とある転生者の音楽目録   作:echo21

5 / 10
まりな伝説の勢いに草が生える。

ストックだけじゃなく、プロットもない思い付きで書いてるから色々と許せるひとしか読んじゃダメだぞ?

今回からクロスします。あれの原作?よく眠れるアニメでした。いいBGMです。

後書にアニメ名を追記。



オレの歌を聞け事件。

 その日の秀人は他人様のライブをジャックして出禁から解禁になって初めてのライブである。『第一回ライブジャック事件』の舞台であるRoseliaのライブでやらかした秀人に一番怒っていたのは友希那だ。友希那の怒りは凄まじく、無言で泣きながら睨み続ける友希那に秀人は手を焼いた。秀人が許されたのは友希那が納得するまで幾つかの楽曲を提供したからである。

 

 ────後に秀人(プロデュース名義が秀人)はRoseliaに似合う楽曲が決定するまで、かなりの数が却下されて嘆いたそうだ。特に提案した楽曲の中にあったとされる『ペチャパイ』と『小フーガハゲ短調』はHide(アーティスト名義がHide)のライブで異様に盛り上がる曲として知られているが、湊友希那にこそ歌って欲しかったと今でも述懐しているらしい。湊友希那は怒髪衝天だったそうだ。当たり前だ。

 

 それでも今は月島まりなの持ち歌だと言い張るHideのファンが多く、月島まりな本人は罰ゲームで歌ってるだけでCはあると豪語している。快く取材に応じてくれた彼女のこうした自爆が──他にも幾つかあるがここでは語らない──ファンに愛されるゆえんだと納得し、この二人の関係性が『事件と伝説』を築き上げ続けている理由かもしれない。

 

 音楽雑誌『月刊ライブハウス』の『事件と伝説』より抜粋────

 

 この日のライブはRoseliaが主催し、最初の演奏を一組目のPoppin'Party、二組目をAfterglow、三組目が主催のRoselia、サプライズゲストとしてHide with HTT.Sawaを予定していた。

 

 事故が起きたのは三組目の主催であるRoseliaの二度目のアンコールを演奏していたときだ。中規模のライブハウスとしては大失態となる、停電。そのときの秀人は控え室で待機しておらず、拡声器を片手に舞台袖で乱入の準備をしていた。もちろん許可はとっていない。突然の暗闇に面を食らった秀人が舞台に足を進めたころ、一体感のあった音楽と歓声がバラバラになっているステージがあった。

 

 ──秀人は無言で歩いた。

 

 本来の演出としては三度目のアンコールを邪魔するように登場した秀人が『丸の内サディスティック』を拡声器で歌い、バックバンドが歌の途中から順次参加していく予定だった。

 

『オラァァァ! オレの歌を聞けぇぇぇ!』

 

 困惑する観客の声を遮った秀人の音が拡声器を通してライブハウス内に響いた。秀人は拡声器を使って『上を向いて歩こう』を歌いながら身体を大げさに揺らしている。観客からは戸惑いの声が消えて笑い声と歓声が上がった。歌い終えた秀人がステージの中央まで歩いて友希那と肩を組んで笑顔になる。

 

『おう? パニパニックですな。スマホ持ってるヤツら。こっちに向けてライト付けろ。こんな感じね』

 

 秀人の名前が観客から叫ばれている中で、秀人がポケットからスマホを取り出してアプリにある懐中電灯を点火した。その意図に気付いた観客が次々と光を点けてステージへ届ける。呆然としていた友希那が我を取り戻すと秀人に鼻で笑われたのでうっすらと頬を染めながら秀人を睨んだ。

 

「……秀人?」

『マイクも死んでるのか。おい、スタッフ~。もういっちょ、スタッフ~。給料分は働けよぅ。……友希那。一緒に喋ろ? ほら拡声器』

「リハーサルより来るのが早いわ。『また何かするつもりだったわね』」

『うん。もうちょっとしたらね? 乱入してHideどーすとやろうとしたのよ。みんな。やっていい?』

 

