鷹の6本のツメ   作:ひとりのリク

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新しい扉

 

 

 

決着の刻、目前に。

起死回生を狙い澄ます王者とは反対に、全ての追随を摘み取る挑戦者。ただの一撃も許さないボクシングは、一撃で勝利が傾くが故のもの。最初から、1秒たりとも優位に立っていられた時間はないと板垣は自覚し、意識を全てに向けた。

 

ゴングとともに足を踏み出す瞬間から、世界を見回す時間が速度を落とす。そこには自身の身体も例外ではない。情報処理能力向上による、1秒の捉え方が世間一般のものとは隔絶していた。

 

(けど、より身体が馴染んでいる)

 

雑念を振り払うものとして考えていたが、この数ヶ月で最終的にしっくりときたこと。それは雑念を含めた全てを己に組み込む、全スケジュールの把握。早い話、集中状態のなかに飛び込むために片っ端から情報を仕入れ、無駄なものを敢えて自ら省こうというのだ。

一見無駄に見える方法は、板垣の散漫になりがちな集中力を高めるのに最適だった。現に、第3ラウンドまでで途切れたことは1度しかない。

 

(さあ、勝負!)

 

そうして板垣の思考は全てを隔てなく吸収していく。

 

リングを踏むステップは9分間を動き続けたとは思えないほど洗練され、近づく疾風を前にしてナオの勝機は消し飛ばされそうになる。

 

(勢いに負けるな…必ず手が届くところにいるんだ!)

 

歯を噛みしめ、軋むマウスピースの音を聞きながら迎撃に移る。

ステップイン、という表現が正しいのか。最早分からないほどにポジショニングは不確かだ。板垣の懐に飛び込んだはずが、瞬きもすれば反対側からカウンターを浴びる。ジャブ、ストレート、ボディ、そして十八番のフックまでもが悲しい結末に近づくことを示唆するばかり。

 

ここまで、なにもしてこなかった訳ではない。

噛ませ犬として、ボクサーとしてのハンマーナオが悉く打ちのめされてきた。コンビネーションのパターンを変える程度、何十と試したのだ。

 

『届かない、余りにも差が広がりすぎている!

無傷の挑戦者、王者との実力差を見た目以上のものとしている!あと少し、タイトル奪取は目の前か!?』

 

ここまで、追って下がって踏み込んで打って回りながら。どこかに埋れている板垣の意識……弱点を探して血肉を削り続けてきた。

その結論を出すのなら、スタミナ切れを待つほかに道が見当たらない、だった。

 

(僕の咄嗟の行動には反応が遅れた。

けど、あれ以降はどんな行動にも遅れない)

 

ギアをいきなり最大まで入れても、まるで雲を追うように手が届かない。

 

(…あれが最後のチャンスだったのか?)

 

何度も、何度も、追いつかず手が届かないなか。

何度も、何度も、空振って反撃されながら。

何度も、何度も、何度も。

 

そう、何度も揺らぐ心が語りかける。

もうチャンスは訪れないのでは、と。

誰かは既にハンマーナオの勝利を諦めた。

じきに勝利の女神なるものも立ち去る。

 

確実に手に出来たはずのチャンス。

ダメージが蓄積するにつれて、あの一撃を掴めなかったことを悔いていく。板垣の全力を引き出せた喜びも越え、限度のない力量差に精神が弱っていく。

戦意の高揚すら与えない板垣の攻め。ナオの体力を削ぎながら、精神の芯を折る独走。

 

「ぐあぁ…っ!」

 

外から放たれたカウンター。

再三の追走を振り解かれ、苦悶に喉が鳴る。天井を見渡せるほど仰け反った姿勢、立て直しを図る余裕もない。

 

脳の奥でなにかが割れる。選手生命が長くはないと告げている。あと何秒で消えてしまう。苦痛に耐えられなければ、ここで。

 

(それは、嫌だっ!)

 

ここで、終わってどうする。

そう、自分に言い聞かせて踏みとどまる。

そこが奈落への入り口だとしても。

 

「ダウンを拒むのか!?

