「今日は俺とイレイザー、オールマイトにもう一人で見ることとなった」
ブラド先生の言葉に僕はウォズに言われたことを思い出す。
『ウォズ……』
『ああ、あのマスコミ騒動に教師陣はなにかしらの悪意を感じたというわけだ。いやな予感がする……』
オールマイトだけでなくA組の相澤先生まで来てくれるということは何かに警戒してると見ていい。
夜嵐くんから聞いた話だとA組の相澤先生はイレイザーヘッドというヒーローらしい。聞いたことはある。確か見たものの個性を消す個性。
僕とウォズはなにかの予感を感じながらもバスに乗った。
バスの中は高校生らしく盛り上がっていた。
と骨抜くんが
「なあ緑谷、出久の方の個性ってオールマイトに似てなくね?」
「い、いやそんなことないよ、オールマイトの方がスゴイじゃん」
「まあ確かにな。オールマイトは桁違いだ」
回原くんのおかげでその場はなんとか誤魔化せた。
危なかった〜……
『鋭いな……骨抜くん』
ウォズの言う通りだ。骨抜くんは思考が柔軟な上に鋭い。
「でもさ!出久の個性もウォズの個性もヒーロー向きじゃん!変身に増強型ってさ、やることも多くて派手だしな!」
円場くんが話題を切り替えてくれた。
正直助かった。
「でも円場くんの個性も救助とか色々なことに応用効きそうだよ」
「お前に言われるとな〜嫌味に思えないんだよな〜!まあお前はそういうやつだもんな」
「でもさ?俺らの個性って緑谷を除くと派手な個性ってあんまりなくね?」
「まあ確かにな」
と別の話題で盛り上がっている中で物間くんが
「ところでウォズくん、そっちでのヒーロー……仮面ライダーってのはどんなやつらなんだ?」
物間くんの発言で
「確かに気になるな」
「ウォズの他にも仮面ライダーっているのか!?」
「なんのためにヒーローになったんだろう?」
「どれぐらい強いんだ!?」
泡瀬くんに鉄哲くん、庄田くんに鎌切くんが聞いてくる。
『ウォズ話してくれる?』
『いいとも。語るのは好きだからね』
そして僕とウォズの意識を切り替えると
「やあ呼んだかな?」
「おう!ウォズ!」
「それで彼らはなんのために戦っているのでしょうか?」
拳藤さんと塩崎さんが聞いてくる。
「それじゃあ映像で見せた方が早いか」
「映像?」
ウォズが指を鳴らすと僕たちの意識が精神世界に入り込んだ。
「うぉっ!?またここか!」
そしたウォズが再び指を鳴らすと
「あ!なんか出てきた!」
すると闇の中から20人もの戦士といえる人たちが現れた。
「おおおおお!!!すげえカッコいい!」
「カブト虫のようなやつもいるな!」
「あれ?ウォズがいないぞ?」
「そうさ、私はこの中のライダーではない」
「どうゆうことですか?」
才子さんが聞くと
「ライダーにも歴史があってね、平成の時代から20人もの仮面ライダーによって物語は生まれたんだ。私はその物語の脇役のようなものさ」
「ウォズが脇役!?」
「マジで!?」
「へぇ〜……君がね……」
物間くんはウォズを見定めるように見る。
「それで物語の始まりとなったのがクウガ。彼の名は五代雄介。彼は本当はヒーローになりたくなかったんだ」
「どうゆうことだ?」
僕も気になる。ヒーローになりたくなくてヒーローになった人などいるのか……
「彼は誰も傷つけたくないという心優しい青年でね。それがたとえ人々を襲う怪人グロンギでさえも、だからヒーローになって誰も傷つけたく、暴力をふるいたくなかったんだ」
「そうだったのか……」
「でも彼はある人の死をきっかけに戦う覚悟を決めたんだ」
ウォズが指を鳴らすと燃え盛る協会の中二人の男と一体のグロンギがいた。
『こんな奴らのために!これ以上誰かの涙は見たくない!皆に笑顔でいて欲しいんです!だから見ててください!俺の!変身!』
