれ…逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえる。二年前に家族と逃げていたあの時と変わりなかった。

 

『俺達は恨まれるだろうな……オーブに攻めて来た俺達と……国民より理念を選んだアンタ等……この繰り返しは此処で終わりにする』

 

 “デスティニー”は右腕を掲げ手刀の構えを取る…掌の「パルマフィオキーナ」と手甲に装備されている「ソリドゥス・フルゴール ビームシールド」を起動する。この二つはビームガンやビームソードとしても運用できる装備であり。この二つの光が混ざり合い“デスティニー”の手刀が黄金の剣となる。

 

 これこそが“デスティニー”最大の武器…「パルマフィオキーナ・エクスカリバー」…マニピュレーターに大きな負荷がかかる為、使いどころを選ぶがビームサーベルやビームシールドすら切り裂く事ができる…正に奥の手である。

 

『あ…あぁ…!』

 

 カガリは唖然として“デスティニー”を見る……そして悟る、死が間近に迫っている事を…

 

『理想の中でしか生きられないのなら………抱いたまま溺死しろ!!』

 

 シンの叫びと共に“デスティニー”が「パルマフィオキーナ・エクスカリバー」を振り下ろす…カガリが最後に言おうとした言葉は……

 

『ア…アスラーー』

 

 ……愛しい人の名前だった。黄金の剣が黄金のMSを切り裂き…“アカツキ”は炎を吹き出し爆発した。

 

 

「シン!大丈ーーっ!」

 

 通信コンソールに映るアビーがシンの無事を確認しようとしたが……息を呑んだ。シンは泣いていたのだ……国を焼いた自分にはもう、故郷の大地を踏む資格はない…その事実がシンの胸に刻まれる。

 

『アビー…どうした?』

「………ううん、何でもない……アスハが落とされた事でオーブの士気が下がっているわ。一気にケリをつけましょう」

 

 アビーは見なかった事にした……今はそっとしておくべきだと。

 

『あぁ……少しでも早くこの戦闘を終わらせる…!』

 

 

 そう言ってシンは“デスティニー”を動かす。悲しみを抱きしめて……

 

 

END

 

 

 




次回予告

 未だにジブリールの所在はわからない……オーブをこれ以上焼き払われない為に空を飛ぶシンの前に立ちはだかかるのは倒した筈の存在だった。オーブの空に二つの翼が交差する。

次回・機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【譲れぬ意思】

 譲れぬ思いーー貫き通せ、シン!!
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