鷹の6本のツメ   作:ひとりのリク

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間柴、発つ

ありがとう。

がんばれよ。

応援してるから。

社外の人間に、そう声を掛けられる頻度が増えた。

世界戦を目前にまで迫ったことが評価されたから?

思い返せば、OPBFのベルトを巻いた時にはそんな声が掛けられていた気もする。こっちは社外での交流を意図的に避けてきた長身の男だ、こう来られると裏を疑うのも仕方がない。

「お前の仕事ぶりが認められたんだよ。なぜ聞きたいことが分かるかって、顔に書いてあるからさ」

会社の倉庫で荷積みをしていたら、社長が声を掛けてくる。礼儀作法を欠くことはやってはならない。頷き返しつつ、同意は避けた。他人が如何に信用ならないかを知っているから。

「じゃあ、どうして」

ボクサーを選んだのか。誰かの疑問に、「腕っぷしだけでのし上がれるからさ」と答えた気がする。

だが、あの疑問の真意をプロになって随分とあとに理解した。

ジムでサンドバッグを叩き、スパーリングを何人とも行い、対戦相手の情報を確認して、試合ではセコンドから励ましの言葉やサポートを開ける。

野を駆け回るだけの獣じゃ試合には勝てない。当たり前だ、気づいていた、それでも理解するのは、過去の大人とも手を取るのだと勘違いしていた。

「もう1つだけ、認めてやるだけだ」

過去を振り返るのは散々やってきた。

だから次は。自分が変わらずにいた姿を見れば、世界から外れて歩む努力はもう辞められる。

「えっ!? 幕之内とスパーを!?」

必要なモノを手に入れるために、意固地になって避けて、それで世界前哨戦を取りこぼした。

あの時、リボルブを本気で倒したければ、練習相手として最も相応しいボクサーが近くにいた。

先ずは歩み寄ることから始める。

でないと、ぶん殴れない。出所を明かしたくもない怒りを胸に抱いて、勝てる筈がないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鴨川ジム事務所。

間柴了、東邦会長の訪問から数分経ったそこでは、幕之内とのスパーリングを求めた理由が明かされた。

 

「宮田に王座挑戦を断られた、IBFの元王者か」

 

幕之内の代弁に、鴨川は忌々しいとばかりに呟く様子は、言葉からしてもロザリオのことに詳しいことが伺える。世界ライト級の各団体の王者やランカーを随時チェックしている幕之内は、ロザリオのことを知っているために敢えて補足を足した。

 

「はい。前の試合でロザリオは体重超過でタイトルを剥奪されてます」

「ふんっ、知っとるわい。あんな男が世界王者なんぞ、同じボクサーに失礼極まりない。

名前を聞くだけで小っ恥ずかしくなるわ」

 

鴨川の怒り口調は、鷹村に対する調子とは別ベクトルのもの。高潔さを失った者に向ける、熱意ある凍てついた叱責だ。珍しい怒り方にたじろぐ幕之内だが、押し黙ること以上の興味が、ある一点に向いていて仕方がない。

 

「よ、よくご存知で。…なんで会長がライト級の選手のことを? 青木さんが行くわけでもないのに」

「………………ほれ、早く準備せんか」

 

疑惑は何かへの確信へ。

鴨川の怒りが急冷したことが証拠だ。

 

「あっ、間柴さんがアウェイで行くくらいですし、メインイベントも日本人ボクサーですか?」

「………」

「タイトルマッチですよね!? 誰ですか、どの階級の選手なんですか!?」

「……小僧、練習じゃ」

「? あの、会長。知ってはいるんですよね」

「ワシは先に行っておるぞ」

「宮田くん」

「っ!?」

 

幕之内の宮田に特化した勘が働いた。

ハッタリをかける言葉なら反応しない鴨川は、責めと嫉妬混じりのその声音に肩をびくつかせてしまう。

 

「あーッ反応した!! なんで隠すんですか!?