そして腰に手を当てるとアークルが現れ、グロンギを殴った右手から左手、そして全身へと姿が変わって彼はクウガになった。
「おおおおお!!!変身したあ!」
「しかし……なんて熱い人なんだ!」
「鉄哲じゃなくても同意しちまうな」
皆のテンションが上がる中でウォズは
「そしてクウガには究極の闇といわれる最終フォームがあるんだ」
「究極の闇……」
あ、黒色くんが反応した。
「なんだそれ?どんな姿なんだ?」
円場くんが聞くと
「究極の闇、アルティメットフォームは本来見境なしに暴れるという暴走フォームなんだ。だがグロンギのボス、ン・ダグバ・ゼバが復活して人々を遊びで殺し始めたんだ」
遊びで人々を殺すン・ダグバ・ゼバに皆恐怖した。
「雄介も最初は制御できなかったんだ。だがン・ダグバ・ゼバに殺された人への悲しみが戦う理由を思い出させたんだ。そしてアルティメットフォームを完全に制御したんだ」
そして雪原でアルティメットフォームとン・ダグバ・ゼバが戦っている様子を見ていると
「泣いてる……」
クウガの目から涙が溢れていた。
それとは対照的にン・ダグバ・ゼバは笑っていた。
「彼は……本当は戦いたくないのだろうね……」
「ううううううっ!!!!」
鉄哲くんが号泣している。でもこの人は本当にヒーローだと僕も思う。
『人の運命がおまえの手の中にあるなら……俺が、俺が奪い返す!』
津上翔一がアギトへと変身すると
「おおおおお!カッケェェ!」
『津上……俺は、アギトであることに飲まれてしまった人間だ。だがそれはアギトのせいではない。俺という人間が弱かったからだ。俺は自分の弱さと戦う。お前も負けるな』
「なんかこう……個性に呑まれたらダメだって思えるね」
「そうだね。いくら力があろうが心を失ったら人間じゃないもん」
そうだね。確かに……
『やっぱり……ミラーワールドなんか閉じたい……戦いを止めたいって……きっと……すげえ……辛い思いしたり……させたり……するだろうけど……それでも……止めたい……それは……正しいとかじゃなくて……ライダーの……一人として……叶えたい願いだ……』
『ああ!だったら生きてその願いを叶えろよ!死んだら……終わりだぞ……!』
『蓮……おまえは……なるべく生きろ……』
『おまえこそ生きろよ!』
真司が生き絶えると
「うおおおおおお!!!」
「あの真司と蓮がこうなるなんて……!」
「ホントグチャグチャってぐらいの感動だね!」
「なんかわかんねえけど……わかる……!」
鉄哲くんに麟くん、吹出くんに鎌切くんが泣いている。とそこでウォズが
「次の仮面ライダーはファイズだ」
「どんなライダーなのですか?」
「ファイズの世界ではオルフェノクという死んだ人間が怪人になることがあったんだ」
「死んだ人間が……」
「オルフェノクになった者は人間を遥かに超える力を身につけた。しかし大半の者はその力に呑みこまれていき、人々を襲っていたんだ。だけどある一人のオルフェノクはファイズのベルトで人々からオルフェノクを守っていたんだ。彼の名は乾巧、人とオルフェノクは共存できると信じていた者さ」
「オルフェノクの中にも人の心を持つ者がいたってことか?」
「そうだね。オルフェノクだからと迫害する者もいたが彼は最後まで人間としての心を捨てなかったのさ」
「確かにそうだね……オルフェノクだからといって迫害していたはずがない……」
物間くんがようやく口を開いた。
「だが彼にもオルフェノクと闘うことに迷いがあった時があるのさ。しかし彼は」
『俺はもう迷わない……迷ってるうちに……人が死ぬなら……闘うことが罪なら……俺が背負ってやる!』
「カッコイイ〜!」
「まさにヒーローデスネー!」
『怖いさ……だから一生懸命に生きてるんだよ!人間を守るために!』
