けものフレンズR ~Re:Life~   作:韓非子

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第12話「ホテル」

 海の向こうに建物が見える。イルカのモニュメントのようなのがてっぺんに鎮座している。フェネックちゃんはこれのことを言っていたのかな…?

 

「う、う~ん…どうやって行こう…」

「一応わたしは泳げますけどこの距離はちょっと…」

「私はぜってー運ばねーかんな」

 

 四人で頭を抱える。アムちゃんはわたわたしている。

 

「なんか良いモンがねえか探してくっかな~」

「うん、お願いしてもいいかな」

「おうさ!」

 

 そういって見送ろうとしたときだった。

 

「なにかお困りかう?」

 

 フレンズさんが現れた。黒いカーディガンのような服とエメラルドグリーンの瞳が特徴の鳥系のフレンズさんだ。幼いような口調と語尾に"だう"と付ける口癖がなんとも言えず癖になりそうだ。

 

「あの建物まで行きたいんだけど何かいい方法ってないかな」

「だったらウミウにお任せだう!ウミウはここで船頭をしているのだう!あそこに舟があるから早くそこに行くでう!」

 

 ウミウと名乗るそのフレンズさんに連れられてその舟があるという場所に向かう。なにやら小さい舟がたくさんぷかぷかと浮いているのが見える。

 

「あれが舟ですか?」

「そうだう。あれをウミウが引っ張ってみんなをいろんなところに連れて行くんだう。行く場所が決まってるなら早速そこに向かうでう!」

 

 ウミウちゃんが自身と舟を縄で縛ると舟を引っ張り始めた。どんぶらこどんぶらこと舟は進んでいく。

 

「そういえば聞いたことがあるでう。ともえだったかう?おまえはなんでもヒトだっていう話らしいう。本当なのかう?」

「うん。定かじゃないけどたぶんヒトだと思う。でもなんで知ってるの?」

「知らないはずがないう!超巨大セルリアンを2回も倒してそこのアムールトラを仲間にしたんだう!もうパーク中の噂だでう!」

「あ、あはは…そうなんだ…」

 

 それもそのはずだった。噂になってもおかしくなかった。考えてみるとそれだけのことをあたしたちはしてきたんだ。恥ずかしさと同時に誇らしさを一緒に感じた。

 少し沖合まで出るとうずうずした様子でウミウちゃんがあたしに言ってきた。

 

「あの、お、お願いがあるでう…」

「うん?なぁに?」

「ウ、ウミウに命令してほしいでう!」

「命令!?」

 

 なにか既視感のあるシチュエーションだ。たしかあたしとイエイヌちゃんが初めて会ったときもこんな感じだったはずだ。もしかしてこの子も命令されることに喜びを感じるのだろうか。

 

「め、命令って何を…?」

「なんでもいいう!本来だったら一度受けたお願いを終わらせるまでは他のお願いは聞かないのだけど、これは例外だう!ヒトに会ってしまったら命令されないわけにはいかないでう!頼むでう!なにかお願いするでう!」

「え、えーと…お願い…」

 

 思い出せ。ウミウが何が得意なのかを。図鑑で見たはずだ。図書館で見た本でもウミウの項はあったはずだ。

 

「あたし、見たことある。あなたみたいなフレンズがこのあたりで海に潜って遊んでいるのを…海に潜るのが得意だったりするのかしら」

「得意だう!けどウミウを見たことがるのあるのだう?もしかしてウミウも狙われてたのだう!?」

「……そのときのあたしは獲物を探していた。けどあまり沖にいるフレンズは狙えない。海だと自由が利かないから…」

「なるほど…」

 

 とんだ助け舟が来た。だったら命令することはひとつ。

 

「じゃあ、ウミウちゃん。お魚を一匹とって来てくれないかな」

「了解だでう!すぐにとってくるでう!」

 

 そう言って綱を外すと海の中に潜っていった。ふと横を見るとイエイヌちゃんがすねてる様子で黙りこくっていた。

 

