宇宙戦艦ヤマト2202IFストーリー 空母ダーヴェイションの戦い   作:岩波命自

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注:私のオリジナル設定と展開となります。
ただしエンケラドゥス守備隊の戦いが若干代わる程度で本編ストーリー自体が改変する事はありません。


前編

土星の衛星エンケラドゥスの近くの空間がゆらりと陽炎の様に揺らめいたかと思うと、ワープアウトの白い閃光が八つ走った。

八つの白い閃光の中から八隻の艦艇が飛び出して来る。ワープアウト時の艦体の着氷を払い落としながら八隻の艦隊は土星沖合に展開する友軍の元へと向かった。

艦隊を構成する艦艇は地球防衛軍航宙艦艇が保有する新旧の艦艇たちだ。

葉巻型の古めかしいデザインながら大規模な設計変更で量産が行われている金剛改Ⅱ型戦艦の「ユトランド」、それより一回り小柄ながらも連装陽電子衝撃砲(ショック・カノン)砲塔を三基、中口径の次元波動爆縮放射機、別名波動砲を備え紺色を基調とした旗艦カラーの軽装甲巡洋艦(パトロール艦)「コメット」、もっとも小型ながら波動砲や連装ショック・カノン三基など高い火力を備えている護衛艦(フリゲート)が「フォックスハウンド」「ファイアドレイク」、金剛型と同世代でパトロール艦や護衛艦の就役で第一線から退きつつあるが、まだまだ多数が現役の村雨型改巡洋艦「やはぎ」「はるぎり」だ。

そして地球連邦防衛軍航宙艦隊が建造した新型艦、ドレッドノート級主力戦艦改型軽空母「ダーヴェイション」だ。

「全艦艇、ワープアウト。各艦異常なし」

船務長のミカエラ・マルティネス少佐が告げる。

それに続く形で航海長のチャン・チャンロン少佐が現在地を報告する。

「現在我が艦隊の位置は土星沖合三五万キロの空間点」

「了解」

二人からの報告に「ダーヴェション」艦長、エイドリアン・スタンフォード大佐は頷いた。

軽空母「ダーヴェイション」の艦長を務めるスタンフォードだが、同時に「ダーヴェイション」を旗艦とした「ユトランド」「コメット」「フォックスハウンド」「ファイアドレイク」「やはぎ」「はるぎり」からなる第1空母打撃群、通称「ダーヴェイション」空母打撃群の艦隊司令官も兼任する非常に多忙な身分でもある。

その為、「ダーヴェイション」副長兼戦術長の笹崎利也(ささき・としや)二等宙佐の存在は欠かせない。

「今のところ、敵はいないようですね」

副長席に座る笹崎がスタンフォードに顔を向けて来る。

「ああ。どうやら我々は到着していきなりドンパチと言う事にならずに済んだようだ」

頷いて返すスタンフォードにコスモレーダーを見ていたマルティネスが「艦影見ゆ」と告げる。

「本艦隊一時の方角に艦影四〇。IFF確認。旗艦E25『ドラッヘンフェルス』率いるエンケラドゥス守備隊です」

「『ドラッヘンフェルス』の尾崎司令から通信です」

通信長のナギ・サトー大尉が入電報告を上げた。

「スクリーンに回せ」

「アイ・サー」

ブリッジの大画面モニターにエンケラドゥスに展開する地球防衛軍航宙艦隊内惑星艦隊第62守備任務部隊、通称エンケラドゥス守備隊の司令官尾崎徹太郎一等宙佐が映った。

「お待たせしました尾崎司令。第1空母打撃群、只今到着しました」

《到着を歓迎する。第1空母打撃群は我がエンケラドゥス守備隊の指揮下に入ってもらう。貴艦隊と航空戦力の到着は我が艦隊にとって百万の味方を得た思いだ》

「恐縮です。ご期待に添えられるよう、努力させていただきます」

《よろしく頼むぞ》

身近やり取りの後尾崎は通信を切った。

尾崎とスタンフォードは階級が同格だが、ここでは尾崎が先任となりスタンフォードはその指揮下に入る事になっていた。

エンケラドゥス守備隊構成艦艇は金剛改Ⅱ型が一五隻、軽装甲巡洋艦二隻、護衛艦二〇隻、ドレッドノート級主力戦艦(D級前衛航宙艦)「ドラッヘンフェルス」とE23「デュラブラ」E24「ディリット」の三隻だ。

