半端者が創造神となる日 ─Re:make─ 作:リヴィ(Live)
今回は2000文字程度なので、短いです。
しかし、今後の展開においてとても、最 重 要 な回ですので、その点含めて読んでいただけたらな、と。
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【リリス】
───お母さまが私の元を訪れるようになって数年経った。
私は生まれてすぐに表の世界から存在を消された。吸血鬼の王族としてのあるべき象徴と力を持たず、そればかりか種族としての力さえ劣る私は、もはや一族の恥晒しにほかならなかった。
誰一人、私を見ていない。私のことを思っていない。私を生ませたお父さまは、真っ先に私を見捨て、それに続くように一族の皆は私から目を背けた。
そして───忘れもしない、あの日の、光景。
私の目の前に地獄が出来上がっている。血肉がばらまかれて、死に絶えた骸が私の横に無残に沢山横たわっている。
幻聴かもしれない。だが、私は確かに聞いた。戦場に漂う人のエゴと、死んで行った人達の恐ろしい声を。
『イタイ』 『クルシイ』 『ドウシテ』 『コロシテヤル』
私はあの日に知ってしまった。世界が背負う罪と、その世界に生きる者達の罪深さを。愚かしく、惨く、醜い生者達のエゴを。
知ってしまった以上、もう戻ることは出来ない。あんなものを見せつけられて、元の生活に戻れる人など誰一人としていない。
争いや闘争には誇りや正義はない。大義名分なんてものはない。あるとはただ、戦争という名の殺し合い。
思い出すのは、1ヶ月ほど前。
お母さまは時々地下の大きな図書館から、絵本など様々な種類の本を持ってくる。私は実際に見たことがないからわからないけど、大図書館にある本は数十万冊を超え、それら全てがお父さまが各地の戦利品として勝ち取ったものらしく、中には幻とされた魔導書さえあるらしい。
たまにではあるが、お母さまは魔導書を持ってくることがある。お母さまは解説と手品を兼ねて、魔法を使ってくれることも。と言っても魔法の初級レベル程度のものではあるが、見たことの無い私からすれば、それらは未知でいっぱいで、どんなことが書いてあって、どんなことが出来るのか、ワクワクして仕方なかった。
だから私も、お母さまにお願いした。『私も、魔法を使いたい』と。
お母さまは快く承知してくれた。むしろ、魔法に興味を覚えてくれたことがとても嬉しかったようで、お母さまはとても機嫌がよかったのを覚えている。お母さまは、元々魔法使いとしての素質があったらしく、それなりの魔法は昔から使えたらしい。
お母さまは私に手取り足取り、丁寧に魔法を教えてくれた。悪戦苦闘はしたけれど、炎の魔法が使えた時はとても嬉しくて飛び跳ねたのを覚えている。
けれど、同時に思ってしまったのだ。いや、思い出してしまった。
────この力が、争いを生むのではないか?
曰く、魔法というのは時に時代をも動かす強力な力となるらしい。それは必ずとも良い方向になるとは限らず、強すぎた力は自滅を招いてしまうと言う。
魔法は人間の脅威であり武器。その力が一旦矛に回れば、魔法はただの破壊能力になるだけだと、お母さまは言っていた。時に、おとぎ話のように怪物さえ倒してしまうことさえ可能だとも言っていた。
ならば───
──
何を考えた。
私は今、何を考えた。お父さまを、殺す?
不可能だ。お父さまは今現在において最強の吸血鬼であり、スカーレット家の王。吸血鬼社会を統べる帝王だ。そんな存在を、殺すなんて。出来るはずがないだろう。それもこんなちっぽけな魔法で。
否定しろ。否定しろ。その考えを否定しろ。
もう考えるな。その先を行けば、私はただの罪人になる。あの日のような地獄を自ら作り出してしまうことになる。
それだけは嫌だ。私は、ああは成りなくない。絶対に、なりたくない。もう憎しみなんて抱きたくない。
抱きたくないのに、どうして、あんなことを考えたの?
───私もこの星に生まれた以上、呪われた運命からは逃れられないのか。結局、長い歴史の中の、過ちに過ぎないのか。
嫌だ、嫌だ。私は、私は、『誰も傷つくことの無い理想の世界』を作るんだ。そんな私がそれをしていいはずがない。そんな罪を犯してはならない。
お願いだから、囁かないで。私の耳元で、囁かないで。陥れないで。
私は、誰も傷つけたくない。誰も殺したくない。皆と、仲良くしたいだけなのに。
どうして、収まらない。胸から込み上げてくる気持ち悪い感情が、収まらないの?
違う。違う。こんなのは、
私はこんなこと考えない。私はそんなこと思わない!お母さまに愛されている私が、そんなこと考えるなんてありえない!!
違う、違う!私は、そんなことは絶対にしない!!
違うの………違うの……!
そんなことしたら今度こそ、一人になってしまう!
お願い、いい子でいるから。いい子になるから!!
私を見ないで!私を見つめないで!
────一人にしないで…置いていかないで…。
善と悪。この二つの対立は決しておかしいことではない。あって当然の普通である。
しかし、もし片方が一方的に突き放してしまえば────人格というのは、いとも簡単に割れるのだ。