千堂 武士との試合を即断した理由。
それは、2敗の意義を知りたかった。
同じ相手に負けることから、なにを学び、なにを思い、なぜ2度目を挑み、そして3度目の試合に臨みたいのかを。
リカルドに手を伸ばし、2度の機会を棒に振った俺が3度目の挑戦を剥奪されたとき。確かな武器を手に入れると息巻いて、WBCタイトル挑戦を行った。だが、マッカラムのビデオを観ているときから学ぶことは何も無く。リングで相対したものの、得られるものは世界王者に就いた経験のみ。
だから、千堂 武士の戦績を見て確信したのだ。
幕之内 一歩に2度負けながら、まだ引退していない意味。世界で戦うことを決めた男の旅路は100の試合よりも価値があると。。
3度目を渇望し、舞台を探し求める男に会わずにはいられなかった。
「ぅ……く……」
白ずんだ視界は明光を映し出し、高らかと拳を上げる男を確認する。
胸の奥に込み上げる、悔しさと満足の感情。
ボクシングを始めて、悔しさに類似するものを感じたことは数え切れない。だが、逆に満足したことは1度たりともなかった。
当然だ、俺が倒したい男はリカルド・マルチネス。
1人だけだった。2度負けて、全てを出し切れることなくリングを去った。心の底から、身体が動かなくなるまで戦えたと納得する試合は今日が初めてだ。
「起きたか、アルフ。
ゆっくりで良い、まだ平衡感覚に支障があるだろう?」
「ブラス……終わったんだったな……」
セコンドの声に、試合を惜しむ声を呟く。
「なあ、気を悪くするかもしれないが……。
俺はいま、最高の気分なんだ。負けて清々しいなんざ、我ながら呆れる感情だぜ」
天井を見上げながら、呆れ笑いを口元から零す。
味わったことのない感情に行き当たりを見つけられずにいると、ブラスは考えるように目を瞑り、ゆっくりと頷いた。
「何を言うかと思えば、そうか。リカルド以外の負けを知らないんだ、そう申し訳なさそうにするのも私の育成不足のせいか」
ゴンザレスの穏やかな表情に応えて。ブラスは最初の試合に勝利した選手を迎えるように、この試合が価値のあるものだと真っ直ぐな瞳で伝える。
「30の勝利よりも価値のある試合だった。2度の敗北に勝る5ラウンドを過ごした。
本来、負けとは嫌うのではなく糧とするものだ。刻には1勝よりも価値があり、人生を大きく変える起点になり得る。
その1敗が今日、彼によってもたらされたのだ」
ゆっくりと上半身を起こし、戴冠する男を見ながらブラスの言葉を噛み砕く。なにも間違ってはいない。新しい境地に至り、それでも足りないということを教えてくれたボクサー。
間違いなく、千堂 武士と出会っていなければ、3度目も同じ過ちを繰り返してリングを去っていたに違いない。
「なら、感謝しなければ、元王者の名折れだ」
1人で立ち上がると、身体の調子が歩行に支障のない程度に回復していることを確認する。だが、まだミキストリは心の奥底で眠っている。本当なら彼から言葉を贈ってほしかったのだが、そこは最後の一撃を貰ったのだから仕方がない。
確かな足取りで王者となった男に歩み寄る。
千堂は少し前から待っており、立ち止まるゴンザレスと同時に手を差し伸べる。
「……おめでとう。そして、ありがとう」
「…………また、
試合のなかで語り尽くした両者。
握手を交わしながら、短くお互いを讃え合う。
千堂はゴンザレスの未だに燃える闘志を見て、犬歯を見せながら次の試合を心待ちにしていると伝えた。
呆れるほどにタフな千堂を見て笑うと、ゴンザレスは流暢に言葉を放つ。
「孤高。それがリカルドの強さだった。
世界一の孤高に挑むなら、この言葉を留めておけ」
「……孤高、やと?」
不意の言葉に反復する。
それが激励の意味だと気付いたときには、握手は終わりゴンザレスは背を向けていた。
「健闘を祈る。また会おう」
再戦を誓い、後ろ手を振って。
アルフレド・ゴンザレスの挑戦は再び始まった。
最凶の人物を見送り、明朝を迎える新王者。
日の出とともに、次に見上げる空に手を掲げ、次の挑戦へ向けて雄叫びを上げた。
新年明けましておめでとうございます!
