――ごめんね、こんな方法でしか君を救えない僕を許さないでくれ――
試作実験室
「ん・・」
「気分はどうだい?」
変なノイズ音を聞いてから記憶が無い。
「あぁ・・変な気分だ」
頭がぼーっとして、考えが纏まらない。
「ぼーっとすると思うけど、副作用だから数分で治るから心配しないでね」
「そうなのか・・」
なんと言うか・・喪失感? 何かが欠けた様な感覚。
何が欠けたとかは分からないんだが・・。
「これで治療は終了、部屋に戻ってていいよ」
「りょーかい」
実験室を出て、少しおぼつかない足取りで部屋に戻った。
自室
部屋に戻り、目を覚まそうと洗面器に冷水を溜め顔を洗う
「んー・・」
少しは目が覚めたかな。
時間を確認すると12時を過ぎており、訓練タイムは終わっていた。
「14時か、ってことは・・やることなくね?」
うーむ・・、何もすることが無いな・・。
何か無いかと考えていると、部屋のドアが開いた。
「む、帰っていたか」
来たのは書類を片手に持った隊長だった。
「ついさっき終わりました」
「話は聞いているが、調子はどうなんだ?」
「んー・・まだ何ともいえません」
自分自身まだどうなったか分からんしな。
「そうか・・それについては明日確認だ」
「了解です!」
うん、明日の予定は確保できた。
でもさぁ・・。
「どうした柏木」
「いやぁ・・今日の予定をどうしようかと」
「そう言えば午後からはフリーにしていたな
それなら息抜きに街に出てみたらどうだ?
まだ観光らしい観光をしていなかっただろ」
「そう言えば・・」
ドイツに来てから観光してないな・・。
「タグさえ持っていれば私服での外出は許可されている
明日から厳しい訓練が待っているんだ、今のうちに遊んでおけ」
明日から厳しくなるのか・・。
「り、了解です・・」
「消灯までには戻ってくるように
軍人としての自覚と規律を守るようにな」
「はい!」
出かけるために私服に着替え、財布とスマホを持ち外へと旅立った。
とある路地裏
「で、だ」
俺は見知らぬ路地裏にいた。
ってか見知らない場所しか無いのに知らない間に大通りから外れていたようだ。
「うーん・・」
道を聞こうにもドイツ語は分からん。
それに追い討ちを掛けるかのように人がいない。
「まさか・・迷子?」
さーて・・ここにいても始まらない、歩こうじゃないか。
歩けば誰かしろ出会うだろう。
重い足取りでじめじめとした路地裏を進んだ。
数十分後・・・・
一向に大通りに出れる気配が無い。
派生している小道は多いが入ったら終わりな気がする、迷子的な意味で。
絶体絶命の中、薄暗い路地裏に漏れる人口の光。
「み、店だぁ!」
その光に駆け寄り、何の店か見てみると・・。
[模型命]
達筆で書かれた慣れ親しんだ文字、
あれだ、外国で日本語見ると安心するよね。
藁にも縋る思いで店のドアを開ける。
カランカランッ
「・・・・」
店の中には、雑に積まれているプラモの箱の数々、
ところ所には完成された模型がガラスケースに飾られている。
奥に進むとレジカウンターの前に髪の長い白髪の老人が座っていた。
「いらっしゃい・・んん? あんたぁ日本人か・・」
「見えてるのか?」
長い前髪で顔が見えてないのによく分かったものだ。
「故郷の匂いがしたんでなぁ、こんな辺鄙に何のようだ坊主」
「客、とは少し違うな、道に迷って途方に暮れてたんだよ」
「かっかっかっ、そりゃ幸運だったのぉ」
「幸運?」
「まぁ店を回ってみな、模型好きならすぐ分かるわい」
模型は好きだが・・。
店を回り適当に見ていると
「こ、これは!?」
超合金ゴールドマジ○ガーZだとっ!?
