スーパー・ミドル級タイトルマッチ当日。
招かれた選手層はフェザー級が半分を占めていた。
日本タイトルに挑む星 洋行。
東洋タイトルに挑む今井 京介。
そして────。
『打つ、駆ける、そして打つ!!
3度目の復帰戦を迎えた板垣、8ラウンド目もヒットアンドアウェイを完璧にこなしています!!』
東洋ランカーに挑む板垣 学。
早い者順で板垣が先陣を切ることとなった。
鷹村に良い結果を繋げるため、会場中が声を上げて応援していたのも5ラウンドまで。
対戦相手は中国のインファイター。ハンマーナオ本来のスタイルを思い出させるような荒々しいボクサー。反則技を織り込んで板垣に接近を試みるが、全てを逆手に取られていた。
「文字通り、手も足も出ない状態だ。
反則すら通用しないせいで頭に血が上っている」
「情けない男や。板垣のこと舐めたんが運の尽きやで」
第10ラウンドを迎える試合をモニターで観ながら。
控え室でそう語るのは京介と洋行。
「アマの試合観とる気分やったわ。次元が違うが」
「ポイントを取られたのは2ラウンド目だけ。好戦的な板垣らしくはないが、むしろハマっている」
度重なる不調、そしてハンマーナオとの試合で敗北。
あそこからどう立ち直るのか予測不能だったのはファンだけでなく、京介たちも同じだった。観客たちはまだ見定めているようだが、京介と洋行は同じ結論を出す。
「「また成長した」」
重なる言葉に視線を合わせた。
2人とも板垣と試合をしている。なら、この結論は間違ってはいない。
「板垣にリベンジしてへんのはワイだけか。
次は勝つ。そんでアンさん倒すさかい首洗って待っとき」
「………早くしないと、直ぐに突き放されるな」
それぞれの舞台が迫るなか、控え室の空気は肌を暖めるほど空気は震えていた。
『勝者、板垣!』
セコンド達が静かに2人を見守るのを他所に、判定3-0、板垣の復帰戦は判定勝利で幕を閉じる。
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かつて千堂が獲った日本タイトルを背負うため、星は少しだけ早めに待機室を出ていた。
目的はリベンジ相手である、板垣と会話をするため。
「星、話かけるんはええが、集中は切らすなよ」
「大丈夫です。むしろ、少しでも熱気に当たったほうが気合い乗りますんで」
(千堂があの調子やさかい、気負いすぎとらんか心配や。板垣との会話、どうする?止めるべきか…?)
リカルドに敗北後、あっけらかんとし過ぎている千堂。明らかな不調と知りながら、ここまで洋行を含めた関係者は立ち直らせることが出来ずにいた。解決しないまま洋行の王者決定戦を迎え、積もる不安に柳岡は頭を抱える。
結論を出せずにいると、鴨川一行が現れた。
「お疲れさまです。復帰戦おめでとさん」
「あぁ、星くんに柳岡さん。ありがとうございます。これから頑張ってくださいね」
「板垣、てっきりワイと王座獲り合うん思うとったわ。あの気迫、いまなら…」
洋行の目的、板垣の瞳は遥か遠くを眺めている。
試合中と変わらない、かつて自分が対峙したときよりも深い視線。
「こら板垣!挨拶は返さないか!」
篠田の拳骨は呆気なくかわされる。
それでも板垣は戻ってこない。
(こいつ、まだ集中しとるんか?
なんちゅー奴や…こっちが身震いする目ェしおって)
「気にせんといてください。元気、貰いましたから」
一行が通り過ぎる。謝る篠田には苦労が滲み出ている。恐らく、まだコントロール出来ていないからだ。
「その集中力を切らせるんはナオはんだけやないで」
異質な成長途中のライバルを見て、両拳を軽く突き合わせた。誰も道半ばで折れてはいない。まだ長い先、いつ終わるか分からない路を駆け抜けるため、両頬を叩いて歩き始めた。
(よしゃ、上手く作用してくれおった。
今回は感謝するで、板垣)
柳岡は静かにガッツポーズした。
星 洋行。
日本フェザー級1位の選手を2ラウンドK.Oし、見事日本フェザー級王者へと輝いた。
▼
『やはり地元の期待に応えてくれました!
今井 京介、空位のOPBFフェザー級王座に堂々就任‼︎』
洋行に続いて、京介もフェザー級の王座へと上り詰めた。
口元の切り傷を拭いながら控え室へと戻る道中、静かに壁に寄りかかる人物が1人。
「良い試合だった。おめでとう」
宮田 一郎は万全の状態で祝福を贈る。
「ありがとうございます。
韓国人なだけあって我慢強かったです」
「4ラウンド、あれだけ打ったのに前に出られると厄介だろう。……どこかの誰かに似てな」
「さて、俺はまだ戦ったことがないので。こうして、影を追い求めることしかできませんよ」
誰のことを言いたいのか。
言わずもがな、と納得したところで疑問の視線を送る。これからセミファイナル、世界前哨戦を控えたボクサーがなにをしているのか、と。
「お礼を言っておきたかったんだ。あれ以来、会う機会がなかったからな」
宮田の答えに逡巡する京介。
”宮田さん、貴方は感じるものがないんですか?”
思い至ったのはハンマーナオとの試合前。
フェザー級で苦しむ宮田に掛けた言葉のこと。
「仕方ありませんよ。
誰も彼も、遥か先で走っていますから」
「いまライト級で試合をしているのは、あの問いかけがあったからだ。
俺は幕之内 一歩に勝つ。それを言いたかったのさ」
「お礼なんてとんでもない」
感謝を告げて立ち去ろうとする宮田の背中に、京介は新しい挑戦状を投げつける。
「俺が先を越させてもらいますので。失礼します」
「………はっ、楽しみだ」
受け止めたものの重さを理解して、自然と宮田は地面に落ちた羽根を拾い上げた。
セミファイナル。
宮田 一郎はWBCライト級3位のボクサーを3ラウンドK.Oでバトンを繋げた。
勝者予想のアンケートが見たいボクサーは?
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幕之内 一歩
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鷹村 守
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青木 勝
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木村 タツヤ
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板垣 学
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宮田 一郎
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千堂 武士
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間柴 了
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今井 京介
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星 洋行
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伊賀 忍
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リカルド・マルチネス
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アルフレド・ゴンザレス
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ウォーリー
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ジェイソン・尾妻