ウォズが僕に憑依してから一年。
「えーおまえらも三年ということで!!本格的に将来を考えていく時期だ!今から進路希望のプリント配るが皆!!!大体ヒーロー科志望だよね!!!」
先生の言葉に反応するようにほとんどの生徒達が個性を使用する。公衆の場でやったらマズイことってわかってんのかな?
「うんうん。皆良い個性だ!でも校内での個性使用は厳禁な!」
先生も先生であんまり注意しないし……
「せんせぇー!皆とか一緒くたにすんなよ!俺はこんな没個性どもと仲良く底辺なんかいかねえよ」
「そりゃねーだろ!勝己!」
「モブがモブらしくうっせー!」
かっちゃんは相変わらず皆を見下している。
「あー……そういや爆豪は雄英志望だな」
「国立の!今年偏差値79だぞ!」
「倍率も毎度やばーんだろ!」
「そのザワザワがモブたる所以だ!模試じゃA判定!俺はウチ唯一の雄英圏内!あのオールマイトをも超えて俺はトップヒーローと成り!!必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!!」
かっちゃんは相変わらずみみっちいなあ……
「あ、そういえば緑谷も雄英志望だったよな」
先生の発言はプライバシーもへったくれもない。
「はああ!?緑谷あ!?無理っしょ!!」
「勉強出来るだけじゃヒーロー科は入れねーんだぞ!」
皆も皆で僕をバカにしてくるし……ウォズも言ってたけど愚者の言葉は雑音と同じだと言ってたし、ここは適当に流しておくか。
「こりゃデク!」
かっちゃんが僕の机を爆破したせいで盛大に転んでしまった。正直に言えば避けられたがそれもそれで後々面倒くさそうなのであえて避けなかった。
「没個性どころか!無個性のてめえがあ〜!何で俺と同じ土俵に立てるんだ!!?」
かっちゃんの言葉はほとんど耳に入ってこなかった。前までの僕なら尻込んでいただろうが今となってはただの嫌味にしか聞こえない。
「で?だから?」
「ああ?」
あーあ言っちゃったな〜……まあいっか。
「だから僕が受けちゃマズイの?雄英」
「っ〜!ダメに決まってるだろうが!なんで無個性のてめえなんかが!」
「ダメかどうかは雄英の人たちが決めるんだろ?なんで君が決めるんだよ。何様のつもりなのかな?」
「っ〜〜!!!!!」
かっちゃんは今にも爆発しそうだが全然怖くなかった。
この一年ウォズと鍛えた甲斐あって僕も大分強くなっているつもりだ。
勿論個性持ちのほうが有用性などを考えると僕は今一歩遅れるだろう。だがだからといってかっちゃんに僕の人生を決められたくなんかない
第一、増強系個性じゃなくたってヒーローで活躍してる人はいるんだ。
個性が全てだと決めつけるのは愚かなことだ。とまあこれもウォズの受け売りなんだけどさ……
とまあかっちゃんが爆発しそうだったのを先生が止めてその場はなんを乗り切った。
んで帰ろうとした時
「こりゃ待てデク。話は終わってねーぞ」
んで僕のノートを爆破しようとしたので爆破される前にスッと取り返すと
「クソイラつくなぁ……!テメェ……!」
「かっちゃんこそ人のものを勝手にとっちゃダメだって当たり前のことも知らないの?挙げ句の果てに爆破しようとするなんて……いい加減にしてよ」
そのまま帰ると後ろからかっちゃんがなにやら怒鳴り散らしていたが知らない。
帰った後お母さんにおつかいを頼まれちゃったので商店街に向かっているとなにやら騒がしかった。
『おそらく敵だろう。ヒーローに任せて私たちは手早く買い物を済ませよう』
ウォズがそう言ってくるので僕はそうすることにした。確かにウォズの言う通りヒーローでもない僕が関わったって邪魔になるだけだ。ヒーローに任せるのが一番だ。
と思って買い物を済ませて帰り道を歩いているとまだ騒ぎが収まってなかった。
おかしい……ヒーローは来ている。それなのに誰も……動いてないんだ……!?
ふと耳を傾けると
「私二車線以上ないと無理〜!」
「爆炎系は我の苦手とするところ……今回は譲ってやろう!」
「ベタベタで掴めねえ!誰か他の有利な個性のヤツが来るまで我慢してもらうしかねえ!」
どうやら誰かが敵の個性に取りつかれてヒーローは身動きがとれないみたいだ。
なにやってんだよ!ヒーローはこんなものなのか!?
