レミリアと俺の現実郷物語   作:星影 翔

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この作品を読みにきてくださり、ありがとうございます!今回の作品は東方Projectというジャンルがすでに確定している世界のお話です。(簡単に言えばガチ現実)神主の存在はもちろん、例大祭もあります。そして、なるべく現実らしくするために、この作品では作者自身の経験や知っている場所を元に作っていく予定です。それでも読んでいってくださるという方はどうぞよろしくお願い致します。


第一話 出会い、そして今日は厄日

 空は蒼黒に染まり、街中の明かりが一層景色に映える。幼い時から見慣れた街の光を眺めていると、成人にもなっていない身でありながらつくづくと時代の流れを感じる。ブラウン管テレビが薄型液晶テレビへと変貌したり、果てには元号が変わったり、確かにこの世の中というものは進化を続ける。

 だが、俺たちはそんな世の中の利便性に埋もれて、本当は見えていたはずの世界が見えなくなってしまっているのではないか、たまにそう感じたりもする。そう、例えるなら昔ならばどこでも見えたはずの満点の星空が今や限られた所でしか見ることができなくなっているように。今の人々は物事の本質を理解する暇もないまま、今の世を生きている。俺もその一人だった。

 だが、俺はある一人の少女に会うことで変わった。今を生きるために持つべき心というものを彼女は教えてくれた。

 

 これは俺と彼女が過ごした現実のようで幻想のような曖昧な日常のお話。

 

 俺の名前は立花 理樹(たちばな りき)。今年で大学一回生になる。俺の通う大学は家から遠く、今は近くのアパートで下宿生活を送っている身だ。生活はというと、親から仕送りをもらいつつ、バイトでお金を貯めて機会あれば友達と遊んだり、ゲームに熱中したりと、自分なりの自由を満喫しているといった状況である。もともと全寮制の高校に属していたこともあり、掃除や洗濯といった基本的な家事は出来るし、料理も趣味で嗜んでいたことがあったお陰であまり困るということはない。といっても、大抵は面倒臭くなって惣菜ものを買ったり、カップ麺を購入して食すといった日々なのだが…。

 

 しかし、訳を聞けば俺がそうなってしまうのも仕方ないと諸君なら思ってくれるのではないかと思う。苦しい言い訳をするなら、週四のバイトは中々に俺の精神力を削っていく上、人付き合いも楽ではない。どれだけ親しかろうと職場であれば少なからず先輩や上司に気を使うし、別に他のやつと一緒にやろうという格好でバイトをしたわけではないので、同期はいない。そればかりか、人員不足なその店は本来の担当を超えてオールマイティに動かねば回らないという理不尽な状況下にある。そんな状態の中で必死に業務をこなした俺の上に、そこから料理を作れだなんて、俺からしたらHP回復不可、アイテム使用不可という状況で何百回と進化する魔王を相手にするようなもんだ。そう俺は思ってしまうのだが、どうだろうか…。まあ、「俺はそれ以上やってるわ」っていう方も中にはいるだろうが、ここはぜひともご理解いただきたい。

 しかし、そんなバイトもようやく終わり、今日も俺は肩を落としていかにも疲れている雰囲気を醸し出しつつ、自宅へとフラ〜っとのんびりとした足取りで帰る。

 

ティロンッ♪

 

 唐突に携帯のチャットアプリの着信音が鳴る。だが、疲れのせいでどうも携帯を見る気力すらも起きない。

 

「チッ、タイミング悪いなぁ」

 

 タイミングの悪さに多少の苛立ちさえも感じながら、俺はそのまま一路家へと向かい、僅かながらに足取りも早めた。

 

ガチャッ…

 

「ただいま…」

 

 小さく呟いた言葉に返ってくるものはない。一人暮らしなのだからごく当たり前のことなのだが、つい少し前まで実家で過ごしていた感覚が残っているもので、どうしても寂しさというものはついてくる。あの暖かい両親の声も未だに忘れてはいない。距離でいえばそこまで帰れないという距離でもないのだが…。

 

「…さて、飯食って風呂入って寝るか」

 

 1LDKの俺のアパートは一人二人程度だと大して狭くも感じない程度にはスペースがあり、俺はある程度の立地の良さを生かして、暇な時は友達を数人呼んでは泊めている。その時は自分でも申し訳ないと思えるくらいにガヤガヤと騒ぎ立てるので、友達を出払った日か、その翌日くらいに近所の方にお詫びの品を買って差し上げるというのがいつもの通りである。