それにこれは初期のガン○ラ! 未開封の実物は始めてみたぜ・・。
驚きを隠せないまま商品を見ていると、小さく置かれたガラスケースに絶句した。
「撃震!? これは瑞鶴・・、バラライカまでもっ」
どれもIS仕様になっている戦術機の模型・・何故ここにある。
「じいさん! 何でこれが!?」
「でけぇ声出すな、こいつぁ企業が作ったISの模型だ」
「なにゆえここに!?」
「技術者の一人がわしの馬鹿息子でなぁ、処分する初版を貰ったわけだ」
世界って意外と狭いんだな・・。
「実装されてないバラライカを知ってるってこたぁ、企業の人間か?」
「一応テストパイロットをやってるからな」
「ってこたぁ、噂のパイロットか」
「人気じゃない方のな」
「かっかっかっ、そうでもねぇぞ」
話を聞くところ、一夏は女性を中心に人気で、
俺は男に人気なんだとか・・。
「坊主のISはフルスキンだからのぉ、ロボ好きの男には人気ってわけだ」
「だよね・・そう言う人気なら問題ない、うん」
学園での影響が外にまで漏れてたかと思ってひやひやしたぜ・・。
「かっかっかっ、まぁプラモが好きなら奥の棚も見てみな
奥はミリタリー専門だからのぉ」
「マジですか、なら見るしかないな」
老人の指差す方に行く。
「おぉ・・」
戦車、戦闘機、軍艦、ジオラマ素材、自分で組み立てるモデルガンまでも・・。
「装甲車もあるじゃねぇか」
近づいて手に取ろうとすると
横に青のワンピースを着た金髪の女の子がいることに気づく。
その子は手を伸ばしてぴょんぴょんと飛び跳ね、上にある箱を取ろうとしていた。
「おいガキンチョ、何が欲しいんだ?」
あ、日本語で話しても通じるわけ無いじゃん。
そんなことを言った後に考えていると、足に鈍い痛みが走った。
蹴られたであろう右足を抱えて蹲る。
「いってぇぇぇっ! 何しやがるっ!! っ!?」
顔を上げると、見覚えのある顔が見下ろしていた。
「え、えーっと・・フィリーネさん?」
髪を下ろしているせいで初めは気づかなかったが・・。
「ガキンチョ・・?」
「スイマセンでしたぁぁぁっ!」
光の速さで土下座をしていた。
我ながら見事な土下座をしているはずだ。
「すみません・・でしょ?」
そう言って俺の頭に足を乗せ、軽く踏みつけられる。
「す、すみません・・ッ」
この状況見られたら絶対誤解される。
あ、でも幼女と妄想して踏まれると何だか良いような・・って良くないっ!
「もっと踏まれたい・・?」
「いえ・・出来れば足を退けてくれませんか」
「もっと踏んで欲しいんでしょ・・変態」
「一人で勝手に話を進めないでくださいよっ!」
いかんいかん・・、このままだとフィリーネさんの流れにもっていかれる。
頭の足を無視して立ち上がる。顔を上げると、白いものが一瞬見えた気がした。
うん、一瞬だから、あれが何なのか一瞬過ぎて分からなかったからっ。
「やっぱり変態じゃん・・変態」
「見てませんから! ホント見てませんから、二回も変態言わないでください!」
「地味なのは嫌い・・?」
「いえ、シンプルな白も魅力の一つかと・・・・ハッ!」
し、しまったぁぁっ!
「柏木は単純・・それに見たとは一言も言ってない」
「謀ったなぁ・・」
「単純馬鹿め」
くそぅ・・何かフィリーネさんには負けっぱなしな気がするぞ・・。
「あーこれ欲しかったんだよねー」
フィリーネさんが手に取っているのは1/200の戦艦大和
おいおい・・日本じゃ3万超えですよ・・。
「柏木・・わかるよね?」
「んな横暴な・・」
「女の子の秘密は高い・・」
「へいへい分かりましたよぉ・・」
渋々買うことになってしまった・・。
箱をレジに持って行く。以外に重いな。
「よぉ坊主、気に入ったもんでもあったかぁ」
「気に入った物を持ってきたのはこの人ね」
「んん? あぁ、フィリーネか」
「知り合い?」
「常連・・」
「週に1回は来てるなぁ」
「来すぎでしょ!?」
その後、大和を買うと、それを抱えて一緒に帰るハメに・・。
「へぇ・・迷子になってたんだ・・ふぅん」
「迷子の何が悪いんですか・・慣れない土地なんですから仕方ないです」
「悪いとは一言も言ってない・・」
そんな会話をしていると何やら視線を感じる。
「・・何です、これ」
「はぁ・・面倒なことになった」
フィリーネさんがそう言った直後、
細い路地から何人か柄の悪そうな男が出てきた。
「これはもしや・・」
「うん・・日本で言うカツアゲ?」
そんな生易しいものではない気がするんだけど・・。
一人の男がポッケからナイフを取り出し、刃をチラつかせて何か言っている。
「何て言ってるんです?」
「血を見たくないなら財布を置いていけだって・・」
「うわぁ典型的」
自分を無視して会話しているのに腹立ったか、俺に目掛けてナイフを振りかざす。
刃が自分を刺す前に相手の右手首を抑え、内側に手首を捻りナイフを落とす。
そのまま手首を離さずに自分の脇に持って行くように引き、顔面に肘鉄を当てる。
怯んだ隙に相手の頭を掴み、足を引っ掛ける。
地面に伏せた男の腹に一発パンチを入れてようやくダウンしたようだ。
「ひゅー・・やるねぇ」
「んで、お前らはどうするんだ?」
唖然としている男達を睨むと、ダウンした男を抱えてそそくさと逃げた。
「はぁ、路地裏はどの国でも治安悪いですね」
「ああ言うゲスは消えないからね・・仕方ないね」
引き際もよかったしな。
多分知らない顔の俺を見つけたから狙ったんだろう。
「さて・・頑張った柏木にはジュースを奢ってやろう」
「・・ありがとうございます」
その後の帰路は実に平和なものだった。
最近暑いですねぇ
外での仕事のせいで毎日地獄ですわ
前振りが言い訳ではありませんが、更新が遅くなってスイマセンっ
誤字脱字がありましたら報告お願いします