けものフレンズR ~Re:Life~   作:韓非子

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第5話「じゃぱり図書館」

「おーい!お前らー!」

「うん?」

 

 遠くから呼ばれる声がした。聞き覚えのある声だ。

 

「あれは…ゴマちゃん!どうしたの!?」

「はぁ…はぁ…良かった、追いついて…」

「い、いったいどうしたんですか?もしかして忘れ物…」

「いいや、違う!実は私もお前たちの旅についていこうかなーって思ってな!」

「「ええええええええええええええ!?」」

「なんだよ嫌だってんのかよ」

「い、嫌じゃないしむしろ全然オーケーなんだけどいいの?プロングホーンさんは?」

「プロングホーン様ならちゃんと許しはもらってるぜ!なあいいだろ?私もお前たちの旅を見てみたいんだ!」

 

 イエイヌちゃんとお互い目配せをする。お互いの答えはわかっている。お互い答えに異存はない。

 

「うん、いいよ。一緒に行こ!」

「ああ!よろしくな!二人とも!」

 

 

…………

 

 

「ここに来るなりあいさつもそこそこに本を読みふけるとはやりますね、博士」

「目的もなんも言わずにただ本を読んでやがっているのです」

 

 あたしは今図書館にいる。人の記した知恵の貯蔵庫だ。ここにはたくさんの本がある。

 どうぶつのこと、その日に起きた出来事のこと、お料理のこと、フレンズさんの日記、そしてあたしが今読んでいるのは空に関することだ。

 人はかねてより空へあこがれていたという。そう遠くない昔のある日、二人の兄弟が人でありながら空を飛ぶことに成功したという。どうやら"ヒコウキ"というものを作って空を飛ぶことに成功したらしい。

 他にも"キキュウ"とか"ヒコウセン"というものを作って空を飛んだ人もいるらしい。初めのころはカックウしたりふわふわと漂うだけだったけどドウリョクキカン?というものを作って飛んだのは二人が初めてだったとか。

 なにやら難しい話がいっぱい書いてあってよくわからないけどあたしもこの本に書かれているヒトたちみたいに空を飛んでみたいと思った。

 

「何を読んでいるんですか?」

 

 横からイエイヌちゃんが顔を出してきた。

 

「お空に関する本だよ」

「ソラ?」

「この本によるとヒトでも空を飛べるっていうことが書かれてあるんだ。鳥さんみたいな羽がなくても飛ぶための道具があったら空を飛べるみたいなんだ」

「へ~…」

 

 イエイヌちゃんが興味津々といった様子で本をのぞき込む。

 

「なにがなにやらさっぱりです…たまに書いてある絵だけがぼんやりわかるくらいで…」

「あはは、あたしも読めはするんだけど内容が難しくてさっぱりだよ」

 

「字が完璧に読めてますね。アレもカバンと同じくヒトでしょうね、博士」

「ならやることは一つ、カバンがいなくなった今、あいつにも料理を作らせていただき…」

 

 バタバタバタ!!

 

「もう一人ついてきたあの鳥のフレンズはどうにかならないのでしょうか、博士」

「おいお前、あの騒がしいフレンズをどうにかするのです」

「ああ、ごめんね。ゴマちゃーん!ちょっと静かにしてもらえるかなー?」

「おおっと、わりいわりい」

 

 そういってふわふわと飛びながら下に降りてきた。なんかいくつも本を持っている。

 

「なあ、図書館の中をいろいろ見て回ったんだけどなんだか周りと違うような本がいくつかあったんだ。これなんだかわかるか?」

「ええっとどれどれ…ううーん…なんて読むんだろう…」

 

 明らかに他の本とは違う文字の本をズラリと出してきた。全く読めない。

 

「へぇー。ヒトでも読める文字と読めない文字があるのかー」

「えへへ…ごめんね」

「そういえばこの本に書かれてる文字ってゴマちゃんの毛皮に書かれてる文字といくつか一致しますね。どういう意味なんでしょう」

「ホントだ。よく気付いたね!大発見だよ!」

「な、なんだなんだ?」

 

 いろいろ調べた結果ゴマちゃんの胸のところに書かれてる文字はBeep!って書かれていることがわかった。意味もビープ。ビープがなにを指す単語までかはわからなかった。

 

「へぇ~。これ文字だったんだ…へへっ…なんかトクベツな感じがして気分が良いぜ」

「なにニヤニヤしてるんですか、お前」

 

