バンドリらしくない世界で紡ぐ逆襲劇【ヴェンデッタ】 作:熊影
忘れもしない朝見た夢の元凶、幸せだったあの時の全てを壊した張本人。
何より大切な居場所だった2人を絶望させた糞野郎、こいつはそいつと同じ言葉を吐きやがった。
このまま逃すわけにはいかない、必ず知ってる情報を全て吐かせる‼︎
「…………あいつのことを知っていてその反応、どうやらあいつの仲間の可能性はなさそうだね。」
けど、と続けて言葉を告げようとした奴の足元には見たこと無い模様が円形に、3人を包む形で現れる。
「悪いけど本命は別でね、僕の事を追って来たいなら海原灰翔(うなばらかいと)と一緒にここに来なよ、他の3人と一緒に待ってるから。」
「っまて‼︎」
そう言って何かを投げ渡してきて、同時に3人の姿は光に包まれ消えた。ソナーでも一切感知できない。
恐らくはゾーンメモリと同じか似た能力、あいつは一体どれだけの能力を持ち合わせているんだ?
「……ここで待ってるねぇ。」
奴の話を信じるなら今投げ渡されたものーー1枚のカードに書かれた住所に奴は居るのだろう。それも病院に向かった筈の3人を含めた5人を人質として。
蘭たちを助けるのは当然だが、海原灰翔とやらを連れてこないことには5人に危険が及ぶだろう、それは避けなければならない。
多分その海原ってのが件のカイ君なのだと思う、このタイミングで関わってくるとすれば彼しかいない筈。
誘拐犯の、仮面野郎の話を信じるならばカイ君もまた転生者ーそれも俺と関わりが高そうな奴。
現段階で分かるのはそれだけ、あとは直接本人に尋ねなければならない。
しかし今は病院に行くのが先決だ、カイ君とやらを迎えに行かなければならない。
奴は本命だと言っていたが此方としては巻き込むに等しいのだ、幾らライダーの力でも引き金を引くより早くは動けなかった、アクセルメモリが使えれば話は別だろうが……
本当に自分の弱さが嫌になる、取り敢えずはカイ君が居るのだろう病院に行かなければ。
ーー数十分後、病院の敷地の前に俺は居た。
仮面野郎が渡したカード、あれにはカイ君の病院も記入してあった。どうもかなりの情報網を持っているようだ。
恐らくは今この瞬間も俺を何処かで見ている筈、厄介なことこの上ない。
また、蘭たちのことは既に翔太郎さん達に報告しているのだが、その際に新たな事実をフィリップに告げられる。
なんと、既に蘭たちをつけ回していた集団は全員捕まっていたそうだ。時間にして俺たちが丁度花咲川に向かう事を決めた時には。
しかもストーカーが言うにはメモリも使用したとのこと、それでも勝てなかったと。
アントメモリが仮面野郎の手に渡ったのはこの時だろうが、そもそもアントメモリは1本しかないとのこと。
ならば先程倒した奴らはなんだったというのか、実はあの後倒した筈の連中全員が消えていた。
もちろんブレイクした筈のメモリさえもだ、あたかも幻のごとく消えたものだから益々分からない。
悪い話は続く、増援を依頼したのだが都合悪く依頼が、しかもドーパント関連のものらしく対応出来ないとのこと。
だから今回は俺一人、しかも他の人間を巻き込む形て5人を助けなければならない。
最悪切り札を切る覚悟をして、まずは受付にーー
「貴方が、奴が言っていた人だろうか。」
唐突に掛けられた声に行動は止められる、誰だろうかと確認してーー絶句。
「急に声をかけて済まない、だがどうしても聞いてほしいことがーー」
見覚えのある、どころではない。
その何処までも優しげな顔立ちを、海の如くに透き通った蒼の両眼、唯一違うのは髪の色が白ではなく黒であるくらいで。
背格好すら記憶の中にある姿と寸分違わないその姿に、思わず口にしてしまった。
「お、前……アッシュか?」
「っ⁉︎なんでその名前をーーって貴方は、まさか……」
急に呼ばれた名に驚くのは一瞬、俺の顔を見て次は別の意味で驚愕していた。
まさか、アッシュ……お前だったとは流石に予想できなかった。
「ゼファー、さん……なんですか……」
6年前に思い出すことになった記憶、前世の記憶。ゼファー、確かにそう呼ばれていた。
今ここに、冥王と呼ばれた男と新たな英雄となった男の運命が、ここに交わった。