鷹の6本のツメ   作:ひとりのリク

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王の強さ

世界が注目するボクサーは、重量級とは馴染みのない小さな島国からの乱入者。

私……カレーリア・アーテは、マモルのことを″エラー″だと断定していた。

 

初挑戦の世界タイトルへの道のりは、減量20kg越を間髪いれず2連続で行わなければならない。当初はブライアン・ホークの勝利を疑わなかった。元からイカれている人間相手なのだ、マモルは殺されても文句は言えない。

データだけを見て目にとまるものがなかった。ゆえに、ブライアンがジャンクになり帰国したことを知って驚いた。

 

″脳障害を起こすほどの被弾″

″殺人パンチによるダウン″

″減量苦によるスタミナ切れ″

″怒り狂うブライアン・ホーク″

 

試合内容の抜粋、そしてビデオを観て私の価値観の見方は変わる。

 

正気だった。

マモルは勝つために減量を耐えたのだ。

天衣無縫の型、ブライアンを相手にするため。壮絶な環境に身を投じ、歴代最強と同じリングに上がる覚悟を掴んだ。狂気のブライアンと立ち並ぶため、正気のまま狂気の域に辿り着いていた。

 

その代償を知りながら、なおも歩み続ける。

それが彼の正気の沙汰なのは分かっていた。なら、どうして歩めるのかが分からない。

長い疑問は、今日のリングで晴れた。

 

「ったく、ここはベットじゃないっていうのに。得たものが気に入っちまったようだね、ティム。新しいスタイルまで疑されちまえば、少しは不満そうにするもんだよ普通は」

 

カレーリアは、目下で幸せな顔をしながら気絶しているティムの頭を撫でる。すると、小さな吐息を吐きながら深い瞳がうすらと開いた。

 

「起きたかい、ティム。玉座を降りて旅をした気分はどうだ?」

「………出しきった」

「かーっ、そこまで言い切っちまれたら言うことないよ!!さぁ立ちな。新しい旅をするために、出発の挨拶をしよう」

 

肩を支え立ち上がる。

 

「………ふん。いつかリベンジしてみせる」

 

目標を1つ見つけたフェザントを、これも良い風だと頷き進み出した。

 

(マモル、貴様なら″最古の壁″を砕けるかもしれない)

 

誰が思ったか、そう予感したときには鷹村の前に立っていた。

 

 

 

 

「王サマってやつが見えたか?」

 

鷹村が問う。

気だるそうに、しかし真っ直ぐに瞳を向ける。矛盾したソレこそ、この男の内面なのだと、フェザントはいまなら理解できた。

 

「ここがフェスティバルになっている。恐怖なく、統一感ある場所に立てば嫌でも思い知る」

 

波紋が見える。

なにもかもを背負い込む屈強な精神。

異常を抱え、死の淵を歩き、地獄の底を歩ききってみせた。

ティム・フェザントを相手にやりきった男は、まさしく天下一に名乗りをあげる資格がある。

 

「そう……」

「……フッ、認めよう」

 

おれの新しい旅を祝い、そしてマモルの6階級制覇を祈願し、右手を差し出し。

 

「オ・レ・サ・マ・だ」

「──────What?」

 

刹那、視界を覆う過去最大の波紋に思考が止まる。

不愉快極まる表情と波紋に、右手が痺れるようだ。

 

「………ぬッ」

「ぷ……クク、カカカッ……」

 

鴨川が顔をしかめたときには遅く。

カレーリアは鷹村の態度がツボに入り、しかしティムの手前であるため笑いを噛み殺していた。めっちゃ下向いてる。

 

「どうだ野郎ども!王の姿ってやつを見せつけてやったぜ!」

 

いつの間にか持っていたマイクを通しての発言。全観客が唖然とするなか、言葉を続ける。

 

「ライトヘビー歴代最強は散った!野郎の次のタイトル挑戦は同級WBAだ!!

そしてオレ様は有象無象を蹴散らして5階級、そして6階級制覇だ!!!」

 

一瞬にして精神年齢小学生となりはしゃぐ姿に、フェザントは右拳を握りしめて。

 

「行くぜクルーザー級!」

「ファァァァック!!!」

 

全力全霊をもって殴りかかった。

 

「テメェが先に言ったんだろうが離れやがれ!」

「このカスが!貴様からベルト奪い返す!」

 

アレよアレよとリング上は人外魔王再戦の場となる。

 

「うわぁぁ、元チャンプが殴りに行ったァ!?」

「鷹村も迎え撃ったぞー!」

「いいぞリベンジマッチだ!!」

「やっちまえティム!!」

「鷹村初防衛飾れよ!!」

 

