防衛のためにやってきた帝国軍13万を恨み骨髄の自衛隊(米帝様による補給チート付き)があっさりと打ち砕き、翌週にやってきた連合諸王国軍も同様に一方的に殲滅した後の事。
「焦土作戦並び怪異や亜人を用いた攪乱を行う。」
自衛隊の余りの強さを警戒したモルト皇帝はベルナーゴ神殿より派遣された魔術師や神官らと相談した後、今後の戦略を決定した。
「アルヌスから帝都への全ての町や村で物資を徴発し、井戸に毒を撒くのだ。」
「それはまた…しばし税収が低下しそうですな。」
その臣下の言葉に、皇帝も頷く。
「仕方あるまい。園遊会並び離宮の建設は無期限延期とする。また、残った村民にはアルヌスの者共が食料を持っていると伝えよ。」
「成程、流石は皇帝陛下。直ぐに取り掛からせましょう。」
こうして帝国は自衛隊・米軍が最も警戒していた戦略を取った。
だが、それ故に彼らの逆鱗とトラウマに触れる結果となってしまうのだった。
……………
この特地において、死後の魂は三つに大別される。
一つは戦死者の魂。
これは死と断罪と狂気と戦いを司るエムロイ神の管轄であり、尚且つ「己の心を偽ることなく、かつその責任も投げださず、人生を全うした者」の魂のみを迎え入れる。
二つ目は普通の死者の魂。
冥府、というよりは通常人々の暮らす世界から外れた空間を担当する女神ハーディの管轄であり、大部分の死者の魂は冥府行きとなり、その死後を冥府にて過ごす。
なお、ハーディの管轄には地下や異空間も含まれており、地下資源各種や異なる世界と世界を繋ぐ道を作り出す事も出来る。
三つ目は、特地の歴史上でも極めて数少ないが、神となる道だ。
通常の生命体から主に正神から加護を賜る事で亜神となり、千年かけて正神となる。
こうなると肉体の縛りから抜け出し、神格を得るため、その魂は冥府等に行く事はなくなる。
これが特地における魂の動きであり、ハーディとエムロイは死者の魂を奪い合う関係から非常に険悪な関係になっている。
しかし今現在、この関係に変化が生じている。
ハーディ神がその役割を放棄し、特地にて死者の魂が溢れ出したのだ。
これには他の神々も大いに驚き、ハーディを詰問しようとその領域に向かったのだが、そうした神々の多くが這う這うの体で撤退するか、滅ぼされてしまった。
数少ない生き残りの正神が言うには、「ハーディは異界の神に取り込まれた」という信じ難い事だった。
最初は神々の誰もが信じなかったが、次第にそれが事実であると分かると、異界の神の排除を決定、肉体を失っている正神総出で排除へと移った。
だが、返り討ちにされた。
異界の神は特地の神々を嘲笑うかの様に翻弄し、その力を削っていった。
どの神々も必死の抵抗をした。
特にこの特地の秩序を担い、混乱や滅びを抑える役目を持つ光と秩序を司るズフムートは必死に抵抗したものの、健闘敢え無く撃退されてしまった。
「ふふ、君達は何の心配もいらないよ。ちょっと遊び場を貸してもらうだけだからさ。」
そう言って嘲笑する異界の神に対し、神々も何の対策を取らなかった訳ではない。
ハーディがその役割を手放したのは、取り込まれながらも未だその意識を失っていないからだ。
恐らく、それが今彼女に出来る最大の抵抗だったのだろう。
そのせいで現世に死者が溢れ返っているが、その死者の魂全てが異界の神の力にされる事に比べれば、被害は遥かに少なかった。
取り敢えず、急場しのぎでエムロイ神が戦死者以外の魂も回収する事を決定し、その他の神々もまたこれ以上の異界の神からの侵食を防ぐべく、各々の領域と管轄の許す限り奔走する事となる。
「ちょ、魂多過ぎぃ!こんなんじゃ何時まで経っても終わらないわよぉ!」
そして、急に過剰な量の仕事を任せられたゴスロリ亜神は今日も死なない体で悲鳴を上げながら頑張るのでした。