「イ、イエイヌちゃん…?」

「フーンです。わたしのときには命令してくれなかったのにウミウちゃんには命令するんですね」

「命令したじゃん!エスコートとかにおいを嗅いでとか…」

「ウミウちゃんみたいにすぐにしてくれませんでしたよー」

 

 ツーンとした様子でそっぽを向くイエイヌちゃん。尻尾はパタパタと振っているのでなにかしらあたしに期待しているのかあたしで遊んでいるのだろう。中々狡猾だ。

 しばらくするとざっぱんと音を立ててウミウちゃんが水面から姿を現した。

 

「お待たせだう!お魚を取ってきたでう!」

 

 ウミウちゃんの右手には一匹の魚が握られていた。ぴちぴちと跳ねている。

 

「ありがとう、ウミウちゃん。お昼のときにいただくね」

「へへ~。ウミウのお願いを聞いてくれてありがとうだう」

 

 そう言って照れるウミウちゃん。フレンズさんが照れてる姿を見るのはいつ見ても良い。

 

「さあ、イエイヌちゃん、お仕事だよ。ウミウちゃんに負けないように舟をホテルまで引っ張って!」

「!!」

 

 ピコーンと耳が反応する。

 

「お任せください!!!」

 

 元気よく海に飛び込んだ。舟から縄をほどくと器用にまた引っかけて舟を引っ張り始めた。

 

「見ててくださいともえちゃん!必ずホテルまで連れて行ってあげます!」

「な、なにをするでう!これはウミウの仕事だう!」

 

 だっぷんだっぷんと舟が揺れる。大荒れの海を往くかのようだ。

 

「おぇぇぇ…気持ちわりぃ…」

「大丈夫…?」

 

 えずくゴマちゃんをアムちゃんが介抱している。アムちゃんは平気なようだ。なんとも微笑ましい光景にほっこりする。

 …けど、この揺れようは…結構来る…

 

 

…………

 

 

「だ、大丈夫ですか…?」

 

 ゴマちゃんとあたしは陸に上がるとゲーゲー吐いていた。

 

「ちょっとやりすぎたでう」

「うぅ…ごめんなさい…」

 

 イエイヌちゃんがしゅんとしてしまう。いつもなら大丈夫って励ますけど今のあたしにはとうていできない。というか、よだれやら鼻水やら涙でぐしゃぐしゃになってる顔で大丈夫って励まされる方が嫌だと思う。あたしは吐き続けた。

 

「し、死ぬかと思ったぜ…」

「よしよし」

 

 アムちゃんが素手でゴマちゃんの顔を拭いている。子を想う母というのはこんな感じなんだろうか。

 

「はぁ…はぁ…あ、あたしも落ち着いてきたかも…」

 

 プッと口に残った残留物を吐き出してよろよろと立ち上がる。どこかゾンビのような所作でゆっくりとイエイヌちゃんを視界に据える。

 

「と、ともえちゃん…?」

「イ゛、イ゛エ゛イ゛ヌ゛ち゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!゛!゛!゛」

「ひゃわあああああああああああああああああああ!?」

 

 よだれと鼻水と涙でぐちゃぐちゃになった顔でイエイヌちゃんに襲い掛かる。

 

「わあああああああああ!?ごめんなさい!許してください!」

 

 必死に謝って許しを請うイエイヌちゃん。それでもあたしは容赦なくもふもふを始める。

 

「苦゛し゛か゛っ゛た゛よ゛ぉ゛イ゛エ゛イ゛ヌ゛ち゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!゛次゛は゛き゛を゛つ゛け゛よ゛う゛ね゛ぇ゛!゛」

「ひぃ!ごめんなさい!許してぇ!」

 

 嘔吐でのどの粘膜がやられて本当にゾンビみたいな声になってしまった。

 そのままイエイヌちゃんとじゃれ合いながらホテルに入っていった。他の子が来るかもとウミウちゃんはホテルの外で待機するそうだ。

 あたしは気を取り直すとパップでのどを治してチェックインしようとした。カウンターには誰もいない。

 

「フェネックちゃんは三人のフレンズさんがホテルを営んでるって言ってたけど…」

「誰もいませんね…」

 

 きれいに掃除はされているようだが生活感が全くなくがらんどうとしている。本当にフレンズさんはいるのだろうか…?