ドレッドノート級主力戦艦は「ダーヴェイション」の基になった地球連邦防衛軍の新型主力艦で、その性能はカタログスペックで言えば先のガミラス戦争で活躍した宇宙戦艦ヤマトとほぼ同じである。

「ダーヴェイション」はこのドレッドノート級をベースに設計・建造された空母だ。

右舷側に第一、第二主砲(ショック・カノン)と艦橋などをずらし、第三主砲撤去、四〇メートル延長された艦尾から左舷一杯に航空機運用のためアングルドデッキを備えた飛行甲板を設けている。

艦内には航空機格納庫が設けられており、コスモタイガーⅡの単座型戦闘攻撃機を四八機、一〇〇式空間偵察機四機、空間汎用輸送機SC97コスモシーガル三機、計五五機を艦載している。

「ダーヴェイション」自体も三連装ショック・カノン二基、四連装対艦グレネード発射機二基、艦底部汎用VLS八セル、小型魚雷発射管八門、対空ミサイルランチャー八門、司令塔防護ショックフィールド鳳三基、CIWS(近接防御火器システム)六基、拡散型パルスレーザー砲塔三基、そして拡散・収束の両方のモードを選んで撃てる波動砲を一門、小型重力子スプレッド発射機六基を装備している。

ただし空母化に当たって戦艦型より兵装の一部を省略、オミットしている。

「ダーヴェイション」特有の兵装として、アンドロメダ級前衛武装宇宙艦に装備されている重力子スプレッド発射機を六基装備している事だろう。

重力子スプレッドは発射されたエネルギー弾の着弾地点に重力フィールドを形成するもので、アンドロメダ級のモノなら矛に使えば小惑星群を一層可能で、集束波動砲をさらに収束させられる。

また盾としての防御面にも優れており、理論上は鉄壁の防御力を持つとされている。

ただ「ダーヴェイション」の重力子スプレッド発射機は敵からの防御のみを考えた造りの為、アンドロメダ級の様な矛としての力はなく防御にのみ使う事から発射機自体もかなりコンパクトだ。

全長二九〇メートル、全幅八七メートル、全高九九メートル。乗員数約一五〇名、空母航空団要員約二〇〇名の四〇〇名弱が乗艦している。

また航空団とのトレードオフにはなるものの格納庫転用で空間騎兵隊一個中隊戦闘団の人員、装備を搭載できる。

「艦長、CATCC(Carrier Aircraft Traffic Control Center・空母航空管制センター/キャットシー)のCAG(空母航空団長)がBARCAP(戦闘空中哨戒)の発艦許可を求めてきています」

CAGことアーノルド・マグルーダー大佐からの要求をマルティネスがスタンフォードに告げる。

「許可する」

 

 

《BARCAPを上げる、リーパー1-1、1-2発艦準備》

格納庫内にCATCCからの指令が響き渡った。

少ない艦内空間を有効利用するためにヤマトと同じ無重力状態のロータリー式の格納庫だが、ヤマトと違い大型航空機整備場を一つ備えている他、飛行甲板に航空機を上げるインボードエレベーターもある。サイドエレベーターは防御上の観点から諦められた。

裏表のパレット式艦載機駐機場からコスモタイガーⅡ二機がエレベーターに載せられると気密シャッターが閉鎖され、エレベーター内の減圧とエア・ベント(空気抜き)が行われる。

《エレベーターの気密シャッター閉鎖確認》

《減圧、エア・ベントはじめ》

警報音が鳴る中エレベーター内の減圧、エア・ベントが行われ完了するとエレベーターが二機の戦闘機を飛行甲板に上げた。

「ダーヴェイション」のエレベーターは艦橋のすぐ後ろに艦載機を上げる造りになっている。

コスモタイガーⅡ戦闘機の戦闘機部隊であるVFA11リーパー隊のパイロットでコールサイン・リーパー1-1こと沖津龍太(おきつ・りゅうた)一等宙尉は、エレベーターが飛行甲板に上がると赤と緑の誘導灯を持つ黄色い上着とヘルメットの宇宙服を着た誘導員に従って、愛機をアングルドデッキの右側のNo1カタパルトへと進めた。

飛行甲板上では赤、緑、黄、青、白などの色分けされた上着とヘルメットの宇宙服を着たデッキクルーが動き回っている。どれもそれぞれの役割を意味するもので洋上空母の頃から引き継がれてきたやり方だ。

