IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
この事故の一連はニュース新聞ネットで世界中に知れ渡った。
未知のISに興味引かれた束という女性はなんとかこのIS達に接触したいとある計画を進め始めた。
前代未聞の墜落未遂事故から早くも一ヶ月。
世間は少しずつではあるが事故直後からすれば多少の落ち着きを取り戻していた。生き証人たちである機の乗員乗客も事故直後はマスコミというマスコミから凄まじい質問の嵐だったが、ISなのかどうかはっきり姿を見た者が1人もいない。断言できる様な証言を行える者もおらず、ひと月もすれば「赤と青の光」とだけ取り上げられるようになっていた……。
ところ変わって、ここはスメリアという小国。
スメリアは多国間の争いや紛争には一切干渉しないと国際法で認められた世界で最も小さい永世中立国である。しかし政治や暮らしのレベルもしっかりしており、自然環境も良い。更にスメリアは難民も進んで受け入れており、戦争から逃げてきた難民たちからすれば正に理想の国とも言えた。ただ難民というと中には犯罪者の類が難民に化けて潜り込むという心配もあるが、スメリアはそんな事全くない国として知られ、平和な国を作っていた。そんなスメリアのとある島から物語は始まる。
…………
とある大きなお屋敷
赤い眼の少年・青い眼の少年
「「帰ったぜ(ただいま)ギャリソン」」
ギャリソンと呼ばれた老紳士
「お帰りなさいませ、火影様、海之様」
赤い目の少年は火影、青い眼の少年は海之といった。
「お試験の方はどうでございましたか?」
「全く問題ないぜ。まだ時間があったんで終わるまで昼寝をしちまった位だよ」
「調子に乗り過ぎて名前を書き忘れたりしていないだろうな。見直しは?俺は忘れず行ったぞ」
「ダイジョーブだって。にしても真面目だな海之は。学校トップの成績で名前の見直しって」
「万が一ということもある」
「へいへい。色んな勝負してきたけどテストだけは海之にいまだに一回も勝てないんだよなぁ」
(…前の世界でもだけどな…)
「さぁさぁ火影様も海之様もお疲れでしょう。お茶とお菓子をご用意致しますので、それまではお部屋でお休みください」
「「ありがとう」」
僕と海之はそれぞれの部屋に戻っていった。
…………
火影の部屋
「あ~疲れた~。受験なんてもう何年ぶりだろ?いやもしかしたら前の世界じゃ受けたことないんじゃねぇか僕?…」
そう俺、いやこっちの世界じゃ僕で通しているか。まぁ今は回顧録なんで俺でいいか。俺は以前の自分であるダンテの記憶を受け継いでいる。もちろんバージルも、いやこっちでは海之だな。あいつもとっくに思い出している。俺たちは赤ん坊の姿でこの世界に転生してきたらしい。さすがに赤ん坊の頃は自分が何者かなんてわからなかったが、成長するにつれて自分がどういう存在なのかを思いだしてきたのだ。まぁ今となっては遥か昔の遠い思い出だが…。
俺と海之はここスメリアという国のある夫婦に拾われ、そのままその夫婦の養子となった。俺達を育ててくれたこっちの世界の父さんはまだ若干20歳という若さでどんな侵入者・犯罪者も見逃さないという革新的なセキュリティシステムを開発した。父さんが開発したシステムはすぐにスメリアで正式採用され、スメリアの平和維持に大きく貢献した。難民受け入れに積極的なこの国で難民による犯罪が今現在も起こらない理由の約9割はその効果と言っていいだろう。父さんのシステムは世界でも採用され、その結果、わずか5年という短い期間で父さんの会社は世界的大企業になり、父さんは巨万の富を得た。しかし母さんと恋に落ちるとすぐに信用できる部下に任してあっさりと社長を辞め、母さんとの時間を何よりも大事にするようになった。その一年後に俺たちは拾われたって訳だ。まぁ会社を辞めた後も会社の相談役やプログラマーみたいな事もしてたんでそれだけでも十分すぎる程の収入だったが。余談だが父さんが社長時代、その貢献からスメリアの大統領にという話もあったらしいが父さんはあっさりと蹴ったらしい。
そして俺達が6歳の頃、母さんの故郷である日本であの事件が起きた。
「白騎士事件」
IS・インフィニット・ストラトスの生みの親である篠ノ之束が「ISが現行兵器全てを凌駕する」と言う事を証明するために起こしたとされる事件。2000発以上のミサイルと数百機の戦闘機や戦艦、果ては衛星まで使って日本を襲わせ、それを自ら生み出したIS「白騎士」を使い、全て無事故無被害で防いでみせるというある意味究極のショーだ。これを機にISは一気に爆発的に広がり、今は近代兵器の代表的なものとなっている。
最初ISは宇宙での活動を主な目的として開発された云わば平和貢献のためのマルチパワードスーツだったそうだ。しかしISの有効性を否定された篠ノ之束は自らの発明の有効性を示すというただそれだけのためにこの事件を起こしたとされている。
当時俺も海之もそれはそれは激しく憤ったものだ。表には出さなかったけどな。母さんの生まれた国だったという事もあったが何よりそんな理由でこんな馬鹿げた事件を起こした篠ノ之束と白騎士に怒りが湧きあがった。
だがそんな俺達を宥めたのは意外にも父さんと母さんだった。
「好きでこんな悲しい事件を起こすなんて人なんていないさ。もし本当に恨んでいるのなら、あのISとやらを使ってミサイルを防いだりしなかっただろうからね。僕は篠ノ之束という人もあの白い騎士も、本当はだれも傷つけたくなかったんだと信じているよ・・」
「最初はとても驚いたけど、今は私の家族やお友だちが無事で良かったという気持ちの方が大きいわ。これはお母さんの考えだけど、きっと篠ノ之さんという人もああするしか無かったと思いこんじゃったんだと思う。篠ノ之さんからしたらあれは自分の子供みたいな物だもの。私たちにとってのあなた達みたいにね。自分の子供がいらないなんて言われたら悲しいし、怒っちゃうもの…」
俺達を拾ってくれた人がこの二人であった事をあの時心から神に感謝した。
その一年後、ふたりは死んだ。ISの機密情報を持っているという科学者が乗った飛行機の自爆テロに巻き込まれて・・・。
(あれからもう十年か…。)カチャリ。
俺は自分の宝物でもあるアミュレットを握りしめた。
(……もう誰も、俺の大事なものを、傷つけさせはしない!)
コンコンッ
「火影様、お茶とお菓子のご用意ができました。海之様も御待ちです。本日はショートケーキですよ」
「ああ、今行くよ。ギャリソンのショートケーキ久しぶりだな!」
火影はアミュレットを首にかけ直して部屋を出た。
次回、赤と青の光が再び舞う。
次回まで仕事の関係で少しお時間頂きます。