 

「なんだこれ?」

 

 ゴマちゃんがなにか見つけたようだ。

 

 チンチンチンチン。

 

「おおお…」

 

 ゴマちゃんが目を輝かせてその呼び鈴のようなものを連打している。

 

「おもしれーなこれ!」

「あ、あんまりやらない方がいいんじゃ…」

 

 呼び鈴を鳴らし続けるゴマちゃんをオロオロしながらも諫めるアムちゃん。微笑ましいねとイエイヌちゃんとほんわかしていると階下からバタバタと足音が聞こえてきた。

 やがてその子はゴマちゃんの鳴らす呼び鈴を止めるとこう言った。

 

「お、お待たせしました!いらっしゃいませ、ようこそジャパリホテルへ!」

 

 一人のフレンズさんが現れた。

 

「こんにちは!あなたがこのホテルを経営してるっていうフレンズさんかな?」

「はい!私はオオミミギツネと申します。遅れてしまい申し訳ありません…あまりお客さんが来ないもので下の方でハブたちに指導していたのです」

 

 フェネックちゃんの言っていた通りちゃんとフレンズさんはいるようだった。

 

「それで、本日はどのようなご用件でいらっしゃいますか?お泊りでしょうか?」

「そういえば考えてなかったな…うん!一番良い部屋をお願い!」

「かしこまりました!ただいま部屋の準備をいたしますので少々お待ちくださいませ!」

 

 オオミミギツネちゃんが去っていく。

 あたしはエントランスを見回すとその大きさに改めて感心した。シャッターが下りているところもあるようですべてを解放しているわけではないようだ。

 

「おっ、マジで来てやがる!ヘヘっ、待ってなー、今売店開けてやるからな!」

 

 フードを被ったヘビのような子が現れた。あれがオオミミギツネちゃんが言ってたハブちゃんなのかな?

 やがて閉まっていたシャッターの一つを開けるとぬいぐるみがいっぱい並んだ部屋が現れた。

 

「ハブ様のお土産コーナーへようこそ!どれでも好きなものを買っていくといいぜえ!」

「うわぁ…」

 

 かわいいぬいぐるみがいっぱい置いてある!どれもフレンズさんを模したぬいぐるみだ。その中の一つに見覚えのあるぬいぐるみがあった。

 

「これ、カラカルちゃんじゃ…ねぇ、イエイヌちゃ…」

 

 そう言いかけたときイエイヌちゃんはというと…

 

「ふわぁ…」

 

 目をキラキラと輝かせて尻尾をブンブンと振っている。これではあたしの言葉など耳に入らないだろう。しばらくそっとさせておこう。

 

「これ、ほしい」

 

 アムちゃんが手に取ったのは大きな耳の全体的に黄色い恰好をしたフレンズさんのぬいぐるみだ。

 

「いいよ。あたしはこれ。ハブちゃん、いくらかな」

「ぬいぐるみ一つでじゃぱりマンひとつ、二ついただこうか」

「わかった。はい」

「まいどー」

 

 一方のイエイヌちゃんは…

 

「と、ともえちゃん!これ全部ほしいです!」

「さ、さすがに全部は…」

 

 ひーふーみー…い、いくつあるの…?

