けものフレンズR ~Re:Life~   作:韓非子

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第2話「旅の始まり・上」

「うっわああああああああああああああああ!!!なにしているんですかああああああああああああああ!!!」

 

 突如イエイヌちゃんの絶叫が聞こえてきた。

 

「それはセルリアンです!!今すぐ逃げてください!!!」

「え、逃げるって…」

 

 この小さくてふよふよした生き物っぽいのはセルリアンというらしい。敵意は感じないしなんだか小さくてかわいらしいのに…もしかして結構危ない感じのものだったりするのかな。

 

パッカーン!

 

 ぼやーっと考えてるうちにイエイヌちゃんがセルリアンの背中にある石みたいなものを叩いて倒してしまった。

 キラキラと四角い破片があたりに散らばる。

 

「はぁ…はぁ…あ、あれはセルリアンっていってフレンズを食べちゃう怖いモンスターなんですよ!もしかしたらともえちゃんも食べられたかもしれないんですよ!」

「そ、そうなんだ… ご、ごめんね。次からは気を付けるよ」

 

 イエイヌちゃんは本気で心配してくれてたみたいだ。結構本気で怒っている。

 

「まあ、けど最近はなんだかおとなしくなってあんまりフレンズを襲うなんてことはないんですけど一応気を付けてくださいね!多くはないですけど被害報告は最近でもあるんですから!」

「う、うん…」

 

 あまりもの剣幕に終始押されっぱなしだった。

 気まずい雰囲気が流れる。

 

 また1匹のセルリアンがまた現れた。こちらを一瞥するとどこかに行ってしまった。

 

「……」

「だめですよ」

「わ、わかってるよ」

「……」

 

 また気まずい沈黙が流れる。ど、どうにかしてこの状況を打開しないと…

 

「ね、ねぇ。セルリアンに食べられたらどうなるの?」

「わたしも直接見たわけじゃないからよくわからないんですけどカガヤキが失われるらしいです。他にはフレンズの頃の記憶がなくなって元の動物に戻るっていう報告もあります」

「へ、へぇ…」

 

 予想外の答えだった。

 なんとなく話の糸口を探そうと思って聞いてみたけどまさかそんな答えが返ってくるとは思わなかった。

 てっきりぐちゃぐちゃに食べられたり溶かされるものかと思ってたけどそうではないみたい。

 でもなんだろう。カガヤキ…?あたしはフレンズではないだろうしそのカガヤキを失うことになるのかな。

 

「ともえちゃんはフレンズではないからそういったこともないかもしれないけど一応気を付けてくださいね。わたし嫌ですから。ともえちゃんが食べられるところを見るの」

「わかった!わかったから!」

「本当に本当ですよ!」

 

 むすーっと膨れるイエイヌちゃん。よほど心配だったようだ。

 

 

・・・・・・

 

 

 休憩がてら立ち寄った木陰であたしはどうぶつ図鑑を見ていた。この図鑑に載っている動物もみんなこのパークにいるのかな。

 しばらく見ているうちにイヌ科のページにたどり着いた。いろんな種類のイヌが載っている。

 オオカミ、柴犬、狼犬……まるでちんぷんかんぷんだ…

 ……そういうものなんだろう。イエイヌちゃんも言っていたしね。深く考えないようにしよう。

 

 イエイヌちゃんは水と食料を取りに行っている。なんでもボスから分けてもらうらしい。

 一緒に行くと言ったけどいいよいいよと無理やり座らされて一人でさっさと行ってしまった。

 この時間は一番暑いからゆっくり待っててくださいとのことだった。意外と強引なところもあるんだなと思った。

 

「お待たせしましたー!」

 

 そう言って水と食料を持ったイエイヌちゃんが小走りにこちらに駆け寄ってきた。

 若干汗はかいているようだがそんなにかいているわけではなくしっとり体を濡らしている程度のようだった。

 フレンズはあまり汗はかかないのだろうか。

 

「どうしたんですか?じっとわたしの体を見て」

「い、いやイエイヌちゃんあまり汗かいてないなーって思って…」

「あはは、いくらフレンズになってヒト化したからといっても完全にヒトになったわけではないですからね。依然として体温を下げる方法はハァハァすることだったりしますよ」

「ふーん…」

 

 水を飲んでいる間にもハァハァと忙しなく息をしている。やっぱり暑いんだ。

 あの様子だとヒトより体温調節苦手だろうにちょっと無茶をさせちゃったかもしれない。反省…

 

横になって伸びているイエイヌちゃんをあたしのかぶっていた帽子で扇いでみる。

 

「ふぁ~ありがとうございます~…尽くすべきはわたしなのにぃぃぃ…」

「ふふ、水とジャパリマンを取り行ってもらったんだからこれくらい当然だよ」

「はう~ごしゅじんさまぁ~」

 

 またご主人さまって呼んだ。けどイエイヌちゃんは仰向けになって甘えるような仕草をしている。どうぶつ図鑑で見たイヌの習性にそっくりだ。

 試しに頭や首筋を撫でてみたらより一層強く甘えてきた。

 会って間もないあたしにここまで甘えて信用するなんてちょっと引くところもあるけどイエイヌちゃんが満足してるならそれでいいかな。

 ……ここでご主人さま呼びを注意しては野暮だろう。それになんだか悪くない気もする。

 今くらいは許してあげよう。

 

 ここであたしはふと疑問に思ったことを聞いてみた。

 

「そういえばイエイヌちゃん、イエイヌちゃんが言ってた"ボス"って誰のこと?」

「ふあ、ラッキービーストのことですかあ?」

 

 …完全に伸びちゃってる…午前中の鬼気迫るイエイヌちゃんとは別人みたいだ。

 

「う、うん。あたしそのラッキービーストのこと全然知らなくて…」

「ボスはパークのあちこちにいる小さいフレンズさんですよ。人間相手にはしゃべってくれるんだけどわたしたちフレンズにはしゃべってくれないんですよー」

「へー」

「でもジャパリマンの補給とかパークの基本的な管理はぜんぶボスがやってくれてるんです。おかげでのびのびと暮らせているんですよ」

「なるほど。良い方たちなんだね」

 

 イエイヌちゃんの言葉から推測するにボスは小さくていっぱいいることがなんとなくわかった。ボスって呼ぶから怖い人…フレンズ?かとも思ったけどそうでもないみたい。あたしもちょっと会ってみたいかも。

 

「……そろそろ行こっか」

「はい!」

 

 そうして再び歩き始めた。

 午前中の不機嫌はどこへ行ったのかすごい上機嫌だ。尻尾をふりふり、足取りも軽そうだ。

 …イエイヌちゃんの前ではもうあんなマネはしないようにしよう。

 

 しばらく歩いていたら少し先になんだか奇妙な影が見えてきた。4足歩行の大きな黒い影だ。

 その周りで複数のフレンズらしき人たちが戦っているのが見えた。

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