「命を懸けて闘うとは……俺もコイツみたいなヒーローになりたいな」
鎌切くんが感心していた。
その後も仮面ライダーについて色々とウォズは語った。
『止めるさ、何度でも……この左翔太郎が……街にいる限り……例えお前らが強大な悪でも風都を泣かせる奴は許さねえ。身体一つになっても食らいついて倒す……その心そのものが仮面ライダーなんだ!財団X加頭順!さあ!おまえの罪を数えろ!』
「なにかのために戦うのがヒーローというものなのか……!」
『アンク……お前が……本当にやりたいことなんだよな……行くよ、変身!』
「二人が信頼し合っているのがわかるぜ……!」
『俺がお前の最後の希望になってやる!』
「俺たちも誰かの希望になれたらいいな……」
『未来に希望があれば……人は笑顔になれる……!僕はそう信じている……!』
「グッとくるな……!」
「以上かな?」
そして精神世界から戻ると盛大な拍手がおこった。
「いや〜いい話だっだぜ!」
「ウォズもヒーローだったんだよな!?」
その言葉にウォズは
「……ん?ああまあそうだね……」
おそらく過去にやってしまったことを悔やんでいるのだろう……
でもこればっかりは僕にはどうもできない……
「お前たち、そろそろ着くぞ」
ブラド先生の言葉で僕たちは席に戻った。
そして着いた施設は遊園地のような場所だった。
そこにいたのは
「あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も……USJ(ウソの災害や事故ルーム)!」
『USJだった!』
スペースヒーロー13号。彼は主に災害救助などで活躍するヒーローだ。
と相澤先生が13号に向かって
「おい……オールマイトはどうした」
「あ、先輩それが制限ギリギリまで活動しちゃって……今仮眠室で休んでいます」
「不合理の極みだな、オイ」
オールマイト……またギリギリまで活動しちゃったのかな?
「えーと始める前にお小言を一つ…二つ…三つ……」
(増えてる……)
「僕の個性はブラックホール。なんでも吸い込んでチリにしてしまいます。しかしこれは容易に人を殺せる力です。皆さんの中にもそういった個性の子がいるでしょう。超人社会は個性を厳しく取り締まって成り立っているように見えますが一歩間違えれば容易に人を殺せることを忘れないでください」
確かに……
「ブラド先生の体力テストで自分自身の可能性を知り、オールマイト先生の戦闘訓練で相手に個性を向ける危うさを知ったでしょう。ですがここでは心機一転!人命のために個性を使用するやり方を教えましょう!皆さんの個性は人を助けるためだと心得て帰ってくださいな!」
13号先生が話を締めくくると拍手がおこった。
『ふむ……なかなかいい先生じゃないか』
まあぼくもそう思うよ。
「そんじゃあまずは……」
広場からなにかの気配を感じ取った僕はビヨンドライバーをセットした。
「一かたまりになって動くな!13号!生徒を守れ!」
相澤先生の一喝で生徒は広場を注目する。
「おいおい……あれってまさか……」
「そのまさかだよ!骨抜くん!」
「動くな!あれは……敵だ!」
相澤先生の一言で皆の顔に恐怖が浮かぶ。
「13号にブラドキング……それにイレイザーヘッドですか……先日いただいた教師側のカリキュラムにはオールマイトがいらっしゃる筈ですが……」
「やはり先日のマスコミ騒動は貴様らの仕業か!」
ブラド先生の言うとおりだ。あれはコイツらが情報を仕入れるために仕組んだ作戦だ。
「どこにいるんだよ……オールマイト……こんなに大衆引き連れてきたのにさ……子供を殺せば来るのかな……?」
奇しくも人を救うための時間に現れた敵。プロがなにと戦っているのか……それは……とてつもない悪意。