(白)ウォズのヒーローアカデミア   作:ハッタリピエロ

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ようやくっ……!ようやく終わったッ……!

やっぱり最新話は消して一つにまとめました


祝え!明日に向かって!

戦いが終わってヴィランを倒して事件解決に貢献した出久たちはIエキスポからの労いのバーベキューを楽しんでいた。しかし本来バーベキュー場にいるはずの出久はオールマイトの元にいた。

 

「オールマイト、今回の事件、なにが原因だったと思う?」

 

出久と精神権をチェンジしたウォズがオールマイトに問う。少し前までならオールマイトもその答えがわからなかっただろうが

 

「……私が……本心ではデイブを信じてなかったからかな……」

 

しかしウォズは

 

「それもあるだろうが、お互いの本心をぶつけ合えなかったからだろうな。オールマイト、確かにアンタは言いたいことをぶつけられた。だがデイヴィッド博士は君への想いを、気持ちを伝えられずに良心を押さえつけてまで強行に走った。じゃあなんで相談しなかったのか?答えは簡単だ。長年付き合っていたからこそ、言ったとしても簡単に意見や気持ちを受け入れようとは思わなかっただろうな」

 

「なっ!?いや私は」

 

「あったとは言わせないぞオールマイト。君は出久に止められるまで一人で限界を超えようとしていたらしいじゃないか。ヒーローとしては間違ってないだろう。でも身近な人間が持つ感情は嬉しさじゃない。恐怖と疑惑だ。自分に対する心配を無視して自分以外を信じない。そんな人間に信じて隣にいる人間がいるだろうか?サー・ナイトアイとのコンビ解消がそうじゃないか。君は他人に、心配する感情を押し殺して我慢させて気持ちを強制させていたんだよ。やり方は間違っていたとはいえデイヴィッド博士はそんな自己犠牲の塊の君を思っていたんだ。君がそのやり方を少しでも考えない限り君の周りには誰もいない」

 

『ウォズ言いすぎじゃ……』

 

『出久よ……心の強制はいつか信頼の破滅を招く……君もわからないわけではないはずだ』

 

『でも……!』

 

「いや……ウォズ君の言う通りだ……私は身近の優しさを切り捨てて平和を維持しようと思ってたがそれが仲間を凶行に走らせるなんて考えてもいなかった……」

 

『オールマイト……』

 

「この際だからはっきり言っておこう。オールマイト、君が出久を自分と同じようなヒーローにさせるつもりなら私は貴方にもらったこの個性を無理にでも返させて縁を切らせてもらう」

 

『ウォズ……』

 

「貴方は自分を特別視しすぎなんだよ……君は自分一人で平和の象徴になったと思っているのか?違うだろ、グラントリノやサー・ナイトアイ、デイヴィッド博士などの支える人がいたからこそだろ。出久もそうだ。はっきり言って君には及ばないかもしれない。だが仲間を信じる気持ち。互いに高めあい、支えあう心は君や私よりも上だ。だから私は心配していないんだよ……出久は辛くなったとしても頼れる仲間がいる。でも君はどうだ?身近の優しさを切り捨て続けたら、いざとなったら一人で孤独死するだけだぞ」

 

「そうかもしれないね……なんで気づかなかったんだろ……」

 

沈黙が流れる中

 

「そういうことだったのか」

 

『轟君っ!?それに夜嵐君にお茶子ちゃんも!?』

 

「私もいるわ……」

 

『メリッサさんまで!?』

 

轟に夜嵐、お茶子にメリッサが物陰から姿を現した。

 

「緑谷……盗み聞きするような真似して済まないっす……でも……あの時の博士の言葉が気になって……」

 

「俺も夜嵐たちに聞いたときは信じられなかったが今の話を聞いてみると本当のようだな」

 

「出久くん……ごめんっ!」

 

皆が出久に謝っていると

 

「……出久は気にしないって言ってるそうだ……後は……」

 

「……こうなった以上は納得のいく説明が必要だね」

 

そしてオールマイトが皆に自身の個性についてと継承の経緯を話した。知っている人間についても話した

 

「そういうことだったのか……」

 

夜嵐が納得しているが

 

「ごめんね、言えなくて……」

 

出久が申し訳なさそうに俯くが……

 

「……確かに俺たちからすれば驚きの連続だ」

 

轟が「でもな」と言葉を紡ぎ

 

「おまえが俺たちのことを思ってくれていたのはわかる。お前が俺たちを信じていないってわけじゃないのも知っている。だから俺たちを信じてこうして話してくれたのも嬉しい。ならこれからは俺たちも頼ってくれ。あと盗み聞きしたのは……すまねえ」

 

「そうっすね!緑谷、これからは俺たちも頼ってほしいっす!」

 

「うん……ウチも……出久くんを助けたいから……」

 

「皆……」

 

そしてメリッサが

 

