三人称side
荷物を男子用の大部屋に運んだ後、大半がそのまま倒れるように横になる。
出久も例外ではなく荷物を隅っこに置くと壁にもたれるとそのまま来る睡魔に抗うこともなく眠りにつく
『……久……!出久!』
『ハッ!……ウォズ?』
『もうご飯の時間だよ。そろそろ起きないと』
時計を見てみると針の短針は6を指していた。
『ああ、もうそんな時間か。ありがとね、ウォズ』
『気にするな。それより皆を起こさないと』
ウォズに言われた通り確かに皆、疲れていたせいか寝相が悪く、乱雑された部屋のように足の踏み場がない状態になっているので踏みつけないように注意して起こすべく近づく
「鉄哲くん、起きて……」
「グガー……!!」
呼び掛けられるも豪快な寝息で返した直後
ブゥン!!
「うわっ危なっ!」
大きな寝返りをうつとともに左腕が出久に当たりそうだった
「……鉄哲くんは後回しにしよう。おーい!物間くーん!」
出久は物間を起こそうと揺すったが中々起きない。そのせいで後ろの凡戸の様子に気づかなかった。
「うう〜ん……」
「起きてって!」
「はっ…はっ…」
凡戸の不穏な様子を心の中にいたウォズが察知した次の瞬間
『まさか…出久避けろっ!』
『え…?』
「ぶっ…ブワックション!!」
クシャミ……という名の瞬間接着剤の大量噴射が出久に襲いかかる
(せ、精神同調スピリットドライブ!)
なんとか強化した反射神経で凡戸のクシャミの範囲から離れることができたが……
「……どうしよう」
凡戸のクシャミが畳や一部の男子にかかってしまい凄惨な光景になってしまった。
円場と泡瀬は服がボンドでベチャベチャになり、黒色は服も含めてほとんどが真っ白になって、物間至ってはボンドで顔が凄いことになってる状態なのに皆気持ちよさそうに夢の中にいた。
とその時、
「ンン……パフェ食いたいよ〜!」
「……は!?」
誰かの寝言かと気にも留めなかったが一拍遅れて、声の主の正体に気づいた出久はすぐにその場から離れたのだが遅かった
吹出の寝言はオトマノベで具現化され、しかも寝ている状態なのかイメージがグチャグチャになった大きな白いパフェの文字が出現した。だが彼のオトマノベは言葉の性質もコピーしてしまう。結果は言うまでもないだろう……部屋や彼らは白いクリームや白いチョコでベチャベチャになってしまったのだ
と間の悪いタイミングで
「おーいお前らそろそろ……」
なかなか広間に来ない生徒たちを呼びにきたブラドキングがフスマを開けて中の地獄絵図を見てしまった
「緑谷……どうなってるんだこりゃ……」
「僕に聞かないでください……もうやだ……」
・・・・
「あっ、出久やっと来た…」
「出久さんお待ちしてまし…」
「やっと来てくれ…」
「ん……!?」
広間に着いた彼らを才子たちが出迎えてくれたがボンドにクリームやチョコまみれになった出久たちを見て言葉を失った
塩崎や角取たちも詰め寄ってくる
「な、なにがあったのデスかー!?」
「そ、そうですよ!一体…」
一方出久は
「知らない…僕は…何も知らないんだ…」
半分現実逃避していた出久を見て鉄哲たちは何も声をかけられなかった。
彼らも被害を受けた者たちで、起きて状況を把握するとともに驚愕の声を出したが、出久の苦労を知ると自分たちのことが小さく思えてしまった
「わ、悪かったよ!緑谷くん!」
「ご、ごめんね……!?」
この状況を作り出し、尚被害を全く受けなかった凡戸と吹出は出久を立ち直らせようとさっきから必死に出久に謝っている。
経緯をボンドまみれのせいで初め、女子たちからの悲鳴を受けた物間が説明すると彼女らも把握できた
「なにそれ…」
「大丈夫ノコ……?」
取陰に希乃子は同情の視線を向ける。男子陣はそれをありがたく頂戴する
「あはは…もう吹出と凡戸とは一緒に寝たくない…」
彼らによる被害を一番受けた物間が突き放すような言葉を口にするが誰も反論しなかった。事実彼はボンドを顔にかかるだけならいざ知らず、クリームとチョコが鼻に入り、おまけに起きた時にプリンのカラメルソースが目に入ったせいで地獄を見ることとなったからだ。
吹出と凡戸も反論できず出久への謝罪を続ける
