WBCミドル級タイトル防衛戦。
最後のミドル級と銘打った注目の試合。
そのセミファイナルに選ばれたのは宮田 一郎。
『雷神が魅せる!挑戦者のアッパーにカウンターを決め、意識を断ち切ってみせた!』
膝から崩れ落ちるメキシカン。
リングの上では宮田が高々と右腕を掲げ、勝利宣告を聞き届けていた。観客席で燃えたぎる幕之内をよそに、勝利インタビューへと移る。
「最後のフェザー級防衛ということですが、次はジュニア・ライト級へ転向するんですか?」
「どこまで行くかは相談中です」
「幕之内選手とのマッチングはもう無いのでしょうか…?そのぉ、残念だったりしませんか?」
「別に……。その心配はしてないよ」
インタビュアーの質問に、思わず素っ気なく答えてしまった。内心を悟られまいと普段よりも感情が暴れているせいだ。
今日、宮田 一郎はフェザー級から上の階級に転向する。それは幕之内 一歩との試合の可能性が絶たれたことを意味するのだ。
(そもそも、鷹村さんの前座を飾れた意味を考えると…)
思わず笑みが溢れた。
一見、観客たちからは幕之内とのマッチングが無くなったと思われただろう。いまはそれで良い。まだ世界タイトルを獲っていないのに語る必要はないのだから。
「もう決めたことだからね」
こうして、宮田 一郎はフェザー級の舞台から姿を消した。
宮田 一郎、
後日、ライト級への転向を宣言した。
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宮田 一郎を送り出した観客。
ついに待ち侘びたメインイベント、鷹村最後のミドル級タイトルマッチ。
この試合さえ終わればスーパー・ミドル級タイトルが確約されている。つまり、日本人未踏の重量級3階級制覇という偉業。
『さあ始まりましたミドル級、最後の防衛戦!
ここで勝利を収めればスーパー・ミドルが待っている!』
観客たちは熱狂に身を任せる。
会場の誰もが対戦相手であるゴートを強敵だと感じるから、トラブル続きの鷹村に強く願う。何事もなく無事に勝利を、と。
前の試合、バイソンの声明により鷹村の敗北疑惑は払拭された。WBC、WBA両団体がバイソンの声を受け入れて世界的に負けを突き刺す者は居なくなった。
しかし、1度出てしまった疑惑が完全に晴れたわけではない。声を出さずとも、心のなかでは鷹村の勝利に首を傾げる者がいる。
会場の空気を吸って鷹村は思う。この反応も仕方がない。むしろ、試合開始前に物が飛んでこないことに期待を感じている。
(いまからその疑惑、払拭してやる)
欲しいものを零してきた、これまでのバカな自分と訣別する意思を掲げて。
鷹村は再起へ向かってリングを蹴った。
コーナーを飛び出す風速に、青空を舞う鷹を観客たちは見た。
『押し寄せる観客の期待に応え、まずは鷹村が流れを掴みに行く!』
勢いに押されまいと、反対側でゴートがステップを刻む。
(コンディションを見るに、イーグル戦のときと遜色ない。ゴールデン・イーグルを失墜させた脅威が惜しみなく私を仕留めにきた。
なんと恐ろしく、素晴らしい景色だ)
ゴートは笑みを胸のうちに押し込める。
減量苦が大した枷にならないことは理解している。鷹村なら、開幕の一撃で試合を終わらせることも可能だ。
(随分とのんびりじゃねえか)
(そう急かすなよ、東洋の鷹)
鷹村の感情が既に昂り過ぎていることをゴートは見抜いていた。
脳内でイメージは済んでいる。初撃、拳が打ち出された直後。パンチの勢いを後ろに流し、そのまま顔面にカウンターを合わせる。
鷹村を相手に実行可能な実力を備えているのだ、この男は。
(食らいやがれっ‼︎‼︎)
(先ずはガードだっ‼︎)
声にならない気迫を纏い、飛び出す鷹村の右拳の腹を左ガードで叩き払った瞬間。左腕の感覚が付け根ごと行方をくらました。
「は、え……あ?!」
爆音を聞いたあと気づけば、ノーガードで突っ込んできた鷹村に対処するための左腕が無い。肝に氷水を掛けられたが如く震える頭で、もう使い物にならない左腕がダラリと垂れていることを確認した。
「う、うそだ…」
咄嗟に右腕を動かし、強引に捻じ伏せようとしたとき。既に大砲にも勝るジャブがゴートの顔面をコーナーに押し込んでいた。
「さらば、ミドル!!」
最後に。日本語が分からなくとも、それが勝利宣言であることを理解したゴート。繰り出される右拳から逃れる暇も与えられず、意識は深々とコーナーポストに減り込んでいた。
『しゅ……瞬殺!?え、これ現実でしょうか!?』
誰も予想だにしなかった瞬殺劇場。
これほど気持ちの良い試合もそうそうない。無傷で防衛戦を突破し、スーパー・ミドル級タイトルへの挑戦が目の前にきたのだから。
『ゴート選手、起き上がれません!顔面一撃‼︎
鷹村、ジャブでガードを壊し、ストレートで挑戦者の意識をリングの底へ叩き落とした!!』