誘導員に従ってカタパルトまで機体を前進させると誘導員が下がり、緑の上着とヘルメットの宇宙服のカタパルト要員が沖津のコスモタイガーⅡの前脚のランチバーに滑走シャトルを接続させる。

赤い上着とヘルメットの兵装要員がコックピットのキャノピーを叩き、手から下げている安全ピンを六つ見せた。空対空ミサイル六発の安全ピンだ。

数えて親指を立てるとカタパルト要員が発艦重量を表示したボードを見せて来て、それらも確認して親指を立てた。

「リーパー1-1からCATCC、ホームワンへ。発艦準備よし」

《了解した。リーパー1-2の発艦準備完了を待て》

「コピー」

体を捻って機体の左側後ろでカタパルトに接続されるリーパー隊二番機リーパー1-2ことジャン・ドゥプレ大尉の機体を見る。

機体がカタパルトに接続され、コックピットから兵装の安全ピンと発艦重量確認をしているのが見えた。

《ホームワンからリーパー隊へ。発艦準備完了だ》

「ラジャー。1-2、用意は?」

《バッチリだ》

「よし」

機体後部でJBD(ジェットブラスとデフレクター)が上がった。

緑のヘルメットと黄色い上着の宇宙服を着た発艦士官が右手を振り始めた。エンジン出力を上げろのサインだ。

スロットルレバーを押し込み、発艦に備える。

発艦士官が手を振るのを止め、デッキの進路、カタパルト周辺に誰もいないか、危険物は無いか、自分の命綱は大丈夫かを確認する。

確認した発艦士官は身を屈め、甲板に一旦右手を振れると艦首方向を指して、ICCS(カタパルト管制室)に射出の合図を送った。

がくんと機体が揺れコスモタイガーⅡがカタパルトで射出された。

発艦が成功するとギア・アップ。

「リーパー1-1、グッドショット」

発艦成功のサインを報告する。

《了解》

沖津に続いてドゥブレの機体も射出された。

《リーパー1-2、グッドショット》

「1-2、編隊を組め。行くぞ」

《ウィルコ》

沖津とドゥブレは編隊を組むと哨戒任務コースに乗った。

 

 

「リーパー1-1、1-2発艦しました」

マルティネスの言葉が無くても艦橋の窓からは発艦し、宇宙空間の闇の中へと消えていく二機のスラスター光が見えた。

艦隊はエンケラドゥス守備隊の艦隊を肉眼ではっきり見て取れる位置に来ていた。

三隻のドレッドノート級主力戦艦以外の艦名は金剛改Ⅱ型の「オスティア」「ダミエッタ」「レイテ」「サラミス」「レパント」「トラファルガー」「ヘルゴラント」「ダンノウラ」「アンガモス」「ウィネパング」「ハンゲ」「マチャイアス」「ラタキア」「リッサ」「サチョン」「コルサコフ」。

軽装甲巡洋艦「カストル」「カリプソ」。

護衛艦「フューリー」「フォーチュン」「フィアー」「フェイム」「フォワード」「フルバンド」「フォリスター」「フォアサイト」「フラート」「フォーン」「ヴァレンタイン」「ヴァルハラ」「ヴェンジェンス」「ヴィオラ」「ヴィンディクティブ」「ヴィクトリー」「ヴァンパイア」「ヴィヌーシア」「ヴォータン」「ヴェスパー」。

四〇隻もいると中々壮観に見えるが、今地球に迫りつつある外敵、ガトランティスの物量から考えると寡兵と言える。

しかし、日々猛訓練を積み重ねてきた彼らは数の不利を技量で補う自信をつけていた。

唯一彼らが不安の種だったのが航空戦力の少なさだった。

三隻のドレッドノート級には一個中隊分の艦載機が搭載できるが、それでも三隻合わせて三六機しか積めない。

そもそもエンケラドゥス守備隊のドレッドノート級にはコスモタイガーⅡが艦載されていなかった。

エンケラドゥス守備隊の「ドラッヘンフェルス」「デュラブラ」「ディリット」は艦載機運用能力を廃し、量産性を上げる一方で戦艦としての機能を高めたドレッドノート級フライトⅡに当たるからだ。

