助けて邪神様!(助けて旧神様!×GATE)   作:VISP

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第二話 開戦

 20××年 夏 東京都中央区銀座 午前11時50分

 

 その日、銀座は真夏の真っただ中。

 コミケ開催日という事もあって、普段よりも大勢の人々で混雑していた。

 昼前という時間帯もあり、日差しは強く、人々は強すぎる紫外線の中を出来るだけ日陰を意識して歩いていた。

 

 そんな時だった。

 銀座の中心に、石造りの巨大な門が現れたのは。

 

 その門は銀座の大通りを塞ぐ程に大きく、扉もなく真っ黒な空間と通じるそこから、まるで古代ローマの様な鎧兜を纏った軍勢が現れた。

 その軍勢は多数の人間とは思えない姿をした人型の生物を率い、中には全長5mを超える前肢が翼となっているワイバーンに騎乗する者もいた。

 呆然とし、スマフォや携帯で撮影する人々が殆どの中、一部の勘の良い人々は足を止めた群衆と異なり、通報やその場からの離脱を急いだ。

 彼らは漠然とだが理解していたのだ、この後に何が起こるのかを。

 を後目に門の周辺への展開を終えると、一際目立つ軍装を纏った壮年の指揮官らしき者が開戦の号令を挙げた。

 

 『全軍、かかれェッ!!』

 

 直後、21世紀の先進国日本の首都、その銀座において異世界からやってきた古代ローマ風の軍勢による虐殺が幕を開けた。

 

 

 ……………

 

 

 2時間後 銀座の某ビル屋上にて

 

 「アーリ、被害報告!」

 『損傷無し!軽度の汚染あれどオールグリーン!』

 

 這い寄る混沌ナイア●ラ□ホ◆ッ▼の繰り出した暗黒に飲まれたリーアとアーリの二人は、今現在日本へと空間転移していた。

 門も介さず、一切の予備動作なく行われた世界間転移という超常の存在による御業への感動など微塵もなく、二人は必死に状況把握に努める。

 

 「場所は…銀座か。しかし、これは」

 『この前通ってきた門から出てきてる軍勢が無差別に攻撃してる。装備から多分所属は同じ。』

 「介入する。急ぐぞ。」

 『ちょい待ち。この装備だと警戒される。』

 「仕方ない。分離して、非難誘導及び民間人の守りはそちらに任せる。」

 「オーライ。じゃーやりますか。」

 

 ゼルエルの姿がページへと解け、中身と外身が二人の双子の少女となる。

 その姿は嘗ての旧神の妻の方が着ていた礼装を改造したもの。

 リーアは露出を抑えて黒をメインにし、重厚な膝まであるブーツと指抜きグローブを纏っている。

 アーリは白をメインにほぼそのままだが、こちらもやはり露出は抑えられ、下は短パンになっている。

 

 (いや、あのローライズは無いでしょ。)

 (九郎向けのセックスアピールのためだしなアレ。)

 

 なお、そんな理由で露出が抑えられているかは定かではない。

 

 「行くぞ。何時二の矢が来るか分からん。」

 「合点承知!」

 

 こうして、銀座事件は次のステップへと移る。

 

 

 ……………

 

 

 捨て駒として放たれた怪異が先行し、未だ驚きが抜けずにいる人々に襲い掛かる。

 重装騎兵達が突撃し、逃げるために混雑していた人々を蹴り潰す。

 大楯を持った歩兵達が制圧し、後続の邪魔にならないように死体となった人々を一か所に集め、山積みにする。

 ワイバーンに乗った竜騎兵が空を舞い、要所要所で抵抗を試みる警官達を蹴散らす。

 今、大勢の人々によって賑わっていた銀座は、紛争地帯も斯くやの地獄と化していた。

 

 『蛮族共よ、よく聞くがよい!我が帝国は皇帝モルト・ソル・アウグスタスの名においてこの地の領有を宣言する!』

 

 先程まで平和に生きていた人々の躯の山に旗が掲げられた。

 

 

 無論、こんな真似を黙って見ている程、日本の警官や自衛隊、そして政府は無能ではなかった。

 

 「銀座4丁目にて緊急事態!突然出現した大量の暴漢の集団に襲われ、多数の死傷者が発生!」

 

 その第一報を機に次々と寄せられる情報に警察が真っ先に動き、事件の余りの規模に機動隊だけでなく、自衛隊にも応援要請が伝わる。

 これが地方都市であるならまだしも、既に多数の民間人の犠牲者が発生しており、更には日本の首都のど真ん中かつ皇居が目前にあるという事が事態を後押しした。

 ここまで早い対応は、先進国でも早々見れないだろう。

 これなら、帝国軍はその日の内に撃退・逮捕も可能だ。

 帝国軍だけならば、と付くが。

 

 『司令、前線が停滞中!このままでは包囲されます!』

 『ジャイアントオーガを出せ。奴らに敵陣を突破させよ。』

 『司令、そちらはあの亜神対策なのでは?それに奴らを暴れさせては味方も巻き添えに…。』

 『ぬ…。』

 

 副官の言葉に、司令は口をつぐむ。

 あの亜神と思われる双子を相手に大損害を被った帝国軍は、対策として大楯と棍棒で武装したジャイアントオーガとベルナーゴ神殿より派遣された魔術師達を参陣させていた。

 とは言え、どちらも戦力としては安定性に欠けているため、余り使いたくはなかった。

 しかし、門の向こうで想定されていなかった抵抗を受けた事に加え、大軍を追加で投入するには門の向こうの土地は狭くて大軍の利を活かし切れないため、ここで投入する事を決定した。

