しばらく歩いてたら少し先になんだか奇妙な影が見えてきた。4足歩行の大きな黒い影だ。
その周りで複数のフレンズらしき人たちが戦っているのが見える。
「イエイヌちゃん…」
「シッ…」
イエイヌちゃんの目つきがいつになく鋭い。
あれはいったい何だろう…
「イエイヌちゃん、あれっていったい…」
「セルリアンです。それもかなり大型の…」
「あれが…セルリアン…?」
嘘だ…あんな大きいのがセルリアンなんて…あたしが見た小さくて青いのはいったい…
「いいですか、ともえちゃん。あれがセルリアンなんです。無差別にフレンズに襲い掛かる凶悪なモンスターなんです。フレンズたちが必死に戦っているのが見えますよね。セルリアンはああやって駆除していくべき対象なんです」
「…!!」
……あたし、すごいことしてたんだ……
あんな恐ろしいモンスターをちょっとかわいいからってつついて遊んだりして…
イエイヌちゃんの目にはどう映っていたんだろう……本当にバカなマネをしてたんだと深く後悔する。
「ともえちゃん!!!」
「!!」
「しっかり見ていてください…!」
「う、うん!」
いくら攻撃を加えてもビクともしない。それどころかゆっくりと前進したり、緩慢な動作で前足をあげては振りかざしてと攻撃しているようにも見える。
「あっ…!」
すんでのところで1人のフレンズさんが潰されるところだった。オレンジ色のフレンズさんはひらりと身をかわして大きなセルリアンから距離をとった。
かわせるのはいいけど攻撃手段がないといった様子だった。悔しそうに大きなひとつ目の怪物を見上げている。
「くっ…!」
我慢できずに思わずあたしは走りだした。
すぐにイエイヌちゃんが反応したけどかまわなかった。
「待ってください!どこへ行くんですか!」
「助けに行く…!見捨てずにはいられない!」
「無茶だ!危険です!」
セルリアンに近いある程度の高さの木まで近づくととっさに身をかがめた。
そして周りに生えてる適当な草をむしって簡単なロープを編み始めた。
「いったい何を考えてるんですか!午前中のあれはまだ小さかったからよかったですけどあの大きさはわたしでも守り切れませんよ!」
「ごめんイエイヌちゃん……けどどうしても我慢できないんだ。どうにかしてあの子たちを助けたい…!」
「ともえちゃん…」
「よしできた…!」
イエイヌちゃんのいうことが正しければアイツにも石があるはず…
あたしはできる限りの力を振り絞って木の枝にロープをひっかけた。そして腰のあたりに輪っかにしたロープを括り付けるとイエイヌちゃんに命令を下した。
「イエイヌちゃん、悪いけどこのロープを引っ張ってあの枝まで私を釣り上げてくれない?」
「いいですけどいったい何を…」
「いいから早く!」
信頼してくれたかはわからないけど渋い顔をしながらもイエイヌちゃんは言うことを聞いてくれた。
ジワジワとあたしの体が浮いていく。少ししたら目的の枝へと到達した。
「ともえちゃん!わたしのこともお願いできませんか!」
「え?」
イエイヌちゃんも覚悟ができたのだろう。
あたしはイエイヌちゃんを自分のところまで引っ張った。
「イエイヌちゃん…」
「……作戦を教えてもらえますか。こうなったらわたしも手伝います。ともえちゃんを一人になんてできません」
「……わかった。ごめんね、あたしのわがままにつき合わせちゃって」
「作戦はこう、今からもっと高いところまで登って行ってそこからアイツの背中に飛び乗る。背中に飛び乗ったら石を探して破壊するの。……あたしの力じゃ難しいかもしれないけどイエイヌちゃんだったら壊せるよね…?」
「あんな規模のセルリアンはわたしも初めてだからわからないけど…やってみます」
「ごめんね、イエイヌちゃん…ありがとう」
そうして今いる木の目的のところまで登った。あとはセルリアンの気をこちらに向けて良い位置まで来たら一気に飛び乗る。
下でポケットに入れた石をセルリアンに向けて投げる。
……当たった。ゆっくりとセルリアンがこっちに振り向く。もう1回投げる。
やった!こっちに向かってきてる!
あとはロープがちぎれたり枝が折れないことを祈りつつアイツに飛び乗るだけだ!
「バカ!何やってんのアイツ!」
「行くよ、イエイヌちゃん。」
「は、はい!」
「せーの…!」
木の枝で助走をつけて勢いよくセルリアンに飛び乗った。……のはいいけど着地に失敗してしまった……
「いったぁぁぁぁぁぁ…」
「だ、だいじょうぶですか…?」
「あ、あたしはいいから石を…叩いて…」
どすんどすん揺れている。揺れるたびにバランスを崩して落ちそうになる。なんとか歯を食いしばりながら立ち上がって石を探してみる。
……見当たらない…どこにあるんだろう…?