改めて、ここまで読んで頂いた読者さまに感謝を!
あ!例によってここからは語りますので、時間がない方は最後まで飛ばしてください!そこに次回予告があります!
さて、ゴンザレスVS千堂まで終わりました。
去年の私の心境を正直に語りますとね、「やっべー、原作で先にマッチングしちゃうよ、プロット全部見直すしかなくね?」でした。
原作とほぼ同タイミングで同じマッチング書くとか怖いもの知らずすぎね!?下手に内容被れば創作の意味なくなって連載止めるしかなくね??
てな感じで、令和2年の始めに固めていたプロットを一度破棄。
意地でも被らせるものか!と、3通りの試合を考え終えたのが7月頃。で、原作で決着した話を読んでから、ドタバタ2つ目のプロットを詳細に組み上げていき、完成したのが11月終わりでした。ほら、9月は今井vsハンマーナオ書いてましたし、12月は別作品書くために別のプロットも準備してたので(言い訳)
それでね、最初のプロットが、原作ゴンザレスの強化案そのもの…つまり理性と凶気の融合だったんですよ。あれ読んだときは内心ホッとしました。2つ目のプロット、今作の理性と凶気の交代…スイッチ案を考えてたから落ち着いていられました。
融合かスイッチ、どっちかの強化は来るかな〜?って思っていたので、片方だけのプロットに絞らなくて本当に良かった…!
プロットだけで言えばライトヘビー級編のプロットと同じくらいです。どんだけ鬼気迫ってたんだよ私。
クルーザー級編のプロットに触れられてないし、結局今年もヤベーのに変わりないじゃん!?
てな感じで、
さてさて、千堂のポテンシャルもしこたま引き上げています。試合のなかで、ゴンザレスが相手だからこその成長が大きいですね。彼には今年、今作で無敗神話に挑むことを発表しました。どうすれば無敗神話に手が届き、そして破ることができるのか?出来る限りを尽くして書いていきます!
原作でも勝った千堂ですが、右拳の故障が不安材料すぎます。けど、彼なら無敗神話を破れると信じて待ちますよ!書かれるのは来年かな?今年は鷹村の3階級制覇と、もう1つなにかあって終わりそうですね。間柴の世界戦まだかな?
また、はじめの一歩のスマホゲームもリリースされましたね!
河川を走っていたオリキャラが梅沢にスカウトされ、ジムに案内されるとスパーすることになります。
相手は青木、どんなスパーになるのかと思えば。
分裂します。
青木が3人に分裂します。
で、オリキャラが張っ倒してゲームスタート。
凄まじい勢いで毎日課金を勧めてきますが、2021.1.8現在、毎日無料で40連出来ます(午前20連、夕方20連)。
ガチャを回したい中毒者には解毒薬のようなゲーム仕様となっていますので、どうしてもガチャ欲が治らないときは試してみてください。
また、Twitterのほうで、アルフレド・ゴンザレスの大ファンの方から今作タイトルマッチのポスターを頂きました!
表裏・死神が迫力満点に描かれ、千堂の気迫も伝わる最凶の一枚となっております。
「https://twitter.com/@rikuHameln」
私のTwitterアカウントです。いいね!を押しているので、そこからイラストを見に来てください。絵描きさまのアカウントをここに貼るわけにはいきませんので。紹介の旨、ご本人さまの許可済みです!
さて、ではここら辺で終わりにしたいと思います。
今年は鴨川軍団の内情にも切り込んでいけたらなと思うので、試合以外にも注目してください。
このあとは予告です、次回の日程を確認してください。
では皆さま、良いお年を!
【次回予告】
板垣 学、最後の日本フェザー級タイトル挑戦へ‼︎
「京介に勝てるやつは日本ランカーにいない。そう思って、負けてからも時間があると思っていた自分がいます。
間違っていた……もう、1試合たりとも無駄な時間は過ごせません。ジムの先達者に腑抜けた顔は見せられない。胸を張って、僕のボクシングで倒します!」
凡ゆる慢心を払い除け、勝利へ向けて疾走する。
待ち構えるは日本フェザー級王者、ハンマーナオ。
「ベルトよりも守らなければならないものがあります。最後の試合、僕は後輩の未来のために戦います」
とある想いを胸に、鴨川ジムの天才を迎え討つ!
2021.3.26(金)リングイン‼︎