けものフレンズR ~Re:Life~   作:韓非子

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第7話「大空」

 パラグライダーを地面に広げる。風が強いから準備が終わるまでは飛ばないように気をつけなくちゃ。

 それとどうやらゴマちゃんが拾ったものはフルハーネス型安全帯といわれるものらしい。

 それを図書館で作った簡単な椅子とくっつけて簡易的なゴンドラにする。

 …図書館で見た本によるとこのまま走って風を受ければ良いらしい。あたしはそのまま端まで移動すると力の限り走ってみた。

 …キャノピーが重くてうまく走れない。このハーネスも結構重い。

 

 「手伝いましょうか?」

 「…うん。お願い。」

 

 イエイヌちゃんが手伝いを申し出てくれた。後ろから押してもらおう。

 

 「じゃあ、行くよ…」

 

 返事も待たずあたしは走りだした。後ろからイエイヌちゃんがぐいぐい押してくれるおかげでどんどん加速していく。それにつられてキャノピーが宙に舞っていく。やがてあたしの体は宙に浮いて空を舞い始めた。

 

「うわわ…!」

 

 風に煽られてぐんぐん登っていき、地上からどんどん離れていく。いよいよあたしも飛んだんだ…!

 

「ともえちゃん!」

 

 イエイヌちゃんが下から叫ぶ。すると急に体に衝撃が来た。

 

「イエイヌちゃん!」

「えへへ…来ちゃいました…」

「来ちゃいましたじゃないよ!危ないよ!?」

 

 あたしが座っている小さいゴンドラの少ないスペースに立っている。少しでも踏み外したらイエイヌちゃんが落ちちゃう…!どうにかしないと…

 そうしている間にもパラグライダーは登っていく。やがて雲を突き抜けるとそこには雲の海が広がっていた。

 

「うわぁ…」

「すごい…」

 

 眼前に広がる雲の海に息をのむあたしたち。雲の合間からはパークがのぞいている。あんなに広かったパークがとても小さく見える。今見えているのはパーク・セントラルだろうか。なんだかとても乾燥しているような黄金の平野も見える。もしかしてカラカルちゃんと会ったところなのだろうか。

 

「これが空から見たジャパリパーク…こんなに広いんだ…あれがサバンナ地方であれが砂漠地方…」

「これがヒトが憧れていた空、なんですね…なんだか今ならヒトの気持ちがわかる気がします…こんなに気持ちよくってこんなにきれいだなんて!」

「…うん!」

 

 イエイヌちゃんが全力で楽しんでいる。だったらあたしも楽しむ…この機会、この気持ち、二度と味わえないんだから!全力で楽しまなくっちゃ!

 

「すごい、すごいよイエイヌちゃん!空ってこんなに気持ちいいんだ!きれいだし空気もおいしいし風も気持ちいい!あたしこんなの全然知らなかった!」

「わたしもです!ともえちゃん!」

「おーい!おまえらー!」

「ゴマちゃん!」

 

 後ろからゴマちゃんがやってきた。心なしか少し興奮しているようだ。

 

 「へへっ、我慢できなくて私も来ちまった!」

 「ゴマちゃん!これすごいよ!空ってこんなに気持ちいいんだね!」

 

 子供のようにはしゃぐ。ゴマちゃんも応えるようにはにかんで見せる。あたしの気持ちをわかってくれているのだろうか。

 

「そうだな!私は走る方がメインで空を飛ぶこと自体そんなになかったからこんなの初めてだぜ!へへっ、すげえや!」

 

 ヒヤッホー!と雄たけびを上げながらローリングをしている。背中から落ちて行ったりと思えば急上昇したり自由自在だ。まるで風を我がものとした鳥類のフレンズといった様相のよう。

 

「へへーん!お前らも来いよー!」

「むぅ…わぁ!」

 

 体に衝撃が走る。どうやら上昇気流に乗ったようだ。ぐんぐんとあたしたちは高く昇っていく。

 そして目を下に見やると一つの島の形をしたジャパリパークが見えた。

 

