けものフレンズR ~Re:Life~   作:韓非子

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第3話「コアラとカラカル」

「ご、ごめんね、イエイヌちゃん…」

 

 あたしは今イエイヌちゃんにおぶられている。足をくじいて痛めてしまったためだ。その他にもいろいろと無茶をして体のあちこちがズキズキと痛む。情けないなあトホホ……

 

「いえいえだいじょうぶですよ。むしろ動物だったころだとできなかったことができてとっても幸せです!」

「? どういうこと?」

「動物だったころはどうやっても吠えて知らせたり衣服を噛んで引きずることしかできませんでした。けど今はこうしてケガをしたともえちゃんを背負って運ぶことができます。これすなわちヒトのようにともえちゃんを介抱できるということ!イエイヌとしてこれ以上ない幸せです!」

「あ、あはは…」

 

 嬉しそうに鼻をふんふんと鳴らす。嬉しいのはわかるけどなんだか申し訳なく思ちゃう。こう思ってしまうのも私だけだったりしないかな。

 

「アンタたちホント仲いいわね」

 

 不意にカラカルちゃんが尋ねる。

 

「あはは。出会って間もないんだけどね」

「そうなの?よほど相性が良かったのかしらね」

 

 ヒトとイエイヌ、図鑑を見る限りその関係はかなり古くからあるらしい。ヒトはイヌという生き物を用途に合わせて品種改良してきたという。その種類は実にイエネコの4倍以上らしい。あたしとイエイヌちゃんの相性が合うのは必然というか当然のことなのかもしれない。

 

「相性がいいというかともえちゃんはわたしのご主人さまですからね」

「またご主人さまなんていう~」

「えへへ」

 

 どや顔でそんなことをいってくる。もはやわざととしか思えない。

 

「まったくイチャイチャとまるでカップルのようね…」

 

 カラカルちゃんが呆れている。なんだか急に恥ずかしくなってくる。

 

「イエイヌちゃん、それまでにしておこう」

「? なにがですか?」

「いや、だからあの…」

「はいはい、そこまでそこまで」

 

 もうやめようと言ってから何をやめればいいのかと思ってしまった。周りから見たらもうすでに出来上がってったりするのだろうか。

 

「ほら、もうすぐそこよ」

 

 池だまりのようなものが見えてきた。あそこで水を飲むため休憩するらしい。……泳いだらすごく気持ちよさそうだ。

 

 

 フレンズさんたちの前で裸になるわけにもいかず黙って水を飲む。あたしが手ですくって水を飲むのに対してイエイヌちゃんとカラカルちゃんはじかに口をつけてがぶ飲みしている。

 あたしもそうした方が良いのかな…

 

「ぷはー!生き返るわ~!」

「そうですね~」

 

 2人がそう満足そうに言ってあたしもほっこりする。フレンズさんたちの嬉しそうな顔やほっこりする顔を見るとなんだかあたしまで嬉しくなってくる。

 

「そういえばアンタもうすでにヒトってわかってるのよね。前いたヒトの子は他のヒトを見つけるためにこのキョウシュウエリアから出て行ってしまったけどアンタはなにか探してるものとかあるの?」

「あたしがヒトっていうのはわかるんだけどあたしが誰かっていうのまでは覚えてないしそれを探しているの。目覚めた場所も変なところだったしそれを見つけるためでもあるのかな」

「? ど、どういうこと…?」

「え~と、つまりその~…」

「ヒトというものはヒト以外の名前を持っていてわたしたちはそれを探しているんです。ちなみにわたしも持ってます」

 

 突然割り込みえっへんと胸を張るイエイヌちゃん。どこか誇らしげだ。

 

「ふーん……ヒトじゃないのにその名前っていうのは持ってるんだ。へんなの」

「わたしに限らずヒトに関わるけものであればみんな名前は持ってると思いますよ。パーク・セントラルあたりに住んでるイエネコちゃんも持っててもおかしくないと思いますよ」

「ふ~ん…… なるほどねぇ……」

 

 と、思案顔になるカラカルちゃん。イエイヌちゃんほどではないにしろ尻尾をふりふりと振っている。

 

「もしかしてカラカルちゃんも名前つけてほしかったりする?」

「バ、バカ!そんなんじゃないわよ!」

「あはは、そんなことを言ってもしっぽが反応しちゃってるよ」

「う、これは………」

「名前っていうのはすごい大事なものなんだ。そう簡単につけていいものじゃないの。その子につけられるとても大事でトクベツなものだからね。出会ったばかりのあたしがとてもつけてもいいものじゃないの」

「あ、あたしは別に……」

「例えばあたしがかわいさ一つだけで変な名前つけちゃったら怒るでしょ?カラカルちゃんにも大事なトモダチとか大事な人がいるならその子につけてもらった方が良いと思う。あなたを表すもっとも大事なものになるだろうから…」

「………」

 

 ………偉そうに説教しちゃった……なぜかイエイヌちゃんがうんうんとうなずいている。カラカルちゃんはすねるようないじけているような変な反応をしている。

 

「そういえばイエイヌちゃんも名前つけてもらったって言ってたけどどんな名前だったの?」

「それは……秘密です!大事な大事なつけてもらった名前ですからね。簡単に教えるわけにはいけません!」

「え~そんな~」

 

