鷹の6本のツメ   作:ひとりのリク

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冥界送りの拳

 

アルフレド・ゴンザレスは幕之内 一歩との”世界前哨戦”を勝利で飾り、メキシコへ堂々の帰還を果たした。幕之内という脅威を打ち消し、たどり着いた3度目の無敗神話への挑戦。

2度の敗北から成長し、過去最高のコンディションに近づいている。このまま、半年後に挑戦すれば必ず拳が届くと、そう確信して挑戦を申し出た。

 

『ノーだ』

「…………は?」

 

受話器の向こうから、リカルド本人による挑戦権の剥奪を言い渡される。

 

なぜ、も。

待った、も。

 

『いまのキミとは、試合を組まない』

 

絶対王者の冷徹な言葉を前にしてしまえば、挟む余地など微塵も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ、くそったれ…!」

 

暗い夜道、男は胸中にある悔しさを夜空に向けて怒鳴る。

 

「資格がないと言いたいのか!?

2度も負かした俺には用が無いということか!?」

 

怒号。

憤慨に塗りたくられる感情。

行き場など始めからない憤怒。

 

何度、何故を問い直す。

何度も、何故を繰り返した。

 

答えは解っている。

己の無力さ。

無敗神話に手が届かないことを知っているから。

 

「……………っ、ふ。はは、は」

 

そんな、下劣極まりない下卑を嗤いで否定する。

それはリカルド・マルチネスを理解していない人間の答えだ。

ゆえに断言する、違うと。

 

「確かに、その言い分は半分だけ理解する。あんたの背中を追い続けているだけの俺じゃ、あんたにはそう見えるんだろうな」

 

無敗神話が望んでいるものは強敵ではない。

 

無敗に泥を塗りたくる無礼な存在を。

神話の玉を完膚なきまでに砕く意志を。

 

孤独を忘れさせられるような夜を見たいのだ。

 

「俺は……小さな拘りを棄てる。神話を打ち砕く、生涯最高の準備を整えていくぞ。

待っていろ、リカルド・マルチネス」

 

更なる高み、などと言うまい。

何度この言葉を吐いて負けた。

何人がそう言ってリングを去った。

 

こんな言葉を繰り返していては歴史を辿るだけだ。

 

己が積むべきことは幾らでもある。

憧れを過去のものにする、倒すための手段が足りない。

反省と研鑽に取り組むべく、ゴンザレスは夜の路を駆け出した。

 

 

 

 

 

───

 

──

 

 

 

 

 

 

半年後、メキシコにて。

WBCフェザー級タイトルマッチが開催されていた。

 

『せ、世界王者が悲惨な姿でリングに伏せた……!』

 

WBAに長年君臨するリカルドからしてみれば見劣りするWBC王者。名誉と屈辱が付き纏う看板ゆえに、やはりランキング1位とは決定的な差が生まれたもいた。

体力も、精神も鍛え抜かれたディフェンシブタイプ。

WBCフェザー級王者、ビリー・マッカラムはいま、赤く腫れた両腕を力なくリングに投げ出していた。

否、その顔に精気は微塵も無い。

10カウントを告げられることもなく、試合は幕を閉じた。

 

ビリー・マッカラムはゴンザレスに敗北し、一夜にしてリカルドにも手が届かないことを痛感させられた。メキシコの地で、これ以上ない屈辱に塗れて意識は冥府の底へと沈んでいく。

 

『世界の壁など無い…いや、とうの昔に越えていた!』

 

王座についたとき、世界の頂きに辿り着いて夜空を見上げる。思うことは、まだ太陽には程遠いということ。

 

『挑戦者アルフレド・ゴンザレス、2ラウンド無傷!王者の両腕を壊し、無防備な顔面に止めを刺した!!』

 

ゴンザレスは、世界の頂きへたどり着いた。

ベルト奪取は過程でしかない。

フェザー級ランカーの殲滅に熱を注ぐ男の次なる獲物は別団体王者。

世界の器を体感し、貪り、そして飢えが加速するのを実感する。王者を倒したことの充実感は大して得られず、直ぐにでも次の対戦を渇望し始めた。

 

『WBCフェザー級1位、アルフレド・ゴンザレスが圧巻の試合を魅せつけた!!!2ラウンドでチャンピオンをK.Oし、新チャンピオンここに誕生です!!!』

 

経験を欲する怪物が1人、メキシコの地で誕生した。

 

祝福が注がれる。

それは同時に、リカルドとの差を実感させられる。

リカルドの勝利に祝福はあっても、誰もがそれを当然のことだと認知している。それが世界最高峰、PFP1位に君臨する男。

 

ゴンザレスはここから、休む間もなく新たな路で追い抜くために駆け出した。






お久しぶりです。
ゴンザレスVS千堂が終わるまで後書きは完結に、または無しにします。
ですが、今回だけアンケートについてお伝えします。
ライトヘビー級編の最後に、どの試合の書き方が良かったですか?とアンケートしました。よく見返すとあやふやな聞き方だなと思いました。

やるなら、ベストバウトはどれ?
だと思い、この話と次の話でライトヘビー級編のベストバウト投票を行わせてください。無期限です。

ライトヘビー級編、ベストバウトはどれ?

  • 木村 達也VSエレキ・バッテリー
  • 青木 勝VSパパイヤ・ダウチ
  • 幕之内 一歩VSアントニオ・ゲバラ
  • 鷹村 守VSティム・フェザント
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