僕も現地に応援に行きたいから試合会場と日時を教えてくださいよ!」

「じゃかましいッ‼︎

きさま今井との試合が近いじゃろうが‼︎ アメリカに行って体調でも崩したらどうするつもりじゃ‼︎」

「ぐぅぅっっうううう!」

「犬か貴様! 威嚇してもダメなもんはダメだ!」

 

2人のやり取りを見ていた間柴は「失敗したか?」と吐露する。東邦に宥められた間柴は、「先に行ってる」と言い残し、キリがなさげな騒音から避難した。

いくら頼んだ側とはいえ、幕之内に宮田、2人の忌々しい名を同時に浴びては虫の居所も悪い。機嫌の悪化を忌避するための間柴なりの配慮でもあり、集中力を整えるためにジムに戻ってみれば。

「IBFライト級元チャンピオンンンン!?」

ロードワークを終えたところに遭遇した板垣が、間柴の姿に驚いて聴取を始めた30秒後の絶叫である。

 

「そんな人を相手に! 大事な復帰戦を! 海外アウェイで!? それもセミファイナルーーー!」

「なにか言いたそうだな」

「当たり前ですよ! 間柴さん海外は初めてですよね? どうしてこっちじゃないんですか!!」

「…………別に」

「絶対に理由がありますね。教えてくれなさそうだから良いけど…。それで、そのロザリオはどのくらい強いんですか。どんなボクサーなんです?」

 

間柴の機嫌を損ねる手前で引き返した板垣は、その手のことに敏感だ。2人は既知で親しい間柄であるため、既に機嫌が損なわれつつある間柴のことを早々に見抜く。

そして話題を間柴了から対戦相手へ。

振る先を半分こにした。間柴の横に立ち、何かのメモを取り出す幕之内へと。

 

「ライト級じゃ有名なラフファイターで、ひと試合の平均反則打1.6回。同じく平均減点数は1点。

これで没収試合がないのは、本人のファイトセンスが人を集めるからだと言われてるね」

「毎試合なにかやらかしてるんですか。それでよくチャンピオンやってこれましたね」

「…てめぇ、いつから居た」

「これは公式記録です。ビデオで5試合観ましたが、10回は反則してます」

 

得意げにメモから顔を上げた幕之内。間柴はそのメモがチラリと見えた。手のひらサイズのソレにぎっしりと書き連ねた、誰かの何かしらの文字の群青を。悍ましい気配を感じ後ろに下がると、入れ替わりで幕之内に声をかけるのは鴨川だ。

 

「…なぜ貴様がロザリオのことを知っとる」

「宮田くんに啖呵切ったボクサーですよ! すっごい煽るもんですから、怒っちゃって資料をかき集めました。いざという時のためですから、役に立てそうで何よりです」

「……………………そうか」

 

なぜ他階級のボクサー…それもライト級の元王者に詳しいのか。鴨川の個人的な興味は、捲し立てる幕之内の様子を見て委細を察し、一言返すに留まった。

 

「でも、いきなりだったので、スパーの相手は出来ますけど、ロザリオを想定した動きは難しいです」

「あ? テメェに反則技なんざ求めねぇよ。嫌々やられても練習の邪魔になるだけだ」

「反則無し、サウスポーも出来ないってなると、僕は何をすれば…」

 

そうして語りも程々に切り上げた幕之内は、今日の主題へと戻す。スパーリングについての最もな疑問。サウスポー対策で訪れた間柴は、オーソドックスの幕之内から何を学ぶというのかを。

 

「普段通りやれ。ただ、潜り込んだらデンプシー・ロールを打ってくればいい。試合のようにな」

「えっ!?!」

 

求められる要求に思わず声を上げる。

多くを語らない間柴は、詳細を求めても機嫌を損ねるばかりだろう。現に、幕之内の声に無視を決め込んでいる。会話はしたくないし、殴り倒したい間柴と、デンプシーを打って万が一があれば…と首を縦に振らない幕之内。

神妙な間にポンと手を叩いたのは板垣だ。

 

「死角からの攻撃を反則打に見立てるんですね」

「…お前はボクシングIQが上がってるな」

 