観客も便乗、隅のほうでは賭け事すら始まる始末。

 

『わー!誰かあの暴走機関車を止めて!』

 

「日本でアレを止められるやつは…」

 

試合後とは思えないほどにリングの上から人が逃げたあと、同時に抑制の声が轟く。

 

「このバカタレッ!!」

「ほら帰るよッ!!!」

 

首根っこを掴まれた両者。

間も無く騒動は収まり、こうして4階級制覇達成の夜は終わりを迎える。

 

「あの人らくらいなもんだろ…」

「暴走するなかによく交ざれるもんだ…」

「チャンピオンのトレーナーってすごいです」

「さ、控え室に行くか!」

「祝いの1つくらいじゃ機嫌直んねーだろうなぁ」

「良いじゃないですか。鷹村さん、とても楽しそうです」

「………だな」

 

後輩たちもまたそれに続く。

 

リング上を去る直前、カレーリアが鷹村に耳打ちをする。

 

「マモル、アンタいいモン持ってんだ。()には気をつけるんだよ〜?」

「お前…日本語上手いんだな」

「ティムの忠告だ、よく考えちゃいるんだろうが…お節介とは思ってほしくないね」

 

決して鴨川には聞こえない声。

その宣告は、鷹村の耳に残り続けた。

 

 

───

 

──

 

 

 

鴨川ジム事務所、鴨川の机の上に置かれた一通の手紙。

流暢な英語が記された差出人とともに、開けられた封の隙間から覗く紙がある。

そこには英語でこう書かれていた。

 

『アメリカで待っている』

 

″招待状″が添えられた場所に、次の舞台が待ち構えていた。

 

 

Next Chapter『クルーザー級編』

coming soon......A.D 2023 spring!!

 

 

 

 






新年明けましておめでとうございます。

これより下は取り止めのない話が続きます。最後に次回予告を入れてますので、そちらまで飛んで構いません!

さて、ライトヘビー級は以上で終わりとなります。本当ならば、年末に投稿して締め括る予定でしたが…諸事情で間に合いませんでした。
もうちょっと計画的に書いていくことを目標の1つとして、これから下準備に取り掛かっていきます。

ライトヘビー級編のなかに、いくつか伏線を書いておきました。誰かの次回対戦相手だとか、復帰後の道筋だとか。今回のセミファイナルを外したのは、キチンと理由があったりと。日本タイトルマッチだったり、原作で最も求められているマッチングを私なりに模索した結果、こうなりました!

誰と誰のマッチング、とまでは言いませんが、やります。書きます。3年以内に(オイ)。

次回からのお話、ちょっぴり先出ししますと、この作品が原作のどこから分岐して、それぞれがどんなふうに過ごしていたのか。そして、分岐したことで発生したタイトルマッチを絡めて書いていきます。
一歩と久美ちゃんの恋人未満の話や、鷹村の唯我独尊我儘大魔王っぷりなど。『Next Champion編』では落としどころを探っていきます。いや、もしかするとライトヘビー級開催の日にはすでに終わっていた可能性も…?

原作の様子を伺いながらですね、たま〜っにはボクシングの知識も混ぜながら、のんびりと書いていきたいと思います。


私、twitterもやっておりまして、そちらでは絵をいただいたこともありました。木村 タツヤVSエレキ・バッテリー戦のワンシーンです。(エレキ・バッテリーの二次絵なんて珍しいなんてものではありません!)
お気に入り登録していますので、よければ見に来られてください!


では最後に、次回の予告をもって新年のご挨拶を終わりとします。
読者の皆さま、どうかこれからも作品の完結まで気長にお付き合いください。




Next Champion編


この物語の舞台裏、空白の3年間の記録がここに。

主軸を担うのは5人のボクサーたち。

山田 直道、千堂 武士、アルフレド・ゴンザレス、板垣 学、速水 龍一。

憧れるものに手を伸ばし、或いは抜け出せない現実を直視し、もしくは焦がれるほど求めるあと1度(無敗神話)への執着から。

幕之内が敗北を喫した直後から、″彼″の物語は急激に加速する。1つの変化が次の舞台を呼び、原点から外れていた者たちを巻き込んでいく。

各々の拳がリングの上で握られるとき、頂きに臨む決意は浮上した。


タイトルマッチ予告

日本フェザー級タイトルマッチ(セミファイナル)
今井 京介VSハンマーナオ

2020年9月開幕予定








試合の長さはいかがでしたか?(試合時間ではなく文章)

  • 木村の試合が良い
  • 青木の試合が良い
  • 一歩の試合が良い ・
  • 鷹村の試合が良い
  • どれも好みではなかった
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