 俺は、立ったまま荷物を降ろし、ポケットに入っていたスマホを取り出すとさっき来たチャットアプリの通知を確認する。誰かと思えば、俺の小学生時代から一番親しい友達からだ。そういえばあいつとは就職するっていう内容のチャットを確認して以来連絡とってなかったな…。何かあったのだろうか、もしかしたら事故にでも巻き込まれてしまったのか、一人勝手に妄想を膨らませ、湧いてくる不安に電源をつけることすら少しばかり躊躇っていたものの、やがて止むを得ずスマホの電源ボタンを押し、彼からのメッセージを視認する。その瞬間、俺は思わず目を見張った。

 

『来週の土日、どっちか空いてたら遊ばねえか?』

 

 スゥゥー……

 

「クッソどうでもいいじゃねえかぁ!!」

 

 アパートの中というのもあり、声は抑えめではあったが、心の中では喉が張り裂けるくらいに絶叫したつもりでいる。そうか、ここまで親友に心を傾けたものが空振りするとは思ってなかった。とはいえ、実際にこれを言うのも相手への配慮が欠けた愚かな行為といえよう。いやでも相手が相手だし別にいいか?いやいや、実際に仕事が忙しくて俺以上に疲れている中でこうやって連絡をくれているのだから流石にそれはないよな。

 

『いいよ、日曜なら空いてる』

 

 相手側にそう送り、俺はそのままベッドにダイブ、枕に顔を埋める。日曜と聞いて枕元に置いてある時計を無意識に眺める。もう五月の中旬、今日は週の折り返し地点である水曜日だ。というか、なんか物凄く疲れた。いや、なんかじゃないな。実際に俺はさっきまで働いてたんだ。疲れるのも無理はない。

 

「まあいいや、ちょっとだけ…寝よ……」

 

 疲れからか布団の誘惑に負けた俺は目を瞑り、仮眠という都合の良い言い訳をつけて、そっと意識を闇に沈めた。

 

 そして…次に目を覚ました時、現実が俺に牙を剥く。

 

 

 

 

 

 

 

「…夜中の3時って……マジかよ…」

 

 スマホの表示に何度も目を疑った。慌てて他の時計を見るが、いずれもスマホの表示の正当性を確かめるものばかりだ。

 一、二時間くらいのつもりだったのに…。俺は頭を掻きむしった。明日、いやもう今日か、今日の三限までにレポートを書いて提出しなきゃいけないのに、予定が完全に狂った。おまけに仮眠程度に思ってたからコンタクトつけっぱなしで寝てしまったせいでしっかり寝られなかったし…。正直、まだ眠い。

 

「はぁ…どうしよ…」

 

ギュルルル…

 

 まるで同情するかのように腹の虫も盛大に鳴る。同じタイミングで人間というのはつくづく不思議だなとも思った。現に腹の虫を鳴き声を聞いた瞬間にものすごい空腹感が俺を襲ってくるのだから。

 本能に従って食料を求めて冷蔵庫を開けようと手をかけたものの、以前に珍しく料理をしようとして残ってる食品を全部使い果たしてしまったのを思い出した。そこでまた額に手を当てる。何もかもが俺の邪魔をしている気がして、恨めしくさえ思うようになってきた。

 

「しょうがない、コンビニ行くかぁ…」

 

 幸いまだ三時だ。時間は十分にある。眠気覚ましに大きく伸びをした俺は仕方無しに、家を後にする。外はあいにくの天気ではあったが、幸い小雨であったので、俺は傘を片手にコンビニ向けて急ぎ足で向かうのだった。

 

 

 

 

 

「ありがとうございました〜」

 

 店員の挨拶とともに徒歩数分のコンビニを後にする。本当に24時間営業に救われた。(ちまた)ではコンビニの24時間営業について今も論争が交わされているが、俺自身の意見としては従業員の負担もあるからやめたほうが良いという考えだ。だが、当の本人がその恩恵に預かっていては説得力もないな…。

 気づけば雨は降り止んでおり、辺りには降り止んだ直後の湿気とあの独特の香りが漂っていた。俺は傘を片手に握りながら、どんどん増大する食欲を懸命に抑え、自宅目掛け早歩きで帰る。

 

「………ん?」

 

 帰宅途中の何の変哲も無い道端で俺は思わず足を止めた。車一台がどうにか通れるほどしかない細い道の下、街灯に僅かに照らされているそれは、明らかに人であった。それも行き倒れているように見える。

 とりあえず急いで駆け寄ると、うつ伏せになった顔を起こし、大声で呼びかける。

 

「おいっ!!しっかりしろ!!目を覚ませ!!!」

 

