半端者が創造神となる日 ─Re:make─   作:リヴィ(Live)

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今回も短いです。

今回はあのキャラ(まだ赤ちゃん)が出てきます。


四話 潜むもの

 

【サリー】

 

この館では、娘であるリリスの存在は隠蔽されており、表向きでは存在していないことになっている。

リリスは、吸血鬼としてはあまりにも劣っている。ただの吸血鬼ならばそれだけで済んだかもしれないが、権力や実力を象徴とする我が家、スカーレット家は吸血鬼の中の吸血鬼。王族だ。そんな吸血鬼の象徴とも言える一族から一般以下の吸血鬼を産んだことが知れれば、その名誉と権力は失落し地位を失うことになる。だから、夫はリリス誕生の後に、何事もないように存在を隠した。

おかげで外側の吸血鬼はリリスの存在を知ることはなくなったが、ほかのスカーレット一族はリリスの事を罵り、蔑んで、唾を吐く。いずれリリスは心を閉ざし、部屋から一歩も動くことなく蹲るようになってしまった。

私がリリスの元に会いに行くようになって数年経つ。彼女はまだその年に見合う知識は持ち合わせてはいないものの、私には心を開いて接してくれるようになった。

 

できるだけリリスを楽しませてあげようと、私は地下にある大図書館から絵本だけではなく、たまに魔導書を持ってきて魔法を披露してあげたりする。その度にリリスは目を輝かせて、もっと見せて、と年相応の姿で私にお願いしてくるのだ。

ある日、私が魔道書を持ってきて新たらしい魔法の手品を見せてあげようとした時、リリスは、少し真剣な顔で私に言った。

 

『私にも魔法を使わせて、お母さま』

 

魔法に興味を持ったのか、リリスは魔法を使いたいと言い出した。私は特に咎めることも無く、リリスに教えることにした。

正直、嬉しかった。リリスが私以外のことに興味を持ち始めてくれたことが嬉しくてたまらない。それが得意分野である魔法ならば尚更である。同時に、この子も成長しているんだな、と実感した日でもあった。

教えたのは初級中の初級。炎の魔法を教えてあげた。手取り足取り、と言った感じではあったが、リリス本人にも魔法の才能があるのか、そこまで教え込むことは無かった。

そして、自身の掌にボワッと炎が吹き出して、リリスは驚きつつも目を輝かせて、それをまじまじと見た。リリスが魔法を覚えたことは親としても嬉しかった。

 

だが、その次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリスの嬉しそうな顔はフッと消えて──()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

口角を上げて、声も出さずに、嗤ったのだ。それは喜びの表情とはにて異なるものであった。まるで、新しい玩具を手に入れた子供のそれのようで……どこか、狂気に充ちた狂笑のそれだった。

この子は何を考えているのか、その時だけ分からなかった。いつもは手に取るようにわかるのに、この時だけ、何も考えられなくなった。

今までのリリスとは考えられない程の深い狂気に、私は困惑するだけだった。

 

一体、何が起きている。あの子に一体、何が────

 

「あ、あぅ?あ~!」

「!」

 

あの日の出来事で頭がいっぱいになっていた私は、()()()の声で意識を戻された。腕の中の赤ん坊は私に向かって手を伸ばして、声を上げている。

父に似た青い髪の色に、吸血鬼特有の白い肌と、蝙蝠の翼。私の元に生まれた、もう一人の命。

 

「ふふ、ごめんなさいね、レミリア」

「あぅあ!」

 

レミリア・スカーレット。

スカーレット家の第一子。魔力の質ともに吸血鬼として最高値の完璧な子供。表では、そういうことになっている。

私から見れば、どんなに優れていようがこの子も私の子供に違いない。吸血鬼であっても、愛すべき我が子であるのには違いない。

 

リリスがこの子のことを知ったら、どんな反応をするだろうか。反応は目に見えてはいるが、彼女と会わせるのがとても楽しみだ。

 

「……私は人間。この子達は吸血鬼、か」

「あ~?ぅー!」

 

───どんなに優れていようが、とは言ったが。

レミリアもまた、リリスと同じように人間と吸血鬼の血を持つ妖怪。半分であれ妖怪の血が流れている以上、人である私とは寿命の桁が違う。結局、私は彼女たちを置いていってしまうことになる。

そうなってしまったら、リリスを守る人が誰一人としていなくなってしまう。リリスの傍で味方であり続ける人が、いなくなってしまう。そうしたら、彼女はまた心を閉ざしてしまう。初めて会った時以上に。

 

そうなってしまったら───魔法を教えたあの日の狂気が、彼女を狂わせてしまうかもしれない。

 

 

私は窓の席を立ち、レミリアを抱えて机に座って、一つの本を取り出した。

 

───俗に言う、日記と言う奴である。

置いていってしまうのならば、せめて何かを残しておかなければならない。きっと、私は母親としての使命を全う出来ずに死んでしまうだろうから。

だからこうして、今思う感情や考えを書き写すことで、姉妹に残したい。この日記を手がかりに、我が子を導いてあげられるように。

 

「…お姉ちゃんのこと、よろしくね」

「あぅ!あー!」

 

まだ時間の猶予はあるが、私は人間。吸血鬼からすれば脆い存在だ。いつ死んでしまうか分からない。もし死んでしまった時、リリスのそばにいてあげられるのは、レミリアだけだ。

いつかその日が来た時……レミリアがこれを読んで、リリスの事を理解した時。きっと導いてくれることを信じる。

未来予知が出来る訳では無いが、不思議と確信がもてる。我が子だからか、信じることが出来る。この子ならそれが出来ると、不思議とそう思ってしまう。今はまだ、幼いけれど。きっと立派になるに決まっている。

 

───だって、我が子だもの。子を信じずして何が母親か。

 

私はレミリアをあやしながら、筆を取って日記を書き始めた。

 

 

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