助けて邪神様!(助けて旧神様!×GATE)   作:VISP

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第三話 異形

 『司令!例の亜神を確認いたしました!既にかなりの損害が出ている模様!』

 『よし、逐次投入せずに全て出せ。どうせアレは使い捨てだ。』

 

 リーアとアーリによって前線部隊が吹っ飛び、侵攻が停滞した頃、敵司令官にも二人の情報が届いた。

 そして二人への対策として投入されたのが、身の丈10m近い武装したジャイアントオーガだった。

 体の正面、特に正中線と足回りに対して、皮革で内貼りし、木で補強し、鉄板で覆った特注の大型鎧で武装したジャイアントオーガ。

 強靭ながらも小柄な亜神二柱対策に、下からの攻撃には特に注意して対策が成されている。

 外見こそ原作漫画版のソレに近いものの、その右手に握るのは単なる鉄板で覆った丸太(握りの部分だけ握り易く削ってある)ではない。

 少しでも命中率・攻撃範囲の向上を目指して、握りから先端にかけてまるで旗か垂れ幕の様に大量の鎖がぶら下がっていた。

 これなら敵歩兵への蹂躙にも使えるし、攻撃範囲も広がるから多少は命中率の向上も期待できる。

 更に、これまでの怪異兵とは違うのは、魔獣の使役に特化した魔導士をやや後ろから随伴させ、単純な命令を受け付けるという所だ。

 これまでの怪異兵は人の言葉を聞いても好き勝手に暴れるだけで、精々が戦闘の最初に突っ込むか最後に集めて檻に入れるか位しか出来なかった。

 しかし、魔導士による薬物・魔術を用いた使役により、ある程度安定しての運用を可能にした。

 無論、その手間と人材の関係で多数は運用できないものの、装甲化された自走式の攻城兵器と考えれば中々に強力だ。

 最大の問題は装備の費用及び薬物の副作用による寿命の激減、使役魔導士が死んだ場合は高確率で暴走する事だった。

 特に寿命は問題で、使役及び身体能力の向上と鎮痛の薬物・魔術の副作用によるものだ。

 しかし、それらが無ければ単なる強力な怪異兵(常に暴走の危険有り)になってしまうので、強力だが超高価な使い捨て兵器となっているのが現状だった。

 

 『ゴガアアアアアアアッ!!!』

 

 咆哮と共に、武装化したジャイアントオーガが7体、後方の随伴魔導士の指示に従って、最も帝国側が被害を受けている地点へと向かう。

 そこには今正に巨大な偃月刀によって膾切りにされている帝国兵とリーアの姿があった。

 

 「ふん」

 

 迫り来る脅威に、しかしリーアはつまらなそうに鼻を鳴らす。 

 この我らが寝取られ系残念主人公リーアちゃん(苦労人系熟女)、お忘れの方もいるだろうが、無限螺旋突破組にしてあの益田輝夫もといマスターテリオン(クラインの壺補正無し)を相手に勝率4割を誇り、更には堕ちた旧神討伐実績持ちである。

 

 「では久々に…」

 

 アフリカゾウよりも尚大きく重い足音を響かせながら、鎖付き棍棒を振り被った武装ジャイアントオーガの足元。

 僅か140cmにも満たない体躯、しかも無手の状態。

 しかし、生身のマスターテリオンを相手に、今や互角以上に殴り合いが出来る彼女ならば…

 

 「 邪ッッ!! 」 

 

 一撃で大気を切り裂き、音を置き去りにし、舗装されたアスファルトを粉微塵に踏み砕いて放たれた拳打は、ただの一撃でもって装甲化されたジャイアントオーガの右足を消し飛ばした。

 

 「…っッ……ーーっ!??!!?!!!」

 

 例え痛みに極端に鈍くなろうとも、出血のショックやバランスの崩壊、何より己の利き足を吹っ飛ばされるという視覚的衝撃に、ジャイアントオーガは先程までの戦意を完全に喪失して倒れ込み、言葉にならない絶叫を上げた。

 

 「五月蠅い。」

 

 だが、それは直ぐに止まる。

 倒れこみ、悶えるジャイアントオーガの頭頂部付近、そこに移動したリーアにより、あっさりとその頭蓋を砕かれる事で止められる。

 

 「さて」

 

 くるり、と未だ痙攣を繰り返す巨大な肉塊から視線を外してリーアは振り返る。

 その視線の先には恐怖で顔を歪ませた帝国兵と二の足を踏むジャイアントオーガの姿があった。

 

 (にっこり)

 (に、にっこり…?)