航空戦力が無い事が欠点だったエンケラドゥス守備隊の尾崎は航宙艦隊司令部に掛け合い、新型艦である「ダーヴェイション」の増派を求めたのだ。

果たして「ダーヴェイション」は随伴艦七隻と共にエンケラドゥス守備隊の増強部隊として派遣されたのだった。

三隻のドレッドノート級以外は拡散機能の波動砲を持たないが、金剛改Ⅱ型も含めて波動防壁を展開可能だから防御力は高い。

そもそも主力艦隊以外で全艦に波動砲を装備した中小艦隊は殆どないから、エンケラドゥス守備隊こと第62守備任務部隊はむしろ装備に恵まれている艦隊と言えた。

「ガトランティス……来ますかね」

コンソールを見ていた笹崎がスタンフォードに聞いた。

「来るだろうな」

「どれくらい来ますかね。一〇〇隻か二〇〇隻か」

「第十一番惑星の時ですら連中は万単位の主力艦を投入した。潰すなら連中は徹底的に潰しにかかる」

静かにスタンフォードは答えた。

「一体どこにそれだけの物量があるんでしょうね」

サトーが不安顔になる。

それに対してチャンが軽く首を傾けて応えた。

「分からん。こっちの様にどこかに大規模な工場を持っているかもしれないがな。動かす人員をどうしているか分からんが、こっちはAIで運用する艦艇の建造を始めているから向こうも機械任せにやっているのもあるんじゃないかな」

「これからは機械が戦争をするんですかね」

マルティネスも会話に加わって来た。

「地球は人口が大きく減少しているからな。オートメーション化をしても軍拡に人員の補充が追い付いかなくなる日はいずれ、いやもう来るだろうな」

「人間いない戦争は戦争になるんですかね」

「上が戦争だと言えば、戦争になるんでしょうね。でも機械を使っても数には限りがあるわね」

「相手が万単位の艦艇をポンと出すんじゃあな。時間断層があっても消耗してしまえばこっちがじり貧だ」

「だからこそ、共通の敵を持つガミラスとは昨日までの恨みを堪え、肩を組んででも、我々は生き延びなければならんのだ」

三人の会話を聞いていたスタンフォードが言うと「そうですね」と三人は返した。

先のガミラス戦争で地球は滅亡寸前にまで追い込まれた。しかし今は地球にとって共通の敵を持つ重要な同盟国だ。

もっともガミラスもガミラスで政変や内紛などで混乱も起きており、それに対処するのにも忙しいから地球の危機にすぐに助っ人としてくるのには無理があった。

「まあ、話が通じる相手なら、外交でどうにかできたらいいがな」

肩をすくめながらスタンフォードは呟いた。

「第十一番惑星を焼き払った相手ですからね。小官としては話が通じるかと言われたら、通じない気しかしません」

そう返す笹崎にマルティネスが頷いた。

「同感です」

「まあ、私たちが考えても始まらん。上の連中が考える事だ。政治は政治屋に任せよう。無理難題は困るが、な」

苦笑交じりにスタンフォードは言うとそうですね、と四人は頷いた。

無理難題と言えばスタンフォードはもう充分に艦長と艦隊司令と言う難題を抱えているが。

艦長職や隊司令なら何度も務めているが三隻以上、それも駆逐艦以上の部隊の指揮はした事が無かったら不安が無いと言ったら嘘になる。

(ガワは作っても乗る人間がこれではいかんなあ)

急激な軍拡に人材が追い付いていない事を嘆かざるを得なかった。

今の地球連邦防衛軍は練度的にガミラス戦争以前の国連宇宙軍には及ばない。足りていない所を機械の力で補っているだけだ。

上層部が自分を「ダーヴェイション」の艦長兼司令官に任命したのは、ガミラス戦争も経験した古参士官と言うからだと言うのは自覚しているが、もっと適材はいないのかと疑問に思ってしまう。

ガミラス戦争で国連宇宙軍は空母をすべて失ったが、経験のある人材全てを失ったわけではない。

磯風型や村雨型で編成された駆逐隊または駆逐艦隊向きの艦乗りだと思っていたのに、その自分がまさかの空母艦長とその空母打撃群司令官だ。

畑違いしか感じないが、やれと言われたらやるしかなかった。

空母艦長兼空母打撃群司令官になるにあたり、航空戦の研究やら他の艦隊司令官にアドバイスを聞いたりと随分苦労と努力を重ね、エンケラドゥスへ派遣される前にようやく自分でも満足できるレベルに艦隊を鍛えた。