 噛みつくコノハちゃん博士。

 

「へへーん!いいだろこれ!持たざるけものめ!羨め!」

 

 コノハちゃん博士相手にビービー鳴いている。よほど嬉しいのだろう。けど今は手伝ってほしいことがあるからちょっとこっちに来てもらおう。

 

「ゴマちゃーん!ちょっと来てくれるー?」

「お?なんだ?ビープ様に何か用かー?」

「能天気なやつですねまったく」

 

 ふわふわと飛びながらこっちにやってきた。ひとつのアイデンティティを手に入れたのだろう。とても嬉しそうだ。

 

「えっとね、これを作るのを手伝ってほしいんだ」

「? なんだこれ?」

「パラグライダーっていうんだって。これに乗ると空を飛べるらしいんだ。あたしもこれを作って空を飛んでみたいの!」

「空を飛ぶんだったら鳥系のフレンズに頼めばいいんじゃないのか?なんだったら私が手伝ってやるぜ?」

「それじゃダメなの!あたしひとりで空を飛びたいの!」

「なんかよくわかんねえな…」

 

 持つ者には持たざる者の気持ちがわからない。さっきから持つ者としての無自覚の精神的攻撃を展開している気がする。

 

「とりあえずわたしはこれらの素材を集めてくればいいんですね」

「うん、お願い」

 

 字が読めないイエイヌちゃんに持ってきてほしい材料を描いた絵を渡す。イエイヌちゃんは了解ですとさわやかに返事をして探しに行った。

 

「…私のコレさっぱりなんだが…なんなんだこれ」

「薄くて頑丈なものだね。このパークの中にあるかな?」

「あるかわからないものを探すって簡単に言わないでほしいぜ…」

 

 と、しぶしぶ探しに行ってくれた。

 …それではあたしはあたしで設計図を描いていきましょうか。

 

「博士ちゃんたちも手伝ってくれる?」

「手伝ってもいいですけど条件があるのです」

「条件って?」

「私たちに料理をふるまうのです。そうしたら手伝ってあげるですよ」

「我々は賢いので頭を使う作業にはエネルギーを使うのです。ただし、我々が満足するまで手伝わないですよ。」

「え~。そんなぁ」

 

…………

 

 ……1時間くらい経った。あたしは料理を作らず一人で設計図を描いていた。博士ちゃんたちは図書館に引っ込み何やらぶつぶつとつぶやいている。

なんだかおなかが空いてきたな…

 

「ん~、なにか作ろうかな~」

 

 ふらふらと図書館の中に入っていく。

 

「確か料理のレシピってあったよね…」

 

 図書館の本棚をごそごそと探す。どこになにがあったっけ…この本の量から目的の本を探すのは骨が折れそう…

 

「なにか探しものですか」

 

 つっけんどんに博士ちゃんが聞いてくる。

 

「ちょっと料理のレシピを…」

「!!!」

 

 バッと二人が反応する。ちょっとびっくりしちゃった。

 

「とうとう作る気になったのですか!やりましたよ!博士!」

「やったのです!我慢比べは我々の勝利なのです!」

「あ、あはは…」

 

 目をキラキラと輝かせる二人。別にそんなことをしていたわけではないけどついでに二人の分も作って一緒に手伝ってもらおう。

 

「そういうわけなんだけど料理の本ってどこにあるのかな…?」

「あそこに材料と一緒にいっぱい置いてあるですよ」

 

 大量の材料といっしょに平積みにされた料理の本がたくさん置いてある。館内の料理に関する本を全部を持ってきているのだろうか。

 

「では早速作るのです。ちゃんと我々を満足させるのですよ」

「博士と私を満足させなければ手伝わないですよ」

「う、うん。がんばる」

 

 作るのはアップルパイ。ココアパウダーもあるからそれも一緒に作ろう。

 まずはパイ生地を作って、それからリンゴと塩とキャラメル、グラニュー糖で餡を作って…

 

 

「……できた!」

 

 我ながら上々の出来だ。これなら博士ちゃんたちを満足させることもできるだろう。できたてほかほかでリンゴの豊潤な香りも食欲をそそる。

 

「できたよー!さぁ、食べよう!」

「ようやくできましたか。我々はもうお腹がペコペコなのです」

「早く食べさせろなのです」

「まぁまぁ、落ち着いて」

 

 アップルパイを二人の前に並べる。それを見た二人の目が目に見えてキラキラと輝くのを感じた。これだけ無邪気な反応をされたら作った甲斐もあるというものだ。

 