 「きれい…」

 

 遠くに水平線が見える。空と海がくっきり分かれているのがわかる。そしてなにやら島のようなものも一緒に見える。

 

「あれが…博士ちゃんたちが言っていたゴコクエリア…」

「ともえちゃん!前!」

「え?」

 

 イエイヌちゃんに言われて前を見るとひとつの大きな雲が立ちふさがっていた。

 

「うわわ!どうしよう!」

「お任せを!」

 

 そういうとイエイヌちゃんはあたしの前へジャンプしてその爪でバッサリと切ってみせた。

 …そしてそのままあたしの元へと戻ってきた。というかそのままあたしが突撃するような形になったんだけど…

 

 ぼすっ!

 

 「もう!イエイヌちゃん!」

 「えへへ…」

 

 結局雲は切り払えずそのまま雲の中へと突撃してそのまま突き抜けたのだった。

 遠くには大きな積乱雲といくつもの山々のように見える大きな雲の数々。そして青い海。あたしはその美しい光景に見とれていた。

 

「パーク・セントラル…ともえちゃんとわたしが出会った場所です」

 

 ふとイエイヌちゃんが呟いた。下にはパーク・セントラルが見える。

 

「あのきれいな海も空もここジャパリパーク、そしてこのパーク・セントラルにつながっているんですね…」

「そうだね…」

 

 ふとなんだかエモーショナルな達観したような気持ちになった。

 

「ともえちゃん!一緒に飛びましょう!」

「え!?ちょっ、イエイヌちゃん!?」

 

 不意にイエイヌちゃんがあたしのハーネスを爪で切り裂いた。ふと体が軽くなる。

 

「うわ!落ちる!」

 

 そのままあたしは空中へと投げ出された。

 

「うわああああああああああああああああああああ!!?」

「大丈夫です!わたしを信じてください!」

 

 地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。イエイヌちゃんがそのまま飛び込んであたしの手を握ってきた。

 

「大丈夫です、わたしを信じて…」

 

 そう言ってイエイヌちゃんはあたしの顔を静かに見つめてきた。

 

「ほら!ゴマちゃんみたいに飛びましょう!楽しいですよ!」

 

 そう言ってあたしから離れるとくるくる回ってみせるイエイヌちゃん。こうなったらヤケだ!

 

「ん!」

 

 大の字になって落ちてみてから四肢で風の抵抗を全力で受け止める。時節ローリングしたり宙返りしたりしてみる。

 

(姿勢によって落ちる速さが変わってくるんだ…)

 

「ほら!イエイヌちゃん!」

「あはっ!上手です!」

 

 イエイヌちゃんを見つめながら背中から落ちていく。雲を突き抜けるとイエイヌちゃんがあたしにダイブしてきた。

 手を取り合って二人でいっしょに落ちていく。

 

「おまえらー!」

 

 誰かに呼ばれるとともに襟をつかまれそのまま上へと連れ戻されていかれる。ゴマちゃんだ。そのまま再び雲を突き抜けるとゴマちゃんはあたしたちを手放した。

 

 「鳥のフレンズのまね事かー!へっ!私が手本を見せてやるぜ!」

 

 ゴマちゃんの目が光る。野生解放だ。なにをしてくるつもりなのだろうか。

 

「私のまねをしてみなー!」

 

 そういうとローリングしながら急降下していった。

 

「ええ、やってみますとも!負けませんから!」

 

 尻尾で器用に体制を整えながら体を逆さまにして落ちていく。あ、あたしも続いた方がいいのかな…

 …ええい!どうにでもなれ!

 

 …しかしうまくいかないものでくるくるしたかと思えばお尻から落ちたり頭から真っ逆さまに落ちたりしてしまう。

 

「あっはは!おもしれーの!」

「た、たすけてー!」

 

 あたしと並走しながらケラケラと笑ってくる。笑ってないで助けてよー!