板垣への甘めな採点は天と地ほどの差の好感度が顕在化したもの。こんなものに屈服する幕之内ではない。

その実用性があるのかを投げかける。

 

「は、反則打対策って! デンプシー・ロールをなんだと思ってるんですか!?」

「反則しろとは言ってねえだろ。仮想だ、仮想。バッティング、足踏み、足払い、姑息なモンはデンプシーを躱すディフェンス力を鍛えりゃどうにかなる。

世界レベル(ロザリオ)の反則打は、そういう域だ」

「直撃したら反則打どころじゃないんですよ!?」

「そこまで近づかれる程度なら、それまでだ。

懐に入れて何かされても文句言わねぇ。ロザリオは外で完封しなきゃ次が見えねえからな」

 

幕之内の舌が静まる。

一理あるな、と不覚にも思った。

ロザリオを知っている幕之内は、自分と打ち合った時に競り負ける可能性が高いと思っていた。カウンターセンスは宮田に劣るが、ステップインは上澄み。不意に拳が飛び込んでくる場面は、デンプシー・ロールの死角からの横薙ぎと重なる。その連打ともなれば、足払いをごく自然に織り交ぜながら連打してくる悪辣さに見えなくもない。

反則打を想定されるのは不本意ではあるが。

 

「遠慮なく飛び込んでみせろ。間柴とのスパーなら今井以上の圧を受けられる。

絶えずフリッカーを躱すのは至難の技、そして小僧を跳ね除け続けるのも同じこと。

どちら共に攻防の練習となる」

「会長まで……。

分かりました、全力で行きます。ダメだと思ったらリングに伏せてくださいね」

 

鴨川からも許可が降りた。

その目配せに、新型禁止の四文字を受信し頷き返す。

こうしてウォームアップを終えた2人は、鴨川と板垣、東邦会長に見守られながら、合同トレーニング初日のスパーリングへと臨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両者の注文が伝票に記されてから十数分後。

ウォーミングアップを終え、先ずは軽く、なんて言いながらヘッドギアを付けてリングに上がったかと思えば。両ジム会長を待ち受けていたのは、喉が鳴るほどの激突だった。

 

「────────っシ‼︎」

 

3ラウンド目に突入した間柴のフリッカーは、1ラウンド目に比べて着弾率が格段に落ちている。

連射すればするほど、筋肉の疲労が溜まり徐々に速度が落ちることは、木村戦で嫌というほど学んでいた。だから間柴は疲労が溜まりにくい筋肉の使い方を学び、特にリボルブ戦後はインファイターへのフリッカーのひと工夫を模索してここに来た。

より脱力した状態から、威力を落とさずに放つ技術。拳の握り方を改良し、肘の力み方を見直し、踏み込みのタイミングに重点を置く。世界により近づくことは出来たが満足していない。間柴は更に先を見ていて、そのきっかけを掴みにここに来た。

フリッカーが鈍り始めた状況は、間柴にとっては望むところではある。

 

(それを頭ぶん回して躱すのかよ!?)

 

東日本新人王決勝でのフリッカーへの苦戦を踏まえ、木村戦での木村の戦術を周到した幕之内は、間柴に対するフリッカー封じをシミュレーションしていた。

それでも第1ラウンド目は被弾多数。リボルブ戦で感じた殺気に呑まれ、ガードから攻めに転じることは1度のみに限られた。では何故に第2ラウンドから幕之内は攻めに転じ、間柴のフリッカーと互角に渡り合えているのか。

数々のシミュレーションに加えて、格段に向上した防御力にある。些細を省き結論を述べれば、この防御力こそがボクサー復帰の条件達成…新型デンプシー・ロール開発の副産物だ。

 

(こいつ……! 木村みてェなことを、木村以上の速さでやりやがって!! 調子こくんじゃ…)

 

幕之内の新型デンプシーは当然ながら公言していない。鴨川ジムのメンバーのみが知っているソレの片鱗は、復帰戦のゲバラ戦で見せている。

以前の幕之内の調子で狙いを定めてきた間柴は、このことに気づいていない。

 

