病室
ガランとした病室にノックの音が響いた。
「どうぞー」
そう言うと、ドアが開き、俯いた様子でリタが入って来た。
「よぉ、そんな辛気臭い顔してないで座ったらどうだ?」
「・・うん」
ベッドの横にある椅子に座る。
「えっと・・その・・」
何か言おうとはするが、口ごもっているようだ。
「その・・。目、どうだった・・?」
「あ、あぁ、一時的なものらしいし、明日の手術で治るってさ」
「・・柏木君って嘘を言うとき、無意識に視線が右に向いてるんだよ」
「えっ!? 嘘!?」
「嘘。でも、その反応からもう一人の嘘つきが分かったね・・」
「ぐっ」
ぬかった・・、まさかこんな初歩的な罠に掛かるとは・・。
「分かったよ、正直に話そう」
「・・・・」
「簡単に言えば失明して、明日の手術でマジカルサイエンスな目を入れる
説明を聞く限りだと、普通の目より性能がいいな」
「そう・・なんだ・・」
「だからさ、そんなに落ち込むなよ
一生見えないわけじゃないんだからさ」
「でも・・でも・・」
リタの目から涙が零れる。
左目の眼帯からも涙が漏れていた。
「泣くなって、俺はお前を守れて後悔してないし
目が無くなったことだってむしろ誇らしいくらいだ
だからさ・・」
この言葉は俺のエゴだ。
今の現状を逃げるだけの言い訳だ。
でも、俺にはそんな言葉しか思いつかない。
「だから、もし強くなって、俺をボコボコに出来るくらいに強くなったら
お前の言うこと何でも聞いてやるよ。
好きに罪滅ぼしするもよし、召使にするもよし
俺的には後者が嬉しいんだけどな」
「どうして・・?」
「だって、こんな可愛い子の執事になれるなんてご褒美以外何でもないだろ!」
某借金執事のような苦労人にはなりたくは無いが・・。
やるとしたら某吸血鬼漫画のようなジョンブルを目指そう、うんそうしよう!
「・・柏木君は卑怯だなぁ・・」
「ん? 何か言ったか?」
「何でもない! でも、その言葉、忘れないでね」
「当たり前だ。男に二言はねぇ」
あのワンサマのようにはならないようにしないとな。
「うん・・分かった! 私、強くなる・・
そして、柏木君を守れるぐらいに強くなるね!」
「おう、待ってるぜ」
「じゃあ、私時修練してくるから行くね」
そう言って立ち上がる。
「また明日な、ってか任務後で疲れてるだろ、寝とけ」
「うーん・・でもやっておかないと寝れないし・・」
「なら軽くにしとけ」
「そうだね、そうするよ。じゃあ、また明日」
「おう、また明日」
リタが部屋を出て、また部屋が静かになった。
「うーん・・一人でこうしてるのも暇なもんだな」
「なら・・話し相手になってやろうぞ」
「!」
姿は見えない、なのに声は聞こえる・・幻聴か?