 

「しゃーねえなー。ほれ!」

 

 あたしの体を掴むと一緒に急降下し始めた。

 

「下でお友達が待ってるぜ!一気に行くから意識飛ばねえようにしっかり気張れよ!」

 

 そう言うと一気に急降下し始めた。隼にも負けないような圧倒的な速さだ。

 

「ほれ、見えてきたぞ!」

「イエイヌちゃーん!」

「! ともえちゃん!」

「そうら、行ってこーい!」

 

 そう言ってあたしを砲弾のように放り投げた。一直線にイエイヌちゃんに向かって落ちていく。

 

「ともえちゃん!」

 

 あたしを受け止めた反動でふたり一緒に一回転した。程なくしてゴマちゃんが飛んできて三人一緒になって空を飛ぶ。

 

「まだまだだぜ!」

 

 海面に向かってダイブしていき海面スレスレを飛行する。お腹に強い揚力を感じて少し苦しくなった。

 

「ヘヘン。この速さだとサンドスターさえあれば無限に飛んでいられるんだぜ!」

 

 潮風と潮のにおいを全身で感じ取る。なんだか本当に鳥さんになったような気分だ。それはイエイヌちゃんも例外ではないようで、目をつむりながらあたしと同じく風に身を任せているようだった。

 あたしたちはこの広大ともいえるジャパリパークの海を、無限ともいえる時間を飛び続けたのだった。

 

 

…………

 

 

「いやー、すごかったねぇ」

「そうですねー…」

 

 お互い潮風と風の力でボサボサになってしまっていた。

 あたしは髪の毛がカピカピに乾いてあちこち髪の毛が跳ねてしまっている。

 イエイヌちゃんは特に悲惨だ。しっぽはサボテンみたいになって髪の毛の方は枝毛が見事に出来上がってしまっている。大事なもふもふが台無しだ。

 

「あっはは!二人とも大変なことになってるな!いやー、でもすっげえ楽しかったな!空を飛ぶのがこんなに気持ち良いなんて思いもしなかったぜ!」

 

 そう言うゴマちゃんも大変なことになっている。なんていうか全体的にもっさりしている。

 

「ふふふ、ゴマちゃんもすごいことになってるよ。でもそうだね。すごく楽しかった。三人だけの一生の思い出だね」

「そうですね。このことは一生忘れないでしょう。あの風を切る感じ…風に身を任せて…フレンズの体でなければ感じ得なかったあの感覚…一生の宝物です」

「ははは、そうだな。お前らに付いていかなかったら味わえなかったもんな。お前らに付いて行って良かったって思うぜ」

「あたしもゴマちゃんが付いてきてくれて本当に良かったって思うよ。ゴマちゃんがいてくれたおかげで今日の空の旅がすごく楽しくなったんだもん。それにゴマちゃんのはしゃぐ姿、とっても楽しそうで見ているあたしまで楽しくなったしとっても盛り上がったからね。今日一番の立役者はゴマちゃんで決まりだよ!」

「そ、そうかよ…へへ……さんきゅーな…」

 

 そう言って照れるゴマちゃん。照れちゃってかわいいんだぁ。こういう一面もあるんだなぁ。

 

「照れちゃってかわいい。ゴマちゃんも女の子なんだね」

「う、うっせー!さりげなく失礼だぞお前!」

 

 そうやって三人で笑いあった。

 なんだか今日は疲れちゃったなぁ。一日中飛んでいた疲れがドッとのしかかる。なんだか少し頭も痛い。酸欠なのかな。

 でも今日はすごく楽しかった。空を飛びたいというあたしの願いもかなった。アクションをしてくれたイエイヌちゃん。一緒に飛んでくれたゴマちゃん。二人ともあたしの大切な友達だ。今日という思い出を大事にしたい。

 …そう思いながらあたしたちは眠りについた。明日もまた楽しい冒険が始まる。

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