『全くだ……あの男なら無謀とわかっていても立ち向かっただろうに……』
もっと近づいて捕まっている人質を見ると僕の体は動きだそうとしていたが
『ウォズ!?』
体がなにやら動かなかった。おそらくウォズが干渉してきているのだろう。
『なにするんだよ!早く助けないとかっちゃんが!』
『落ち着きたまえ。君がいってどうにかなるものなのか?』
『それは……!』
『ヒーローもヒーローだが鍛えたからといってなんの力もない君がいっては犬死だぞ』
『ましてやあの男は君を虐め……暴力まで振るってた奴だ。そんな奴を君が自分を犠牲にしてまで助ける必要があるのか?』
ウォズの言葉になにも言い返せなかった。確かにそうだけど……!
『……それでも僕は……!助けたい!』
『そうか……だけどなにも考えないまま行っては本当に犬死だ。なにか……』
とその時世界の時間が止まった。
・・・・
やれやれ……君を見てるとあの男を思い出すよ。
最後まで諦めようとしないアイツを……
だけどこのままいってもやられるだけだ……どうしたら……
とその時タイムジャッカーが時間を止めたのか知らないが世界の時間が止まった。
『これは……!?』
とその時銀色のオーロラ、門矢士らが使っていたディメンジョンオーラが現れると
「やあ白ウォズ。久しぶりかな」
「海東大樹!?」
目の前にかつて協力したあの男がいた。
「やあ僕がこの世界に来たのは……時間がないかな。さっさと済ませよう」
そう言って彼が手渡してきたのは
「ビヨンドライバー!?」
かつて私が使っていたベルトだった。
「なんでまた……」
「黒ウォズが役目を終えたから彼に返しておいてとさ」
「なぜ私がこの世界にいるとわかった……」
「時間の歪みを調べれば簡単さ。じゃね」
それだけ言って奴は消えてしまう。
しかし……ものすごい数のミライドウォッチだな。ギンガミライドウォッチ……?なんだこのウオッチは
まあそんなことはどうでもいい。せっかく話し相手になってくれた出久を助けるためにこの力を使ってみせよう。
そして世界の時が動き出すと出久は走り出した。
「バカやろー!止まれー!」
「デク……!?」
そしてヘドロの敵は爆破しようとしたが
『出久、交代だ』
『ちょっ!ウォズ!?』
出久から精神の主導権をちょっと強引に奪った私は爆破を軽々と避ける。
「ふぅ……久しぶりだな。この感覚は……」
ヘドロ敵は避けた私を睨めつけてくるが
「さあ皆の衆!祝うがいい!未来の創造主の再誕を!」
<ビヨンドライバー!>
ビヨンドライバーを腰に装着させると
<ウォズ!>
<アクション!>
ミライドウォッチをベルトにセットしてハンドルを前に倒す
「変身」
<投影!フューチャータイム。スゴイ!ジダイ!ミライ!仮面ライダーウォズ!ウォズ!>
「なっ、なんだよそれは!」
「我が名は仮面ライダーウォズ……未来の創造主である!」
<ジカンデスピア!>
ウォズはジカンデスピアを取り出して一気に接近したヘドロ敵を斬るが
「ほぅ……」
「流動体なんだから斬れるわけねーだろ!」
ヘドロ敵が爆破しようとしてくるが後ろに跳んで避けて、
「ならコイツだ」
<シノビ!>
<アクション!>
<投影!フューチャータイム!誰じゃ!俺じゃ!忍者!フューチャーリング!シノビ!シノビ!>
フューチャーリングシノビに変身するとヘドロ敵の視界から一瞬にして消える。
「なっ!?ヤツはどこに行った!?」
「後ろだよ」
とヘドロ敵が振り向く前に死角に逃げる。
「こっちだ」
「またまた後ろ」
「今度は横だ」
ウォズはなんどもヘドロ敵の死角に素早く移動して翻弄する。
そして
「クソッ!なっ!?」
ヘドロ敵の体勢が崩れたのを見逃さずに一瞬で爆豪の腕を握って引っ張るとヘドロ敵から爆豪は解放された。
そして爆豪はウォズを睨めつけながらその場から立ち去る。
「クソッ!!!やってくれたなテメェ!今度はテメェに取り付いてやる!」
「それはお断りだ。次はコイツだ」
<キカイ!>
<アクション!>
<投影!フューチャータイム!デカイ!ハカイ!ゴウカイ!フューチャーリング!キカイ!キカイ!>