身体を起こそうとすれば、それこそ狙われるのに!」

 

京介だけでなく、幕之内もダウンすると思っていた。ナオの選択はダウンによる仕切り直しを捨て、圧倒的不利に身を潰すに等しい。

 

ナオの目下、起き上がりを狙う板垣が既に拳を構えていた。当然の行動、向こうから打たれに来たのならカウンターを叩き込む絶好のチャンス。

ガードも間に合わない、だから板垣は体重を乗せて身体ごと打ちにいく。それを、ナオもまた狙い澄ましていた。

 

ぐわり、起き上がる勢いは姿勢を戻すものとは思えない。頭を遠慮なく前へも倒す行為に篠田はハッと気づく。

 

「まさか、バッティングか!?」

 

状況が状況だ。

例え、対戦相手の位置を把握していたとしても反則と見られにくい。

 

「上手くいけば拳を痛められる……」

 

意図せずとも、頭蓋骨に拳を当てられたのなら拳の骨にヒビが入る。骨折した拳が使い物になるはずもなく。

なによりも、ハンマーナオには反則の実績がある。

板垣には苦い経験がある。

 

ナオの技術なら、この場でも成功してしまう。いまの板垣に通じる、起死回生の一手が。

 

「板が────」

 

遅くとも声を出さずにはいられない篠田が、次の瞬間に目にした光景。

 

『な、なんと!板垣ここでカウンターのフェイントだ!?絶好のチャンスを取りこぼした!』

 

サイドステップによる、カウンターのキャンセル。

バッティングの軌道から外れ、敢えて王者の姿勢を起こさせる。逆に、その勢いを利用してリングに叩き伏せるために。

刹那、全てを理解した者たちが板垣の判断力……恐るべき集中力に身震いする。相手に万が一の可能性すら握らせず、緊張張り詰めるリング上で見分けたのだから。

来たる頭部へ向けて、再びカウンターの準備を整えた。

 

(カウンターが来なかったのは、運が良かった)

 

ピタリ、と。

リングのもう1つの影が確かな動きで止まった。

勝利を目前にした板垣の横で、ナオは右拳を構え終えていたのだ。彼の行動にまで理解が及んだのは幕之内。

 

「バッティングに見せかけて、狙いはボディだ!」

「そういうことですか…!」

 

幕之内がそう言えたのは、ナオの瞳に誠実な熱意を見たから。共に練習し、語り合った仲だからこそ。だが、板垣の瞳にどう映るかまでは解らない。勝敗を分かることになろうとも、幕之内は板垣が見たものにいま口出しすることはない。

 

板垣の2つ先を行く行動。

腰を回し、顎を引き締めて右拳を腹に打ち放つ。

 

(足を止めるつもりで!

試合を終わらせるために!

これがキミのためになると信じて!)

 

汗を振り払う右拳。

風圧を纏い、己の限界を切り裂くが如く。

この一撃を放つために唸り、肉を潰すつもりで我武者羅に振り抜いた。そして、輝かしく衝撃が会場中に響き渡る。

 

「────よし、よくやった!」

 

歓喜の声は篠田。

衝撃の出どころはナオの顔面から。

 

「カ、カウンターを合わせた。……完璧だ」

 

京介が感嘆するほど、鮮やかにカウンターは決まった。板垣は全てを見抜いたうえで、ナオの土俵に堂々と上がり込んだ。ナオがフェイントに活路を見出すように、板垣もまた接近戦に勝機を見たから。

 

(ずっと、気を張り詰めていました。

貴方のプレッシャーで僕の集中力は千切れそうになっていました)

 

弾き飛ぶ姿を見送りながら、思考の隅で言葉を並べる。ここまでそんな余裕は無かった。ひとたび対峙すれば、皮の一枚擦れ擦れの試合をしてきた。

肉体と精神、どちらが先に千切れるか。観客には分からない我慢比べに身を投じるこの試合。

 

深呼吸を1つ。

気を緩めるな、と自分に警鐘を鳴らす。

集中状態で感じるのは雑音を含めた全て。言わずとも、相手コーナーの様子も見逃さない。

 

「自分にしがみつけ、ナオ!」

 

逆転に手を伸ばす予断が来るからだ。

 

 

 

 

八戸がリングに拳を叩きつけながら叫ぶ。

コーナーからの声は誰の声援よりも聞こえる。鴨川の喝がそうであるように、ナオにとっての支えが八戸と知っている。

 

(なに、が……………あ………っ)

 

いよいよ底が見え始めた肉体。

脳が休息を求めて意識を切り離す途中、■■の声がナオの深層に届く。なら、応えなければならないと思い、声の指示に従った。

 

(僕、は…………?)