「大変です!石が見当たりません!」
「そんな……」
こんなことってある…?あたしは目の前が真っ暗になった。
そのとき。
バッシィィィィィィン!!!
目の前にあるセルリアンの体の一部がはじけ飛んだ。
何が起きたのかわからなかった。
「ともえちゃん!」
イエイヌちゃんが叫ぶ。
「ビーストです!下がってください!」
「ッ!!」
ビースト…?イエイヌちゃん以外のもう一人のフレンズが見える。
鋭い目つき、鋭い爪、警戒色のような橙と黒の模様……それに黒いオーラのようなものをまとっている。
──怖い……動けない……あたしは完全に腰が抜けていた。
「っ!!ご主人さまには指一本触れさせません!!」
「────ッ!!」
───そのビーストは戦うことなくどこかへ飛んで行ってしまった。
あっけにとられていたがビーストが叩いたところを見ると石が見えていた。
「イエイヌちゃん!そこ!」
「──はっ!!!」
………
黒い大きなセルリアンの体が崩れていく。パッカーンと弾けるのは時間の問題だそうだ。
下の方で戦っていたフレンズさんたちは報告や被害状況の確認のためにとみんな行ってしまった。
あたしたちはというと…
「ハァァァァァァァァァ………」
「まったくもうなんであんな無茶を…」
「だって……いたた…」
着地に失敗したところとは別の個所が痛む。いろいろと無茶をしすぎたのかもしれない。
全身いろんなところが悲鳴を上げているかのようだ。
「まったく、とんだ無茶をするわね、アンタたち」
「!」
そこにはオレンジ色のスラっとした体と黒い耳のフレンズさんが立っていた。
「あ、あなたは…」
「アタシはカラカル。ここはアタシのナワバリなの。……アンタたち見かけない顔ね。どこから来たの?」
「あたしはともえ、この子はイエイヌちゃんっていうの」
「よろしくお願いします…」
「あたしたちはパーク・セントラルから来たんだ」
「へぇ、セントラルから来たの?」
ふーん、とうなった後ジロジロとあたしの体を見つめまわす。
ど、どうしたんだろう…
「ふーん……その毛皮、その帽子、その名前、そしてあの行動………あなた、ヒトでしょ」
「え、そうだけど……」
「………」
「………たぶん……」
「………」
微妙な沈黙にイエイヌちゃんがオロオロする。
「な、なによ!当たったんならもうちょっと良いリアクションしてくれてもいいじゃないの!」
「ご、ごめん!なんかよくわからないけどごめんなさい!」
よくわからないけど怒られてしまった。
相変わらずイエイヌちゃんはオロオロしている。
「まあ、いいわ。あんな無茶をしたとはいえよくあの大型セルリアンを倒すことができたわね。すごいじゃない。あたしたちフレンズが数人がかりで何時間と戦っても勝てなかったのに」
「えへへ…けど実際に倒してくれたのは…」
そう言いかけたところで大事なことを思い出した。
「そうだ、ビースト!あの子はどこに行ったの!?」
「ビースト?」
「どこかへ行っちゃいましたね。まぁ、けどビーストもセルリアンに劣らない凶暴な存在です。ともえちゃんもできれば相手にしないでください。見かけたら逃げることです」
「う、うん…」
「そういえばセルリアンに飛び乗るフレンズがあなた以外にも一人いたわね。あれがビーストかしら」
「たぶんそう。その子がセルリアンの背中を割って石を出してくれたんだ」
「ふーん…けどイエイヌが言う通りビーストは危険な存在。今回はたまたま助かったけど、もしほかで遭遇したらどんな目に合うかわからないわ。見かけても絶対に近寄らないようにしなさい」
「は、はい…」
カラカルちゃんにも言われちゃった…そんなに危ない存在なのかなぁ…
セルリアンを倒すのに手助けしてくれたし目があっても手を出してこなかったし…
「納得いかなくても近づいちゃダメ!後悔してからじゃ遅いんだから!」
「わかった!わかったからあ!」
いたく真剣な眼差しだ。ビーストには近づいてはいけない。うん、覚えた。
「それよりあんたたち、泊まるところはあるの?」
「いや…基本適当なところで野宿しようと思ってるんだ」
「そう、だったらついてきて。サバンナ地方を案内するがてら泊まれるところまで案内してあげる。喉も乾いてるでしょうし水飲み場にも寄っていきましょ」
「うん!ありがとう!カラカルちゃん!」
「カラカルでいいわよ」
こうしてサバンナ地方を巡ることになった。
「あ、いたたた…」
「だ、だいじょうぶですか!?」
「あー…ケガしてんの?アンタ…」
道のりは険しい!