 

 いっそ無垢と言って良い笑顔を向けられ、兵士達も何とか愛想よく引き攣った笑みを返す。

 そんな彼らに、リーアは素晴らしい笑顔で告げた。

 

 『死ね。』

 

 態々ファルマート大陸公用語を用いての死刑宣告に、兵士達はその場から遁走した。

 ジャイアントオーガもまた、武器を捨ててその場から逃げ去っていく。

 

 「まぁ良い。末路は同じだ。」

 

 その無様な様子を、リーアはただ冷めた目で見つめるだけ。

 それは当然だ。

 今、彼女の後方から多数の射撃音にヘリのローター音が響いている。

 事件開始から数時間、漸く自衛隊の到着が間に合ったのだ。

 それに加え、この付近一帯の瘴気濃度が上昇し続けている。

 自分が先程見かけたゾンビの類が魔術によるものだとは分かっていたが、それだけではこの上昇は説明できない。

 これでは耐性の無い人間や亜人の類は1時間と保たないだろう。

 加えて、今の門の周辺に、生体反応は殆ど無い。

 それが答えだった。

 

 

 ……………

 

 

 『馬鹿な……こんな短時間に……。』

 

 完璧な、十二分な戦力の筈だった。

 10万近い精鋭の重装歩兵や重装騎兵、多くの竜騎兵や攻城兵器、そして武装化したジャイアントオーガにベルナーゴ神殿付き魔導士達。

 強大な帝国でも近年では類を見ない程の大戦力が、たった数刻で崩壊しようとしていた。

 最初は小賢しい抵抗だと笑った。

 次に恐るべき双子の亜神を警戒した。

 そして、鉄の天馬や鉄の車、鉄の棒を持つ緑の服を着る軍勢に、圧倒された。

 双子の亜神()を除けばどれもこれも彼の持っていた知識・経験にない事象であり、強大な国家である帝国の高級軍人にして貴族として順調に出世してきた彼にとって認め難い事態だった。

 既に状況を伝えた伝令は走り去り、他の部隊へと後退の指令を伝えに向かった。

 

 『司令殿、どうしたのですかな?その様に慌てて。』

 

 その横で、今までゾンビを生産していた魔導士が先程と変わらない慇懃無礼な声で話しかけていた。

 

 『ぬ、うぅ…!魔導士殿よ、前線は崩壊した様だ。何とかならぬか?』

 『ふーむ。それには司令殿の許可が必要ですな。』

 『なに?』

 

 二つの疑問に、司令が目を丸くする。

 この不利を覆す方法があるのか、そして許可とはどういう事か。

 

 『簡単です。ただ「ササゲル」と言って頂ければ良いのです。』

 『……わかった。』

 

 司令には「ササゲル」の意味が分からなかった。

 それがファルマート大陸公用語ではなく、この国の、日本の言葉だったから。

 それがどんな意味か分かっていたら、多くの神々の恐ろしさを知る彼は絶対に言わなかっただろう。

 

 『「ササゲル」。』

 

 だが、彼には日本語は分からず、あっさりと口にしてしまう。

 それが合図だった。

 

 

 OK 契約成立だ

 

 

 司令の目の前に立つグールの口から、悍ましい程に妖艶な女の声が響く。

 同時に、司令は自らの肉体の不調に気づく。

 

 『が、ご……げぼぉ!?』

 

 口からどす黒い血を喀血し、指先の皮膚が剥がれて…、否、腐り落ちていき、肉からは蛆虫が何処からともなく湧いてきた。

 

 『な、あんでぇ…?』

 

 助けてもらおうと周囲に目を向けて、漸く気づいた。

 既に周囲には誰も生者はいない。

 自分についていた副官も、門の守備兵も、敗走してきた兵士達も。

 皆が皆、自分と同じ様に生きながら死体に変わり、蛆に集られていた。

 目の前に立つ魔導士とその部下達も、黒いローブの下は蛆虫の塊と化していた。

 

 『ありがとう。これでちゃんと妖蛆の秘密を起動できたよ。』

 『あ ぁあ ぁぁ』

 『大丈夫だ。君達の魂まで、ボクがしっかり有効活用してあげるよ。』

 

 今更ながら、司令は最後に理解した。

 自分は決して、エムロイにもハーディーにも召し上げられる事は無いと。

 

 『喰らい、啜り、肥え太れ。』

 

 蛆虫が腐肉を喰らい、肥え太り、そして蠅となって卵を産んでまた増えていく。

 物理的だけでなく、魂や生命力等の魔術的にも重要な餌は今の銀座には大量にあったから。

 繁殖のサイクルがものの10秒で繰り返され、外法によって生まれた妖蛆と妖蠅はあっという間に膨大な数の群れを形成していく。

 銀座中央を埋め尽くした邪悪な蛆と蠅の群れは、その規模を瞬く間に拡大させながら、しかし反比例する様に一か所へと集まり、一つの形となっていく。

 

 

 『暴食せよ、ベルゼビュート。』

 

 

 時間と空間、世界と宇宙の壁を超えて、この世界で最初の鬼械神が顕現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最初召喚されるのは永劫か無垢なる剣かと思った?
残念!答えはベルゼビュートちゃんでした!

なお、キャストがナイアさん本人やお人形ばっかなのは彼女の手駒に出来そうな丁度良い人材が帝国中枢にいなかったから。

いたら?無限螺旋内でのティベリウス(CV矢尾一樹)
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