「──────!」

「─────!?」

 

諸々の事情が絡み合った結果、懐に飛び込んでインファイトを仕掛けたい幕之内と、妹を誑かすクズを始末したい間柴の殺意はすれ違い…幕之内の侵犯が実現する。

懐に飛び込むことは狙いつつも、3ラウンド目にして成功したが、これ自体はマグレだ。幕之内さえも半信半疑のまま、間柴への超接近戦が勃発する。

 

(一瞬戸惑った、マグレか! だがコイツのウィービング、なにか違う。起こるべくして起きたマグレだ!)

 

これは、世界の舞台ではやってのけるボクサーがチラホラと居ることの示唆だ。幕之内に匹敵するファイティングセンスのあるロザリオならば、リングで迷わず狙う。

リボルブが左腕を敢えて叩くことが無かったのは、必要に迫られなかったから。そう考えた間柴は腹が立ったと同時に、この狭苦しいフリッカーこそが、間柴の目指すべき道となることを理解した。

直後、理解を深める意識が強奪される。

 

「────ァ────────っ!」

 

幕之内と対峙するにあまり、その豪打を1度も咀嚼しなかった者はいない。足先から腱、腿と腰に繋げて背筋から腕へ、人間の生み出す運動エネルギーのバトンが倍々ゲームで増幅し、拳に乗せた衝撃は生命を轢き潰す戦車に等しい。

脇腹下に直撃、人体機能が怯えだした。

今すぐにリングを降りろと背中を丸め込もうとし、死神の心はそれを拒絶する。

 

「────こ、い」

 

そして、理不尽な暴力に連なって旋風が巻き起こる。行くべき道に試練を設け、自分自身に問いかける。

お前は、この恐怖に向き合っていられるのか。

 

(腹ァ抉られようがァ…! これくれェ躱す……!)

 

ここに来た意味を忘れぬよう覚悟を噛み締める。今、倒れようとも構わない。そのために来たし、そうならない為の時間だ。もう2度と、この手のボクサーに負けるのだけは受け入れられない。間柴了の許容できないことはソレだけ。次、インファイターに敗れれば気が狂い、復帰はあり得ない。

 

(世界は待っちゃくれねーぞ、こっから本番だ…)

 

だから今は、気の迷いだ。

気の迷いで済むなら御の字。

目を開けて、立ち上がる時の立ちくらみ。

仕方のない整理現象と受け入れて、窮地で狭まった思考を押し広げんと両腕を構えた。

死神に殺到する、未来の敗北の可能性を身体に焼き付けて、大舞台ではその全てを刈り取るために。

 

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

 

 

今も、間柴の視界には迫り来る幻が見えている。

決して見える筈のないソレは、一瞬で彼の視界を通り過ぎ、そして意識を齧り千切る。

このひと月、毎日見た実弾の衝撃は向こうひと月まで残り続けるだろう。脳を侵す超接近戦の後遺症は望んだものではあるが、幻の奥に薄らと見えるボクサーの顔だけは不本意だ。

 

「それ、僕も読みましたよ!」

「…………どう思った」

 

呼吸を整えているところに、幕之内が声をかけてきた。強姦魔なんて相手にするのも億劫だったが、手元の雑誌に話題を振られてはそうもいかない。

ロザリオの直近の試合について触れたボクシング雑誌だ。今日で鴨川ジムを発って明日のフライトとなるため、念を入れて情報を仕入れる苦渋の決断をした。

 

『イチローの魅力!