「また姿が変わった!?」
フューチャーリングキカイに変身し氷を腕部から放出させるとヘドロ敵は凍りついた。
そして
<フィニッシュタイム!>
ジカンデスピアをスワイプしてエネルギーを溜める。
そしてヘドロ敵をジカンデスピアで突くとヘドロ敵は粉々に砕け散った。
ヘドロ敵は死んじゃいないだろう。氷が解ければ再生出来るはずだ。
私は変身を解除すると
「おらてめえ!デク!どういうわけか言いやがれ!」
あの爆発ヘッド君が私に、正確には出久くんに突っかかってきた。
ヒーローたちも
「君!危ないじゃないか!」
「そうだ!ヒーローに任せればいいんだよ!」
ヒーローたちの言葉に私は怒るより呆れた。
こんなのが出久の目指していたヒーローなのか?いや違う。コイツらは偽者だ。常盤ソウゴたちに比べれば塵も同然だ。
私は爆豪が首根っこを掴んでいる手を無理矢理離させると
「ヒーローに任せればいい?どの口が言う!さっきまで傍観していた奴らが!」
「そっ……それは有効な個性が居なかったから……」
「そんなことでヒーローは動かなくなるのか?もし万が一人質になにかあればどうするつもりなんだ!?」
「あ!?俺は助けなんて求めてねえよ!一人でもやれたんだ!デクごときが突っかかってくんじゃ」
「君は黙ってろ」
私は少々殺気を出すと爆豪は怯んでしまった。
「そんなんでヒーローを名乗る!?笑わせるな!ヒーローが人を見捨ててどうする!この緑谷出久こそが真のヒーローだ!」
言いたいことだけ言うと私はその場から立ち去った。
・・・・
ウォズが僕の体を使って戦った時は驚いた。
これが異世界のヒーローの力なのだと僕は目を奪われた。
カッコよかった。ただ純粋なヒーローの目をしていたウォズが。
そして僕の行動が皆に責められた時にもウォズは庇ってくれた。
そして僕をヒーローだと認めてくれた時は嬉しかった。自分で自分を褒めた変な奴に見られるかもしれない。でも僕はそれでもよかった。
かっちゃんには明日からなにかされるだろう。でも僕は負けない。
そして家まで帰ろうとしていたら
「ちょっと待ってくれ!少年!」
後ろを振り返ると
「おおおオールマイト!!!?」
『随分嬉しそうだな。出久よ』
あっ、当ったり前じゃないか!僕が最も憧れたヒーロー……!
「ななな何の用ですか!!?まさか捕まえにきたんじゃ……!!?」
「NO!NO!そうゆうんじゃないんだよ!少年……君に提案をしにきたんだ」
「て、提案……!?」
「私の個性を……!受け継いでみないか!?」
個性を……受け継ぐ……!?
「私の個性は!聖火の如く……受け継がれてきたんだ!名付けて!ワンフォーオール!」
ワンフォーオール……!
「君なら私の個性を受け継ぎ!ヒーローになれる!私の個性を受け継いでくれないか!」
これ以上ない嬉しい言葉だ……だけど……!
「どうして……無個性の……しかもあの場でヒーローの制止も聞かず……戦った僕に……!?」
「おや?君は無個性なのか?さっきのは?」
どうやらウォズのことを知らないようだ。まあそりゃそっか。
『ここからは私に任せたまえ。出久』
うん!わかった!
「やあやあ初めましてだな。オールマイト」
「君は……!?さっきの子と雰囲気が違う……!君は何者なんだ?」
「そうだなあ……二つの人格があると言った方がいいか」
そうしてオールマイトに私たちの関係を話すと
「異世界のヒーロー……俄かには信じられないが君が二重人格でもう一人が個性的な力を持ってるということは辻褄が合う……」
「んまあ信じてもらえるとは思ってないさ。まあ状況を把握してもらえただけでもありがたい」
そしてウォズから意識の主導権が戻る。
「それで……なぜ僕に……?」
「トップヒーローは学生時から多くの逸話を残している……彼らの多くがこう語る!考えてたより先に体が動いていたと!君も!そうだったんだろ!君はヒーローになれる」
僕は嬉しくて嬉しくて……ただ泣きじゃくった。
言い忘れてたけどこれは僕が……ウォズと共に最高最善のヒーローになるまでの物語だ。
オールマイトとのくだりが少々雑になってしまいました……すみません……