 

 『よし、ベルナーゴ神殿付き魔術師達よ。敵陣を破壊してくれ。』

 『お任せを。必ずや戦果を挙げてみせましょう。』

 

 前線司令の命令により、門の向こうから現れたのは黒いフードを被った如何にも怪しげな集団だった。

 黒いフードの集団は全員が目だけはギラギラとし、何処か饐えた匂いを漂わせ、慇懃無礼を感じさせる。

 その中のリーダーは古びた魔導書を持ち、それを視界に入れると何故か妙な寒気に襲われる。

 

 『いあぁぁいあぁぁ…。』

 

 黒フード達は死体の山の前に行くと、一斉に詠唱を開始した。

 帝国兵らが今まで聞いた事のない詠唱を訝しむと同時、彼らから感じる寒気、否、怖気は益々強くなっていく。

 

 『いあ・いあ!にゃるらとほてぷ!』

 

 詠唱の完了と共に次々と死体が起き上がり、ゾンビとなって偽りの生を開始した。

 魔術で操られているものの、彼らの目的は一つ、

 帝国兵らは知る由もないが、彼らは特地における這い寄る混沌の信者であり、その中でもグールで構成されたゾンビ作成に特化した魔術師らだ。

 無論、彼らでリーアやアーリを止める事は億が一、兆が一にもあり得ない。

 だが、この世界の平和ボケした日本人ならどうだろうか?

 そして、さっきまで生きていた日本人をリーアとアーリ達が蹂躙する様を、多くの日本人はどう見るだろうか?

 混沌からすれば可愛い程に些細な悪戯に過ぎない。

 しかし、二人ならば間違いなく中指を立てるか親指を下に向けるだろう。

 

 「皇居だ!皇居の方に逃げ込め!」

 「よく狙って撃て!民間人に近づけるな!」

 「皆さん、落ち着いて素早く移動してください!」

 

 その頃、原作主人公こと伊丹耀司は警察と皇宮警察と連携し、陛下の許可の下、避難民を皇居に受け入れ、半蔵門を通って反対側へと誘導していた。

 大凡の方針が決定し、避難誘導が始まると伊丹は制服を着ていないから誘導係としては不適と判断し、現在は警官隊と共に避難民へと攻撃を加えようとする帝国軍に対してバリケードを構築、防戦に当たっていた。

 

 「ワイバーン!頭伏せろ!」

 

 そこにワイバーンに乗った騎兵が現れ、上空からブレスによる掃射を行ってくる。

 

 「ぎゃあああああああ!?!」

 

 それに一人が直撃し、火達磨になって燃え上がり、やがて動かなくなる。

 

 「っ、被害報告!」

 「一人やられました!」

 「もう一度水被れ!次は全滅するぞ!」

 

 現状の装備ではワイバーンの鱗を貫く事は出来ない。

 そこで何とか被害の軽減に努めようと、火災現場でするように水を頭から被っていたのだ。

 しかし、この猛暑と何度もやってくるブレスでは焼け石に水に近く、今のは伊丹達の運が偶々良くて無事だった。

 次はこの場の半数が戦死する。

 そうなれば、避難民の列に帝国軍が突っ込んでくる事となる。

 

 「機動隊は、自衛隊はまだか!」 

 

 原隊の、特殊作戦群での装備ならあのワイバーンにも通じるかもしれないのにと伊丹は歯噛みする。

 そんな伊丹の視界に、旋回して接近してくるワイバーンの姿が目に入る。

 

 (すまん、梨紗!)

 

 不意に妻の顔が頭の中を過る。

 成程、これが走馬灯かと納得しつつも、何とかバリケードから飛び退いてブレスから逃れようとして…

 

 

 「お仕事お疲れさーん!!」

 

 

 そんな陽気で幼げな声と共に、大型車両同士が衝突した様な轟音と衝撃が響き渡り、伊丹達は目を瞑って伏せた。

 

 「んな装備でよくやった!感動した!こっからは攻守逆転だ!」

 

 快活な声に目を開けると、そこにはバリケードを潰す形で墜落したワイバーンを、その上で騎士を殴り飛ばして笑う銀髪碧眼の少女の姿があった。

 その服装は袖無しの白いワンピースに黒いネクタイ、白の半ズボンを合わせたややパンクなファッションだが、その手に握られているのはM134ミニガンに似たファンタジーなのかSFなのか分からないアレンジを加えられた重機関銃であり、それでワイバーンを蜂の巣にしたらしい。

 

 「ほれ、これやっから弾幕張っててくれ。」

 「うおっと!」

 

 そんな彼女は気前よくそのナンチャッテM134ミニガンを伊丹に渡すと、自身は何処からか取り出した2丁のグロスフスMG42機関銃?(やっぱりファンタジーとSF混じりのデザイン)を構え、陽気に笑う。

 

 「こっちの連れが引き付けてるから、あんたらももうちょっと頑張ってくれ。ソイツは弾切れとか心配せずに適当にばら撒いてりゃ当たるからさ。」

 「わ、分かった!気を付けてくれ!」

 「アイアイサー!」

 

 そう言って白いパンクな少女アーリは、警戒して遠巻きにしていた帝国兵に向け、銃弾をばら撒いた。

 

 (やっべー。この人って伊丹二尉じゃん。って事は此処ってGATEじゃん。)

 

 この世界がどんな世界なのか漸く気付きながら。

 

 

 




なお、この時の伊丹は二重橋の英雄ってないからまだ三尉
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