 さすがに全部は買えないので10個以上はあったであろうぬいぐるみを3つに減らしてそれでオーケーしてもらった。イエイヌちゃんはしょんぼりしてたけど、あたしたちの貴重な食糧でもあるじゃぱりマンをおいそれと減らすことはできないのでそれで我慢してもらおう。

 

「おまたせしました。お部屋のご用意ができました。スイートルームにご案内いたします」

 

 オオミミギツネちゃんが後ろから現れた。どうやら部屋の準備ができたらしい。早速行ってみるとしよう。

 オオミミギツネちゃんに連れられてホテルの中を歩く。外からは潮騒が聞こえてくる。改めてここが海の中に立っているのだと実感する。あたしたちは下へ下へと連れられていっている。多分もうあたしたちは海中にいるんだと思う。

 

「なぁ、どうしてこんなところでホテルなんかやってるんだ?」

 

 ゴマちゃんが尋ねる。

 

「以前から博士たちからこのパークでは宿泊施設があったと聞いてて、いつか私たちもやってみたいと思ってたんです。なにか良い所はないかなーと思ってあちこちさがしてたらここが見つかったんですよ。ちょっと立地が悪いかもしれませんけど…」

「悪いなんてもんじゃねえだろ…ウミウがいなかったら私たちも来れなかったぜ?」

「あはは…来るのも鳥系の子か海棲系の子たちばかりですからね…」

 

 と、苦笑いしながら答える。あたしの疑問もぶつけてみよう。

 

「どうしてこのホテルって半分海に沈んでるんだろう?もともと沈んでたわけじゃないよね?」

「いえ、私が見つけたときにはすでに沈んでたんです。博士たちは海のご機嫌がどうとか言ってましたけど私にはさっぱりで…」

 

 わからないワードが飛び出してきた。海のご機嫌…?

 

「なんだろう、海のご機嫌って…」

「さぁ…わたしも聞いたことがないです」

 

 イエイヌちゃんもわからないようだ。あたしたちには関係ないと思っておいた方が良さそうだ。

 

「さぁ、着きましたよ。こちらがスイートルームです。それでは、ごゆっくり」

 

 そう言ってオオミミギツネちゃんが部屋を後にする。なんだかすごい部屋に通されちゃった。

 

「うおおおお!すげぇ!こいつすっげえ跳ねるぜ!」

 

 ゴマちゃんがベッドですごい跳ねてる。あんなに跳ねることできないと思うんだけどどうやってるんだろう…

 

「これ、気持ち良い…」

 

 アムちゃんもスリスリと全身を気持ちよさそうに擦り付けている。爪でシーツが大変なことになっているけど言った方が良いのだろうか。

 

「すごい。本当に海の中にいるんだ…」

「本当だね。辺り一面真っ暗…」

 

 真っ暗…?

 突然頭の中にノイズが走る。

 

「うっ…」

「どうかしましたか!?」

「い、いや、なんでもない…ちょっとふらってしただけ…」

「も、もしかして船酔いが…」

「あはは、多分そうかも…ちょっと外に出てくるね」

 

 そう言って部屋を出る。廊下がさっきまでとは違う光景のように見える。目の前が大きく揺らぐ。

 

「な、なんだろう…本当に船酔いなのかな…眩暈がする」

 

 頭を強くたたかれたかのような衝撃を受ける。倒れそうになる体を必死に支えながら前を見据える。息切れがすごい。心臓が強く脈打つ。動悸がしている。

 強い吐き気を感じた。頭が必死に何かを思い出そうとしている。真っ暗…?あたしは何を見たというの…?

 夢…夢だ。一人で宇宙を漂う夢…あの夢と似ているんだ。ただそれだけのはず…なのに…

 

 目の前にセルリアンがいる。

 

「セ、セルリアン…?」

 

 小さなセルリアンがじっとこちらを見ている。襲い掛かってくる様子はない。

 しばらくこちらを見た後あたしから去っていった。

 

「ま、待って!」

 

 あのセルリアンを逃してはならない。あのセルリアンは何か知っている。そんな気がしてならなかった。

 

「どうかしましたか?」

 

 イエイヌちゃんだ。あたしの声に気づいて出てきてくれたんだろう。だけど今はそんな場合じゃない。

 

「ともえちゃん!大丈夫ですか!?すごい汗…!すぐオオミミギツネさんを…!」

「大丈夫…大丈夫だから…心配しないで…イエイヌちゃんは戻ってて…」

「全然大丈夫なんかじゃないですよ…!こんなに汗をかいてて手足まで震えているのに…どこが…!」

「本当に大丈夫だから!あたしは行かなきゃいけないの…だから…」

「行かなきゃ…?」

「…イエイヌちゃんは戻ってて。済んだらもどるから…ね…?」

「…わかりました…絶対ですよ…?」

 

