出久たちは非常階段を上っていた。エレベーターはシステムが奪われている以上使えないし、他の階段には監視カメラが仕掛けられているためここを上るしかなかった。
「これで30階」
「メリッサさん最上階は?」
飯田が階数を確認すると出久がメリッサに最上階の位置を確認する
「はぁ……はぁ……200階よ……」
「マジか……」
「そんなに上るのかよ……」
「ヴィランと出くわすよりマシですわ」
回原と上鳴がげっそりするが八百万が励ます。
すでに女性陣の皆はヒールではなく八百万の創造したシューズを履いていた。
「メリッサさん、ウチの個性使う?」
「ありがと……でもその力はいざというときのためにとっておいて」
お茶子がメリッサに個性を使わないかと提案したがメリッサはそれを拒否して疲れた素振りを見せないように笑みを見せた。
そして休むことなく階段を上っていき80階に差し掛かった時
「シャッターが!」
「っち!どうする?」
階段にはシャッターが下りていて防壁となり道を塞いでいた。
轟は舌打ちをするも辺りを見回して別ルートを探るが非常用ドアしか見つからなかった。
「壊すか?」
「ダメよ!そんなことしたらシステムに反応してヴィランに気づかれちゃう」
メリッサは轟の意見をすぐに否定して打開策を考えようとしていたが峰田が
「ならこっちから行けばいいんじゃね~の?」
疲れ切った声に振り向いた出久たちが見たのは峰田が非常用ドアに手を伸ばしている光景だった。
「っ!それは!」
「ダメっ!」
しかし呼び声も虚しく峰田はハンドルのレバーを引いてしまった。
ピー!という音がして非常ドアは開いたがどうみてもタワーを管理するコントロールルームまで情報が届いてしまいヴィランに気づかれてしまった。
「バレたな……」
「なにやってんだよ……」
「う!うるせえ!」
「そんなこと言ってる暇があるならここから逃げよう!非常階段じゃ逃げ場がないし、シャッターを壊せば警備マシンにヴィランと認識されてしまう!」
回原と鉄哲の呆れた声に反論していたが出久にバッサリと切り捨てられてしまい、すぐにフロアに逃げるように入っていった。
一方コントロールルームではヴィランが出久たちに気づいて会場にいたリーダーのヴィラン、ウォルフラムに連絡をすると
「80階の隔壁を全ておろせ。ガキどもを逃がすな」
「了解」
会場から出ていく手下のヴィランを見たオールマイトは祈った
(気を付けるんだ……ヴィランは狡猾だぞ……)
・・・・
一方フロア内に侵入した出久たちは
「他に上に行く方法は!?」
「反対側に同じ構造の非常階段があるわ」
回原の問いにメリッサが答えた時、前後のシャッターが機械音とともに下がり始めた
「轟君!」
「ああ!」
飯田の声に反応した轟が氷塊でシャッターが閉じるのを阻止した。
その中を夜嵐と飯田が突っ切って横の扉に同時に蹴りこんで扉を破壊した。
「この中を突っ切っていこう!」
扉の先は公園のような植物プラントだった。
色々な植物が所狭しと植えられていた。
「なんだここ……」
「すごいっすね!」
「植物プラントよ。『個性』の影響を受けた様々な植物を研究……」
「待って!」
耳郎が指さした先には中央のエレベーター。その表示はどんどん増えていっており誰かが上がってきていることは明白だ。
「ヴィランだ!もう俺たちの位置はバレてるんだし……」
「どうする?」
「ここに時間はかけられない!迎撃するしかない!僕が行く!」
出久が自分が殿を引き受けると提案するが
「お前は先に行け」
「轟君!?」
「このさきどれだけ強えやつがいるかもわからねえ。その子を守るためにもお前は先に行け」
「緑谷!その子は任せたぜ!その代わりここは俺たちが引き受ける!」
「おっと!俺も残らせてくれねえか!どっちにしろ俺の個性は戦闘にしか役に立たねえからよ!」
轟に回原、鉄哲が出久の提案を拒否して自分が残ると言い出した。
「皆……わかった!先に行ってる!」
こうして出久たちが轟の氷塊で上に移動したのをみた轟はエレベーターの扉が開くと同時に中に向かって氷塊を放つが
「やった……わけないよな……」
「ああ!来るぞ!」
その直後に氷がえぐられたように大きな穴が開き中から会場にいたチビとノッポのヴィランが現れた。
「ガキどもが……つけあがってんじゃねえぞ!」
チビのヴィランの体が膨れあがるとともに服が破れて紫色になった肌がさらけだされた。
そして鉄哲に拳を振り下ろすチビのヴィランだったが鉄哲は反射神経で攻撃を後ろに跳んで躱す。その隙に回原がパンチを放つが
「効かねえよ!」
チビに吹き飛ばされてしまった。
一方轟はノッポヴィランを相手にしていた。
轟が滑るように氷結で水面を凍らしながら移動してノッポの攻撃を躱して凍らせようとするがノッポが腕を振るうと氷塊がえぐられておちる。
果たして三人は勝つことができるのか!?