 ──いいぞぉぉぉ。やめてぇぇぇ。ダメぇぇぇ。友希那ぁぁぁ。やってよぉぉぉ。ヒデちゃーん! まりなぁぁぁ! 友希那ぁぁぁ! 友希那がんばれぇぇぇ! ゆ! き! な! ゆ! き! な! ゆっ! きっ! なっ! ゆっ! きっ! なっ! 頑張れぇぇぇぇぇぇ──

 

『私が応援されてるわね』

『誰だ、まりな叫んだヤツ。あれやな。友希那を応援してるヤツらはオレがジャックしたとき居たんだな。あれは可愛いかったな。な? お前ら?』

 

 ──居たぁぁぁ。見たぁぁぁ。友希那可愛いぃぃぃ。笑ったぁぁぁ。みてないぃぃぃ。負けないで友希那ぁぁぁ。可愛いぃぃぃ。離れろぉぉぉ。まりなさぁぁぁぁぁぁん──

 

『秀人は私の敵ね』

『ガチトーンでいわない。顔が赤いぞ? それとまりなは機材と闘ってるからね。ステージには上がらないよ。まりなのファンが一番気合い入ってるのが笑える』

『私。さっきの歌。知らないんだけど。また。隠してたわね?』

『おおう。片言。リサ、リサちー。お前の嫁どーにかしてー』

「無理ぃぃぃ」

『叫ぶなや。……面白いわぁ』

『曲名は?』

『そのまんま。『上を向いて歩こう』』

『そのままね?』

『だよ? お? ギター生き返った? きゃー紗夜さまぁー』

 

 ──氷川紗夜の目が笑っていない微笑でギターソロを披露する。

 

『ベースは? リサちー』

 

 ──笑顔の今井リサがベースのリズムを刻む。

 

『いいねぇ。あこ、オレらよくない?』

 

 ──秀人とRoseliaの名前を叫びながら宇田川あこがドラムを叩いた。

 

『そんじゃあ、キーボード! つかさ、燐子。レベル上げしんどい。手伝って』

 

 ──白金燐子が笑いながら頷いてキーボードを鳴らした。

 

『どうよ、友希那。オレのバンドは?』

『ぶん殴るわよ? え? マイクも大丈夫?』

『なら歌うか。Hideで『BLACK SHOUT』』

「ままっ待ちなさい待ちなさいっ!」

『マイク生き返ったの? いやぁ、残念だわ。聞いて欲しかったのに』

「私の、私たちのRoseliaよ。秀人にはあげないわ」

『他の曲はまだ練習中で歌えないんだよね。いや、お恥ずかしい』

「聞いてないわよ。そこっ。歓声をあげない」

『怒られてやんの』

「笑ってんじゃないわよ。秀人の出番はまだよ。今は私たちRoseliaの時間なの」

『なら仕方ない。リサ。帰ろうぜ』

「リサはあげないわ」

 

 ──リサねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ──

 

『今日一番の歓声じゃないか? へい、リサちー。愛されてるぅ』

「いえぇぇぇい」

「そんなんじゃないわよ。リサもノらないで。……それじゃあ私の歌を聞いて。『BLACK SHOUT』」

『おい』

「なによ?」

『友希那、お前なぁ。アンコールの予定曲と違うだろうが』

「別に。私が歌いたくなったのよ。悪い?」

『……二人で歌うか。今度は出禁にしないでくれよ』

「仕方ないわね。Roseliaでいくわよ」

『Hideがいくぞ?』

 

 ──ァァァァァァァァァ──

 

「私の歌を聞いて」

『オレの歌を聞け』

 

 ────BLACK SHOUT────

 

 最高潮に達した歓声が上がる。友希那の力強い歌声に秀人のシャウトが入り、秀人の艶やかな歌声に友希那のコーラスがプラスアルファされた『BLACK SHOUT』は観客の盛大な歓喜を呼んだ。歌い終えた二人がハイタッチを交わし、Roseliaが舞台袖に消えていき新たなバンドが出てくる。

 

『ここからはオレのライブだ。今日のバックバンドはHTT.Sawa』

 

 それぞれが楽器を鳴らして応え、秀人の笑みが深くなる。秀人は正式にバンドを組んでおらず、その時々に呼びたいバンドを観客の前に立たせた。放課後ティータイムの四人に山中さわ子を足したバックバンドは緊張の色が出ている。