 

自分とは、なんなのか。

ふと、自分自身を思い返す。

そうして疑問に浮かぶこと。

いま、なぜボクシングをしているのか。

 

断片的に、自分が何者かで、なにをしているのかは把握できた。これは強い衝撃でも忘れられないほど、自分のなかに印象を与えたものだから。

 

「せん、ぱい…」

 

また、リングを踏みしめる。

憧れの人が死ぬ気で耐えた今際の淵だ。あの姿を真似していたように、格好良いところはいつだって重ねていたい。

 

(っ……会長……!)

 

ここまで育ててくれた恩師がいる。

忘れてなるものか。プロとしてリングに上げてくれた彼無くして今はあり得ない。描けてくれる言葉に応えなければ、恩知らずも良いところだ。

 

「ワシは信じとる。最後まで立派に戦い抜いて、堂々とリングを降りる覚悟さある。それ忘れる訳がない。見失ったなら、何度でも場所を教えるのがワシの最後の務めじゃ!」

 

意識が再起動する。

八戸の言葉が、落ちるナオの身体を持ち上げる。

 

(僕も、板垣くんも。幕之内 一歩の諦めない心に惹かれてここに立っている。なら、僕が彼よりも先に諦めてどうするんだ)

 

複雑なことは何もない。

大切な人たちがいて、自分を支えてくれる。

だから、1度でも背中を押してくれる手に報いるような自分でいるために。

 

『ベルトよりも守らなければならないものがあります。最後の試合、僕は後輩の未来のために戦います』

 

控え室、ハンマーナオは山田 直道として八戸に伝えていた。この言葉に強く頷いてくれたことを無駄にしないために。

 

(僕が先輩から教わったボクシングはこんなものじゃない。それを、僕なりに伝える。会長や、ジムの皆んな…そしてオズマさんのためにも、限界まで戦えッ!)

 

だからこそ、結果ではなく過程を誰よりも重視するようになった。本当の後輩ではないけれど、胸を張れるような試合を見せなければならない。偽りの先輩の、ささやかな誇りのため。

 

(行くぞ!!!)

 

負けるときも潔くなければならない。

 

 

 

 

『王者、踏みとどまった‼︎

倒れるどころか闘志に火が着いている‼︎』

 

ロープに寄りかかり、まだ戦えると重心を上げる。

意識がある限り不屈を貫く固い意思。

板垣のカウンターは確実にナオの意識を落とした。

 

(心の底から尊敬します、()())

 

それでもまだ立っている。つまりは勝つときも、負けるときも絶対の拘りを持っていることの証明。譲れないもののために魂を剥き出しにリングに戻ってきた。

 

(貴方が倒れるまで()()()()()タイムはあげません)

 

驚きはない。

まだ立っているのは当たり前と、集中状態を身体中に満たす。カチリと意識が切り替わり、時間の流れを我が物とする。

 

次こそは、などと言わない。

次で確実に勝負を決める。

これだけの決意で拳を握らなければ、喰われるのは自分だと第六感が板垣に告げていた。

張り付くプレッシャーを前にした板垣のセンスは、ここで更なる武器を取り出した。

 

『こ、これはガキ・シャッフル!

手負いの王者を油断無く攻め立てる!』

 

拳、腕、肩が脱力と筋肉の緩急で無作為に跳ねる。

脚が左右別々の動きで変速的に踊る。

視線は彼方、何処を打ち込んで来るのか予測困難。

 

全身各部位が意識を持つように動く、板垣の神経が可能とする最強のフェイント。

 

「勝負所を見定めたか」

「ハンマーナオの瞳が生き返った。だから板垣くんは警戒を強めたんだ」

 

気力を断つための選択を前にして、ナオはガードを上げる。

 

(見えない?違う、場所が悪いんだ。

そうだ、引き返す道はどこにもない)

 

直後、思いきり横に飛び込んでいた。

 

(選ぶのは、ここッ)

 

肩がぶつかる程に勢いよく移動した先はリングの四隅、コーナーで天才を迎え討つことを最後の判断とした。

 

「なるほど、それが王者の選択ですか」

「板垣くんの脚も、これなら円は描けない。

けど、次に上半身が崩されたら間違いなく…」

「えぇ、確実にダメージを溜めてT.K.Oです」

 

確実に板垣を見失わないための場所。

この選択が正解かどうかは、あと数秒もすればリング上に答えが出る。

 

(さあ───!)

(勝負───!)