……………
さて、その頃の自衛隊と米軍は、正直に言えば困りに困っていた。
何せ最大の懸念事項だった難民爆弾&焦土戦術が炸裂してしまったのだ。
いくら米帝様の支援があるとは言え、門から持ってこれる物資の量は限りがあるし、その内訳は特地に展開した人員のための各種物資であり、アルヌスの丘を要塞化するための大事な資材なのだ。
難民向けのキャンプ設備や食料に医薬品なんて、とてもではないが運び切れない。
この事に頭を抱えるのは自衛隊で、ガタガタ震えるのがイラクでトラウマを抱えた米軍だった。
これら難民の内、どれだけの敵の間者がいるのか分からないし、どれだけ病気持ちやファンタジー案件持ちなのかとてもではないが分かったものではない。
最悪なのは流行り病や感染型の呪い持ち(吸血鬼やゾンビ等)の存在であり、アルヌスに建設予定の基地周辺が全て難民キャンプとなる事態だ。
情報部門並び専門家をお呼びして判別してもらっているが、何時終わるのか分かったものじゃなかった。
もしこの場所で再度戦闘が起こった場合、どれだけの人命が巻き込まれ、後方で政権批判に繋がって政治的混乱が起こるか等、考えたくもなかった。
「と言う訳で、なんとかならないでしょうか…。」
「我々からもお願いする。」
「えぇ……。」
北海道の霊的治安の維持が終わり、ホラーハンターズと共に各種新兵器の実戦運用と共に特地での霊的事象の調査を行っていたリーア&アーリの元に話が飛んできた。
「要は物資が届けば良いと?」
「えぇ、まぁ。」
「出来れば難民そのものをどうにかしたいが、そちらはこちらを治める帝国次第ですからね…。」
「うーむ……。」
悩む。
一応解決策が無いでも無いが、それやると悪用されそうなのだ。
「んー物資だけで良いならなかったっけ?」
「アレか。ハリポタ風味のやつ。」
「そーそー。フォイフォイが調整してた奴。」
劇中でドラコ・マルフォイがホグワーツに持ち込み、苦心して調整した何処でもドア的な機能を持ったクローゼット?がある。
名前は忘れたが、あーいうものに似た道具なら、リーアは以前ループ中に作った覚えがある。
とは言え、大質量を召還可能な虚数展開カタパルトや鬼神招喚の術式が完成してからそっち頼りだったので、割と出番が無かったのだ。
「非生物のみのどこでもドアとか、需要ある?」
「魔術師以外の生物が通ると漏れなく異界に落ちるんだが…。」
「寧ろ何故いらないと思ったのか。」
「ください(迫真)」
そういう事になった。
「と言う訳で、ちゃっちゃと作ろう。」
「手合わせ錬金術ー。」
「バリバリー。」
日米両政府の許可の下、あっという間に特地と首都圏外の僻地とを繋ぐどこでもドア(縦10m、横幅20m)を作ると、あっさりと物資の流通量は三倍を超え、何とか難民キャンプ設営のための準備が整い始めた。
「それ、米国と特地も繋げられますか?」
「いーよいーよ。」
「ちょい待ってな。」
そしてあっさりともう一つが設営された。
流通とスペースの関係上、アルヌスの丘の下に作られた新しい二つの門は、物資しか送り出せないものの、その後の日米関係者にとって本来の門に並ぶ最重要防衛拠点の一つとして数えられる事となる。
そして、両国の兵器以外の軍需物資製造関連の企業が小躍りする程度には多くの物資が順調に運び出されていった。
「……で、人が通れるバージョンは……。」 ヒソヒソ
「……日本の北海道となら、地脈を利用して割と簡単に……。」 ヒソヒソ
「……どれ位ですかね……。」 ヒソヒソ
「……転移ポータル形式にして、大部隊を重量無視して安定して……。」 ヒソヒソ
「……大統領に持っていきます。」
後に、日米安保条約に加えて、密かに日米の軍事条約が増えるのだが、それはまた別の話なのだった。