バンドリらしくない世界で紡ぐ逆襲劇【ヴェンデッタ】 作:熊影
依頼を受けることとなった俺たち鳴海探偵事務所は、5人を落ち着かせた後に改めて依頼を確認した。
まず彼女達は先程名前だけ出たカイ君とやらを含め全員幼馴染らしい、彼女達の名前も改めて教えてもらった。
そして6人でバンドafterglowを中学時代より組んでいるとのこと、実際にはカイ君とやらはマネージャー兼サポーターらしく、バンド活動は此処にいる5人で行っているとのこと。
時折問題があっても6人で力を合わせて解決してきたとのことだが、今回は6人が力を合わせても解決出来なかった為、依頼としてここに来たらしい。
その出来事が、先程の会話内容。二週間ほど前から、どうやら女性陣全員がストーキングされているとのことで、複数犯によるものらしく、初めの内はカイ君が見付けた不審人物の悉くを見付けては可能な範囲で対応し、既に3人ほど現行犯で警察に突き出していたとのこと。
その時点で学生としてはこの上なく優秀な人材だと分かる。無理に1人で捕まえるのではなくしっかり警察に連絡して対応するのはそうそう出来るものじゃない。
しかし逆に無謀としか言えないのも事実、一歩間違えればどのような結末が待ち受けるか直ぐに分かる筈、ましてや落ち着いて警察に連絡出来るだけの冷静さもあるなら尚更だ。
上原さんはその行動に特に心配しているようで、やはり怪我をすることもあったらしい、話を進めようにも溢れる涙が遮るほど。
そんな彼女の心配が現実になったのは、事務所を訪ねる2日前のこと。アントメモリ使用者ーーアントドーパント襲撃時の時らしい。
その日は休日で、ストーキングもカイ少年の活躍で3日ほど見かけなくなったため久し振りのバンド練習に明け暮れたらしく、満足した気分で帰っていた際に見知らぬ男に前方から声をかけられたそうだ。
その男がドーパントに変身した際には恐怖で動けなかったと5人は語る、その時の恐怖を思い出し震える羽沢さんを宇田川さんがそっと抱き締める。
そしてドーパントが5人に近付こうとして、逆に駆け出したのはカイ少年だったらしい。
何でもカイ少年、昔から剣術や空手などの武術を習っていたらしく、その日も念のためにバットケースに剣術の先生から借り受けた模造刀を入れてたそうだ、あくまでも最終手段として。
それをバットケースを投げ捨てて初めから模造刀を抜刀したとのこと、一目見ただけで使わなければならないと分かったからだろうがしかしーー
ドーパント相手に効くはずもなく、衝撃でよろけしたそうだが直ぐに反撃に会い、殴り飛ばされて数メートル吹き飛び彼女達の足元まで転がってきたらしい。
けれどカイ少年は思いの外頑丈なのか、それとも気合いか、直ぐに立ち上がりドーパントに立ち向かった。その際に彼女達に逃げるよう促して、警察を呼ぶようにも伝えて。
しかし彼女達は逃げなかった、いや逃げれなかった、想定外の恐怖が彼女達から逃げる意思を奪っていたから。
そんな彼女達を見て、カイ少年は何を考えたのかアントの攻撃を利用して彼女達の近くまで後退し、防御にも使ったのか剣先が折れた模造刀を正眼に構えて、彼はーー
「歌い出したんだアイツ、一節しか聞こえなかったからどんな歌かは分からなかったけど。」
「歌?ドーパントとの戦闘中に?幾らなんでも無謀が過ぎるな……」
確かに翔太郎さんの言う通りなんだが、妙に引っかかる。何故歌った、まさかとは思うが……
嫌な予感がした、あり得ない筈だ、『アレ』
はもう俺以外に使い手はいない筈。
額に汗が滲むのに気付くことなく、俺はそう考えていたが、そんな予感は直ぐに裏切られた。
「どんな歌だったっけ〜」
「えっと確かーー」
「創生せよ……」
「ん、ひまり?」
「創生せよ、天に描いた星辰をーー我らは煌めく流れ星……そう言ってたよ。」