 

一瞬、視線が交差する。

それを合図に踏み込んだのは板垣。

1センチの動作だけで色を置いていく錯覚を与え、残像が左右から連打を放つ。極小のシフトウェイトが産み出す奇跡を、ガードではなくフックで残像ごと掻き消す。

 

「ぐっ…!?」

 

この光景を何度見たか。

散々のフェイントに気づくことが出来ず、きめ細かいパンチで隙間を縫われる。

 

(いい加減、打たれ慣れてくるよッ!)

 

身体を捉えきれずとも、両腕を少し開けるだけの場所にしか相手は居ない。ダメージを逃すことが困難な諸刃の剣だ。己のステップと引き換えにしたものなら、最終局面において余裕でお釣りがくる。

90度に絞れた的を、あとは拳1つ分の枠に捉えるのみとなった。

 

可動角度90度というコーナーの利点がナオのボクサー生命を繋ぎ止める。だというのに、板垣の脚はナオの拳を突き放し、その動体視力が追いつかない左外からジャブを打ち込む。それで終わらず、ガキ・シャッフルによって変則ブローが次々と風前の灯を突風で消しにかかるのだ。

 

「コーナーでなんちゅうフットワークなんじゃ…!?」

 

生命を長引かせているはずが、瞬く間に磔台に早変わりする。開き直って反撃を試みるナオの姿がどんどん小さくなっていく。

 

外から、内から。

絶対の勝利を手にするため、絶対という言葉のない世界で進み続ける。

 

(これでも……届かないか……!?)

 

共に戦ってくれたことに感謝を伝えるため、決着の地まで止まることは出来ない。

 

(それでも、僕は諦めないッ‼︎)

(この目を、僕は知っている)

 

気力を宿し、想いを灯し、過程を振り返る。

この刻、どんなダメージも無視する論理度外視の目。

勝敗の行く末に立つ分岐点にいま、王者は辿り着いた。

 

(勝負を諦めない、その目を。先輩も、勝負をひっくり返す瞬間にはいつも同じ目をしていた)

 

脳裏に過ぎるのは、ゴンザレスと幕之内が勝負を決したクロスカウンター。あの一撃で、幕之内の魂すらも切り離したカウンターは憎らしく。だが、この目を断つために最も必要なものだった。その点だけは認めなければならない。

 

このとき、幕之内の意識を絶った瞬間をナオもまた思い出していた。この先の結末がどうなるかは分からない。

ただ必ず忘れるまい、と。会長たちと過ごしたあの日々を、決着の刻まで心に抱いておくことだけなら負けはしないから。

 

(全力の右で───‼︎)

(叩き返せっ───‼︎)

 

最後の交差。

 

最後の一撃。

 

ナオは右フック。

板垣は右ストレートを選んだ。

 

斜めに切り落とすナオに対し、板垣は前に1つ踏み込んでいく。前のめりに、全体重を乗せる最大威力を発揮する、いわゆるジョルト・カウンター。

 

最も得意な一手で食らいつく。

最も強力な一手で決めに行く。

悔いのない一手で終わらせる。

 

意地を賭けた血流が奔り、この試合で最も重い衝撃が観客たちの肌を駆け抜けていった。

一直線に、追いすがる拳を突き放して顔面を打ち抜く。

 

『クロスカウンターが王者を打ち崩す‼︎

挑戦者、最後の最後まで反撃を許さない‼︎』

 

打つこと自体にスタミナは消費する。

それが当たればさらに消費し、その数が膨大なほど腕に疲れが溜まる。この試合、どんな攻撃にも突っ込んできて、拳を止める暇を与えられなかった。板垣が渾身のカウンターを振り抜けるのはこれが最後だった。

 

王者の身体が脱力し、前のめりに倒れていく。

交差した瞳は暖かく、そして見えなくなった。

 

カウンターの炸裂で会場中が息を飲んだ。決まったことを喜ぶ初期動作のなか、肩で息をしながら最後まで戦った後輩のことを見る。

 

(本当は……もっと、戦いたい……)

 

前に倒れ際、思わず頬が緩む。

こんなにも身体中が痛いのに、心だけは淀みがない。いや、痛いからこそ憧れの人と共に在れるということなのか。

心地良い雰囲気のなかゆっくりと目を瞑り、身体を重力に預ける。

 

そして、近づく終わりを見た。

 

「ここ、に…来たかった…」

 

勝利のムードのなかを通る静かなステップ。

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………え」

 