「………」

(名前……か……)

「カラカルちゃん?」

「ん、なあに?」

「どうしたの?ぼーっとしちゃって」

「なんでもないわ。それよりケガの方はどう?これからコアラのところまで連れて行こうかと思ってたんだけど」

「うん、お願い。まだ痛いのは痛いしこれから先ケガしちゃいけないからついでにお薬もいくつかもらおうと思ってたの」

「りょうかい。そんなにかからないはずだからそれまで我慢してちょうだい」

「うん、ありがとう」

 

 

…………

 

 

「ほう、セルリアンとの戦いでケガをしたと」

「うん、そうなの。アレをもらえないかしら」

 

 この子はコアラちゃん。他のフレンズさんと比べると幾分か小さくてちょっとほんわかした雰囲気のフレンズさんだ。独特の語尾を伸ばす癖があってかわいいかも。

 

「よしよしー。痛かったですねー。私のパップで治してあげますからねー」

 

……ん? パップ……?

 

「コアラちゃん、パップって……」

「んー?パップがどうかしましたかー?」

「いや… あのパップだよね…?」

 

 パップって図鑑のコアラの項目で確か見たはず。パップというのはコアラがこどもの離乳食のために作る特別な…アレだということを。

 

「いや、いいよ!だいじょうぶだから!」

「いいよいいよー、遠慮せずにーそれーぬりぬりー」

「ひぃ!」

 

 ………ん? 痛みが引いていく……

 

「す、すごい…… 痛みが引いていく…… パップってこういう使い道もあるんだ……」

「そうだよー。すごいでしょー。何代か前の私から使えるようになったらしいんだー」

「そ、そうなんだ……」

 

「ともえちゃん、せっかく治療してくれてるのにそう拒否を示すのは失礼だと思います」

「いや、わかっているんだけど…」

 

 パップの正体を知っている以上どうしても反応してしまうのだ。たぶんあたしじゃなくてもみんなそうする。

 

「ふっふっふー。知りすぎてしまうというのも考え物ですねー」

「そう含みのある言い方やめてもらえるー!?」

「なに騒いでるのあの子たち…」

「さぁ……」

 

「ヒトっていうのは変わった動物だっていうのは聞いてるんだけど前いたかばんっていう子もあんな感じだったのかしら」

「あんまり否定したくないんですけどたぶん違うと思います…」

 

 イエイヌちゃんとカラカルちゃんがなにやら呆れているような態度を示している。何も知らないっていいなー!くそぅ、くそぅ!

 

「いったいなにをそんなにさわいでるの?アタシもコアラの世話になって長いけどアンタみたいな子は初めて見るわよ? なにがそんなに嫌なの?」

「私も初めてですねー。みんな美容に良いとか風邪が治るとかケガに良い健康に良いと私が恥ずかしくなるくらい褒めてくれるのにー」

「いやだって…… その…… パップってうんちじゃ……」

 

 場の空気が凍る。顔にぺたぺた塗ってたイエイヌちゃんの手も止まる。さあこれからどうなるのでしょうか。楽しみです。

 

「…はっ?なにいってんの?」

 

 当然の反応だ。今までの自分を否定されたと同じくらいの衝撃だろう。

 

「ふふふ。知ってたんですねー。パップのことー」

「ちょっとコアラ、ともえの言ったこと本当なの?」

「まさかー、それは本来のやり方ですよー」

 

 ……? どういうこと? 嘘をついてる…?

 

「この姿になった今、違うやり方で作っているんですよー」

「そ、そうなの?よかったー」

 

……と、カラカルちゃん。

ドッとあたしも力が抜ける。それならそうと言ってくれればいいのに……

 

「やーやーごめんごめん。まさか私もパップのことを知ってる子に出会うなんて思ってなくてさー」

「もー……嘘、ついてないよね……?」

「ほんとほんと、ウソじゃないよー。でもキミの反応が面白くてつい遊んじゃったー。ごめんねー」

「ごめんじゃないよー…」

 

 

…………

 

 

「……それじゃ、ありがとうね!」

「うん、またねー」

「また遊びに来なさいよ」

 

 パップをかばんいっぱいに詰め込んでバイバイした。

 

「なんだか楽しかったですね」

「そうだね。でもなんだか疲れちゃった。どうせなら泊まっていけばよかったかな」

「かもですね」

 

 ニッコリとイエイヌちゃんが笑う。イエイヌちゃんはまだ元気そうだ。

 

「次はどこ行きましょうか」

「そうだねー。風の吹くままに!なんてどうかな」

「それも面白そうですね!わたしはともえちゃんについていきますよ!」

 

 今日だけでもいろんなことがあった。明日はなにが起きるかな。あのセルリアンはもうごめんだけど今日みたいなおもしろいことが起きるといいな。そう思いながら次のチホーへと向かう。

 

 

…………

 

 

アノ子の言ったことが頭から離れない。名前……トクベツなもの……大事な人……

アタシにとっての大事な人っていったら誰になるんだろう……サーバル……?

確かにあの子はアタシにとっての大事な親友になるのかしら。

あの子今どうしてるのかしら……ゴコクエリアに行ったんだったか……

戻ってきたらなんて言ってやろう……あの子に名前を付けるのだとしたら……

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