しかし、それでもまだまだ発展の余地ありと自分に言い聞かせていた。

(俺もまだまだだな。この艦もクルーも、な)

やるとなったら本気でかかるだけ。それが今自分のするべき道だとスタンフォードは自分に言い聞かせた。

 

 

それから二時間後。艦隊型補給艦が到着してエンケラドゥス守備隊と「ダーヴェイション」空母打撃群への補給作業を開始した。

《ハイラインポスト、接続準備》

《相対速度同調、針路、速度を維持》

格納庫内にスピーカーからの補給作業準備のやり取りが響き渡る。

「補給が始まったようだな」

航空団の機体の整備状況の確認を行っていたマグルーダーは、コスモタイガーⅡ戦闘機部隊の一つVFA12ヴァイパー隊の隊長ファン・スンチョル大尉に何気なく言った。

「そうですね。旨い飯でも食えるかな。オムシス製じゃない生鮮食品の類を」

「贅沢言うなって。食えるだけいいじゃないか」

「いやあ、言ってみただけです。でも食えるうちに食っておかないと次に何が食えるか分かりませんからね」

「あまり食い過ぎるなよ。戻したら自己責任で掃除しろよ」

「私そんなに食い意地はった事ありましたか?」

「ロングとは大食いチャンピオンを競う間だろう? よくあれだけ食って太らねえよな」

「ジムで筋トレしていますからね」

にっこり笑って言うファンは「ダーヴェイション」の戦闘機パイロットでも有数の大食いだ。

しかし太ったことは一度も無く、寧ろライバルのキャスパー・ラング大尉の方こそ顔立ちがふっくらとしていて太っているイメージが定着してしまっている。

「この艦に乗り込んで一か月ですが、だいぶ慣れてきましたよ」

「ああ、俺もだ。しかし階級が高いと仕事が多くて不便なもんでな。俺もたまには飛びたい」

「給料が高くていいじゃないですか」

「お前らが何かゴタゴタ起こしたら後始末するのは俺なんだからな?」

頭に手を当てて溜息を吐きながらマグルーダーはファンをじろりと見る。

「俺何かしましたっけ?」

けろりとした顔でとぼけるファンにマグルーダーは「この間のカードの揉め事は?」と問う。

「あれは俺のせいじゃ……」

「言い訳すんな。お前がしょーもない賭け事開くからいけないんだろうが。まあ、営倉にぶち込むほどでもなかったがな」

やれやれと息を吐くマグルーダーにファンは苦笑を返した。

軽く艦が震えたかと思うと補給艦とのドッキングが完了して補給作業が始まったことを知らせるアナウンスが流れた。

「うし、俺はあっちの確認もするから後は自分でやれよ」

「了解」

航空機の補給物資を確認する為マグルーダーはファンと別れて格納庫を出た。

補給作業が終わったらBARCAPに出ているリーパー隊を収容して別のBARCAPを上げなければいけない。

他にもいろいろCAGならではの仕事が山ほど積み重なっていた。

「階級は上がっても、仕事が沢山あるのは辛いねえ」

しかもガトランティスと言う厄介な敵が来るかもしれないと言うのだ。

当分、ゆっくり寝られそうにない事に気後れするものを感じざるを得なかった。

「美味いもんでも食って、気を紛らわせたいぜ」

ファンにはああ言ったものの、オムシス製ではない生鮮食品を食べたい、と言う気持ちはマグルーダーも同じだった。

 

 




今回初めて書くヤマトの小説となります。
「ダーヴェイション」はヤマト2の地球側空母が元ネタですが、デザインに関してはゲーム版を基にしています。
「ダーヴェイション」(DERIVATION)の名前の意味ですが、「派生、由来、起源」と言う意味があり、頭文字もDである為、ドレッドノート級主力戦艦改型空母にあった名前と思い採用しました。


エンケラドゥス守備隊の艦艇の艦名は私が勝手に名付けた物です、悪しからず。
名前基準も勝手に作っており、金剛なら「海戦名」、パト艦(軽装甲巡洋艦)はCから始まる英単語、護衛艦はFとVから始まる形容詞などの英単語から来ています。
ドレッドノート級のドラッヘンフェルスはドイツ語で「龍の巣」、デュラブラはフランス語で「長続き」、ディリットはイタリア語で「まっすぐ」と言う意味になります。
デタラメになっているのは村雨だけです(苦笑)。

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