「あー……いろいろあった中でご飯の時間だが……男子陣はまず風呂に入れ」
ブラド先生の言葉に反論する者はおらずそのまま風呂に直行する彼らであった
・・・・
「ふ〜……いい湯だー!」
「あ〜……生き返る……」
湯船に入る前にまずシャワーで身体をきれいさっぱり洗い流した。
ただのお湯のはずなのにいつもの三倍ほと気持ちいいと感じる彼らであった。
「ほんとにゴメンね……」
「うん……」
「もういいって!気にしてないよ!」
功労者である出久は皆の勧めもあって一番に湯船に浸かっており、お湯のあったかさもあってか既に立ち直っていた
「しっかし……!すげー濃い1日だったなー」
「ああ……でも明日からもっと厳しい訓練があるんだろ?」
「ああ……」
回原と鱗は頭を洗いながら愚痴り、骨抜はお湯に浸かって自身を癒している
そして全員が洗い終わって湯船に浸かっていると
「あー……!生き返る……!」
「初めてだよな?こうやって皆で風呂に入るの」
「折角だからさ!ギリギリまでなにか駄弁ろうぜ!」
「面白そうだなあ」
湯船にもたれた円場に黒色が声をかけて泡瀬が皆に自身の提案を告げると鎌切がそれに乗っかる
「でもこういう時ってなにを話すんだろう?」
庄田が疑問を口にすると
「こういう時は……やっぱり恋バナだよねえ?」
物間がいやらしそうに口にすると
「こん中で恋バナといえば…!」
鉄哲が出久を見ると皆一斉に注目すると
「拳藤たちとは何処まで進んだんだ!?」
「もう一線を超えたのか!?」
「この前デートしてたって本当か!?」
「A組の麗日とも交流があるって話は!?」
円場、回原、泡瀬に鱗のB組の常識四天王が次々と質問を投げかける。
「い、いや僕たちはまだ一線は超えてないしまだ相手の両親にも話したこともないから!」
「でもキスぐらいはしたんだろ!?どうなんだ!?」
「き、キスは……しました」
「う、羨ましいじゃねえか〜!この野郎〜!」
「いつ!?何処でだ!?」
「こ、この前遊園地でデートした時……観覧車の中で……///」
「緑谷ァァァァ!!漢だぜェェ!!」
「ふ〜ん?緑谷くんは随分と度胸があるんだねぇ〜」
「も、物間くんっ!って、もう上がるからね!」
「あっ待ってくれよ、緑谷ぁ!」
こうして出久たちの合宿はまだまだ続いていくのでした
女性陣の入浴
「あー!染みるねー!」
「ええ…一時の癒し…存分に味わいましょう…」
「これかジャパニーズ温泉というものナノデスネー!」
「うん……気持ちいいね……」
皆湯船に浸かって癒しの時を寛いでいた
「お化けとか出そう……」
「ちょっ!レイ子さん!そんな…お化けなんて…!」
「ふふっ……」
「レイ子ってこういうの好きだよね…」
取陰切奈が湯船にもたれながら才子とレイ子のやり取りをただ見ていたのだがふと面白そうなことを思いついたので
「ねぇ〜、一佳〜レイ子〜才子〜唯〜?緑谷とは何処まで進んだ〜?一線超えちゃった〜?」
ニヤニヤしながら彼氏がいる友達に問い詰めると
「ええっ!?いや……その……」
「わ、私たちはまだ…」
「私たちう、ウラメシイ関係だけど…その…」
「ん……!!」
彼女たちの初な反応を楽しんでいたが反応から一線を超えていないことを察した取陰切奈は質問を切り替えることにした
「じゃあ一佳たちから見て緑谷ってどんな人?」
「///……最高の彼氏」
「……運命の人です///」
「私のヒーロー……///」
「……私を認めてくれた人///」
迷いなく答えた彼女たちを見ると
「素晴らしき愛で結ばれているのですね……!」
「緑谷くんはまさに日本男児ってやつデスネー!」
彼女たちとクラスメイトの信頼の深さに感動していた
「そういえばさ希乃子は緑谷とは同じ身体だけどウォズとはどう?」
「ウォズくんは…ジェントルマンで…この前のデートでも私をエスコートしてくれたノコ!」
「いいな〜!私も恋してみたいな〜!」
「切奈ならいい相手が見つかるよ!」
「い〜ち〜か〜?それって皮肉なのか〜?」
「うわっ!?ちょおっ!?」
「なんなの!?この胸は!最高の彼氏もいて胸までデカいとか喧嘩売ってんのか!」
「いやっ…ちょっ…そういうわけじゃ…」
この後30分もみくちゃにされた一佳さんであった