振り向いた板垣は、交差した視線を前にして本能的に息を呑んでしまった。

 

(その目、先輩の─────)

 

対峙するはずのない瞳が映り込む。自分の横を通り過ぎるように倒れた身体が、起き上がっていた。

 

「この先の……ためにッ」

 

捻り出すように呟いた王者。

焼き切れていく意識を拳に乗せて、右側頭部に一撃を叩き込んだ。

 

「ガ、ァ───!?」

 

突き抜ける衝撃。

側頭部に打撃、背中に壁。

寸断された視界が回復したとき、板垣の身体はコーナーに寄りかかっていた。

 

「う、ああああああああああ!!!」

 

反撃の狼煙を見逃した。

ハンマーナオはずっと勝ち方に拘り続けてきた。

それは、板垣 学だけに対する勝ち方。

 

板垣の集中力はアダとなった。会場の誰もが決着だと思った、そんな雰囲気を感じて緊張の糸が緩んだ。

集中力を切らされる、という未完成への警告。もし完成していたのなら、戦う理由が無くなったナオがリングに沈んでいた。

 

「逃げろ板垣‼︎」

 

未だ辿り着くべき場所があると信じる。

この場での勝利は停滞に等しいと伝える。

 

ならば噛ませ、その拳。

 

「行け‼︎ハンマーナオ‼︎」

 

集中力を掻き消した瞳。

恐怖も、戸惑いも、後悔も思う暇を許さない。

一撃殴殺、鳩尾打ち(ソーラープレキサス・ブロー)が直撃する。

 

 

腹の底から呻き出る空白。

右拳とコーナーに圧迫される身体。

体内に取り込んだ酸素全てが体外に吐き出される。

 

虚ろな意識のなか、折れ曲がる身体を捩り上を見る。

そこは今井 京介がいた場所。4度も届かなかった場所、K.O勝利が見える景色。

 

(見……………た、い……………)

 

何度も跳ね除けられてきた景色で、そのたびに成長してこれた要因。

最後に交差した瞳が、その可能性を物語っていた。

 

こうして、板垣 学の日本の頂点への挑戦は幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

3ラウンド2分20秒

ハンマーナオ

日本フェザー級タイトル防衛成功‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








弊作の日本フェザー級タイトルマッチはこれで最後となります。今後、板垣は路線変更していきますので、この先をお待ちください。
…というか、またバトン落としちゃったね、なんて思いながら書いてたり。
令和3年度の試合はリカルド戦のみの予定です。理由として、次回予告でも書きます通り鴨川ジムのゴタゴタを片付けていきます。主に鷹村の歪んだ性格から立ち直り、3階級制覇に臨むまでのお話。
そして、予め謝っておきます…。2023年でクルーザー級編開始するの厳しいです。2024年…やります(多分)。

今回もアンケートを実施しました。
ご協力いただいた読者の皆さま、ありがとうございます!

投票結果
ハンマーナオナオ:12票
板垣 学:10票
引き分け:2票

意外とハンマーナオに投票してくださってたので、良い意味で私の予想は裏切られました。流れ的に、板垣が8割くらい入るかなと思っていたので笑
こっちの票が多いから試合結果変えたろ!なんていうことはありません。これに投票していただくことで、私のモチベーションアップに繋がります。どっちに勝ってほしいのかを見るのって、思ったよりも楽しい!
これからも、たまに勝者予想を実施します。よろしければポチッと投票よろしくお願いします!



【次回予告】

板垣、日本タイトル挑戦2度目の失敗。
ハンマーナオが王座防衛を果たした日から始まる。

「板垣相手に良くK.Oしたじゃねえか、ゲロ道。
んで、試合後に俺サマを呼び出すとはどういう要件だ」
「鷹村さんに質問があるからです…」

鴨川ボクシングジム、鷹村の物語を綴る。

「俺…引退します」

木村 タツヤの引退宣言。

「なにしてんだよ、アンタ。
そんなに俺たちを追い出したいのか?」

青木 勝が問いかける。

「どいつもこいつも……俺サマの邪魔ばっかしやがって。
ちんたら歩いて、先に行くヤツの重荷になってんじゃねえよ。勝てないんなら退け、さっさとここから降りろ!」

鷹村 守はかつての仲間を吐き捨てて。
荒れたあとになにが残るのか。

鴨川ボクシングジム、停滞の刻が訪れる。


interlude-鷹の路- (前半) 2021.8.20(金)

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