「これがアップルパイ…初めてカバンがカレーを作った時はあまりものおどろおどろしさに恐怖を感じたものでしたがこれは黄金に輝いていてとてもきれいなのです…」

「見た目だけでおいしさが伝わってくるようなのです…」

「あはは、じゃあ早速食べよっか」

 

 目をキラキラ輝かせる二人を落ち着かせていっしょにいただきますをしようとする。

 

「いただきまーす!」

「ヒトはよくわからないことをするのですね」

「もう食べてるし!?」

 

 先にいただかれてしまった。

 

 

「これは満足、100点満点なのです」

「パーフェクトです。文句のつけようがありませんね」

「あの酸味と甘みの絶妙なバランス…もう一度食べたいですね、助手」

「そうですね、博士…」

「それじゃあ、博士ちゃんたち、約束のことなんだけど…」

「もう少し待つのです。もう少し余韻を味わわせろなのです…」

「う、うん…」

 

 

…………

 

 

「それで我々はなにを手伝えば良いのですか」

 

 と、助手ちゃんが尋ねる。

 

「簡単なスケッチは描いたんだけどどっか過不足がないか見てもらえるかな」

「了解なのです」

「「う~む」」

 

 二人でまじまじと設計図を見る。簡単なラフ画なんだけどなんだか恥ずかしい感じがする。

 

「これがぱらぐらいだーですか…不思議な形なのです…はじめからこんな形なのですか?」

 

 博士ちゃんが尋ねる。

 

「いや、普通の状態だとしなびてるんだけど風を受けるとその形になるんだ」

「ふむ、なるほど…」

 

 そう言って再び黙り込む。この状態だと博士というより職人という感じがする。

 

「これだけだとよくわからないのです。三面図を描いてより正確に表すのですよ」

「三面図…?」

「正面図、側面図、平面図の三つを描くのですよ」

 

 と、助手ちゃんが言う。

 あたしはそのまま二人の指導を受けながらどうにかして三面図を描き上げた。

 材料もこのままでは不安ということで二人に連れられてスクラップ場でちゃんとした素材を手に入れることにした。

 

「うわこの中から見つけるのか…」

「そうですよ。日が暮れる前に早く見つけるのです」

「うぅ~、これは参ったなぁ…」

 

 辺り一面をごそごそと漁りまわる。あちこち虫が湧いているし臭いしで最悪だった。そんな中で気になるものを一つ見つけた。

 

「博士ちゃん!助手ちゃん!ちょっと手伝ってもらってもいいかなー!」

「了解なのです」

「了解ですよ」

 

 そうしてあたしたちはそのけものの形をした"フウセン"といくつかの細かい道具を持って帰った。

 すでに日は傾いてきている。作業はまた次の日になるだろう。

 

「おかえりなさい、ともえちゃん」

「よーっす。どこ行ってたんだ?」

「ちょっとあたしも材料を探しに行ってたんだ」

「材料ってこんなバカでかいものがか?」

 

 膨らませると図書館程度であれば丸々一つ入りそうなほどの大きなフウセンだ。これが材料になるのだから驚くのも無理はない。

 

「ちぇ。これじゃ私の持って帰ったこれだけじゃ全然足ンねえな」

 

 セントラルまで行って大量の衣服を持ち得ったという。大丈夫。それだけあれば十分だ。

 けどなんだか気になるものを持っている。なんだろう。

 

「ゴマちゃん、その黒い網みたいなのなに?」

「これか?よくわかんねえけど作りかけの建物のところにいっぱい落ちてたぜ。お前が見ていた本でも似たようなのがあったから持ち帰ったんだけど…」

「それ!それほしかったの!ありがとう!すごく助かるよ!

「お、おう。なら良かった」

「イエイヌちゃんは……すごいね。そんなにいっぱい」

「えへへ…これだけあれば十分かなって…」

 

 荷車にたんまり積まれた大量の藁に目が留まる。パラグライダーに使う綱の他にいろんなものが作れそうだ。

 

「今回作るパラグライダー以外にもいっぱい作れそうだね。ありがとう、イエイヌちゃん」

「えへへ、オーダー完了です!」

「今日はもう遅いからもう休もっか。博士ちゃんたちはなにか食べたいものはある?」

 

 明日からちょっと忙しくなりそうだ。いっぱい食べていっぱい休んで英気を養おう。

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