バンドリらしくない世界で紡ぐ逆襲劇【ヴェンデッタ】 作:熊影
「あんたは毎度毎度可愛い子は口説かなきゃすまんのかー‼︎‼︎」
「待て亜樹子⁉︎別に口説いてるわけじゃなくてハードボイルドにーー」
「ハーフボイルドが何言うかぁ‼︎」
「グベラッ⁉︎⁉︎」
応接間、玄関付近の来客用ソファの近くで繰り広げられるのは、日常茶飯事な光景で。
最早伝家の宝刀としか言いようのない、無駄のない動き、無駄のない体捌きからのスリッパによる一閃が男の頭に叩き込まれ、無駄に心地良い快音を響かせる。
とまぁ、実に介入するだけ無駄な光景に溜め息溢して、ソファから少し離れたところで苦笑している同居人の1人に声を掛けた。
「おはようフィリップ。朝からなにごと?」
「おはよう尚冬、いやなにアキちゃんがこんな時間から依頼人を連れてきてね。何やら急ぎの用らしいけど、その依頼人に翔太郎が急に興奮してね。ハードボイルド風に挨拶し始めたらあぁなった訳さ。」
「結局いつも通りか……」
理由は分かったので直ぐに興味が無くなったが、別の事に興味が湧いた。
フィリップの言う依頼人、先程は2人の影にいたため見えなかったが、確かにソファには見慣れない人影が5人見えた。
見た目は俺と変わらない位の年齢の少女達だ。ただ翔太郎さんが騒ぐのも分かる位に揃いも揃って美少女だらけ。
赤メッシュにピンク、茶髪に灰色に紅色とバラバラの髪色、これだけ目立つ容姿なのに少なくとも俺は彼女らに関して一切知らない。
この街の住人であるならこの容姿だ、少なからず噂は入る。にも関わらずに知らないのなら別の街から来たのだろう。
何分俺には情報収集には実に適したものがあるからなのだが、今はいいだろう。それよりもやることがある。
「フィリップ、2人を頼む。俺は客人の飲み物を入れてくる。」
「それが良さそうだ、頼んだよ。」
返答には手を振って答え、キッチンを目指して歩き出す。
はてさて所長が急ぎだと連れてきた彼女達は、果たしてどんな依頼を持ってきたのかと少し気になりながら、手早く準備するとしよう。
ーー数分後。
「先程はうちの者がお見苦しい姿をお見せしました。良ければこちらをどうぞ。」
人数分(自分たち含む)の珈琲を御盆に乗せて応接間に戻り、先程の醜い争いについて謝罪しながらコーヒーを提供する。
知り合いにコーヒーを淹れるのがプロ顔負けと言ってしまうくらいに絶品を淹れる人がいて、その人から教わったコーヒーだが、果たしてお口に合うか心配だが今はすべきことをしよう。
「ようこそ鳴海探偵事務所へ。私はこの探偵事務所に所属する探偵の1人、詩人尚冬(しびとなおふゆ)と申します。」