ハリー・ポッターと父親の再従兄弟   作:sunplane

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出すだけ出すの精神です。


子世代 第三話

ゴドリックの谷(Godric's Hollow)

 チャールズ・ポッターとセブルス・スネイプは再び惨劇と奇跡の現場に舞い戻った。既に半日もたてば魔法省の闇祓いや惨事部の部隊が現場に駆け付け、現場検証と片づけに従事していた。チャールズは顔見知りの役人を見つけ、声をかけた。

 

「失礼、Mr.ディゴリーですね」

「おやあなたは、たしかポッター家の類縁の」

「チャールズです。ポッター家当主ジェームズの再従兄弟に当たります。こちらはプリンス家のセブルス」

そう名乗りながらチャールズは“薬匙”と“ヤドリギ”の紋章が描かれた指輪印章(シグネットリング)を見せた。

「確かにポッター家の紋章、ジェームズ・ポッター氏の指輪と一致しますな。Mr.ポッター、昨日のことはどこまでご存じですかな」

「我々がゴドリックの谷に仕掛けられた防衛魔術が突破されたことを知り、ここに来た時には既にこの家は破壊しつくされていた。察するに忠誠の術で護られたこの隠れ家を“例のあの人”が何らかの形で突破し、ジェームズ達を殺害、しかし肝心のハリーを殺すことは出来なかったようですね、我々はハリーがこれ以上危機にさらされることを防ぐため、ポッター邸に彼を連れて行きました。生前ジェームズが作成した公証遺言書には私もハリーの後見人の一人に記載されていますので、問題ない行為かと」

チャールズの言葉に、エイモス・ディゴリーはうなずいた。

「なるほど、ハリー君の姿が見えなかったのはそういうわけでしたか。今捜索チームを選抜しているところでしたが、無駄になってよかった。」

 

ディゴリーは疲弊している様子にも関わらず、準備が無駄骨になったことに嫌味も言わなかった。

「いえ、こちらも妻から連絡させるべきでした。畑違いの部署から応援にいらしているMr.ディゴリーには頭が下がります」

「いえいえ、幼い子供を抱える母親に無理を強いてはいけませんぞ。まして“例のあの人”はもう滅びたのです。そのようなことはもはや些細なことです」

 

 エイモスの何気ない一言にチャールズは衝撃を受けた。セブルスも思わず目を見開き、問いただす。

 

「Mr.ディゴリー、“滅びた”とは如何なる次第ですかな?」

「おや、お二人は日刊予言者新聞の号外をまだ見ていないと見える。“アクシオ!今日の日刊予言者新聞”」

ディゴリーが呼び寄せた新聞には一面から三面まで歓喜に沸く人々の写真が大きく掲載されていた。差し出されたそれにチャールズは目を走らせた。

 

 

“各地に打ち上げられていた死の印、消滅する!”

“アズカバンに収監された死喰い人(デスイーター)達が狂乱”

“狼人間、巨人、闇の眷属が統制を失い、闇祓い達が打ち破る”

“闇の帝王の呪い、終焉”

“ミリセント・バグノールド魔法大臣、勝利宣言!”

“ホグワーツ校長アルバス・ダンブルドア氏、ハロウィンの夜の真相を語るか!?”

 

 

「……ジェー、いったいどういうことなんだ」

二度と話すことのない再従兄弟の、考えの読めない瞳と、それを感じさせない白い歯の輝きをチャールズは思い出していた。

 

 

1991年 8月10日

ロンドン ダイアゴン横町 (Diagon Alley)

 

「セブルス、そういえば今日は他にも引率する生徒がいるといっていたな」

 

「ええ、マグル生まれや、自身の出自を初めて知った魔法族の落とし子。スリザリンの寮監が引率するのはいささか不適当ではありますな」

「しかし副校長は多忙、ほかの寮監はマグルの町で行動するには向かない、マグル学の教授はついこの間までアルバニアにいたというのだろう。君以上の適任者がいるとは思えないね」

「ものはいいようですな。しかし、潜在的死喰い人(デスイーター)シンパにならぬ様、イギリス魔法界の現状を教えないわけには参りますまい。血統の裏付け無きものは時にサラブレッドに過剰反応してしまうものです。或いはかつての私のように」

苦笑する大人たちの耳に、ドアをノックする音が響く。

「トムです。Mr.スネイプ、お客様が正面玄関前でお待ちです」

来たか、とスネイプは身を翻し、足早に降りていく。

「我々も行こうかハリー、セブルスだけでは大変だろう。君も一足先に同級生に会えるチャンスだ」

 ハリーは大いに頷いた。魔法界とマグル社会を行き来する時には子供ながらに会話に気を使わなくてならない。それに大人にはちょっと話しづらい、同年代だけで共有したい話もあるのだ。魔法について気兼ねなく話せる友人はハリーの目下一番欲するものだった。


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