バンドリらしくない世界で紡ぐ逆襲劇【ヴェンデッタ】 作:熊影
強さとは何か、いつの時代でも議論に上がった話題の一つ。
その答えは実にバラバラだが、明確な答えは少なからずある。
すなわち、納得出来るだけの理由は少なくともあるのだ。
では強さとは何か、ある男が言うにはこうだ。
「無論“数”だね。」
数、それは確かに強さの1つであろう。
歴史もまたそれを物語っている、数多の戦の多くは数による優勢の勝利が見られるからだ。
数の暴力、と言う言葉がある様に人間だけのものではない、世界中の至る所で見られるものである。
特にーー昆虫とかはその代表だろう、人間よりも遥かに簡単に数万、数十万と言う膨大な数を揃える事が出来る。
生態系の下にいるとはいえど、ある意味だからこそ許されたものなのかもしれない。
だからもしそれがーー人間が手にしたらどうなるか、数という力が特に何らかの力を持つものが手にしたら。
その答えが、いま男の手の中にあった。
「うん、案外使い易いね。転生特典様様だ。」
花咲川某所にて男はソファに座ったままで、手にしたソレを満足気に眺めていた。
ーーその足元には、気絶しているのか規則正しい呼吸をしながらもピクリとも動かない別の男の姿があったが。
「しかしこいつは何ともこの男には勿体無い、て言うより使い道がストーカーしか思い浮かばないのもどうなのかな。」
呆れたように戦利品をシャーペンの様に回しながらも、足元に転がる男をつまらない様子で見ていたが、それも飽きたのか唐突に開いた手の指を弾いた。
それを合図にソファの真後ろ、現れたのは2人の男。
左右から挟む様に気絶している男を掴み、足を引きずりながら何処かに連れて行った。
それに見向きもしなかった男が考えるのは戦利品ーーアントメモリを手に入れる前に見た光景のこと。
「けど驚いたなぁ、彼があんな能力を持ってるなんて。原作とはかけはなれた世界だって言うから幼なじみがいても気にしてなかったけど……」
男の脳裏に過るのは、自分とは、同じ存在でありながらこの世界の全てを見下した人物の姿。
無意識に歯を食いしばり、アントメモリを握る手に力が入る。思わず握り潰す寸前で気付き慌てて緩めたが、気持ちまで緩むことはない。
「たった数年とは言え彼を見てきた、今までの姿が偽者とは思いたくないけど。」
おもむろに立ち上がり、ソファの後ろを見ればそこにはーー
「彼を見極めないと……もし奴と繋がってるか、或いは同質ならば……容赦はしない、全力で潰してやる。」
凡そ学校の体育館位の大きさの空間があり、そこを埋め尽くすのは一糸乱れぬ姿で並ぶ“男”達の姿。
「それが僕の、“リバース”の一角を担うものとしてのせめてもの意地だ、数の力で徹底的に叩き潰してやる‼︎」
まだ見えぬ舞台にて男は決意する、対面の時は近い。