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闇の帳が下りた森の中を素早く動く三つの影。その動きに躊躇いはなく、枝から枝へと飛び移るその速度は明らかに慣れていると分かる動きだった。
『へカートⅡより各位、もうじき爆弾魔の痕跡があったと侵入者への通信があった地点よ。警戒を』
『C8-SFWよりリーダーへ、了解』
『MPX-SDより隊長。ジャミングでバレないから良いけど、妙に働き蟻と斥候の数が多くない?あと面倒な事に神の盾の姿も見える。もう少し先行する?』
『確かに多いわね・・・・・。よし、ならば迂回して斥候頼むわ。アタリかハズレかだけでも良いから分かればすぐ連絡を』
『了解』
『へカートⅡよりC8-SFW。あの廃墟群で予定通り準備するわよ』
『了解』
枝から枝へと飛び移るへカートⅡは背負っているマテバ モデロ6 ウニカの電子バックアップを受けながらヘリアンから送られた高性能な軍用咽喉マイクで前衛と斥候を担当するMPX-SDからの報告を受け、指示を出す。(なお、作戦時には全員がコールサインで呼び合う事を徹底しているが、その理由は侵入者が原因である。)
MPX-SDが私の号令に応え、闇に溶けるように先行する。私は電脳内にインストールしてある情報から、予定通りに進めている事を理解すると、C8-SFWと共に前方に見える廃墟群に向かう。
『で?ウニカ、連中は?』
『上手く騙せてるよ。侵入者も情報が増えすぎて取捨選択に困ってるみたいだね。で、この廃墟群の中に不明のシグナルを確認。十中八九爆弾魔だと思うんだけど、この子拙いながらも対抗電子戦をやれてるみたい。確保が目当てだから軽く使い捨てのコードで手助けしたらソレを上手く組み合わせ利用するあたり、才能あるよ。バックドアへの警戒もかなりのものだし、逆に侵入者へのダミー情報に転用してるし』
廃墟群の中で比較的無事な建物の一室に身を隠すと、今まで背負って居たウニカに聞けば出てきたのは予想外の展開。少し驚いている私を余所に、ウニカは部屋の中にエイトが背負っていた機材を受け取ると、手早く設置して行く。
「じゃ、これから本格的にサポートするね。とりあえず私が10分は侵入者達を電子戦で封殺しておくから、隊長達はその間に爆弾魔との接触と説得お願い」
「分かった。5分で接触と説得してくるから」
『シグ、どうかしら』
『爆弾魔を視認。周囲に敵影はない。ただ、問題・・・・になるのかな?が、発生した。・・・・・一瞬とはいえ私を視認したみたいだ。索敵能力は化け物の粋じゃないか?』
使い捨ての機材を設置したウニカに声を掛けてから建物を後にし、先行して索敵をしていたシグに通信を繋げばとんでもない情報がもたらされた。私達の部隊で主に前衛と斥候を担当するMPX-SDは非常に高い隠密性を持つ戦術人形だ。その隠密性は日中ですら並みの上級人形の索敵能力を上回るし、現在は夜。専用の夜戦装備を持たない人形では索敵能力の九割は低下するという条件下の中で爆弾魔はシグを視認していたらしいのだ。
『その非常識なまでの索敵能力があったからこそ、今まで逃げれていたのかもな』
『でしょうね。じゃあ排除ではなく取り込みましょうか』
エイトの呟きに愉しげな笑みを浮かべてしまうイーグルアイ。そんな話をしているうちに爆弾魔の潜伏している建物から500m程離れた建物に入り込み、先行していた
エイトと合流する。
『じゃ、まずは確保して離れましょうか』
『笑顔で言う事じゃねーぞリーダー・・・・』
『煩いよエイト。左右からでいい?』
『退路は確保しておくから、確実に確保してね。ウニカのいる地点にまで引いたら侵入者の殲滅戦に移行するわ』
イイ笑顔で宣言すると、口はともかくエイトとシグの二人も中々イイ笑顔で了承。それぞれがかなり遠回りに左右から爆弾魔が潜伏している建物に潜入する。
『ウニカ、今から爆弾魔を確保してそっちに向かうから、侵入者とその部隊に"枝"を仕掛けておいて』
『了解隊長』
脳内マップ上でエイトとシグが準備ができた事を確認してから電子戦で補佐をしているウニカに指示を出す。普段の明るい声ではなく、冷徹さを感じさせる声で返事が返ってきた事から、既に予測しており、あとはイーグルアイのゴーサインを待つだけだったと理解する。
『GO!』
私のサインを受けシグとエイトが左右から立体的に爆弾魔を強襲する。その際にイーグルアイが電子的にも強襲する。完全な不意打ちであったが故に爆弾魔は呆気なくエイトに確保されるのであった。
『じゃあ一度引くわよ』
『了解だリーダー』
電脳をハッキングされてオフになった為に無抵抗な状態の爆弾魔がエイトに担がれた状態で運ばれてくる。さらに数カ所に時間稼ぎ兼バックドア用のダミーを設置したシグが続いて出てくると、イーグルアイも殿について移動を開始するのであった。