WBCライト級王座に君臨してから2年が経ったイチロー・ミヤタ。いまアメリカを熱狂させる日本人の1人、イチローにはこれからの展望、試合をしたい選手について取材した。

この内容をお伝えする前に、日本人が世界クラスのライト級で勝ち続けることの難しさについて、日本人ボクサーのこれまでの世界ライト級ランクイン数などを挙げながら解説したいと────』

 

「ここ! 宮田君の」

 

フリッカーでひったくる。

幕之内の語りが始まる前に。

 

「勘違いするな。こっちだ」

 

そして、折り目を付けていたにも関わらず幕之内が真っ先に開かなかった見開きを投げつけた。

 

『悪童ロザリオ、王座剥奪。

先日、IBFライト級王者マーカス・ロザリオの防衛戦が開催された。対戦相手はパナマのセレスティーノ・マグナ。清廉なボクサーである彼は、ロザリオの獰猛さを前に無力だった。5ラウンドまでに2回のバッティング、何れもマグナの顔を弾き、調子が崩れたところでロープに追いやられ、6ラウンド目で呆気なくK.O負け。然し、ロザリオの腰にベルトが巻かれることはなかった。

彼は僅か0.1ポンドの体重超過で王座を剥奪。2度目の計量に間に合わず、ボロボロの身体で戦い、無様な勝利を収めて会場から大ブーイングを浴びた。

試合後、調整ミスについてロザリオは弁明したが、その内容が波紋を呼んでいる』

 

「…勿論。酷い弁明でした。宮田君を言い訳にする、最低のボクサーです」

 

幕之内の両の手は拳を作ると震えた。

ロザリオの弁明は、何一つとして弁明していなかった。調整ミスをした理由に宮田のことを挙げ、自分は被害者だと訴えた。ベルトを求めてタイトルマッチに臨んだ対戦相手がそれで納得するだろうか。賛同者はこの世界を知らないか、舐めている者だけだ。

 

「マグナ選手は僕と同じインファイターです。

調整ミスをした相手に、インファイトで打ち負けていた。懐に潜ったロザリオには、間柴さんでも打ち勝つのは厳しいかと」

「──────そうか」

 

幕之内は敢えて文言を省いている。

自分との特訓でインファイト及び反則打に過敏になった状態で、間柴了は打ち負ける…という文言を。

 

「…どうしてロザリオを選んだんですか」

「なぜ俺が決めたと」

「東邦会長なら避けそうな相手ですし」

 

聞けずにいた疑問を投げた。

なにせ、不要な試合だ。マーカス・ロザリオはやたら強いくせして、反則打を躊躇なく使う。

間柴はライト級でも最もロザリオに呼応するボクサーだ。キャリアとして傷のある彼が、再び反則負けを貰えば次の処分がどうなるかは言わずとも分かる。

 

「あっちに行く前の肩慣らし」

 

幕之内は逡巡する。あっち、とは? 勿論、リボルブの本拠地スペインだ。

間柴に勝利後、リボルブ・ゲイルはWBAライト級王者となった。今ではライト級でも人気のボクサーだ。此方に呼ぶのは厳しいと判断したか、間柴のプライドが許さないのか。どちらもだろう。だから長期に見てリボルブへのリベンジを見据え、幕之内やロザリオのような世界級のインファイターを相手に研鑽しているのだ。

然し、ロザリオ戦は仮想リボルブとして選んだのか。それだけではない気がしていた。ライト級には、他にも恐るべきインファイターがいる。

 

「中途半端者の、やるべき禊。それだけだ」

 

だから、その言葉で納得した。

彼は、ロザリオでなければ進めない理由を見つけたのだ。ならば、と幕之内も。

 

「間柴さんが思っている以上に、強くなっています。僕のデンプシーが直撃したのは最初の方だけでした。正直悔しかったですけど、沢山勉強になりました。

まだデンプシー・ロールは成長します。その時が来たら、またお願いします」

 

激励は嫌う相手だから、次の約束を。

ロザリオに勝つことは当然、と発破を掛ける。下手な文言よりも受け止めやすい言葉に。

 

「…また世話になる」

「はい! 準備整えて待ってます!」

 

間柴了、これに応じて鴨川ジムでの1ヶ月の特訓を締め括る。

次、両者が拳を交えるのはリボルブへのリベンジ戦前。そして、その先で幕之内一歩の夢が叶ったあとのお話。2つの事が起きるかどうかは、間柴の復帰戦を終えてからになる。

 

 

 

 

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