だが、返答はない。酔っ払いのおっさんが酔いのあまり倒れているくらいなら、まだ安心もできたかもしれない。けれど、その小さくて可愛らしい顔はあまりにも若すぎる。もしかしたら幼いとも言えるかもしれない。

 意識のない彼女はただ身体をブルブルと震わせて小さく何かを呟いていた。あまりにも小さくて何を言っていたかまでは定かではないが、ともあれ緊急事態のこの現状をどうするべきか。

 

「ひとまずは救急車を…」

 

 だが、彼女の細く力の残っていないその手が俺のスマホを持つ手を握る。

 

「Please do not contact…(連絡しないで…)」

 

 正直、彼女から発された唐突な英語と思しき言語は聞き取れなかったが、彼女の必死の表情は明らかに俺に通報しないでくれという意思表示だというのが分かった。その弱々しい瞳を見てしまった俺はとうとうスマホを耳元から降ろしてしまう。

 じゃあどうする?このまま放っておけば、彼女は絶対に死ぬ。小さく華奢なその震える身体がその確実な未来を物語っていた。ビショビショに濡れた彼女の服の汚れ方からしても行くあてがないのは明確だ。

 そして、しばらく固まっていた時、ついに俺の手を握っていた彼女の手が滑り落ちた。

 

「おいっ!おいっ!!」

 

慌てて身体を揺さぶるものの、返事はない。

 

「…ええい、クソっ!」

 

 まったく、今日は本当に厄日だ。俺は彼女を背負い、急いで家へと駆ける。家に着いたところで素人の看病ぐらいしか出来ないが、道端で死なせるよりかはマシだ。本来なら彼女の制止を振り切って病院に駆け込んだ方が良いのだろうが、あの悲愴な表情を、あの瞳を見てしまったら、どうしても病院に行くことははばかられた。

 

「もうすぐ家に着くからな。…死ぬなよ」

 

 

 

 

 

 

 

「…うぅ…ぁ……ん?……ここは?」

 

 彼女を家に運び入れ、びしょ濡れな服や顔、蒼色の艶のある髪をタオルで拭いて布団に寝かせていると、一時間しないうちに彼女は意識を取り戻した。俺はその様子にホッと安堵の溜息を吐く。

 

「大丈夫か?」

 

 俺の声に彼女が視線をこちらに向けた。瞳はまだ朧げで細いものの、視線はしっかりと俺を捉えることができている。

 

「あな…たは…?」

 

「俺は理樹、立花 理樹だ」

 

 彼女は「ふーん…」と小さく理解の意思表示を零すと、またも目を瞑った。またもや何かが起こったのかと心配になったものの、代わりにスヤスヤと気持ち良さそうな寝息が聞こえたお陰で安心した。被された布団の暖かさに安心したのか。改めて見た彼女の寝顔は穏やかで優しかった。まるで何かに怯えているかのようなさっきまでのあの表情とはまるで違う。それがまた俺に気を許してくれたようで嬉しかった。

 時刻は六時前か、一時間くらい仮眠がとれそうだ。ただでさえしっかり眠れていない上に、ここまで色々なことが重なってきて、本当に疲れた。すぐに寝たい。

 俺は身体をベットに預けて、そのまま目を瞑る。

 まあ、何にしても人を助けられたのは良かったな。彼女の話は大学から帰ってきた時にでもゆっくり聞くことにしよっと…。

 

…………

 

…………六時前…?

 

……………………あっ…

 

 

 レポート書けてねえじゃねえかぁ!!

 

 ベッドから飛び起き、パソコンに向かおうとした瞬間、まるで示し合わせたかのように腹の虫も盛んに鳴り始めた。だが、時刻は六時前、飯なんてちんたら食ってたらガチで間に合わない。レポート提出は三限だが、今日の俺には一限も二限も講義でいっぱいなんだ。飯なんて食えばどれだけ合間を縫っても確実に間に合わん…。

 そう悟った俺は、続けざまに襲い来る強烈な空腹感に蝕まれながらノートパソコンを開き、執筆を始める。

 いや、もう正直、限界ですって神様。こちとら仮眠しかとってないからまだ眠いんですよ。どうか助けてくだせえよ。この際、大学に隕石でも落としてくれたらいいんで、とにかく俺をこの地獄から救ってくれぇ!!

 本当に今日は厄日だ…。俺は自身でも思うくらい阿呆な言葉を次々と並べながら、カタカタとタイピング音を部屋に響かせるのだった。




お読みくださりありがとうございました!作風としてはこのような形でやっていくつもりですので、よろしくお願いします。
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