「俺も疲れてるんだな・・こんな幻聴も聞こえるようになるとは・・」
「上官を幻聴扱い・・、ベッドの下を除いてみな・・」
幻聴に言われるがまま、下を除く。
「やぁ」
ベッドの下には、ミリオタ妖怪がいた。
「何やってんすかフィリーネさん、ってかいつからそこに!?」
「んしょ・・」
ベッドの下から這い出て、椅子に座る。
何だよこの人・・。
「リタの背中に隠れて・・座るタイミングでベッドの下にスライディン」
「ス○ークか!」
そしてそんな行動を見抜けなかった俺は無能兵ですね・・。
「潜入任務の基本だよ・・」
「って、それよりも、今までの話し・・聞いてました?」
「ばっちりと・・」
「・・・・」
プライバシーとは何だったのだ・・。
「くさいセリフ・・」
グサッ
「変態的欲求・・」
グサグサッ
「でも・・、女を守れる男はかっこいいよ」
「っ・・」
あぁ・・、どうしてこうも不意打ちしてきますかねぇ・・。
泣きそうですよ俺・・。
「あれ・・泣いてる?」
「泣いてないです・・!」
「泣いてるでしょ・・、おねーさんの胸を借りてもいいのよ・・?」
「・・・・遠慮しておきます」
無い胸張られてもねぇ・・。
「柏木、遺言はあるか?」
そう言って無表情で拳銃を眉間に突きつけられる。
そんな低い声出るんですねぇ・・。あの、眉間に銃口でぐりぐりしないでください。
「柏木が失礼なこと考えた気がしたから・・」
「すみませんでした・・」
「認めたってことでオーケー・・?」
カチリと眉間の拳銃から音が聞こえる。
「マジですみません! ですからセフティ外さないでください!!」
「反省した・・?」
「反省しました・・」
「ならよし、おねーさんだからね、許そう・・」
「そうッスね・・、ありがとうございます」
その後少し沈黙が続いたが、フィリーネさんが立ち上がり、沈黙を破る。
「まぁ・・、柏木が寂しそうじゃなくてよかった・・」
「俺は寂しがりやじゃないですよ!」
「どうだか・・。仕事もあるし、じゃ・・」
そう言って、部屋から出て行く。
何かどっと疲れた・・。
そんなことを思っていると、またしてもノックの音。
「はいはーい・・どなたですかー」
入って来たのはアリーセさんだった。
「名誉の負傷と聞いたが、元気そうだな」
「アリーセさん達はどうでしたか?」
「私達? 愚問だな」
「流石っすね・・」
まぁ、あのメンバーなら無双だっただろうな。
「柏木は・・中々大変だったらしいな」
「まぁそうですね、でも後悔はしてません」
「それでこそ日本男児だ。やはり日本人には大和魂が継がれているんだな」
「あはは・・」
ホントにドイツ人ですか? 日本人よりも日本人だ。
「だがな柏木、自身を蔑ろにはするなよ」
「それは・・分かっています」
「不安になる目だが、これだけは言わせてもらう
お前が傷つくことで悲しむ人間がいる事を忘れるなよ
この隊全員だけのことじゃない」
「はい、分かりました・・」
「まだ不安は残るが・・、まぁいいだろう
私は行くが、その言葉、よく考えろよ」
「分かりました。いい機会ですし考えてみます」
「そうしろ。ではな」
そう言って部屋を出る。
・・・・自分を蔑ろねぇ。
そんなことを考えていると、またしてもノックの音。
次はクラリッサさんか隊長かな、流れ的に。
「柏木、入るぞ」
そう言って入って来たのは、隊長とクラリッサさんだった。
「予想的中!」
「何のことだ?」
「いえ何でも。それで、どうしたんですか?」
「ああ、貴様のPCを渡しに来た。あとは様子を見にな」
「隊長と鉢合わせになったから一緒に来た
様子を見たところ元気そうだな」
「体はぴんぴんしてますよ」
「目の方はどうだ?」
「えーっと・・、失明です」
「・・そうか」
「でも! 明日の手術で特別な義眼を入れるので大丈夫です!」
そのことを言うと、隊長が驚いたような顔をした。
「!? まさか・・擬似化した越界の瞳か!?」
「柏木、まだアレは実験段階なんだぞ、それを了承してか?」
「はい、強くなれるならできる限りのことはしたいです」
「・・貴様がそう判断したなら私は何も言わん」
「隊長!?」
「クラリッサ、柏木の覚悟を無駄には出来ん
それに、あの顔はテコでも動きそうに無いぞ」
「・・柏木、適合の失敗は許さないからな!」
「了解です!」
「話もまとまった所で、これを渡しておくぞ」
そう言って俺のノートPCを渡す。
「これで何をするんですか?」
「今回の任務のレポートだ。上官も目を通すものだ
あくまで〔任務について〕書け」
「・・成る程、分かりました」
「?」
「クラリッサ、後で話がある
ではな柏木、精々頑張ることだ」
「分かりました」
そして二人が部屋を出て行く。
さーて、書きますか。
隊長の言いたいことは分かった。
つまり、救出した子たちについては書かないってことだな。
確かに、あの子たちのことが知られたら、また利用される可能性があるからな。
こうして、レポートを書き終え
皆との会話で疲れたらしく、俺は眠った。
今回は文字数少な目ですね
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