「もう間違えねえ!オレ様についてこい野郎ども!」
鷹村の勝利宣言で湧き上がる観客たち。
全盛期へ走る漢へと称賛が降り注いだ。
───
──
─
「す、すごい…すごいです!」
「マジかよ…世界タイトルの防衛戦だぞ?」
「鷹村さん、試合前から涼しい顔してましたもんね」
観客席で沸く鴨川ジムの面々。
そこに足りないのは木村だけだったのだが…。
「やっぱりすげぇな、鷹村さんは」
「木村!」
息を切らしながら、木村が合流する。
陰りのあった表情はなく、鷹村と同じでずっと先を見つめていた。
捻れ、歪んだ心が少しずつ真っ直ぐに戻っていく。
いつか過ごした日々を辿るように。然し同じ道ではなく、確かな未来へと道は続く。
誰かを穢した時点で自分は報われない。あくまでも人間たるもの品性を、そして思いやりを忘れてはいけない。
相手が立てない道に人は続かず。
知らぬ間に得がたい絆が離れていく。
なら、守りたいものが耐えられる道理を捨てた。
自分の首を絞めるのは自分の品性だ。
「お前、大丈夫なのか?」
「あぁ、ちょいと昔を思い出すのに時間がかかった。…あと3センチが届くか、ここじゃなきゃ答えが分かんねえ。この目で確かめなきゃ死にきれるかってんだ」
右拳同士を交わし、志しが再び進み始める。
光を取り戻した鷹に、まだ見えぬツメが研がれていくと信じて。
お久しぶりです、ひとりのリクです。
例の如く長いので、最後の次回予告までとばして大丈夫です。
原作鷹村が立ち直るまでの物語、”interlude-鷹の路-”をようやく書くことができました。幣作でもトップレベルで面倒くさい場面でしたので、やっと終わった〜って晴れ晴れした気持ちです。
ライトヘビー級と入れ替えた理由として、原作読者勢に原作からこういう風に変えますよ〜って伝えるためです。てか、これを最初に書くと重すぎて筆折ってました。
このお話を書いたことで『Next Champion編』は折り返し地点を過ぎました。長くて申し訳ない反面、これは絶対原作でやらないから!って内容を盛り込める試合が多いのです。あと1年ちょっとは続きます。
2023年にはクルーザー級編が開始出来るように頑張ります。早く読みたいって読者さま、どうからお待ちを!
お話変わって、気づけば50話を突破しました。
めっちゃ書いてるじゃん。え、てか当初の予定じゃ既にクルーザー級書いてるはずだったのに!?
ネクチャン編はさらっと終わらせるつもりだったんです。ここまで3試合、全部予定の倍以上書いてます。いやね、興が乗ってあれよあれよと描写が増えたんですよ。なんなら鷹村のお話も予定より5倍は増えた!これでいいのか私!?もうちょいコンパクトに纏めようとしてるはずだったろ!
けど、楽しいからしょうがない。
あと、鷹村の捻れ具合はもっと酷い。もう2話くらい鷹村の暴虐を書こうとしたり、幕之内の成長を絡めようとしました(さっき書いた5倍から2話分削除)。駆け足感がすごいかなあと思いつつ、こういった会話で相手と分かち合うシーンは苦手なので、早めに纏めて良かったと思ってます。
鷹村の性格の捻れは森○先生が良く考えておられるはずなので、幣作では下手くそな終わらせ方でご理解いただければと思います。私はね、原作鷹村の兄貴っぷりをリアルタイムで読みたいだけなんです…。
これからもこんな感じで行くと思います。
まだまだ終わりは先ですが、目先の物語に妄想全力供給していきます。どこまでもお待ちいただければ幸いです。
お気に入り登録、感想、しおり、評価付与、とても嬉しいです。
お陰様でお気に入り登録は100件に達しました。オリ主タグなしでも読んでくださる読者さまが多く、楽しんでいただけているようでやる気上がりまくりです。ありがとうございます!
原作に負けないよう、そして原作を読んでくださる方が増えることを願って書いていきます。幣作をこれからも宜しくお願いします!
【interlude-鷹の翼-(後半)】
3階級制覇、ついてこい!2022.Spring!!
【次回予告】
無敗神話、登場。
WBCフェザー級王座を獲得した千堂 武士。
次に至る舞台はメキシコ。
「明日、タケシは私の言葉を理解する。
独り、満天の星を見ながらね」
世界最強を冠するため、敵地に降り立った。
「始めよか、ワイの世界前哨戦」
無敗神話史上初の団体統一戦、ここに勃発。
Next Champion編、ベストバウト(前半)はどれ?
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今井 京介VSハンマーナオ
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アルフレド・ゴンザレスVS千堂 武士
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ハンマーナオVS板垣 学