 

『このままいったら失敗しそうだなぁ。そだそだ。実はね。裏でスタッフに混じって色々やってたまりながいまーす。な、の、で。まりながステージに来ちゃうような曲、アカペラで一曲歌っちゃおうかなぁ』

 

 ──うおぉぉぉぉぉぉ──

 

『野太い歓声が笑える。月島まりなにプレゼント。なんならまりなの持ち歌にしてもいいよ? 聞いてください。未発表曲の『ペチャパイ』』

 

 観客の怒号と悲鳴の中で、それはもう楽しそうに秀人は歌いきった。HTT.Sawaに一緒に歌うかと秀人が訊いたときに彼女たちは全力で首を横に振った。

 

『まりなな。お前がスタッフまとめてんだからさ。このあとも停電したら『ペチャパイ』を歌い続けるからよろしく』

 

 女性の叫び声がした。

 

『なんかね。予定が狂いまくってますわ。とりあえず曲順をいいまーす。一番は『丸の内サディスティック』で、二番が『LEMONed I SCREAM -CHCO-CHIP version』な。二曲続けてオレが歌うわ。三番四番は彼女たちが歌う『カレーのちライス』と『DEATH DEVIL』ね。カレーは飲み物って聞いたけどホント? あ、違う。そうよねー。五番六番はオレね。『D.O.D(DRINK OR DIE)』と

『BEAUTY & STUPID』だ。合間合間に停電になって『ペチャパイ』を歌い出したら、みんなでまりなを呼ぶんだぞ? 一回いこうか。ペチャパイ?』

 

 ──まりなさぁぁぁん──

 

『さんづけに悪意を感じる。どうしたさわちゃん。腹が捩れてんの? 友人の不幸を笑っちゃダメだと思うよー。澪なんて真っ赤じゃん。ベースの彼女ね。ベースの彼女、澪、可愛くない? 君は大丈夫だな。ペチャパイとは呼ばれないよ。逆だからね』

 

 ──きゃぁぁぁ。セクハラぁぁぁ。ダメぇぇぇ。可愛いぃぃぃ──

 

『すげぇ。このバンド、ペチャパイがいねぇんじゃねぇ? あそうだ。さわちゃんさわちゃん。ハゲの歌もあるよ? 聞いてみる?』

「やめてホント、ギター弾けない」

『うぇーい。スタッフとまりな、バンドのみんなも大丈夫? 一曲目いっちゃうよ? あそうだ。アンコールは一曲しか用意してないから速やかに解散してね?』

 

 ──いやぁぁぁぁぁぁ──

 

『黄色の悲鳴ありがとう。ホントにいくよ? みんな準備できた? さわちゃん大丈夫?』

「ホントごめん。大丈夫っ!」

『いぇい。Hide with HTT.Sawa『丸の内サディスティック』』

 

 

 ▼△

 

 

 そのあとにも何度も停電したライブは最早停電中のライブと言っても過言ではなく、観客が停電を喜び、大満足で帰ったという伝説のライブになった。今もなお語り継がれているのは、月島まりなの怒りのステージ乱入だろう。不安定な機材と走り回るスタッフを嘲笑うような秀人と観客のコール&レスポンスに月島まりなの限界は越えていたのだ。アコースティックギターを振り上げた彼女は悪くない。それでも月島まりなは違う。やはり、まりなさんだったのだ。ギターを振り下ろす手がすっぽ抜けてドラムを破壊した。静まり返り、呆然とした周囲に意を返さず秀人は言った。

 

「これから持ち歌な。歌え」

 

 ──語り手、今井リサ。

 

 





『ペチャパイ』ブリーフ&トランクス
『小フーガハゲ短調』ブリーフ&トランクス
『丸の内サディスティック』椎名林檎
『上を向いて歩こう』坂本九
『LEMONed I SCREAM -CHCO-CHIP version』hide
『カレーのちライス』放課後ティータイム(アニメ、けいおん!)
『DEATH DEVIL』放課後ティータイム(アニメ、けいおん!)
『D.O.D(DRINK OR DIE)』hide
『BEAUTY & STUPID』hide

追記。
タグにクロス先を増やしました。忘れてたんどす。

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