 そう言うとイエイヌちゃんは部屋に戻っていった。ドアが閉まるのを確認するとあたしは前に進み始めた。相変わらず手足は鉛のように重いけどなんとか壁伝いに前に進んでいく。

 セルリアンはいた。相変わらずこっちを見ている。あたしをしっかり認識すると再びあたしから去っていった。まるであたしを導いているようだった。

 あたしはセルリアンについていく。どんなに悪いことが起きようとかまわないと思った。ただあたしはセルリアンの意図が知りたかった。あのセルリアンは何かを伝えようとしている。そんな気がした。

 ひたすらホテルの階段を下っていく。踊り場に出るたびにセルリアンがこちらの様子をうかがうのを確認する。そしてついていく。その繰り返しだった。

 どれくらい降りたのだろうか。あたしたちは海底にいるのではないだろうか。それか海底のさらにその下か。長い廊下を抜けると一つの広い部屋に出た。変な機会がゴウンゴウンと唸っている。

 セルリアンがいた。遠くからあたしの様子をうかがっている。あたしは自力で立つのが精いっぱいだった。

 

(知りたいか…)

 

 頭の中で声が聞こえた。あのセルリアンがしゃべっているようだ。ひどく無機質な声だ。

 

(知りたいか…)

 

 また聞こえた。顔を前にあげると…

 

 目の前にセルリアンがいた。

 

 じっとあたしの目の奥をのぞき込んでいる。

 遠い記憶がフラッシュバックする。

 ひどいノイズだ。そのノイズすらもセルリアンは強制的に払っていく。

 記憶が見えた。

 家族のこと。友達のこと。泣いていること。怒っていること。大災害のこと。戦争のこと。離れ離れになること。

 町が燃えている。空からは何か大きなものが降ってきている。降ってきたと思ったら大爆発した。大きな閃光が見える。しばらくの後に大きな爆発音が聞こえてきた。

 鉄砲を持った人が何か叫んでいる。何を言っているかはわからない。お父さんがなにかあたしに話しかけている。何を言っているかはわからない。

 あたしはいったい……なにが起きたんだろう……あたしの記憶は……ここはどこなの……?

 すべての現実が受け止めきれなかった。

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 あたしは絶叫した。理性が耐えられなかった。ただ今見ている光景が恐ろしかった。すべてが虚構に思えた。あたしは本当にあたしなのかすべてが信じられなかった。ここは現実ではない。造られた世界だ。

 

「ともえちゃん!」

 

 イエイヌちゃんの声がした。とっさに振り向く。

 

「セルリアン…!ともえちゃん、逃げ…」

「イエイヌちゃん…」

 

 ゆっくりとイエイヌちゃんに近づく。もうすべてが信じられなかった。

 

「イエイヌちゃん…教えて…すべてを…」

「え…ともえちゃん、なにを…」

「あたし、思い出したんだ…ここに来る前のことを…だから教えて…?ここはいったいどこなの…?」

「ここ…?ここはジャパリパ…」

「嘘だッ!!!!」

 

 イエイヌちゃんの体が跳ねる。

 あたしはそんなのが知りたいんじゃない。絶対に違う。ここはジャパリパークなんかじゃない。

 

「違う…嘘言わないでよ…ここはジャパリパークなんかじゃない…きっと違う世界だ…お父さんもお母さんももう死んでるんだ…ねぇ、イエイヌちゃん…あたし、もうイエイヌちゃんも信じられなくなりそうだよ…」

 

 そう言ってあたしは泣き崩れた。

 イエイヌちゃんがそっと手を差し伸べてくる。

 

「気付かれたんですね…部屋に戻りましょう。すべてを教えてあげます」

 

 そうしてあたしは真実を聞いた。

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