「……マイトおじさまの個性を受け継いだって話が壮大すぎて私にはなんとも言えないわ……でも、これだけは言わせて。パパを……私を助けてくれて……ありがとう」

 

「……どういたしまして!」

 

こうして夜嵐たちも出久の秘密を知る者となった

 

・・・・

 

あの後デイヴィッドは警察に自首した。

 

罪に問われるとはいえ情状酌量の余地はあった。

 

今回の事件の発端は各国のスポンサーが研究を凍結したからである。

 

だがすこし考えれば個性活性化という研究が実現すれば弱個性のヒーローでも活躍の機会が与えられ、更なるヒーローの強化に繋がるはずだ。当然その投資をしたスポンサーも世間にアピールでき、大きな利益を生むはずだ。

 

ならなぜ国からの圧力とはいえその利益を無視したのか?それは簡単だ。一部の上位のヒーローたちが自らの地位を他のヒーローに脅かされることが気にくわなかったということから始まった。

 

普通ならこのような装置は上位のヒーローに渡されるものと思うだろう。だが考えてみてほしい。強力な個性が装置で更に制御が効かなくなるという懸念があるのにそれを持たせるだろうか?なら少ない質が高いヒーローに暴走の心配を持たせるより弱個性のヒーローに与えてバランスの取れたヒーロー軍にするだろう。

 

当然納得のいかなかったヒーローたちは自らの地位の保身のため、この装置の研究に反対した。彼らはどうやって研究を凍結させたのだろうか?

 

それは簡単だ。

 

ヒーロー協会のコネを通じて各国政府に圧力をかけたのだ。

 

脅迫材料は『研究を続けるならヒーローを止める』と

 

政府は戦力ダウンだけを恐れたわけではない。問題があるとはいえ市民からの一定の人気を得ている上位のヒーロー。そんな彼らが突然止めればどうなるだろう。

 

ヴィラン発生率は上昇し、さらに国民の不安をも招く。一番厄介なのはそういう奴らに限って国の裏の事情を知っているからだ。例えば国の特例によって世間に公表することなくヴィランを抹殺した事案や正規の会社のサポートアイテムの横流し。更にそれに通ずる犯罪の手口

 

万が一にでもヒーローでなくなった彼らがどんな形とはいえ自分たちに牙をむくのはあり得ないことではなかった。当然それでもなお政府の中には反対した者もいたがそれはごく少数。ほとんどは自らの保身しか考えておらず、言葉巧みに市民の安全のためだと囁いた。反対した者たちも市民とデイヴィッド一人、どちらかを取るかと言われれば苦渋の決断だが答えは決まっているだろう。

 

故にデイヴィッドは切り捨てられてしまったのだ。

 

やはりというか人間の本性が露わになるのは追い詰められたときであり、ほとんどが保身に走るだろう。

 

だが皮肉にもこの所業は事件後に明らかになった。

 

Iアイランドで起こった事件はネットワークを通じて世界中に広がりあらゆる国のマスコミが記事にしようと動き出した。当然政府が圧力をかけたことが明らかとなりその不審点も追求しようとした。だがヒーロー協会も自分たちの社会的地位を落としたくなかったのか一切の黙秘を貫くように政府に命じた。

 

だがそれはある一人の人物によって告発された。

 

そう、ヴィランの襲撃を乗り切って雄英体育祭で優勝し、ヒーロー殺しをも捕らえた話題

No. 1の雄英生、緑谷出久こと、ウォズの存在だった。

 

ウォズも研究凍結に不審を抱いていたおり、デイヴィッドから話を聞くと大体の想像ができた。そして各国ヒーロー協会に疑問を持った彼は各スポンサーにある交渉を持ちかけた。初めはスポンサーも政府を恐れたが装置の価値のセールスとウォズの説得によって、その装置の研究を再開し、試験対象者にウォズを選ぶことを大々的に発表した。

 

当然一部のヒーローや各国政府、ヒーロー協会も黙っていなかったが元々圧力をかけていた政府に発言権などあるはずもなく、ヒーローたちも猛抗議したがウォズの話題性ゆえに民衆からの支持が自分たちよりも高かったため、反対された

 

だが自尊心の塊のような彼らが当然それで引き下がるはずもなく今度はサムと同じように裏で手を回し、雇ったヴィランを使ってウォズを社会的に陥れようとしたがそれが失敗だった。

 

ウォズが協力を要請したサー・ナイトアイの個性によってヴィランとのやり取りが警察にリークされてそのままヒーローたちは逮捕された。

 

当然各国ヒーロー協会もそのようなヒーローを認めていたという事実から民衆からの猛抗議を受けることとなった

 

その過程でサイドキックが全てを白状してデイヴィッドは減刑が認められた。

 

こうして友を想ったが故に道を踏み外した苦い事件は幕を閉じた。

 


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